風の気配
日照り続きの乾いた空は
青さえ白く霞んで見える
私はしばらく考え事をしていたようだ
思い出ではない
今ここにある感情を
あなたに届けるにはどうしたらいいかと
町の喧噪も人々の顔も頭に入らない
確かに目の前にあるのに
・・・・風が
その時風が動いた
その風に気配を感じて空を見上げた
あたながいるはずの空
ずっとずっと彼方に
風が何か言おうとしてる
あなたの言葉なの?
いきなり想いがほとばしり
感情が激しく揺れる
笑顔が 涙が 声が 歩く姿が
一瞬の中ですべて重なって甦る
頭の中があなたで溢れ立って居られなくなる
----私はどうしたらいい?
その瞬間に風が止まり 気配は消えた
空を見上げるといつか雲が広がっている
雲は雨を呼ぶのだろうか
街路樹はその雨に潤い慰められるのだろうか
風のない静かな昼下がり
私はたった一人きりだった
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