僕は釣りに明け暮れていた。 毎週休みは釣りに行っていた。 よく行っていたのは,唐津市から呼子へ行く途中の湊という漁港から連絡船で渡る神集島(かしわじま)での堤防釣りだ。 時には,チャータで渡る事もあった。 たいした金額ではない。 この島にはポイントとなるべき釣り場が数ヶ所ある。 僕はなぜかしら港の入り口にある赤灯台での釣りが好きだ。 ここは内側に養殖の生け簀がある。 その付近で大きなクロやチヌ,ボラなどが釣れた。 近場の釣りはかご釣りという釣り方が主流だった。 そもそも僕の釣りは,伊万里湾に位置する長崎県福島から始まった。 |
その頃僕は身体に変調をきたしていた。 そんな時友人のT氏に釣りに誘われた。 そこが長崎県福島だった。 福島は長崎県だが佐賀県からの方が近い。 伊万里から伊万里湾を左に見て北上すると,「名村造船」が見えてくる。 過ぎてしばらく行くと波多津の手前に福島大橋がある。 橋を渡って,右手に降りていくと採石場の積出港に着く。 僕の海釣り初体験の場所である。 竿は2本用意した。 1本はウキをつけたふかせ釣りだ。 赤や橙,ミドリの丸玉を数珠状にした仕掛けである。 もう1本は餌に青ゴカイを使ったブッコミ釣りだ。 投げ釣りのようなものだが,竿は磯竿でオモリはナツメの中通し10号。 簡単な仕掛けだ。 釣り始めて1時間ほどした頃,友人Tの置き竿(虫餌でのぶっこみ)にあたりが来た。 竿の先につけたアタリとりの鈴が朝の静けさをうち破った。 「チヌ」 そう,50センチほどのチヌだった。 もちろんその時の僕はチヌを初めてみたのだ。 僕を狂わした一瞬だったかも知れない。 つづく 先頭へ |
程なくして,釣り場は久原の貯木場が多くなった。 ここは伊万里湾を右にみて平戸方面へと進むと,木材加工工場とともに見えてくる。 港の防波堤の内側にはたくさんの木材が浮かんでいる。 ここは木材の陰などがいい隠れ家になっているのだろう。 特にチヌの数が多い。 この釣り場から対岸を望むと,名村造船のクレーンが見える。 この頃の僕は体力も気力も(釣りに対してだが(^^ゞ)充実していた。 久原の貯木場はチヌの魚影の濃さで近隣の有名釣り場だった。 釣りは朝からでもいいのだが,場所の確保が難しい。 必然的に夜のうちに釣り場を確保しないといけない。 重い撒き餌バケツや,竿ケース,バッグなどを抱えて200bほどの堤防の上をテクテク歩くのである。 そしてここら付近はつけえさにダンゴを使っていた。 ダンゴは釣具屋で「ミック」として売ってもいたのだが,大概は自作していた。 水分を絞ったアミ餌を小麦粉やサナギ粉などをブレンドして練りこむのだ。(パンストで搾るのが最高です) ウキは一号から二号ぐらいの棒ウキを移動仕掛けにして,竿1,2本の深さを適時狙うのだ。 ここには結構通った気がする。 しばらく釣りといえば久原のチヌ釣りだった。 |
車の中でよく寝た。 堤防の上でも寝たことがある。 波があたる音や水上に浮かぶ木材のきしむ音を聞きながら いつしか眠りの中にあった。 あなたはフナムシに顔を歩かれた事があるだろうか。 どこの海辺にもいる,あのゴキブリに似たヤツである。 そんなことも気にならない夢中の日々だった。 ここでの忘れられない思い出が2つある。 ある日,友人Tと水上に浮かぶ木材に乗って釣りをしていた。 その日はチヌの2,3歳もの(九州ではメイタと呼ぶところが多いようだ。)がよく釣れていて,昼食も忘れるほどだった。 ふと気が付くと何かが変だ。 ・・・・周りにあれほどあった木材がなくなっていた。 木材加工会社の作業員が移動させていたのだ。 もう一つは車のキーを落としたことだ。 今も伊万里湾はチヌの宝庫だ。 |
さて,久原からもう少し北上すると浦ノ崎がある。 浦ノ崎についてはまたの機会に述べよう。 ここは県境の地である。 峠を越えると長崎県だ。 長崎県松浦市。ここにも各釣り場に幾度か通った。 調川という地名がある。 少し戻って今福港がある。 概して半島の東側は浅場の釣り場が多い。 |
伊万里から松浦市を経て北上を続けると,平戸に辿り着く。 さて,その平戸への窓口「平戸口」での話。 その昔,といっても僕の少年時代,平戸へはここからフェリーで渡っていた。 今は立派な橋が架かっていて,随分と楽になった。 その渡船場の近くに青木旅館がある。 旅館の先の坂を降りたところから,白灯台の堤防がある。 型のいいクロ(グレ,メジナ)がよく釣れた。 ここは完全なカゴ釣り場である。 なにせ潮の流れが速いのだ。 少々の仕掛けでは魚のタナまでエサが届かない。 そのかわりうまくいけば型のいいターゲットにめぐり合える。 少し前までは五島などに遠征するときは,この平戸口から瀬渡し船に乗った。 今は各地に性能のいい船が待機しているので,遠征も随分快適になっている。 ここにはフェリー乗り場の右手の方にもお手軽な釣り場があった。 |
松浦市から平戸までの途中にも釣り場は連なっている。 御厨港や星鹿港,松浦発電所近辺,そして磯。 それらは一通り記憶のおさらいをしたあとに改めて記する事にしよう。 それからしばらくは,唐津から呼子,また東松浦半島の西側が僕の釣行先になった。 唐津は魚市場によく通った。 冬場限定ではあったが,ここで型のいいカレイが釣れたのだ。 ここも実際釣るのは朝になってからである。 でも,場所を確保するのが大変だ。 夜明けまえにはエサを付けていない竿を,犬走りに何本か並べて 30センチから40センチのカレイが4〜5匹から10匹ぐらいは釣れていた。 |
唐津から北上すると、呼子へと行く道が二手に分かれている。 下の道を行くと各港に釣り場が連なっている。 まず唐房の波止だ。 もとは小さな石積の防波堤があるぐらいだったが、現在は拡張工事で随分と大きく立派になっている。 ここはメイタ(チヌの2歳もの)の釣り場だ。 シーズンになればキスやカレイも投げ釣りにくる。 さて、もう少し北上すると幸多里の海水浴場が見えてくる。 ここでは投げのキスがおもしろい。 100bぐらい遠投して引いてくると、型のよいキスが釣れる。 たまにチヌの良型が釣れるのもうれしい。 さらに北を目指そう。 つづく |