#47「ライダー死す!」

昭和六十三年九月四日放送 脚本・杉村升 監督・小西通雄
登場怪人・コウモリ怪人

粗筋

 どうしてもシャドームーンとは戦いたくない光太郎。周囲は光太郎に理解を示しつつも対決を求める。遂に対決を決意する光太郎、シャドームーンとダロムの待つ決戦場へ。
 戦場で対峙する光太郎とシャドームーン、尚も光太郎はシャドームーンを説得するがシャドームーン聞く耳持たず、光太郎はやむなく変身。戦場に杏子と克美も駆けつける。シャドームーンが押されかけた時に創世王の加勢、シャドームーンは一瞬信彦の姿に戻り、BLACKが駆け寄ったところで再びシャドームーンに変身、BLACKをぶっ飛ばす。やがて形勢はシャドームーン有利となり、遂にサタンサーベルがBLACKを斬る! BLACKにサタンサーベルを突き立てるシャドームーン、そして高らかに勝利を宣言。しかしシャドームーンはBLACKの体からのキングストーンの奪取をためらい、そのまま姿を消す。BLACKの屍は地震で崖の上から転落、川から海へ流れて行ってしまう。

暗黒大公曰く

 先週の次回予告から「お楽しみに」が消える。
 シャドームーン復活以後、ちょくちょく挿入されるようになった市街戦や社会の様子の場面。ゴルゴムの攻撃で直接被害に遭う人々、混乱の極限にある街、うろたえる日本政府。勿論基本的に荒唐無稽な子供番組、テレビまんがの範囲だが、それでも「BLACK」は必ずしもコップの中の嵐や御近所騒動にとどまらない、それなりに社会派の作品だと思うのだ。だからこそ光太郎の戦いを筆者は「戦争」と記している。単なる兄弟喧嘩やゴルゴムのお家騒動ではない、全地球に影響を及ぼす戦乱である。
 ついにやってきた両世紀王激突の時(劇場版第二作を除く)。仮面ライダーの死という大事件に当時筆者の周囲も大騒ぎになった。
 少年戦士達のアジトに横たわっていた重傷の若者の「俺、死にたくない、死にたくないよう…」が実に生々しい。
 夜、アジトの外での光太郎と杏子の会話。#35での洞窟内の会話の再現と言えばそうだ、例の幸福な日々の回想も出て来る。「嫌、嫌よ、そんなの嫌っ!」ただ泣くばかりの杏子、何を考えているのかその様子を見つめる克美、極限状態においてこの二人はとことん無力である。
 戦闘中に至るまで「戦いたくない」を繰り返すBLACK。この辺りは同じ吉川プロデューサー作品「人造人間キカイダー」で、光明寺博士の脳を搭載したハカイダー相手に全力で戦うわけにはいかなかったキカイダーを想起させる。
 今回の創世王は冒頭からシャドームーンの激励ばかり、そして対決中もシャドームーンに加勢。やはり創世王は両世紀王を競わせているのではなくてシャドームーンを応援しているのか、と今回は思える。「やはり私の助けが必要なようだな」の「やはり」とはどういう意味だ? 実戦経験を積んだBLACKの方が有利だと見たか? しかしシャドームーンはサタンサーベルを持っているのだぜ。
 両世紀王の戦い、それなりの迫力はある。筆者の好きなのはシャドームーンがサタンサーベルでBLACKを吊り上げてゆっくりと振り回す場面。今ならデジタル技術でシャドームーンがBLACKをぶんぶんと振り回すだろう。
 一瞬姿を見せる信彦、「BLACK」全編の中で改造後の、シャドームーン人間体としての信彦が登場した数少ない場面の一つ。確かにBLACKを油断させる効果はあったようだが、大した意味は無かったようにも思える。信彦の姿に戻ってBLACKの方を向くその男はジャッキー・チェンではない。
 サタンサーベルがBLACKを斬り、BLACKが仰向けに倒れる場面がやはり衝撃的だ。
 シャドームーンの勝利宣言「ブラックサンが死に、地球も悲しんでいる。私が勝ったのだ!」が非常に格調高くて大好きだ。しかしそう言っておいていざキングストーン奪取の段になるとためらってしまうシャドームーン。信彦の自我がためらわせたのだろうか、BLACKの屍が光太郎に戻ってしまったのを見た時のあのうろたえ方。信彦の心を取り戻したのかという創世王の問いに対する答えも何だかむきになっているようで、彼自身取り乱しているようだ。創世王の「愚か者!」が天地に響く。
 シャドームーン達が去った後、杏子と克美に国外退去を命じるBLACK。女性陣は泣いて嫌よ嫌よを繰り返すばかりだ、流れる音楽は何故かV9、その名も「凱歌」。
 最後に、今回のラストのナレーションを掲げておこう。V1aに乗せた、絶望に満ちたナレーションである。
「仮面ライダーは死んだ。長く苦しい戦いの末、死んだのだ。最早、この地球を救う者はいない。ゴルゴムの横暴に任せるしかないのか、誰が、この美しい地球を救うのだ…」

クレジット

オープニング

仮面ライダーBLACK         吉川 進         堀 長文          (東映) プロデューサー         井口 亮         山田尚良         (毎日放送) 原作 石森章太郎    少年サンデー    てれびくん 連載 コロコロコミック    小学館学習雑誌    テレビランド 脚本 杉村 升 音楽 川村栄二     主題歌 「仮面ライダー  「LONG LONG AGO, ・   BLACK」  20TH CENTURY」   作詩 阿木燿子   作曲 宇崎竜童   編曲 川村栄二   歌 倉田てつを 歌 坂井紀雄     (コロムビアレコードCK‐797) 南 光太郎 仮面ライダーBLACK  倉田てつを 秋月信彦 シャドームーン  堀内孝人 秋月杏子  井上明美 紀田克美  田口あゆみ 森 富士夫 細見良行 榎本郁代 中田武士 高橋竜次 竹内 純 中島義美 会澤雅人 山本昌之 奥田英太郎 清水賢臣 岡元次郎 北村隆幸 飯田則子 末永貴久 岩田時男 (ジャパン・アクション・クラブ) アクション監督  金田 治   (ジャパン・アクション・クラブ)
ナレーター 政宗一成 創世王の声 渡部 猛 ダロムの声 飯塚昭三 大怪人ダロム  山本貴浩 監督  小西通雄

エンディング

撮 影 工藤矩雄 照 明 渡辺 康 美 術 稲野 実 造 型 前澤 範 録 音 太田克己 編 集 菅野順吉 選 曲 茶畑三男 効 果 大泉音映
製作担当 寺崎英世 進行主任 梶川まさや 助監督 鎌田 浩 計 測 山本英夫 記 録 富田幸子 製作デスク 岩永恭一郎 装 置 東映美術センター 操 演 神尾悦郎 美 粧 サン・メイク 衣 裳 東京衣裳 装 飾 大晃商会 資料担当 小佐野 聡      (石森プロ) キャラクター製作 レインボー造型企画 イラスト 野口 竜 プロデューサー補 高寺成紀 合 成 チャンネル16 現 像 東映化学 オートバイ協力   S SUZUKI
ビデオ合成 東通ECGシステム   峰沢和夫 近藤弘志   前岡良徹 鈴木康夫 (株)特撮研究所 操 演 鈴木 昶     尾上克郎 撮 影 高橋政千 照 明 加藤純弘 美 術 佛田 洋 特撮監督  矢島信男     △東映 製 作     毎日放送

使用音楽一覧
場面番号または歌曲名音楽メニュー
前回の粗筋V1弦のみT2
社会の混乱、若者達の戦い「BLACK ACTION」
少年戦士対ダロムM24策謀
光太郎参上M21冒頭のみバトルホッパー
光太郎対ダロムV0ヒーロー登場!
逃げるBLACKV8絶体絶命!
光太郎への嘆願M13
光太郎の苦悩MF追憶
光太郎と二大マシンV1aT2燃える思い
光太郎戦場へ「ブラックホール・メッセージ」
インストゥルメンタル
変身ポーズ「変身!ライダーブラック」
変身完了「BLACK ACTION」
激突両世紀王V1変身!
一瞬信彦「仮面ライダーBLACK」
シャドームーン勝利M13
一瞬光太郎「LONG LONG AGO,20TH CENTURY」
歌入りとインストゥルメンタル
BLACKの死M9イントロのみ凱歌
大地震、BLACKは海へV1aT2燃える思い


一覧に戻る

次回