ビデオソフトに封入の解説書が「倉田てつお」と致命的な誤記をしている。
　この映画は筆者にとって非常に思い出深い作品。「鬼ヶ島」は平成二年秋頃にレンタルビデオで見たが、「怪人館」は劇場で見た。当時番組プレゼントに応募、それで親子鑑賞券を当てたのである。出した応募葉書は十枚、その一枚毎に違う内容の「番組に対する御意見、御感想」を書いた、怪人のこととか、女優のこととか、今後の展開とか。それで見事当籤、冗談混じりに「当たったら付き合え」と言っておいた母と共に仙台東映に見に行った。当時筆者十四歳、母四十歳。「東映まんがまつり」四本立ての一本目、我々は「ＢＬＡＣＫ」だけ見て退出した。昭和最後の夏の思い出だ。筆者にとって仙台東映での映画鑑賞はこれが初めてで、平成十六年の「特捜戦隊デカレンジャー」「仮面ライダー剣」が二回目にして最後になった。十七年四月、仙台東映閉館。仙台松竹や日乃出劇場も既に無く、宮城県在住時に行った映画館で残っているのは最早仙台東宝のみだ。
　さて。
　予告編では「秋月信彦がシャドームーンとして復活」と謳われるが堀内の出演は無く、「信彦」は台詞の中にすら出て来ない。結局、堀内は劇場版に出演できずに終わる。
　夕張市の中田鉄治市長再び。ラスト、遠くを見ながらのつぶやき「仮面ライダーＢＬＡＣＫ」が印象深い。
　市長の姪のアケミは＃３７の圭子役と同じ人のようだ、東城美帆か。東城は同年の「世界忍者戦ジライヤ」では山地闘破の生母・千代。牧野博士は石濱朗、翌年の「機動刑事ジバン」にジバンの上司・柳田誠一役で出演、そして平成四年のＶシネマ「真仮面ライダー序章」では真の父・風祭大門博士を演じている。
　露骨な夕張市観光宣伝映画、それで結構。夕張市ウェブページには「ＢＬＡＣＫ」撮影についての記事は見当たらない。敢えて言えば「リンク集」の個人ページの項だ。
　ゴルゴムの帝国都市、世界侵略の拠点に選ばれた夕張市。地名の由来から説き起こして、その利点が語られる。
　札幌不二ホテル従業員に化けたビシュム、演ずるは好井ひとみ本人。修道女姿よりこちらの方がよいと筆者個人としては思う。
　よく戦闘員不在を特色として挙げられるゴルゴム、今回は戦闘員登場。尤も、ジープでの巡回、ロードセクターとの激突だけで、ＢＬＡＣＫとの格闘は無い。「ゴルゴムに戦闘員はいない」というのは嘘である。
　Ｕ‐ＢＡＲＯＴ（ユー・バロット）、夕張市石炭の歴史村のロボット大科学館に展示されていた実在の巨大ロボット。劇場鑑賞時、右手でＢＬＡＣＫを捕まえるＵ‐ＢＡＲＯＴの絵を見てそれなりに興奮した記憶もあるが、やはり起動する前に破壊されるだろうとも思った。実際、光球をＢＬＡＣＫに当て損なったビシュムのドジで爆発してしまうが（いずれにせよＢＬＡＣＫが破壊しただろうが）、あれが起動してＢＬＡＣＫと戦う場面も見てみたかったような気もする。例の夕張市財政破綻の影響で平成二十年八月二十八日、Ｕ‐ＢＡＲＯＴは展示場所で解体（破壊）処分されてスクラップになった。映画公開から丁度二十年後の夏の出来事。
　亡霊怪人軍団、異空間でＢＬＡＣＫを苦しめる。何やら世間では「再生怪人軍団は弱い」という言い習わしがあるそうだが、今回の軍団は「再生」と言えるかどうかはともかく、それなりにＢＬＡＣＫを苦しめている。逃げ出したのはＢＬＡＣＫの方だ。「鬼ヶ島」同様「ＢＬＡＣＫ　ＡＣＴＩＯＮ」は前半部分のみ使用。
　テレビより一足早く両世紀王の激突、当初はシャドームーンがＢＬＡＣＫを圧倒している。「仮面ライダー、その屍の上に偉大なるゴルゴム帝国都市を築いてやろう！」「死してゴルゴム帝国都市の礎となれ」が格調高い。シャドーフラッシュで亡霊世界を操ったシャドームーンに倣ってキングストーンフラッシュでその世界を破るＢＬＡＣＫ、同じ能力を備えているのは両者にとって両刃の剣だ。ＢＬＡＣＫがロードセクターを呼び戻した途端にシャドームーンが退却してしまったのが不満だ、これではまるで剣聖の戦い方ではないか。
　ツノザメ怪人、テレビにも姿は見せていたものの晴れ舞台は映画。設定に拠ると、元は四体の兄弟怪人だったのが前回の文明破壊の際に四体とも体がばらばらになってしまい、その四体が一まとめになって再生、復活したのだという。なるほど、左肩、右胸、左脇腹にも顔を持っている。一つの体で四つの顔、兄弟喧嘩になったら大変だ。それにしてもゴルゴムには他にも魚の怪人は複数いたのに、ＢＬＡＣＫを水中に引きずり込んで戦ったのはいなかったような気がする。魚だったら水中戦が得意だろうに。
　劇場版は＃１はバトルホッパー、＃２はロードセクターがそれぞれ単独で活躍して分け合った格好だ。キャピトラ組の女性達は本当に単なる脇役。
　ところでこの夕張市長、この一件の後で「ゴルゴムをやっつけた市長」を売りにしようとして選挙参謀に止められたりしたのだろうか。

クレジット
仮面ライダーＢＬＡＣＫ

　　　　　　　           映倫


製作　渡邊亮徳


原作　石ノ森章太郎

　　　少年サンデー
　　　てれびくん
連載　コロコロコミック
　　　小学館学習雑誌
　　　テレビランド


プロデューサー　吉川　進
　　　　　　　　堀　長文

脚本　鷺山京子


音楽　川村栄二



　　　　主題歌
「仮面ライダー　　「ＬＯＮＧ　ＬＯＮＧ　ＡＧＯ，
               ・
　　ＢＬＡＣＫ」　　２０ＴＨ　ＣＥＮＴＵＲＹ」

　　作詩　阿木燿子
　　作曲　宇崎竜童
　　編曲　川村栄二
　　歌　倉田てつを　歌　坂井紀雄
　　　　（コロムビアレコードＣＫ‐７９７）


撮　影　松村文雄
照　明　中川勇雄
美　術　井上　明
造　型　前澤　範


録　音　太田克己
編　集　菅野順吉
選　曲　茶畑三男
効　果　大泉音映

製作担当　寺崎英世



進行主任　竹内洪太
助監督　岩原直樹
計　測　岡部正治
記　録　富田幸子　　　　 
製作デスク　岩永恭一郎


装　置　東映美術センター
操　演　國米修市
美　粧　サン・メイク
衣　裳　東京衣裳
装　飾　大晃商会



資料担当　小佐野　聡
　　　　　（石森プロ）
キャラクター製作　レインボー造型企画
イラスト　野口　竜
プロデューサー補　高寺成紀
合　成　チャンネル16
現　像　東映化学

オートバイ協力
　　Ｓ ＳＵＺＵＫＩ

ビデオ合成　東通ＥＣＧシステム
　　峰沢和夫　近藤弘志
　　前岡良徹　鈴木康夫




特撮監督
　矢島信男


（株）特撮研究所
操　演　鈴木　昶
　　　　尾上克郎
撮　影　高橋政千
照　明　加藤純弘
美　術　佛田　洋



撮影協力
夕　張　市　　　　　ＡＮＡ全日空
歴史とロマンと冒険の地
石炭の歴史村　　　　札幌不二ホテル


出演


南　光太郎
仮面ライダーＢＬＡＣＫ
　倉田てつを


秋月杏子
　井上明美

紀田克美
　田口あゆみ



賀田裕子

滝沢幸代


東城美帆

中田　悠



アクション監督　金田　治
　　　　　　　　（ジャパン・アクション・クラブ）


岡元次郎
北村隆幸
飯田則子
岩田時男
庄司浩和
（ジャパン・アクション・クラブ）


大怪人ビシュム　好井ひとみ
大怪人ダロム　山本貴浩
大怪人バラオム　高橋利道


ナレーター　小林清志
ダロムの声　飯塚昭三



牧野博士
　石濱　朗


夕張市長
　中田鉄治
　　　（特別出演）


監　督
　小笠原　猛