■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ベン・ハー  BEN-HUR ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
1959年:アメリカ(MGM・212分)
製作:サム・ジンバリスト 監督:ウイリアム・ワイラー 脚本:カール・タンバーグ 音楽:ミクロス・ローザ 原作:ルー・ウォーレス 撮影:ロバート・サーティス 
【CAST】チャールトン・ヘストン(ベン・ハー=ユダヤ人豪族の若き首長) スティーブン・ボイド(メッサラ=ローマ軍指揮官) ジャック・ホーキンス(クインタス・アリアス=ローマ海軍司令官) ハイヤ・ハラリート(エスター=ハー家使用人) ヒュー・グリフィス(イルデリム=アラブの族長) マーサ・スコット(ミリアム=ベン・ハーの実母) キャシー・オドネル(ティルザ=ベン・ハーの妹) サム・ジェフ(サイモニデス=ハー家執事、エスターの父)

STORY

物語はイエス・キリストのエルサレム近郊の馬小屋での誕生から始まる。そのエルサレムに赴任した若き将校メッサラを出迎えたのは幼なじみで兄弟のように共に育ったユダヤ人ベン・ハーだった。しかし、支配する側とされる側の溝は避けられず二人は衝突してしまう。そんなおりもおりハー家の屋敷前をローマ軍が通りがかった際誤って屋根瓦が落下した事故をメッサラは反乱とでっちあげ家族共々を投獄し、ベン・ハーに至っては軍船の船漕ぎ奴隷にまわされてしまう。徒歩で砂漠を移動させられる途中枯れかけた所を見ず知らずの男に水を恵まれ救われた末、乗った軍船で遭遇した海戦のさなか総司令官のアリアス提督を救出したことにより、ベン・ハーは提督の養子に迎えられ奴隷の身から解放される。しかし、メッサラへの復讐と家族の救出に燃える彼はアリアスの下を離れユダヤの地を目指す。帰途の途中戦車競技用の白馬のオーナーでもあるアラブの族長と出会い、近々エルサレムで行われる戦車競技に宿敵メッサラが出場することを知り、アリアスの下で戦車競技の乗り手として腕を上げていた彼は迷わず出場を決める。そんな復讐のみに燃えるハーに族長の友人は自分達の救世主たる預言者の話を一度聞くよう勧めるが取り合おうともしない。クライマックスの戦車競争シーン
いよいよ戦車競技が行われ宿敵メッサラとベン・ハーは遂に相まみえることなる。汚い手を使い競争相手を倒していったメッサラは同様にベン・ハーの車にも襲うが、返り討ちに遭い地面にたたき落とされ後続の馬車にズタズタにひかれ瀕死の重傷を負ってしまう。勝利の月桂冠を受けたベン・ハーにメッサラは「勝負は終わっていない」と母と妹が不治のライ病患者の谷に送られていることを告げる。勝負は互いの絶望の下に終わってしまう。女使用人のエスターの引き留めを振り払い彼は、不治の病に侵された母と妹と絶望の対面をする。そんな折り街ではナザレのイエスの裁判が行われ死刑が宣告され、己の十字架を背負わされゴルゴダの丘まで歩かされる。エスターに教えられ遂にその預言者を人目見るべく母と妹を連れたベン・ハーは街へ足を運ぶ。現場に行き着いた彼が見たイエスは、砂漠での行進の中、兵士の制止を無視し彼に水を与えてくれたその人だった。ベン・ハーは倒れかかったイエスに今度は逆に水を与えようとするが兵士に邪魔をされてしまう。
ハー達が帰った頃、ゴルゴダの丘でイエスは処刑されたその瞬間、稲妻と大雨が地に降り注ぎ出したと思いきや、母と妹が痛みに苦しみ出す。しばらくすると二人の病気は消え失せ元の体に戻っている。イエスの奇跡と共に物語は幕を下ろす。 

ひとこと

ちょっと前に「タイタニック」がアカデミー賞を11個受賞し驚嘆の話題になった事があったが、あれは”新記録”ではなく”タイ記録”だと言っていたのを憶えておられるだろうか?この「ベン・ハー」こそ「タイタニック」の受賞まで単独の記録ホルダーだった作品なのである。原作も歴史的文芸作為品と言うべき小説である。書いた人が面白い人でルー・ウォーレスと言う人なのだが、実はこの人は南北戦争の北軍の将軍まで昇り詰めた人物なのである。退役後のいわば老後の趣味でやり始めた執筆活動の中で書き上げた一つが「ベン・ハー」だったわけだ。将軍までなった人ならば戦争の武勇伝で十分ネタに書けたと思うのだがこの人はそれはしなかった。ちなみに原作は映画のような長大な物ではない。ところで主役のベン・ハーのキャスティングは当初はチャールトン・ヘストンではなかったらしく、ロック・ハドソン(「ジャイアンツ」が有名)やモンゴメリー・クリフト(「陽の当たる場所」が有名かな?)、はたまたメッサラ役のスティーブン・ボイド(「ミクロの決死圏」が有名)があがっていたらしい。当時のヘストンはまだスーパースターとなる前の頃で、「十戒」(1955)や「地上最大のショー」(1951)の主役で売り出し中の存在だったところに彼自身大変尊敬するワイラー監督が白羽の矢を立てたらしい。2メートル近い精悍なボディーのヘストンは熱演でそれに応え見事オスカー主演男優賞を獲得している。
全ての映像が賞賛に値する名画中の名画なのだが、やはり驚くべきはクライマックスの戦車競争のシーンにとどめを刺すだろう。今見ても凄いのひとこと。今は当たり前のCGなど無い時代の実写の凄さと言うべきか。となると賞賛を受けるべきはここで代役を務めたスタントマン達ではなかろうか?転倒した別の戦車をへストンの戦車が乗り越えるシーンでは、彼が手綱を握りしめたまま空中で回転しもんぞり返るのだが、このシーンのスタントマンはこの回転アクションで何針も縫うケガまで負ったらしい。作曲のミクロス・ローザは音楽を付けるのさえ控えたこの素晴らしい戦車競争は映画史上最高のスタントシーンと言いたい。
作品そのものは休憩まで挟む長大な映画だがワイラー監督の素晴らしい手腕は、長さを実時間ほど長くは感じさせないので未鑑賞の方は是非一度見て損は無い名作である。良い物はいつまで経ってもやはり良いのである。

PS;この名画のあるシーンのちょい役で往年のマカロニウェスタンのスターが顔を出している。この作品の後、「荒野の1ドル銀貨」で一気に名を売ったジュリアーノ・ジェンマである。(今の若い映画ファンは知っているだろうか?)まだ全くの無名な頃で、登場するのは映画の前半でメッサラに投獄されたベン・ハーが脱獄しメッサラの部屋に押し入ったシーンで、セリフ無しでメッサラの横で身構えている副官がそうである。
  

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