『'03年夏』その壱

出発前

 

嫁様の両親が住んでいる白河地方の週間天気予報は、芳しくない。

 

傘マークばかりが続いている。予定している海水浴やBBQなどのイベントができるかどうか不安だったが、こればかりはどうしようもない。

 

(結局不安的中)

 

 

1日目

 

午前9時より車へ荷物の積込みを開始する。この作業はいつも我が家で唯一高い労働力を持つ私の仕事になる。

 

3往復もすると必要な荷物の積み込みは終了する。あとは、人間と小鳥達が乗りこめば出発だ。

 

文鳥たちは枡籠に入れて缶ビール箱に入れての輸送になる。

           

 

初めての3時間半の長時間ドライブ、そのうえ高速道路での100km/h以上の状態に耐えられるのか、少しだけ心配だったが、

 

家に置いて行く訳もいかないし、ペットホテルに預ける方法なんてお金が懸りすぎてこれも駄目。

 

(現在我が家にはセキセイインコも含めると6羽小鳥がいる)一抹の不安はあったが何とか大丈夫だろうと何の根拠も無いまま出発となった。

 

GSやクリーニング屋等に寄った為、実際に出発したのは10時くらいになってしまった。

 

この分じゃ、到着するのは13時30分を過ぎる事になるだろう。

 

おまけに三連休なので宇都宮から那須辺りまでは混んでいるだろうなと予想できた。

 

首都高を1時間位で抜け、小雨の振るなか東北道を走る。途中、佐野SAで休憩を取る。

 

後部パッケージルームに置かれた文鳥たちは、車が止まると騒ぎ始めた。

 

後ろに廻って箱の蓋を開けて覗いて見ると、何事かとこちらを見返す。元気そうで何よりだ。

 

あと1時間半辛抱しろと思わず口にしてしまう。

 

渋滞の予想が当り、予定より少し遅れて14時前に実家に到着となった。

 

気温16℃。しまった長袖をもっと持って来てれば良かったと思ったが、後の祭だった。

 

嫁様を言い包めてGジャンでも買ってもらうかと考えずにいられないほどの寒さだった。

 

久し振りに会ったジジババと子供たちは再開を喜んでいたが、荷物を運び終わるまでは召使状態の私はせっせと荷物を運び入れる。

 

例年の如く帰りは、載りきれないほどの荷物を載せて帰る事になるだろうと思いながら・・・・。

 

一息吐く間も無く、鳥籠の組立に懸る。面白そうに興味津々で見ている子供たちに、インコの籠をやってみるかと訊くと、二人とも大きく頷く。

 

インコは子供に任せた。文鳥の方がインコよりも大事であり最優先なのだ。

 

嫁様は子供に組立させているのが不満なようだったが、自分で考え悩むという事は子供にとって大事な事だと思うので、

 

どうしてもわからない所を除いて最後まで子供にやらせた。(人間の父親の役目も、たまにはやらないと)

 

次は問題となる籠の置き場所だ。

 

我が家ならば絶対権力を持つ(持たされている、持たされているようにみえる?)私の一存で決められるが、

 

義理の両親の実家では黙って指示に従うしかない。予定されていた場所は、玄関だった。

 

昨年並みの気候だと何の問題も無いが、今年のこの寒さじゃ文鳥達が可哀相だと、親バカ振りを発揮してしまう。

 

歓迎&慰労のビールを1本空けていたが、1時間以上経っているし、何の問題も無いと思って街のペットショップへ行く。

 

と言ったら、嫁様が運転は駄目だと言う。言い出すと聞かない私の性格を判っているので、

 

嫁様の運転で街で一番のペットショップへ向かう。

 

と言っても同じ系列の店が2店舗しかないのだが。何とその店で、箱巣が定価580円にして3割引!嘘だろー!と驚愕。

 

千葉で買うと850円くらいするのに驚きの価格だ。原価は幾ら位なのだろうか?400円で限り限り利益が出るとすると、

 

原価は380円位じゃないだろうか?首都圏では暴利を貪っていると考えても良いだろうが、

 

壷巣と比べると耐久性が高い為、その位の利幅を取らないとやって行けないんだろうと、今になって思う。

 

本当は箱巣より慣れている壷巣にしても良かったのだけど、どうせ買わなきゃいけない物だからと格安の箱巣を買い求めた。

 

それと壷巣を入れた事によってもし卵が産まれたら、どうする事も出来なくなってしまうという杞憂もあったからだ。

 

こうなると私の悪い性格が発動してしまう。

 

箱巣に必要なわら製の産座「WARA-G」が欲しくなってしまう。この地方に売っているわけ無いと思いながら、

 

心の片隅でもしかして? という期待をする阿呆な自分がいる。

 

その店には勿論、「WARA-G」は置いていない。滞在している間のお楽しみにする事にした。

 

実家に戻り、籠の中に箱巣を取り付ける。

 

文鳥たちは変なものが籠の中に取り付けられたと警戒しているようだったので、少しでも馴染むように青米を巣の中に撒いておいた。

 

そこへ優しい義理のお父さんが小鳥達の為に「はこべ」を大量に取ってきてくれた。

 

しかし、我が家の文鳥どもは「はこべ」を見向きもしない。

 

鳥は「はこべ」を喜んで食べるという確信を持つ、お義父さんの期待は見事に裏切られてしまった。

 

葉っぱ自体が大きすぎたのが原因のようだった。仕方が無いので翌日、豆苗を買って来て与える事にした。

 

私の栽培した豆苗が良いと無言の主張する文鳥を見て嬉しくもあり、また、お義父さんに対して申し訳ない気持ちにさせられた。

 

人間の生活中心は玄関ではなく、居間になるので文鳥たちの様子をずっと見ている事は出来ず、私自身が寂しい思いをさせられた。

 

放鳥も毎晩するわけにはいかないので、文鳥たちにも寂しい思いを強いる事になってしまった。

 

 

2日目

 

小雨が時々降ったりする曇り空の天候。

 

文鳥たちは普段と変らない様子だった。寒くはない様なので一安心だった。

 

人間はのんびりとした午前を過ごし、午後は親戚何軒かを表敬訪問する。私は実はこれが大の苦手だった。

 

何かとお世話になった事もあるので、義理事を欠かす事は出来ない。子供がいる分、場を持たせてくれるのでずいぶん助かる。

 

帰りに豆苗を忘れずに買って帰った。

 

 

3日目

 

久々の好天気。

 

文鳥達に日光浴をさせてあげたいが、この実家の外は危険だった。

 

隣の家で猫を飼っているらしいし、家の裏はすぐ山なので蛇なんかが出そうだった。

 

ちょっとでも目を離すことは危険なので、日光浴は諦めざるを得なかった。

 

ジジババが子供たちを連れて那須高原へトウモロコシを買いに行くというので、遠慮なく子供の世話を御願いする。

 

そこで白河ラーメンの超人気店「とら食堂」に夫婦で食べに行く事にした。

 

こちらへ来た時の楽しみのひとつに、この地域のラーメンを食べ歩くのがある。

 

しかし、毎度の事ながら、このラーメン屋の最大の難点は、来客数が以上に多いので、待ち時間が長いことだ。

 

ラーメン屋に着くと想像していた以上に駐車場は一杯だった。

 

それも県外ナンバーの車ばかりだ。みんなこんな辺鄙なとこまで良く来るなと思って並んでいると、タクシーを乗り付けて来る客もいる。

 

私自身も、こちらへ来た時は必ず食べに来るようにしているが、そこまで絶品とは言えない。

 

どちらかと言うと、新しく食べる店の味の規準にする為、来ているようなものだ。

 

嫁様を宥めながら、1時間位待たされての入店。その上、ラーメンが出てくるまで30分近く掛かる。

 

ようやく食する事の出来たラーメンだったが、どうも味が落ちたような気がする。

 

帰りの車の中で感想を嫁様と話し合った結果、「×」。その店は、二度と来る事の無い店にランク付けされてしまった。

 

実家に戻るとと、義理の妹夫婦が丁度、到着していた。

今回の休暇は、この義妹家族と我が家が一緒に楽しむ予定になっていた。

義妹の旦那は仕事があるので、今夜とんぼ返りするそうだ。ご苦労様としか言い様が無い。

問題は、姪っ子に当る2歳の双子の女の子だ。

見知らぬ男性が同じ居住空間にいると、食べられるかと思うのか恐怖に脅えたように泣きながら逃げまくる。

これは父方のジジに対しても同じらしい。安心できる成人男性は、今のところ、父親と母方の白河のジジだけらしい。

こちらとしては、対処する方法が無いのでお手上げ状態だった。

結局、片方は3日目ぐらいで慣れてきたがもう片方は、最後まで駄目だった。

我が家のが帰る最終日に、やっと二人とも笑顔を見せてくれるようになった。