資料8:外来語のかきかた
1.外来語の表記
以下は、「外来語の表記」(内閣告示第二号平成三年六月二十八日付け)と「『外来語の表記』の実施について」(内閣訓令第1号(平成3年6月28日付)(ともにWeb版から適宜省略し、文化庁の本と照合したものです)(文化庁 平成13 p1-16)
「 外来語の表記
前書き
1 この『外来語の表記』は,法令,公用文書,新聞,雑誌,放送など,一般の社会生活において,現代の国語を書き表すための「外来語の表記」のよりどころを示すものである。
2〜5(省略)
本 文
「外来語の表記」に用いる仮名と符号の表
1 第1表に示す仮名は,外来語や外国の地名・人名を書き表すのに一般的に用いる仮名とする。
2 第2表に示す仮名は,外来語や外国の地名・人名を原音や原つづりになるべく近く書き表そうとする場合に用いる仮名とする。
3 第1表・第2表に示す仮名では書き表せないような,特別な音の書き表し方については,ここでは取決めを行わず,自由とする。
4 第1表・第2表によって語を書き表す場合には,おおむね留意事項を適用する。
(第1表・第2表は省略)
1 この『外来語の表記』では,外来語や外国の地名・人名を片仮名で書き表す場合のことを扱う。
2 「ハンカチ」と「ハンケチ」,「グローブ」と「グラブ」のように,語形にゆれのあるものについて,その語形をどちらかに決めようとはしていない。
3 語形やその書き表し方については,慣用が定まっているものはそれによる。分野によって異なる慣用が定まっている場合には,それぞれの慣用によって差し支えない。
4 国語化の程度の高い語は,おおむね第1表に示す仮名で書き表すことができる。一方,国語化の程度がそれほど高くない語,ある程度外国語に近く書き表す必要のある語―特に地名・人名の場合―は,第2表に示す仮名を用いて書き表すことができる。
5と6(省略)留意事項その2(細則的な事項)
(以下省略)」
以下は、上の内閣告示のもとになった「国語審議会答申「外来語の表記」前文」(Web版の後半部分から適宜省略し、文化庁の本と照合したものです)(文化庁 平成13 p197-201)
「国語審議会答申「外来語の表記」前文
〔はじめに〕〔『外来語の表記』の作成の経緯〕(ともに省略)
〔「外来語の表記」についての考え方〕
1 外来語について
外国語から国語に取り入れた語を外来語と言う。漢語の多くは古く中国語から取り入れたものであるが,慣用として外来語の中には含めない。(後略)
外来語は,元の外国語から国語に取り入れられるとき,国語の構造に合わせて,発音や語形,意味用法に変化が生じ,国語化するのが普通である。この国語化の程度によって,外来語をおよそ次のように分けることができる。
(1)国語に取り入れた時代が古く,国語に融合しきっていて,外国語に由来する感じが余り残っていないもの。例えば,「たばこ,煙草」「てんぷら,天麩羅」「じゅばん,襦袢」など。この類は,平仮名や漢字で書かれることも多く,語形についても,書き表し方についても,十分に国語化している。
(2)既に国語として熟しているが,なお外国語に由来するという感じが残っているもの。例えば,「ラジオ」「ナイフ」「スタート」など。この類は,語形のゆれが比較的少なく,比較的よく国語化した語形に基づいて,片仮名で書き表す。
(3)外国語の感じが多分に残っているもの。例えば,「ジレンマ」「フィクション」「工卜ランゼ」など。この類は,語形にゆれがあるものが多く見られる。外国語の原形に対する顧慮から語形を正そうとする力が働きやすく,「ジレンマ」に対して「ディレンマ」,「エトランゼ」に対して「エ卜ランジェ」のようなゆれが生じる。現代の和語や漢語にない音が用いられることもある。
一方,国語の文章や談話の中に外国語の語句がそのまま取り入れられ使用されることもある。このようなものは,外国語と呼んで,外来語とは区別すべきものであり,また,今回取り上げる直接の対象には含めないでよいと考えた。ただし,この種の外国語と,上記(3)の類の外来語との境界は,必ずしも判然としたものではない。
なお,「ニューヨーク」「ローマ」などの地名や「コロンブス」「ゲーテ」などの人名は,固有名詞という点で一般の外来語と区別されるものであるが,その国語への取り入れ方については一般の外来語と共通する面もあるので,今回の「外来語の表記」の審議においては,このような地名・人名も対象に含めることとした。一方,中国・韓国等の地名・人名は,我が国の文章の中で漢字で書かれることが長い習慣であった。それぞれの国の原音に基づく片仮名表記も行われているが,この問題は,今後の課題とし,今回の審議においては直接の対象とはしなかった。(ただし,今回示すものは「シャンハイ」「ソウル」等の表記には及ぼし得るものである。)また,PTA,CM,kgなど,国語の中で用いられるアルファベット表記については,問題の外に置くこととした。2 外来語を片仮名で書く習慣について
現代の外来語は片仮名で書き表すのが一般的であるが,外来語表記の歴史を見ると,この傾向はそれほど古いものではない。欧米系の外来語が流入し始めた室町末期から江戸初期の国語の文献では,外国語や外来語の表記は,漢字であったり,平仮名であったり,時には片仮名であったりして,一定していなかった。外来語を漢字で書くことは明治以後も続き,語によっては戦後まで残った。
漢字平仮名交じり文の中に外国語・外来語を片仮名で書くことを組織的に行った例は新井白石の著述(「西洋紀聞」―18世紀初め)に見られる。蘭学の文献ではこれを受け継ぎ,明治期の外来語急増に伴って,外来語を片仮名で書く習慣が確立した。(国定読本においては,明治43年から使用した第2期国定読本以後,片仮名書きが大勢となった。)その後,大正から昭和にかけて,新しい外来語が増加し,戦後の外来語急増期に外来語の片仮名表記が決定的となった。3 外来語の音と仮名表記
国語の音は,「ア」「イ」「ウ」「工」「オ」「キャ」「キュ」「キョ」「ジャ」「ジュ」「ジョ」などの仮名に対応する音を基本単位とする。その種類は,現代のいわゆる和語と漢語については,直音,拗音合わせて100,これに撥音,促音,長音が加わる。
外国語が外来語として国語化するについても,基本的にはこれらの音が用いられているが,さらに,外国語の原音に応じて,現代の和語や漢語にはない音が外来音として国語の中に取り入れられ,それに当たる特別の仮名表記が工夫されてきた。例えば,「フィルム」の「フィ」,「メロディー」の「ディ」のようなものである。また,長音については,和語や漢語の場合と異なり,長音符号「ー」を用いることがほぼ定着している。
このような,外来語の仮名表記については,従来,各方面で論議され,いろいろな取決めが立案され実施されてきた。しかし,それらは必ずしも一致したものではなく,また,それらの取決めに合わない書き方も行われている。そこで,今回,改めて現代にふさわしいその在り方を考えたものである。
「外来語の表記」を検討するに当たっては,仮名を音との対応において用いるという考え方に立つとともに,慣用を尊重することを基本的な方針とした。そして,どのようなものが外来音として国語の中に取り入れられているかを実例に即して検討した結果,在来の国語の音のほかに,(1)言い分け聞き分けの上で余り無理がなく,外来音として国語の中に入っていると考えられるものに対応する仮名,(2)言い分け聞き分けの上では十分安定していないが,外来音としてある程度国語の中に入っていると考えられるものに対応する仮名を取り上げることにした。
現実には,様々な状況に応じて,これら以外の音を仮名で書き表すことが必要になる場合もあるが,それについては取決めを行わず,自由とすることにした。〔『外来語の表記』の性格,構成及び内容〕
(省略)
1 性格
(1)この『外来語の表記』は,法令,公用文書,新聞,雑誌,放送など,一般の社会生活において,現代の国語を書き表すための「外来語の表記」のよりどころを示すものである。
(2)と(3)(省略)以下、2の構成と3の内容(省略)
〔その他〕(省略)」
引用書
1.「4 かなづかいQ&A」『最新版 ことばのしるべー国語表記法のすべてー』
(株)がくと企画 片桐大自(編) 学校図書(発行) 平成2年 240頁 ¥800
2.文化庁(文化国語課)編 『公用文の書き表し方の基準(資料集)(増補二版)』 文化庁 386頁 平成13年 ¥1600