(3)実験用器具機材
 生物研究の代表的な機材である顕微鏡を金科玉条のように大切にされておいでの方を軽視する方がおられるが、これは間違いである。顕微鏡を大切にすることは、これはこれで十分に意味のあることであろう。というのは、地球上に存在する生物種の80%は、直径2mm以下のサイズしか持ち合わせていない。これを研究対象にするには、顕微鏡は欠かせぬ道具だからである。良い顕微鏡は、良い研究成果をもたらす、というのは嘘でない。
 バードウオッチングには、望遠鏡や双眼鏡を欠かすわけにはいかない。野鳥の囀りを収集するには、集音器の付いたマイクロフォン付きテープレコーダーが欠かせない。夜行性の野生動物の行動を調べるには、アメリカの兵士が夜間の戦闘の際に使用してる赤外線暗視野装置の付いたビデオカメラが必要となろうか。
 校庭のアリの 行動を調べるには、何も道具は必要ではない。ただ、ひたすらにアリの行動を観察する忍耐力が求められよう。 生き物を研究するには、この忍耐力という大変な精神的道具が不可欠となる。

<練習問題>
次の(1)〜(5)の実験・観察に必要な実験機器類・用具類・薬品類をすべて上げなさい。

(1)バード・ウォッチング
<解答>  バードウォッチングも野外での自然観察の1つである。まず、観察用具として「望遠鏡(プロミナ)」 「双眼鏡」「ルーペ」「鳥類図鑑」、記録用具として「ノート」「鉛筆」「カメラ」「テープレコーダー」、 計測用具としては「温度計」「巻尺」「折尺」「ポケット書状ばかり」、連絡用具しては、 「トランシーバー(今は携帯電話)」「手鏡」「白荷札」「マジック」、救急用具として「三角巾」 「ガーゼ」「包帯」「バンドエイド」「体温計」「解熱剤」「消毒薬」「眼薬」「腹薬」、 そして地図(25,000分の1、3,000分の1)、磁石、手ぬぐい、ゴミ用ポリ袋、行動食、軍手、時計、 ナイフ等が必要。また現在、環境保全の為の「携帯用トイレ」の携行も勧められている。
<以上、(財)「自然保護協会:自然観察学シリーズ」から一部引用>

(2)海の生き物を調べる。
<解答>  磯での観察を考えてみよう。基本的に採集は禁止である。「つばひろの帽子」「ノート」「ボールペン」 「ルーペ」「双眼鏡」「カメラ」「ピンセット」「ビニール袋」「時計」「軍手」「図鑑」「潮見表」 「救急医薬品」。年少者が多い場合は、「ライフジャケット」も必要となろう。海の中では、「マスク (水中メガネのこと)」「シュノーケル」「フィン」「箱メガネ」「水中カメラ」「水中ノート」「鉛筆」が 必要。シャツを着て水に入ること、上着・ズボンの替えを持参すること。

(3)細胞分裂の観察
<解答>
<材料の入手>
 八百屋に行ってタマネギを買ってくる。コップに水を入れて、その上にタマネギを置いておくと、 数日で発根する。
<実験の方法>
発根した小さな白い根端を1cmほどの長さで切り取り、酢酸・アルコール混液で、30分ぐらい固定する。 次いで、固定した根端を0.1規定の塩酸の中にとり、60℃で5分ほど温める。根端を水で良く洗い、 スライドガラス上のせ、先端部の5mm程を切って残す。これに、「酢酸オルセイン」という染色液を 1滴落とし、その上にカバーガラスを載せ、濾紙をかぶせて、親指の腹でその上から押しつぶす。まず、 低倍率で検鏡し、分裂像が見えたら高倍率にする。
<観察結果の記録>
2〜4H位の硬い鉛筆で、ケント紙にスケッチする。顕微鏡写真撮影装置があれば写真による記録も可能であろう。

(4)ミトコンドリアのはたらきを調べる。
<解答>
1.細胞内のミトコンドリアを検出する。
ミトコンドリアの生体染色には、「ヤヌスグリーンB」という試薬がよく用いられる。「ヤヌスグリーンB」 で生体染色して検鏡すると、緑色に染まったミトコンドリアが観察出来る。
2.細胞内のミトコンドリアのはたらきを調べる。
細胞内の酸素呼吸の場がミトコンドリアである。すなわち、ミトコンドリア内の酸化還元反応を、 うまく検出する方法があればよい。無色のTTC試薬(2・3・5 トリフェニル・テトラゾリウム・クロライ ドの略)が還元されると、深赤色のTPFに変化する反応を利用する方法が高校実験でも取り入れられて いる。
3.位相差顕微鏡を用いて、生きた細胞を観察すると、自発的に動くミトコンドリアを観察出来る。 細胞内共生の証拠であろう。

(5)無重力状態でのメダカの行動を調べる。
<解答> 『メダカに、どうやって宇宙服を着せようか?』などと現(うつつ)を抜かしていないで、実際に、 スペースシャトルで実現した研究なのであるから、現実の問題として取り組んで欲しいものである。 実際に、宇宙空間で宇宙メダカを研究された東京大学の井尻憲一先生や女性宇宙飛行士の向井千秋 さんにお聞きするのが、一番手っ取り早やそうだ。
【宇宙メダカホームページ】
にアクセスして、ここからメールで、井尻先生にお訊ねするのも一法であろう。

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