(3)動物の生殖細胞(ニワトリの卵のつくり)
「タマゴが先か、ニワトリが先か」という議論があるが、これは、1個の卵細胞から、複雑なニワ
トリの個体へ育っていく過程が、原始的な単細胞の生物から、複雑な構造を持つ高等動物までの長い進
化の歴史を再演していると考えると、時間的に卵の方が先にあったと答えるのが良さそうである。
次に、1個のタマゴからどうして、ニワトリが出来るのだろうか、という議論になるのだが、かつて、
有精卵を頂きによく伺った、東京都畜産試験場(現在の
東京都農林総合研究センター青梅庁舎)の研究者と「ニワトリの卵の黄身(卵細胞)を、アヒルの卵
の黄身と入れ換えて、孵化させたらどうなるだろうか?」という問題について、議論を戦わせたことが
ある。今の生物学の解釈では、絶対に起こりえないのであろうが、アヒルの形質を持ったニワトリが生
まれてこないだろうか、研究に値する疑問であろう。
昔の大学入試問題には、「ニワトリのタマゴの断面を図解せよ。」という、今考えると、極めて大雑
把な問題が、良くあったものである。ゆで卵を長軸面で輪切りにしてスケッチする生物実験を実践され
ておられる先生が居られたら、ぜひご紹介頂きたい。これでは、まるで家庭科の調理実習だと、お考え
の先生も居られるかも知れないが、食酢の中に、ニワトリの卵を入れておくと、卵殻が溶けて、卵膜
に包まれたぶよぶよした生卵が得られる。これは、浸透圧の実験に使えるので、試みられると良いであ
ろう。
かつて、某・都立高校では、生物室の標本戸棚で、ニワトリを飼っていたことがある。朝、登校して
きた生物部員が、戸棚を開けると、2羽のニワトリが飛び出して、校庭で一日中過ごし、夕方になると、
自ら生物室の戸棚に戻って来る。生物部員が、戸棚のガラス戸を閉めて帰るのが日課であった。これは、
ニワトリの卵の発生実験をすると、必然的にヒヨコが誕生するという、厳粛な事実に直面した結果である。
ヒヨコが育てば、やがてはニワトリになる。この学校では、始末に困って、長い間飼い続けてきたのであ
ろうか。
【リンク】
たまご博物館
発生の過程<NHK放送教材>
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