(5)DNAの抽出
メンデルがエンドウを使って
「遺伝の法則」を発見したのを契機にして、遺伝学 Genetics が勃興した。そのため、メンデルは遺伝
学の創始者と呼ばれる。そして、
モーガンが
キイロショウジョウバエを使い、染色体上の遺伝子の存在場所を示す染色体地図を作成
した。ここまでの一連の学説を、メンデル-モルガニズムと言い、古典遺伝学 Classic Genetics の範疇
に入る。
新しい遺伝学は、DNAの発見に始まる。
ワトソンとクリックによるDNAの分子モデル
の解明から、今日のヒューマン・ゲノム・プロジェクトに到
るまでの Central Dogma である DNA 生物学(分子生物学)を現代遺伝学 Modern Genetics と言う。
高校生物の授業で教える、メンデルの遺伝の法則に従う、一遺伝子雑種・二遺伝子雑種は、中学の数学の二
次式の展開そのものであるから、これらの古典遺伝学の概要を中学3年で学ぶようにして、現代遺伝学(DNA
生物学・分子生物学)を高校で学習するようにするのも、新しいカリキュラムを作る際に、十分、検討し得る
ものと考えられるのであるが、如何なものだろうか。
すなわち、F1の自家受精で、
・一遺伝子雑種:
(A + a)2 = A2 + 2Aa + a2 = AA + Aa + Aa + aa
その結果、F2の表現型の分離比は、(A) : (a) = 3 : 1
・二遺伝子雑種:
{(A + a)(B + b)}2 = (AB + Ab + aB + ab)2
=AABB + 2AABb + AAbb + 2AaBB + 4AaBb + 2Aabb + aaBB + 2aaBb + aabb
=9A_B_ + 3A_bb + 3aaB_ + 1aabb
その結果、F2の表現型の分離比は、(AB) : (Ab) : (aB) : (ab) = 9 : 3 : 3 : 1
となり、中学生でも計算出来る、簡単な演算が成立するからである。
最近、DNAの簡単な抽出法が、埼玉県立川越女子高校の
森田保久先生をはじめとする多くの先生方により工夫されて来ている。教師の立場からは、遺伝子の本体
であるDNAを取り出すことに意義を感じるのであるが、意外なことに、生徒の方は、DNAの実物を見せられても
「DNAって、こんなものか」程度の反応しか示さず、教師の方が拍子抜けさせられてしまうことが多い。
ハサミ・ひご・紙・のりなどを使って「DNA分子模型」
を作らせると、まるで小学校時代の工作の時間でもあるかの様に、嬉々として作業に打ち込み、終わってから、
「今日の生物は楽しかった。」と言う。手作りしたDNA分子模型を「記念に、自宅に持ち帰って、本棚にでも
飾っておきなさい。」と言うと、喜んで家に持って帰る。卒業後、高校時代の良い思い出になるのかも知れな
い。
【リンク】
国立遺伝学研究所 l ふやまのぺーじ
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