(1)眼球の解剖
 現職時代、ウシの眼球は出 入りの理科教材の業者にお願いすれば、簡単に入手出来たが、生物実験でウシの眼球の解剖は取り 上げ難かった。その理由は、生物実験の時間に、多くの生徒がウシの眼球を目(ま)の当(あ)たりす ると解剖を躊躇するからである。生徒の中には、「ウシの眼が僕を睨んでいる。」と言ってそっぽ を向き、それっきり何もしない男子がいたり、女生徒の多くは、ただキャーキャー騒ぐばかりで、 手を出そうともしない。だから、3学期の代表的な生物実験ではあったが、生徒には決して好評な 実験ではなかったのである。

 もう20年も昔の話だが、日本産のウシに 狂牛病(BSE)が発生したため、ウシの眼球が入手出来なくなった。そのため、ウシの眼球を使う実 験は実施不可能となってしまったのである。しかしながら、 ブタの眼球は入手可能である。 狂牛病(BSE)の他の動物への感染については正しい知識を必要とする。ブタの眼球の解剖では プリオン感染 の心配はない。また最近は、海産魚の キンメダイの眼球を解剖しようとする動きがあり、実践的に キンメダイの眼球を生物実験に使っている例がある。

『 生物実習:眼球の解剖 』

 脳と視神経を通してつながっている左右の眼球は、光受容体としてほ乳類はきわめて優れた構造を 持っている。ウシ(文部科学省通達で現在は使えないので、現在はブタを使用。)の眼球は、大きいた め解剖しやすく眼球の構造を知るためには優れた材料である。今回は、ウシではなくブタの眼球を解 剖して、その構造と機能について考えてみよう。
【実験の目的】ウシまたはブタの眼球を解剖し,眼球のしくみとはたらきを知る。
【材料・用具】ウシまたはブタの眼球(新しいもの),解剖皿,解剖バサミ,ピンセット,ものさし, 洗面器,懐中電灯、実験用手袋。

方法
1.準備
1)解剖器(ハサミ,ピンセット)・解剖皿・解剖マット配布・実験用手袋
2)解剖用具の説明,あと片付けの説明
3)ものさし・懐中電灯・洗面器配布
4)カメラ眼の説明
5)眼球の構造(ヒトの右眼の水平断面図)を確認,( )内に用語記入
6)ブタの眼球を配布
☆普通は生徒は大騒ぎするが,気にせず淡々と進める。しばらくすると生徒も慣れてくる。

2.眼底の毛細血管
 ウシの眼球では洗面器に水を入れて,その中に眼球を沈めて,ひとみから懐中電灯を当てると, 眼底の毛細血管が見えてくる。懐中電灯のパワーが弱かったり,眼球が古いとよく見えない。

3.解剖(前半)の説明(人数が多いときは2回に分けて説明)
1)まぶた・瞬膜を指摘。瞬膜の位置から眼球の左右を判定;瞬膜は眼の内側から眼をおおっていく。 瞬膜は鳥の目ではよく発達している。
2)「角膜」「ひとみ」「結膜」「視神経束」を観察・記録
3)眼球周囲の筋肉を除く;動眼筋や視神経束を観察しながら行う。
瞬膜のところを手がかりに切り始めよう。視神経束を切断しないこと。

4.解剖実習
(生徒はけっこう時間がかかる.ブタの目は小さいので筋肉を除くのも早い)

5.筋肉が除けて,眼球だけになったら,眼球のサイズを測定させる。

6.解剖(後半)の説明。
1)眼球の横断。ハサミがすべって手を傷つけないように注意する。ハサミを少し立てぎみにして 切れ目を入れる。半割にする。
☆ガラス体やレンズの透明さに生徒の歓声が上がる。
2)虹彩・毛様体・レンズ・ガラス体・網膜・盲斑を確認。視神経の横断面・縦断面を観察する。
レンズは煮ると白くなる。平面上の方が前面。凸レンズなので,新聞紙などの文字が大きく見える。 (生徒は感動する。)(持ち帰る場合はポリ袋にそのまま入れる。冷蔵庫で保存すれば数日そのまま。) レンズをスライドガラスに載せた上で新聞紙の上に置くとレンズがしなびないですむ。ウシの眼球では 脈絡膜に虹色に光る反射層がある。脈絡膜の最下層(強膜に近い方)には黒い色素層がある。
※組織レベルでは網膜の視細胞(かん体・錐体)層の外側には色素細胞層がある。この色素細胞層は単 層立方上皮で、脈絡膜と密接につながっている。
 黄点はウシやブタの眼球にはない。(ヒトでは例外的に黄色であるため,黄点とよばれ,ここには 円錐細胞が集中する。)

7.解剖実習

8.レンズの形を描くことと,サイズを測定する。角膜・強膜の厚さを測定(角膜は二つ折にして測定)。

9.片付け。
………以上、池田博明先生(神奈川県立西湘高校)のサイトを参照………

【リンク】
聖望学園高等学校科学部:「ブタの眼球の解剖」

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