(6)血球の観察
実践生物教育研究メーリングリスト(JissenML)における発言(投稿文)の中から、「血球の観察実験」に関する討論の
代表的なご意見を、次ぎに紹介させて頂きます。
K(佐賀県) wrote:[jissen:07519] Re:高校でヒト血液を扱うことについて
私も以前は血液の実験を行っていました。それも,今考えるとかなり危険な方法で
(感染症についての議論がなかった頃です)。その後,感染症の問題を知り,かなり
慎重に実験方法を工夫しながら数年は続けましたが,十数年前からは完全に止めてい
ます。それは,やはり万が一の事故を心配したためです。安全指導が徹底しているプロの世
界である医療現場でも,事故は起こります。現に私の知り合いである看護婦さんが,
患者さんの採血の際に間違って注射針を自分の腕に刺してしまい,肝炎に感染してし
まいました。 学校で,40名の生徒が同時に実験することを考えると,どんなに細
かな注意をし複数の教員で実験指導をしても,(必ずと言っていいほどいい加減にや
る生徒がいることを考えると)事故が起こる確率は医療現場より高いのではないで
しょうか。その場合に,「十分注意して配慮して実験を行った」ということがどこまで通用する
のか疑問です。実験をしていなければ事故は起こらなかったからです。もちろん,一
般的には「事故が怖くて実験をしない」という姿勢は,理科教育の中では非難される
べき事ですが,この実験に関しては事故が起こったときに死につながる危険性がある
事が根本的に違うと思います。というわけで,実験を行ったときの教育効果は認めますが,生命の危険を冒してまで
やる必要がある実験ではないと考えています。
K(三重県) wrote:[jissen:07493] 血液に関する議論
血液に関する実験は、当方が高校生の時代にけっこう一般的に行われてきておりまし
た。血球観察、抗原抗体反応(血液型判定の学習)などがそれです。これらの実験が
問題になりだしたのが、エイズをはじめとする感染症が問題になってきたときです。
また、抗原抗体反応(ABO式血液型)では、親子関係が分かってしまいプライバシーの
面からも問題になった事があります。ただ、抗原抗体反応を「血液型の判定」と誤って
理解してしまう生徒が多いことに問題あるようです。血液型の判定は医療行為に該当す
ると思いますし、専門の医師が判定してもミスが多く輸血でなくなっている現実から、
素人に判定できるといったものではありません。判定は医療機関でやってもらうことで
す。現実的には多くの生徒が自分の血液型は知っておりますし、知っておくべきでもあ
りますので、どのようにして調べられるかの方法は体験しても良いのではないかと思っ
ております。さて、エイズなどの感染症が流行した当時に県教育委員会から「ヒトの血
液を扱う実験は極力避けるように」とのお達しがあったと思います。その後ウイルス性
肝炎などが現実化し、エイズよりも現実の問題として教育現場ではヒトの血液をあつか
うような危険な実験を避けた方が良いのではないかという意見が多くなってきておりま
した。逆に危険だから避けるのではなく、危なさを指導しなくてはいけないのではと言
う意見もありました。万が一この実験が原因で感染症に感染したらどうすると言ったこ
とも話し合われました。訴訟もあり得るであろうが、この実験が原因と判断する難しい
けれど、感染を予防する対策だけはとっておく必要があるのではないか。そのためにも
感染が考えられるメスなどの使用は充分な注意が必要であるし、訴訟にも耐えるだけの
実験上の配慮が必要であろうと言うことでした。実験上の配慮は以下のような物でした。
@実験は強制しないようにして、希望者について行う。気分が悪くなった生徒や顔色
の悪くなった生徒がいないか特に注意する。
A採血用のメスは滅菌済みの物で混用を避けるために教員や実習助手を含めた増員し
た体制で実験を行う。洗い物を含め自分の血液以外には絶対にさわらせない。
B採血針は終了後回収し、滅菌後処分する。一応医療廃棄物になるがオートクレーブ
以上で滅菌すれば問題は無いのではないか。
血液の実験が単に血液の組成を見るだけの実験であるのならば、他の生き物の血液を
使えばいいのではないかと言う考えからニワトリ・ウシ・ラクダなどの血液が入手して
実験を行いました。血液組成や酸素による酸化還元の反応など見ることはできるが、自
分の血ほどインパクトがない。
いずれにしても何を目的に実験を行うかが大切でその目的にかなう実験材料としてヒト
の血液を選ぶか、他の動物の血液を選ぶか考えればいいのではないか・・・。
断片的ではありますが、当時血液の実験に関して話し合われたことの一部です。
【リンク】
血液のお話
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