(4)シシャモの卵の数を数える。
(4)シシャモの体長と卵数の関係を調べる。
一般に、野外では広い区域に生息する動物のすべてを捕獲できない場合が多い。この場合に、個体数はどのように推定するのであろうか。
Step1.標識再捕法による碁石の数の測定
動いたり見つけにくい動物では、すべての個体の捕獲は難しい。そこで、次のような方法で個体数を推定する。まず、ある数の個体をとらえ、標識をつけて放す。そして、数日後、
再び同じ地域で同じ種の個体をとらえ、標識がついている個体の割合を調べ、全個体数を計算により推定する。まず、ある数の個体をとらえ、標識がついている個体の割合を調べ、
個体群の全個体数を計算により推定する。この方法を、「標識再捕法」という。碁石(ごいし)を使って、標識再捕法を試してみよう。かっこ内は、魚類の個体数を測定する
さいの調査方法の例を示している。
【仮説】見えない袋に入ったすべての碁石の数は、標識再捕法により推定できる。
〔準備〕白色の碁石100個、布の袋(中味が見えないもの)、油性のペン
〔方法〕@白色の碁石100個を中身の見えない袋に入れ、そこから20個の碁石をとり出して、油性のペンで印をつける。(100個体の魚が生息する池で、魚を20個体捕獲して、
尾びれの一部を切りとるなどして標識する。)
A印をつけた碁石を、再び袋に入れ、均等に混じりあうように袋ごとよくふる。(標識した20個体の魚を、池に放す。2、3日、均等に混じり合うのを待つ。)
B袋から40個の碁石をとり出し、印をつけた碁石と印をつけていない碁石に分け、それぞれ数を数える。(再び、池の魚を40個体捕獲し、標識個体の数を数える。)
C以下の式から、袋の中のすべての碁石の数を計算によって推定する。(池に生息する魚の個体数を下の式から推定する。)
再びとり出された印をつけた碁石の数/再びとり出された碁石の総数
=印をつけたすべての碁石の数/袋の中のすべての碁石の数
再捕獲された標識個体数/再捕獲された総個体数=標識した全個体数/池に生息する総個体数
〔結果〕表a 40個の碁石を再びとりだした場合の結果例
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班 再びとり出された印を 推定された袋の中の
つけた碁石の数[個] すべての碁石の数[数]
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1 9 89
2 10 80
3 8 100
4 9 89
5 7 114
6 6 133
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平均 101
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【考察】このような方法をくり返すと、推定される袋の中のすべての碁石の
数は100に近くなり、仮説が正しいことが検証された。
〔発展〕同じ方法で、とり出す碁石の数を少なくしたときや、多くしたとき、推定される
袋の中の全碁石の数はどのようになるか。
Step2.シシャモの卵数の測定
さて、表bからわかるように、魚類は種を維持するためにたくさんの卵のうむものが多い。では、1匹の雌
がうむ卵数は、雌の体長が大きいほど多いだろうか。食卓にのぼる機会の多いシシャモ(キュウリウオ科)を例に
調べてみよう。
表b 魚類の産卵数
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魚種 卵の状態 1回の産卵数[個]
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マンボウ 大洋を浮遊 2億〜3億
ブリ 大洋を浮遊 50万〜160万
マグロ 大洋を浮遊 100万以上
マサバ 沿岸海表を浮遊 36万〜45万
マイワシ 沿岸海表を浮遊 25,400〜100,000
サケ 川の小石の間に産卵 2,000〜3,500
サンマ 流れ藻についている 2,000〜3,000
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【仮説】シシャモの体長が大きいほど卵数も多くなる。
卵数はSTEP@の標識再捕法を用いて推定できる。
[準備]
シシャモ、中型ペトリ皿、上皿てんびん、ものさし、カミソリ、ピンセット、試験管、酢酸オリセイン溶液、ペトリ皿、ピペット
[方法]
@中型のペトリ皿にシシャモをのせ。ものさしで体長を測定する。
A腹腔から卵をすべてペトリ皿にとり出す。腹のふくらみにそってカミソリやピンセットでそぐようにする。腹に残った卵は1つずつていねいにとり出す。
Bとり出した卵をよくふって完全に分離させる。
C分離した卵のうち、各自100粒ずつをピンセットで正確にとり出し、酢酸オルセイン溶液に入った試験管に入れて5分間染色する(班員5人で500粒を染色することになる)。
D染色された卵(標識卵)をよく水で洗い、乾かしてから残りの卵(無標識卵)とよく混合する。
E完全に混合したら、その中から適当量(500粒〜1,000粒)をピペットでペトリ皿にとり、班員で手分けをして標識卵と無標識卵の数を数える。
F計数が終わったら、卵を、卵を分離させたもとの液中にもどし混合してから、再度適当量をペトリ皿にとり出し、同様に計測する。この操作を3回くり返し、結果を表に記録する。
【表】結果の記入例
Gシシャモの全卵数は次の式で推定できる。
全卵数=標識した全卵数(@)×〔標識卵数(A)+無標識卵(B)〕/標識卵(A)
したがって、表の結果例の場合は、以下のような推定値になる。
500×(25.7+831.4)/25.7≒16,700
H各班の結果を、表に合計してまとめる。
I各班の卵数の推定値と、各班が実験に用いたシシャモの体長(シシャモの身体の先端から尾びれの付け根まで)をもとに、縦軸に卵数を、横軸に
体長をとり、グラフに描く。
【考察】結果から、シシャモの体長が大きいほど卵数が多いことがわかった。したがって、仮説は検証された。
〔発展〕ある海域で、シシャモの個体数が一定になるためには、全卵数のうち何%が親になればよいか、考えてみよう。ただし、雌と雄の比は1:1とする。
【リンク】
シシャモ
<東京書籍「新編生物IB」より引用>
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