夢無限
2001年2月25日に、騎乗機会1万2297回、1440勝(勝率0.117)、2着1364回(連対率0.228)、重賞63勝、GT13勝、の成績を残し、騎手的場均が引退した。武豊等の若手が派手な活躍を見せているのでマスコミ的には大きく扱われなかった(と記憶している)が、すばらしい成績だ。
本書は的場氏自身が幼少時代から現在までを伝記的にまとめているものだ。幼少の頃から騎手を目指していく過程や、騎手になってから大久保調教師・郷原騎手に育ててもらった思い出やエピソード。もちろんお手馬であったライスシャワー、グラスワンダー、エルコンドルパサー達のことも生き生きと描かれている。
その中で、独特な天才騎手論はおもしろい。天才騎手の共通した特徴は「競馬が読めず、馬が別の馬のように動く」であり、的場氏いわく天才騎手は福永洋一(福永騎手のお父さん)とデットーリの二人のみ。デットーリの域には足りないがペリエにも天才を感じられるときがあるとのこと。マスコミが天才、天才とはやし立てる武豊は的場氏の天才騎手には入らないらしい。
武豊に対してはグラスワンダーでスペシャルウィークに勝った宝塚記念の際に「彼はスペシャルウィークの長所・短所を100%理解できていないと感じた」と怒られるかもしれないがという但し書き付きでコメントしている。
馬を気長に育てることと、勝つことに貪欲であること、という両極端の意識を常に強く持っていた玄人好みの騎手であることが良く分かった。
2002年3月調教師としてデビューしてから8ヶ月。現在の勝ち数は3勝。結果が求められる世界だけにこの数字はつらい数字だろう。しかしこの勝ち数が多いのか少ないのかを判断するにはまだ早い。一から始まる現2歳世代をゆっくりと育て上げ、あせらずにリーディングの階段を上がっていって欲しい。
自分自身の競馬人生、競馬感を丁寧に伝えようとしているのに好感を持ったし、全体的にテンポ良く楽しく読めた。お勧め度は星5つだ。