運命に噛みついた馬(サンデーサイレンス物語)
2002年8月19日に蹄葉炎の為、心不全でこの世を去ったサンデーサイレンス。このニュースを聞いた時、ものすごい衝撃に襲われた。闘病生活を続けていたことは知っていたがまさか死んでしまうとは。この過去例のない活躍をしていた種牡馬に「死」という言葉があまりにも合わなかった気がしたのである。
日本での活躍は今更書くでもないが、種牡馬としてわずか8世代の産駒で重賞150勝(2002年9月時点)を達成。自身は死んでも3世代がデビューを残しており、現役の世代と併せれば勝ち数はまだまだ伸びていくだろう。まさしくスーパーサイアーだ。
本書は、このサンデーサイレンスの半生をドラマ仕立てで読みやすく綴った本である。著者のレイ・ポーリックは週間ギャロップでもおなじみのザ・ブラッドホースの編集長。 この本を読むまでの私の一番の疑問は、このスーパーホースを吉田善哉氏ははどうして日本につれてくることが出来たのか?それは、生産者でオーナーの一人でもあったでもあったアーサー・ハンコック氏がなぜサンデーサイレンスを手放したのか?という疑問につながる。サンデー追悼の特集記事などで、アーサー・ハンコック氏のサンデーサイレンスに対する愛情が込もったたコメントを目にするたびに疑問は強くなっていた。
しかし本書によって氷解した。間違いなくアーサー・ハンコック氏にとってサンデーサイレンスは「神からの贈り物」だったのだ。手放さざるを得ない状況であったこともよく理解できたし、そして結果それがベストの選択であったことも。
他にも今まで知り得なかったサンデーサイレンスの関係者が細やかに描かれている。調教師のチャーリー・ウィッティンガム氏の厳格で綿密な人物像は、この人が調教師でなければサンデーサイレンスの活躍はなかったと思えるものだし、攻馬手のパム・メーブスとサンデーサイレンスの調教時の思い出話はとても微笑ましいものだ。
この歴史的な種牡馬サンデーサイレンスについて心地よく理解を深めることができた。お勧め度は星5つだ。
書評者: DONRYU
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