◆ 鯉の由来(2) |
● 鯉変じて竜となる
鯉のことを、「六六魚(りくりくぎょ)」と呼ぶことがありますが、これは側線を形成する鱗の数が、 6の平方である36枚前後あることに由来しています。ところで、「六」は陰の数であるといわれ、平方した36という数字は、易占(六十四卦)によれば、「坤の卦」を持ち、万物を成長させるという意味を有しています。 一方、竜は、陽の極数である「九」という数字を平方した81枚の鱗を持つといわれ、易占によれば「乾の卦」があり、最高の徳を象徴する聖獣であると考えられています。 易学の原理に従えば、「坤」の卦から陽の卦が次第に増加して、最後に「乾」の卦になるということをあらわす事になります。 「鯉変じて竜となる」という言葉がありますが、これは、易学に則った意味を持っているといえるようです。
● 鯉の語源説
コイのことを「こい」(古語では「こひ」)と呼ぶようになったのには、どうしてなのでしょうか。先に記した「景行天皇の鯉説話」もその一つですが、それ以外にも諸説があって正確なところはわかりませんが、その中のいくつかを紹介しておきたいと思います。
* 「ヒ」は魚介の名に多い音だが、その意味は不詳。 〔東雅〕より @ 「小平」の訓読みの「コヒラ」からの転とし、姿形を鯛と比較してこの名が付いたとする説。 〔和語私憶鈔〕より A 口元に小さなヒゲ(小髭・こひげ)があることから、「ゲ」が略されてコイとする説。 〔日本語原学〕より B エサを欲する時の様子から、乞(コヒ)から名付けられたとする説。 〔名言通〕より C 味がよいために、人が「恋い慕うもの」であるからとする説。 〔和字正濫鈔〕より D 雌雄相恋して離れないものなので、恋から出た名であるとする説。 〔和訓栞、及び 本朝辞源〕より E 鱗の様子が美しいことから、甲美(コミ)の意味から派生したとする説。 〔言元梯〕より F 身が肥えているところから、肥(コエ)の意味から派生したとする説。 〔日本釈名〕より G 味が他の魚にまさっていることから、越(コエ)の意味から派生したとする説。 〔和句解・日本釈名・紫門和語類集〕より H 滋味の意味である「コアチ」、または「コトハリ」の反意語から生じたとする説。 〔名語記〕より I 淡水魚の意味の「クヒノウヲ」を省略したものであるとする説。 〔日本古語大辞典〕より
また、コイを漢字で書くと「鯉」と書きますが、これについては、次のような説があります。
@ 鯉の身に36枚の鱗があることから、36町は1里に相当するので「里」を用いたとする説。 〔名語記〕より
余談ですが、後漢の許愼が著した中国最古の字書である「説文(せつもん)」には、
「鯉は、 鱣なり。魚に从ひ里の聲。」「鱣は、鯉なり。魚に从ひ亶の聲。」
(「鯉とは、 鱣のことである。魚という字に里の音をあてている。」 「 鱣とは、鯉のことである。魚という字に亶の音をあてている」)
とありますので、鯉と 鱣とは同じ意味です。ちなみに「亶」とは、ぐるぐる回ることを意味していますので、池の中でぐるぐると泳ぎ回っている鯉が連想されるのではないでしょうか。 |
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