八百羅漢 | 原題『八百羅漢』 |
お勧め度:★★★★(4点) | 1986年公開 |
中国/香港合作映画。一時、合作というのが流行ったようですな。 とある少林寺派のお寺。非常に戒律が厳しくカンフーの修行にかまけ(それで人助けなどをしたのだが)、禅の修業を怠ったという理由で、罰を受けていた修行僧が、その罰の帰りに、またまた人助けをして、カンフーの技を使ってしまう。ところが、相手は権力を恣にする金(だったか?)の将軍以下多数。レジスタンスの女リーダーと共にそいつ等をぶちのめしたのは良かったが、後日将軍は、お寺にお礼参り。主人公は更なる罰を受けそうになるが、最終的には件の女リーダーと共に悪い奴等をぶっとばす、というストーリー。 とにかく、雰囲気の暗い映画。主役は、常に破戒(カンフーの修行・実力行使)をするため、お寺の偉い人から睨まれているので、ほとんどニコリともしません。が、香港の役者さんの割には、がんばって北派少林寺っぽく動いています。先にあげた『嵩山少林寺』レベルである。 足を斬ったり、結構血糊も多く、残酷描写の多めな内容ではあるが、その分真面目に作られているので、見ごたえはある。嵩山を舞台にしなかった、というのが良かったのでは(笑)。 この寺の、戒律に厳しい和尚さん役をやっているのが、何福生という雲南省の著名な内家拳の使い手、というのが、使い方を間違っている気がして、笑える。普通、武術家の一人として使わないかい? H190511 |
ガッツフィスト魔宮拳 | 原題『一胆二力三功夫』 |
お勧め度:★★★★(4点) | 1978年公開 |
劉家輝(リュー=チャーフィ)主演の、コミカルアクションカンフー物(なんだそりゃ―笑)。 何かにつけて上手くいかない小悪党の二人組が、お宝を探している、という謎の男と道連れになり、いつの間にか大いなる冒険に巻き込まれる、というお話。 香港映画には良くあるパターンながら、謎の男の存在を引っ張るだけ引っ張るので、その部分で期待感を膨らませるという方法が使える(笑)。実は、リュー=チャーフィは、ラマ派の僧侶に奪われた少林寺の袈裟を奪い返す為の旅に出ていた、と言う事で、件の敵の本拠地で、丁々発止の大立ち回り。 とりあえず、少林寺武僧が暴れ回るおバカ映画ではあるが、流石は劉兄弟、そして劉家輝である。がっつり、香港らしいカンフーアクションを見せてくれる。特に、ラストの「南派少林寺VSラマ派拳法」は、当時流行のアスレチック的な殺陣ながら、結構楽しめるものである。 それよりも問題なのは、『ラマ派拳法』が実在している、と言う事だ。まさかあるとは思わなかった(笑)。 H19.01.19 |
嵩山少林寺 | 原題『少林俗家弟子』 |
お勧め度:★★★★★(5点) | 1974年公開 |
純血の香港映画である。しかし、実際の少林寺で撮影をしている。まずそこが凄い映画。 武術狂いのバカ息子・チェンが、嫌いな女からのモーレツアタックを逃れるために、少林寺に弟子入りしてやり過ごそう、とする出だし。メイ・リンという本命の彼女がいて、少林寺に入ってからも会いに行ったり、実際には取り立ててやる気も無いのに坊主になるところが、少林拳版『ファンシダンス』といった感じか。 地面に杭を打ち込んで、それをまた引き抜く、といった基礎体力の部分からの訓練を描いており、地味なシーンが結構多い。仇を討つ、などの目的が無い分、案外きっちり描き込んでいたりする。しかも、香港映画の割りに、ちゃんと北派少林拳している。 はじめは軽い気持ちで修行ごっこをしている主役とその仲間達であるが、師匠の厳格な態度や、破門された元弟子の逆恨みによる襲撃、という暴挙などを経て、徐々に真の修行に目覚めていく。 最後は、主人公と破門弟子との一騎打ち。タク脚と太極拳を操る破門弟子に対し、主人公は少林拳と排打功のみで立ち向かう。殺陣の中で、型通り(伝統的)な動きが上手に織り込まれていたりして、かなり玄人好みではある。また、一人も死人が出ない(重症は負う)というのも、珍しいパターンである。 「白馬翻提」という技で、本当に相手に砂を掛けているあたり、けっこうイイ味出している。 主役のファン=タンユーは、香港少林拳の最年少師範(当時)らしい。 李連傑の『少林寺』の8年前の作品と考えると、かなり良い出来だと思う。 H180530 |
黄河大侠 | 原題『黄河大侠』 |
お勧め度:★★★★★(5点) | 1987年公開 |
『少林寺』での敵役を演じた、干承恵が主役の、剣豪映画。中国・香港合作。 群雄割拠の時代に生きる、武術家達の生き様を描いた、シリアスドラマ。自分の村が、豪族の一人に襲われ、妻と娘が殺される。そんな傷心の剣客が、一人の豪族を助ける。そこから、紆余曲折の物語が紡がれる。 お話的に、結構捻りが効いているので、見応えはある。ただ、ちょっと暗いのが欠点か。ある理由から、盲目となってしまう剣士が、友の力を借りて、乱世を生き抜く姿が物語の骨子。 とりあえず、素手での格闘シーンはほとんど無い。全編武器を使ってのアクションにこだわっている。特に、干承恵の剣術は素晴らしい。目を見張るほどの剣の華麗さは、中国武術に少しでも興味があるのなら、一度は観ておかなくては、人生の一部を損するほどのモノである。たとえ演武、約束組み手だと判っていても、その迫力はいささかも損なわれない。見せ方も含めて、とても良質に仕上がっている。 ただ、登場人物がみなおっさんばっかり(笑)。紅一点の豪族の娘も、全体の一部にしか関わらないので、基本的にはむさ苦しい展開が続く。ヤローばっかりでお話が続く(笑)。救いが無いとすれば、まずはそこか。 地味ながら、作り込まれているこの作品、観る価値はある。 H180316 |
武林志 | 原題『武林志』 |
お勧め度:★★★★☆(4.5点) | 1987年公開 |
中国初のカンフー超大作(笑)。(笑)とはしたが、れっきとした功夫もので、香港製ほど派手ではないが、かなりしっかりと作り込まれた作品。 時代は1920年代、西洋各国に蹂躙されていた頃の、中国は天津が舞台。主役は、武芸を見世物にして渡り歩く一家の長・東方旭。役者(?)は、北京武術隊のコーチも務める李俊峰。東方旭は八卦掌の達人で、天津で一大勢力を誇っている何大海(心意六和拳=形意拳)と、最初は揉めながらも、ロシアの最強レスラーを国の威信をかけてやっつける。そんな話。 集団戦では長拳対打っぽい殺陣、レスラーとの試合はちょっとリアルっぽい殺陣。色々な見せ方を模索している感じは、努力の跡がうかがえる。 主役の李俊峰は、もともと長拳の選手(先生)なので、残念ながら、八卦掌はあまり巧くない。むしろ奥さん役の戈春艶(中国八卦掌チャンピオン)の方が、断然巧い。また老師役のじいちゃんの枯れた演舞は、なかなか良い感じである。 中国映画らしく、映画全体の雰囲気が暗いのが難点だが、ワイヤーも飛び道具もないオーソドックスな一品。いっといてもいいんじゃない?ただ問題は、手に入るかどうか、だ(ビデオは絶版)。 |
ドラゴンへの道 | 原題『猛龍過江』 |
お薦め度:★★★★★(5点) | 1972年公開 |
日本で公開されたブルース=リー作品としては、最後のもの(『死亡遊戯』は含まない)である。よくあるアンケートなどで、「ブルース=リー作品の中で一番良いのは?」と訊かれると、大抵の人は「『燃えよドラゴン(以下『燃えドラ』)』が一番」と答えるらしい(それしか知らないからか?)。しかし私は、断然この映画を推す。 全体的に、B=リー主演の映画は、ストイックな堅物カンフーマンなイメージの役が多い。『燃えドラ』でも、ハリウッド的な「ちょっとだけ笑いを取る」演出が入っているくらいか。が、この映画は、ふんだんにおどけた様なシーンが出て来る。またそれが違和感なし。リンダ婦人いわく、「『ドラゴンへの道』でのリーの演技が、一番私生活での彼に近い」そうだ。確かに、ハリウッドでのカメラテストの時でも、会話の端々にジョークを散りばめ、気さくで楽しそうな印象を受ける。 舞台はローマ。地上げ屋に悩む、おじさんの中華料理店で用心棒をするお話。決して多くはない彼の主演映画の中でも、ジークンドーが最も完成度高く映像化されていると思う。『燃えドラ』は、冒頭のサモハン=キン=ポーとのオープンフィンガー試合以外は、アメリカ好みの胡散臭い派手さがあって、余り好きではない(いいところもいっぱいあるが)。 中華料理店の裏庭でのヌンチャク、変なカラテ家(オマエハタンロンカ―笑)との格闘、そしてコロッセオでのチャック=ノリスとの一騎打ち(←特にココ!)。リアルさと、派手さが完璧にマッチしている逸品。ジャッキー=チェンの凄さ、リー=リンチェイの凄さとは異質な「リアルな強さ」が伝わってくる。 熱くなりたければ、観るべき。 そういえば、『帯をギュッとね!』の西久保さんも言っていた。 「ブルース=リーを観て、熱くならないのは男じゃない!」と(笑)。 |
酔拳 | 原題『酔拳怪招』 |
お勧め度:★★★★★(5点) | 1978年公開 |
成龍(ジャッキー=チェン)の名を不動のモノにした三部作(蛇拳・酔拳・笑拳)のうちの一つ。やはりこれが、一番完成度が高いと思う。 J=チェンの動きもいい(吊り無しなのがやはりすごい!)し、師匠・蘇乞児役の袁小田との関係や遣り取りも絶妙。李白の詩を朗読しながら酒を飲むシーンは、なかなかの味わいがある。 また、酔拳習得のための理由や修行が殺伐としていない(仇討ちのためでも、お国のためでもない)ところも、楽しく観ることの出来る理由の一つだろう。 酔拳の動きも、八仙の特徴が良く出ていて、殺陣の組み合わせも、その特徴を良く生かしている。リュウ=チャーフィの『少林酔八拳』のガチガチ酔拳と比べると、その完成度は桁違いである。 まずは観るべし。 |
阿羅漢 | 原題『南北少林』 |
お薦め度:★★★★★(5点) | 1986年公開 |
李連傑の主演3作目。いわゆる「少林寺三部作」のラストを飾る作品。内容的には、この三作は繋がりはない。が、出演者はほぼ同じ。当時の大陸の武術チャンピオン総主演である。 お話は、所謂復讐物。嵩山少林寺(北派)の智北(李連傑)と、甫田少林寺(南派)の青燕(黄秋燕)・智南(胡堅強)が、力をあわせて独裁者・赫策を倒す、という物語。香港系の映画とすれば、ありがちな内容。しかし、そのありがちな内容も、圧倒的なエキストラの数と、出演者の本物の迫力を目の当たりにしたら、むしろ「この迫力を楽しむためには、ストーリーは不必要」と思ってしまうほど。 また、前回は馬賢達(馬家通備拳宗家の二男)だった武術監督も、今回は劉家良。香港映画では知らぬ者のない武術監督にして、洪家拳の使い手(彼の父は、黄飛鴻の孫弟子)。劉は、純粋な武術家であった馬と違い、「リアルな技」と「派手に見せる技」の両方を効果的に使う術を身に付けていた。その結果、『阿羅漢』は、まれに見る娯楽作品に仕上がった。 李連傑の北派少林拳、胡堅強の南派少林拳、干海の蟷螂拳、干承恵の武当剣、これを観るだけでも、この映画を観る価値がある! 中国武術の真の迫力を目の当たりにしたい人は、絶対にいっとくべし! |
少林寺 | 原題『少林寺』 |
お勧め度:★★★★★(5点) | 1982年公開 |
李連傑(ハリウッド名ジェット=リー)の、記念すべき第1回主演作品。この映画は、やはり現役の武術チャンピオンが大量に出演した、と言うところが売りだろう。 この頃は、まだワイヤーワークが確立されていないので、全て生身のアクションだった(一部逆回しもある)。それは、なまじワイヤーを使うより、「本物の迫力」を感じられて、個人的には非常に好きである。 ストーリーは単純、登場人物の演技は(役者じゃないので)イマイチだが、それを差し引いても星5つは堅い。 胤舜的には、李連傑の師匠役の于海の蟷螂拳が、かなりお気に入り。観るべし。 |