ありがとう
お勧め度:★★★★★(5点) 2006年公開
 阪神淡路大震災関係映画。
 還暦を目前にプロテストを受けて、、見事合格した『還暦ルーキー』こと古市忠夫の、プロ合格までの軌跡をつづった映画。もともとは写真屋を営み、消防団とアマチュアゴルフが楽しみだった彼は、震災を機に、心機一転、プロゴルファーの道を歩む。
 この映画は、とにかく冒頭から40分余り続く、震災描写の凄まじさが目を引く。消防団だった古市は、この未曽有の災害の中で、必死に周りの人達の為に奔走するのだが、この震災(直後)当時の描写が、驚くほどにリアルで(実際の揺れを体験した方々から見れば、そうでもないかも知れないが)、震災発生15時間後に神戸入りした私の目から見ても、かなり当時そのままに再現されている。
 とりあえず、開始40分は、タオル無しでは見られない。
 号泣必至!

 震災の痛手も一段落して、今度は災害に強い街づくりに奔走する古市。そんな時、幸運にも無傷で残った愛車のトランクの中にあったゴルフクラブを見て、彼はプロを目指す決心をする。
 400倍の難関を目指す彼の姿に、地域の人達も、そして家族も力づけられる。
 そしてプロテスト最終日、最終ホールで、古市の第1打は、林ぎりぎりに入ってしまう。ここをパーで終わらなければ、合格出来ない。唯一の方法は、キャディーに渡された9番で、木の枝の隙間を抜く事。諦めかけた彼の脳裏に、あの震災の時の光景が蘇る・・・。

 とりあえず、ここでまた号泣ですよ(笑)。もう涙腺が弛んでいるので、がっつり泣けますとも、ハイ。

 泣きたい人、前向きな力を貰いたい人、是非いっときましょう。いやホンマに。
H200301


魍魎の匣
お勧め度:★★★★★★(6点) 2007年公開
 京極夏彦原作の、映画化第二弾。
 来た!来ましたよ!一作目の『 姑獲鳥の夏』はじっそーじ君(故人)の耽美趣味が入りすぎ、少々逸脱気味で今一つの感があったのだが、今回は、そんな不満感を吹き飛ばす会心の出来。
 異常に情報量の多い原作を、原田眞人監督は、大胆にそぎ落とし、骨太でハイテンポなミステリーに仕上げている。
作品の雰囲気的には、「薔薇十字探偵」の活躍するスピンオフ作品に近いのではないか、と思う。
 何を言ってもネタばれになりかねない、緻密な作品。未見の方は、魍魎としたイメージのままでいる方が、観た時の衝撃が大きくて、楽しいでしょう。

 私個人的には、堤真一扮する、京極堂こと中禅寺秋彦が、深秘御筥教教主に対して仕掛ける、憑き物落としの際に魅せる、
「禹歩を踏む」
シーンに★20個を進呈。圧倒的な美しさで、観る者を魅了する。素晴らしい!いっとこう!
H200113


喰いタン
お勧め度:★★★★★★★★★★(10点) 2005年公開
 寺沢大介原作の漫画の、ドラマ化作品。
 探偵事務所、ホームズ・エージェンシーの助っ人所長として、香港から高野聖也(東山紀之)が横浜の事務所にやって来るという所から始まる。
 横浜のメンバー、野田涼介(森田剛)と出水京子(市川実日子)は、明らかに出来の悪い、落ちこぼれ探偵。そこに、金田一(かねだ はじめ)少年(須賀健太)が絡む、という、ウルトラマンもびっくりな展開(謎)。
 ネットで『喰いタン』ドラマの情報を調べたら、ある人のHPに行き当たったのだが、その人は、
「何故このドラマが高視聴率を叩き出したか、よく分からん」
とおっしゃっていた。所詮子供騙しじゃないか、と。
 ただ、私の目線から一言言わせてもらうと、
 「このドラマは、そういった子供騙しや、色々な映画のパクリを楽しむ」
といった部分を楽しむ(所謂お遊び)ドラマである。
 ストーリーの底の薄さは、この際問題ではない。大切なのは、この番組が提示した、道徳に関する部分である。
 最近のドラマでは、子供が自らの犯した間違いに、謝罪の言葉が発せられない。リアル社会でもそうであるが。

 @『PS羅生門 警視庁東都署』の場合
 主役・木村佳乃には息子がいる。犯人に関わる女が自分の家族を紹介しようとする場面があり、彼女は「家族」というものがあることがうれしくて、妙にはしゃいだ態度を取るのだが、、それを見た息子の一言。
「おばちゃん、変」
 おいおい、それは無いだろう。

 A『役者魂』の場合
 主役・松たか子が、預かっている子供二人の養育費を稼ぐため、夜にバイトをしていたが、子供達にはそれを知らせていなかった。弟が熱を出しても、友人に看病を任せて出かける彼女に、
「お母さんだと思ってたのに!あんたなんかだいっ嫌い!」
と言い放つ。ただ、その後なぜ出かけていたかが判明する。ただ、そこで子供は謝らない。
 おいおい、なぜだ?

 @の場面では、母親が「なんて事言うんだ!」と、頭のひとつでも引っぱたいてもいい筈だ。
 Aの場面では、子供は「ひどい事言ってごめんなさい」と言わなくてはいけない。
 どちらも、脚本家の煮詰めが甘い、あるいは分かっていない。
 そういった部分を『喰いタン』はしっかりと描いていた。

 「いただきます」
 「ごちそうさま」
 「ごめんなさい」

など、そんな当たり前の言葉を、高野聖也は当たり前のように使い、当たり前のように周りの者に使わせる。
 今までは常識だった事が、最近は常識では無くなりつつある。しかし、そんな今の風潮が間違っている、とはっきり言い切るところが、とても気に入っている。

 お気楽に、しかも考えながら見ることが出来る。いいドラマですよ。
 個人的には、星16個はあげたいところ。
H181125


サイレン
お勧め度:★★★★★★★★(8点) 2006年公開
 ゲームが原作のホラー映画。
 市川由衣扮する天本由貴が、弟の転地療養のため、ある島に父親と共にやって来る。父親はムー系の雑誌に記事を投稿している怪しげな作家(森本レオ)。
 彼等がやって来たこの島には、奇妙な言い伝えがあった。
 「サイレンの鳴る夜には、表に出るな」
 そんなある日、由貴は、とある納屋で、ノートの切れ端を拾う。そこには、3度目のサイレンに気をつけろ、とあった。
 そしてそこから、物語が大きく動き始める…。
 とりあえず、ここから先は、全てがネタばれなので、もう何も言いません(笑)。とにかく、ラストまで、めっちゃ怖い。この恐怖は、『着信アリ』以来かも。怖気(おぞけ)がする、というのは、正にこういう事かと。
 日本のホラーは、やはりとても怖い。と言う事で、一件落着である(笑)。ハリウッドでの日本ホラー映画のリメイクや、韓国製ホラーが台頭しているが、日本ホラーはとにかく怖い。この映画でその事を再確認した。
 是非いっとくべき。
H181029


スウィングガールズ
お勧め度:★★★★★★★★(8点) 2004年公開
 ジャズやるべ!映画。
 『ウォーターボーイズ』の矢口史靖監督が仕掛ける、ジャズ誘導作品(笑)。
 とある田舎の女子高生が、ひょんな理由(自業自得)から、ジャズの演奏をすることになり、悪戦苦闘の末、音楽祭での演奏に行き着くまでの、汗と青春のひとコマ(笑)。
 とりあえず、細かい事は考えずに観るのが吉。現実的にはありえない部分もある。しかし、主役にしてトラブルメーカー・鈴木友子(上野樹里)のぶっ飛び振りは、嫌味がなくとても楽しめ、尚且つ共感出来る部分さえある。
 人生前向き!
 今の日本人に、一番必要とされている部分かもしれない。
 とにかく、主人公一行が、楽器の演奏、殊にジャズの魅力に目覚め、懸命の努力を重ね、上手になっていく部分は、素直に感心出来る。特に、クライマックスの音楽祭のシーンは、メインのメンバーはしっかりソロまでこなしている。その、裏での血のにじむ様な努力が感じ取れるだけに、なんだか普通に感情移入してしまう。矢口マジック全開である。
 また、本当に音楽が良い。演奏上の細かいミスなど、設定の範囲内である。
 この映画のお陰で、またジャズが好きになった(笑)。


亡国のイージス
お勧め度:★★★★★★★★★(9点) 2005年公開
 海上自衛隊映画(こんな括りでいいのかな?)。最新の映画。公開二日目に観に行った、胤舜的にも珍しい作品。
 別の映画を観に行った時に、予告で観て、ちょっと興味を覚えた作品だった。とりあえず、「自衛隊」というキーワードには、敏感に反応してしまう。
 さてこの作品、原作は『終戦のローレライ』や『戦国自衛隊1549』などを書いた、福井晴敏の作品。私はまだ原作を読んでいないのだが、それが良かったらしい。専守防衛の象徴ともいえる「イージス艦」を舞台にした軍事サスペンスである。胤舜的には、滅法楽しめた。
 その昔、『ベスト・ガイ』という、航空自衛隊映画があった。それは、ストーリーはかなり破綻していた(説明は別に譲る)ので、この作品の「自衛隊の立場」は、とても理解出来た。防衛庁、航空自衛隊、海上自衛隊の全面協力、それだけで説得力は充分である。国体を守る、つまり国を守るとは、どういうことか?そもそも、国って何だ?自衛官が、常に抱いている矛盾、それは、「国民が、彼らの役割を理解していない」ということに尽きる。
 この作品中で、中井貴一扮するヨンファが言い放つ、「よく見ろ日本人・・・・これが戦争だ」は、平和ボケした我々に対する、大いなる挑戦である。この台詞の理解度で、あなたの立ち位置が分かる。
 ・・・・・・とまあ、何となく小難しい事を書き連ねてみたが、とりあえず、私的には専任伍長・千石(真田広之)の存在感がずば抜けている、これだけでいい!自衛官丸出し(笑)。真田さん、うちのオヤジに似すぎ(笑)。
 とりあえず、イージス艦「いそかぜ」から発射されるハープーンの迫力を見るだけでも、この映画を観る価値あり。邦画の底力を感じて欲しい。
 やっぱり真田広之、いいね!


空海
お勧め度:★★★★(4点) 1984年公開
 真言宗宗祖映画。これは、1984年、「弘法大師1150年御遠忌記念」として製作された映画である。
 「太閤は秀吉に取られ、大師は弘法に取られ」ということばがあるが、その弘法こと、弘法大師空海の伝記映画である。宗教家の伝記映画、というと、なんだか胡散臭い響きがある。「宗教」というカテゴリーのせいか、なんだか超能力を持った謎の偉人が大活躍する、変な映画と思われがちだが、そこはそれ、言ってしまえば相手がでか過ぎる(笑)。歴史上に名を留めた宗教家は数多いが、日本のあらゆる文化の方向性を決定付けた者は、この空海をおいて他には居ない。文句があるなら、言い返してみて下さい(笑)。
 高野山真言宗の全面協力、ということもあるのか、空海を、変な異能者として扱わず、一人の卓越した「人間」として扱っているところが、作品として面白い。人間としての器の大きさ、能力の高さが取り上げられているので、そんなに違和感は無いと思われる。ただ、このコメントは、あくまでも贔屓目に見たものなので、出来れば皆さんの目で確認してもらいたい。
 ちなみに、お年を経られたお坊様方は、一律に「あんな映画はダメだ」とおっしゃっていらした。
 曰く「本当のお大師様の偉業を、表し尽くしていない」
 そりゃー、無理でしょう(笑)。
 私的には、かなりのお勧め。ホントなら、星8個ほどつけたいところなのだが、まあ客観的に評価してみました(笑)。


私をスキーに連れてって!
お勧め度:★★★★★★(6点) 1987年公開
 1980年後半の、サブカルチャー仕掛け人、ホイチョイ・プロダクション製作の、本格(?)スキー映画。
 スキーのために仕事をしている主人公(三上博史)と、同じ会社のOL(原田知世)のライトなラブストーリー。
 スポーツ用品会社に勤める三上は、自分の部署そっちのけで、スキーの先輩でもあるスキー用品部門の田中邦衛のもとに出入りしている。田中の、スキー部門の起死回生企画「SALLOT CONNECTION」にも協力し、自らモニターを買って出たりしている。そんな三上が、いつものように仲間達(布施博・高橋ひとみ・沖田浩之・原田貴和子)と共に週末スキーに出掛けた先で、原田と出会うのである。
 二人は、微妙にすれ違いながらも、徐々に親密度を高めて行く。そんな折、田中の企画「SALLOT CONNECTION」の発表会当日に、商品が盗まれる、という事件が起こり…。
 お話的には、無理のある部分もある。内容も、はっきり言って、無い。しかし、この映画の観るべき所は、そんな真面目につっこむような部分ではない。あくまで「遊び」の部分が重要なのである。スキー、車、服、メシ、飲み屋、そして仕事や人生までも遊んでみよう、という文化の爛熟期の、若者の生き方の一例である。
 バブル全盛期のお坊ちゃま達が、グッズやシチュエーションにこだわりながら遊ぶ姿を克明に記録したこの映画には、考古学的な価値すらある(ホントか?)。実際、かつてはこの私も、映画の中のスキーライフを仲間と共に真似たものである。
 この映画の種別は、「本格スキー道楽映画」というが正しい紹介であろうか?

 この映画のオープニングで、スキーに出掛ける準備を着々と進める三上の姿、そしていざ出発!の時にカセットから流れる『サーフ天国 スキー天国(byユーミン)』に、スキー魂が揺さぶられる人は多い。またこの年以降、スキー場でのユーミンBGM激増現象が凄まじく、広瀬香美の出現(!)まで、その呪縛は続いた。更に言うと、この映画のお陰で、万座高原スキー場が以前にもましてミーハースキーヤーの溜まり場となり、そして雨後の竹の子の如く、ペンションが乱立した。かなりの影響力を持った映画だった事がうかがえる。


ファンシィ ダンス
お勧め度:★★★★★☆(5.5点) 1989年公開
 ロックバンドのボーカルをやっていた禅寺の息子が、寺の後を継ぐため、修行に入る。そんな始まり方をするこの映画。岡野玲子の同名マンガが原作。本木雅弘、鈴木保奈美、大沢健、竹中直人、などなど、後の周防正行監督映画に頻繁に出演するメンバーが、おおかた揃っている。
 市販されているビデオには、「パート2製作快調」と出ていたが、結局パート2は出なかった。『シコ踏んじゃった』や『Shall we dance?』など、次々とヒット作を作っていったので、こんなマイナー映画に関わっている暇はなかったかも。
 というよりも、この『ファンシィ ダンス』、禅寺での修行の紹介が、リアルすぎ。しっかり取材したのは結構だが、僧侶の所作から、修行僧の行動、思惑まで、あまりにもリアルに表現しすぎた感がある。これを禅宗の関係者が観たら、パート2は出させないだろう。ちなみに、『孔雀王』も、一作目は高野山真言宗青年会などが全面バックアップしていたが、『孔雀王2』では、高野山関係は一切手を引いていた。同じ事だろう、と思う。
 お坊さんが普段何をしているか。興味ある人は、是非。いやマジで面白い。