地球少女アルジュナ
お勧め度:★★★★(4点) 2001年公開
 早過ぎたエコ肯定アニメ。河森正治の理想(妄想)暴走アニメ(笑)。

 ある日、事故により臨死体験をした有吉樹奈は、クリスという少年から、「ラージャと戦い、地球を守れ。そうすれば再び命を与えてやろう」と、ウルトラマンとハヤタ隊員との取引を彷彿とさせる遣り取りの中で、地球が死にかけている、という事実を突きつけられる。樹奈は、言われた通り、「時のしずく」によって与えられた力で、ラージャと戦うのだが・・・。
 とりあえず、河森氏が、自然農法の確立者、福岡正信氏(故人)からとてつもなく大きな影響を受け、インスパイアされた、という事は、ひしひしと伝わって来る。明らかに氏がモデルのおじいが出て来て、主人公達に滔々と自然農法を語るところからも、それが伺える。
 で、結論は「文明否定」。まあ、言わんとしている事は分かりますが、ちょっと行き過ぎじゃあ、と思えなくも無い。やはり、早過ぎたのだろう。今の風潮でなら、もう少し受け入れられたかも。
 アニメという媒体は、いうなれば「デフォルメ」表現なので、大袈裟であったり、強調し過ぎたり、ということはままあることで、そう考えると、この作品の逸脱気味の表現も、まあアリかな、と思ってしまう。
 大量消費への問題提起として、今見るべき作品であることは、間違い無い。

 ほぼ現在に近い設定で、日本を崩壊させた唯一の作品であろう(笑)。

 クリスという少年の、トリックスター要素が中途半端で、ちょっとイライラする部分あり(笑)。

 あと、樹奈の彼氏・時夫役の、関智一の関西弁の痛さも、ちょっとイラッときます(笑)。
H200903


電脳コイル
お勧め度:★★★★★★★★★★★★(12点) 2007年公開
 「電脳メガネ」アニメ。

 NHK入魂のアニメ作品。電脳世界を真正面から取り上げた、エポックメーキングな作品である。『攻殻機動隊』に代表される電脳世界を、似て非なる表現方法で描き切った、稀な内容。所謂「妖怪」「都市伝説」を、見事に電脳(要は疑似)世界の産物として表現したその視点は、驚嘆に値する。そこに更に「ヒトの集合意識」や、電脳とヒトを有機的に繋げる「イマーゴ」という設定は、唸らずにはいられない秀逸なもの。某「劇場版攻殻○動隊」の惜しい守や、某「マトリッ●ス」のウォシ○スキー兄弟に、見せてあげたいくらいの咀嚼具合。
 電脳というツールを利用して、生身のヒトのココロの深い処を描いたこの作品、観なきゃソンですよ。


 とりあえず、主人公を助ける名脇役・フミエの電脳ペット、その名も<オヤジ>だけでも一見の価値あり!(笑)
H200524


天空の城ラピュタ
お勧め度:★★★★★★★★(8点) 1986年公開
 「ラピュタは本当にあったんだ!」映画(そのまんまだw)
 空想科学映画(アニメ)の典型例。19世紀を舞台にした、とされる設定ながら、その科学的な設定は、明らかに空想上のものである。ドーラ空賊の使うフラップターは、今現在の科学でも再現不可能なもので、あればいいな、と思えるほどのものである(笑)。軍の飛行戦艦・ゴリアテに至っては、「それ、本当に飛べるの?」というくらいの重装備。
 ともあれ、「天空の城 ラピュタ」の謎をめぐる、未知のお宝・飛行石とその所有者にしてヒロイン・シータ、そして主人公のみなしご冒険家・パズーの大冒険活劇の開幕なのである。飛行石を執拗に追う、軍の特務・ムスカの悪党ぶりといい、お宝一途な楽天空賊・ドーラ一家といい、圧倒的火力を見せ付けるラピュタのロボット兵といい、将に「空想科学冒険活劇」の名に恥じない大スペクタクルドラマ。
 圧倒的科学力をもって天空にあり、世界を支配したラピュタが何故滅びたか、そして滅びた際に逃げ延びた王族は、何故二系統に分かれたのか?結構ヘビーなテーマがその根底を流れている。
 しかし、そこは宮崎駿、そんなテーマを全く意識しなくても、この作品は存分に楽しめる。痛快娯楽アクション、それで充分である。表面的な部分でも楽しめ、尚且つ深くのめりこんでも楽しめる、こういう作品のことを「奥が深い」というのだろう。何度見ても楽しい。未見の人も、既見の人も、とりあえずいっとこう。

 主人公・パズーの台詞「行こうおばさん(ドーラの事)、父さんは戻ってきたよ!」は、こういったジャンルの主人公の模範解答だと思われる。


ハウルの動く城
お勧め度:★★★★★★★★(8点) 2004年公開
 「この城が動く!」映画(笑)。
 宮崎駿、久々の原作つき作品。ハッキリ言って、この映画の原作『魔法使いハウルと火の悪魔』という作品、及びダイアナ・ウィン・ジョーンズという作家は、全く知らなかった。なので、一体どんな作品になるのか、見当もつかなかった。まあ、ジブリ側のかなりの「情報操作」もあったようで、「城が動く」以外、ストーリーに関しては、ほとんど何も分からない状態を維持した、というのも見当がつかなかった理由のひとつではある。
 また、主役の少女・ソフィーが、「荒地の魔女の呪いによって、90歳のおばあさんになる」とか、ソフィーの声を倍賞千恵子が当てるとか、魔法使いハウルの声は木村拓哉が当てるとか、何かと設定上の話題も多かった。試写会での感想の中には、「木村拓哉の声がイマイチ」とか、「あまり面白くない」とか、宮崎作品としては珍しい、否定的な噂も結構あった。
 で、実際に観てみたのだが・・・。
 面白くない、と言った人、腹を切れ(笑)。胤瞬的には、かなりのオススメ。ちなみに、私は既に2回観ました(笑)。えー、とにかく、ストレート。ストーリーも、メッセージ性も、登場人物達の考え方も、行動も、全体的に、ど真ん中直球勝負、な感じ。このアニメを楽しめない人は、もう一度

「ま ん が 映 画」

というカテゴリーを理解しなおす必要あり。
 木村拓哉、非常に良し。いい感じである。見直した。
 倍賞千恵子さんは、やっぱりいいね。私個人的には、『遥かなる山の呼び声』や『駅STASION』と同じくらいの高い評価である。ただ、18歳の声は、多少・・・な部分もある。でも許す(笑)。
 自分の素直さをどこまで認められるか。勝負してみては?(笑)
 ちなみに、私の最も好きな『千と千尋の神隠し』よりも星が二つ多いのは、ナイショだ(笑)。


紅の豚
お勧め度:★★★★★★★★★★(10点) 1992年公開
 「カッコイイとは、こういうことさ」映画(笑)。
 1920年代のイタリアはアドリア海沿岸。世界恐慌が吹き荒れる中、飛行挺を操り、金品を強奪する空賊と、空賊を標的として飛行挺を駆る賞金稼ぎ。アメリカ西部のガンマンを髣髴とさせる、そんな世界観。主人公は、「自ら豚になった」ポルコ=ロッソ。過激な飛行挺を意のままに操る、孤独な一匹狼(豚)の賞金稼ぎ。
 そんな豚に遅れをとっている空賊達が、アメリカからの助っ人を呼んで・・・。そんな話。
 とにかく、かっこいい!飛行艇もさることながら、主人公たちの生き様が、「体制におもねらない」ところが、素晴らしい!現実には難しいだけに・・・(笑)。
 男は、馬鹿で、野心家で、ロマンチストで、一途。女は、美しく、強く、したたかで、優しい。一昔前のアクション映画さながらの、ベタな内容ながら、そこがこの作品の最大の魅力ともなっている。
 見かけは、馬鹿騒ぎの明るいアニメ映画だが、登場人物達は、それぞれに色々な過去を持っている。「バカさわぎは、つらい事をかかえているからだし、単純さは一皮むけて手に入れたものなのだ」という宮崎駿監督の言葉は、この作品の深みを十分に伝えている。
 そんな難しいことを考えなくても、飛行艇の空中戦を見ているだけで、存分に爽快感を味わえる。まずは観るべし!
 ぼんやり観ても、うがって観ても、十分手ごたえがある。こんな映画も珍しい。いっとこう!


宇宙戦艦ヤマト
お勧め度:★★★★★★★★(8点) 1974年公開
 泣く子も黙る、日本のSF史上に燦然と輝く一大叙事詩の幕開け。私のSFの原体験でもある。
 のっけから冥王星空域での戦闘で始まる。しかも、ガミラスの戦艦数および火力は、地球艦隊のそれを遥かに上回っている。地球艦隊はなす術もなく壊滅し、名将と歌われた沖田十三のみが残る。そして帰って来た地球は、ガミラスの遊星爆弾により大量の放射能に汚染され、壊滅の危機に瀕していた…。
 そして流れる 「時に西暦2199年、人類は最後の時を迎えようとしていた」というナレーション。畳み掛けるような危機的状況の説明である。「あと1年」という設定が、非常に強く印象付けられる。
 その後、冥王星の戦闘で兄を亡くした主人公・古代とその友・島が、ガミラスの偵察機を迎撃に行った先で、戦艦大和の残骸を発見する。夕日に照らされた大和は、沈黙して何も語らない…。
 うーん、とにかくカッコイイ。しかも、その後の残骸のカモフラージュから姿を現すヤマトの勇姿。あれだけカッコイイ宇宙戦艦の登場シーンは、ちょっと他に見当たらない。
 この作品は、大和を引き合いに出した時点で、「軍国主義的発想だ」という批判が約束されていた、と言える。しかし、その実は、遊星爆弾による「核汚染」、ガミラス側の「理由ある侵略戦争」、「なるべく戦闘を回避しようとする」ヤマト、未知の武器・波動砲の「威力に怯える」主人公達、などなど、むしろ大量破壊兵器や、戦争そのものに対する批判などが込められていて、観れば観るほど、単なる国威高揚マンガではない事は明らかである。やはりいつの時代も、
 有識者などと呼ばれる奴等は程度が低い
ということか。ま、ガミラスが「ナチスっぽい」というのはご愛嬌。
 内容的には、途中で打ち切られたのが残念なほど。以後幾つも続編が作られているが、やはりドラマの濃密さでは、一作目が一番か?続編の『さらば宇宙戦艦ヤマト(劇場版)』がそれに次ぐ。古いアニメなので、突っ込みどころは多い。しかし、そんなものは無視して、素直にこの作品を楽しんでもらいたい。そうすれば、必ず最終回の沖田のセリフ、
 「地球か、何もかもみな懐かしい…
で泣ける事請け合いである。古典として、とりあえずいっとこうか!
 ちなみに、総集編である劇場版は、1977年に公開された。


長靴をはいた猫
お勧め度:★★★★★(5点) 1969年公開
 東映動画の基礎をがっちり固めたアニメ長編映画。東映動画は今も会社のキャラクターに、このアニメ映画の主役、「長靴をはいた猫」ペロを使っている。
 ストーリーは、説明するまでも無いだろう。かの有名なシャルル=ペローの童話集に収められていたものの一編である。
 欲も無ければ覇気も無い、ヘタレな若者ピエールが、長靴をはいた猫・ペロ(シャルル=ペローから名付けたらしい)の謀略により、みるみる成り上がっていく成功譚。なんかこの話が嫌いみたいな紹介の仕方だが、とにかく面白い。原作には無い、「ねずみを殺せない優しい猫」ペロが、猫の国の殺し屋に狙われる、という裏設定、悪い奴と言うより、ローザ姫を一途に愛する悲しき恋の迷い人(?)・魔王(声は『刑事コロンボ』の故・小池朝雄)のひたむきさ、ヘタレなピエールのめざましい成長、日本映画史上に燦然と輝く追っかけシーン(誇張じゃないですよ、念の為)など、楽しめる要素がたっぷり詰まっている。DVDも出たことだし、未見の方はぜひ見よう。大人も子供も必ず楽しめる逸品。
 当時の東映動画の最高スタッフが集まったこの作品、ウワサの追っかけシーンを組み立てたのは、宮崎駿その人である。


ルパン三世カリオストロの城
お勧め度:★★★★★(5点) 1979年公開
 「また」宮崎駿作品か、と言うなかれ。紹介するに足る作品を取り上げると、自然と宮崎作品が多くなってしまう、と言うだけのことだ。
 マニアの間では、「ルパン映画の金字塔」(?)とまで持ち上げられる作品。とあるヨーロッパの小国・カリオストロ公国にまつわる偽札と、公国王家・ゴート族の莫大な財宝をめぐるお話。「旧ルパン」のスタッフが結集して作られた、旧シリーズへのオマージュ的な物語である。
 ただ、ルパンファンの中には、「こんな紳士的なルパンは、ルパンじゃない!」という人もいるらしい。確かに私も、基本的には原作のファンなので、「ハードボイルド」なルパンが好きである。「旧ルパン」の、前半の雰囲気は、全シリーズ中で最も好きである。が、ルパンは、相反するキャラクターを内包した人間である。ひとことで言うと、「屈折している」のである。意外と、敵味方に関わらず、「純粋・一途。素直」には、かなり弱い。なにしろ、シリーズ前半最大の敵・十三代石川五右衛門との対決場面において、「俺、お前の事、気に入っちゃったんだ」みたいな事をさらっと言ってのけてしまう。結構素直な性格に憬れている節がある。
 だから、ルパンはヒロイン・クラリスと距離を置いてしまう。彼女は素直すぎる。ひねた根性のおっさんルパンは、やはりひねくれ者の不二子がお似合いなのである。
 この作品は、おおもとの原作、モーリス=ルブランの「アルセーヌ=リュパンシリーズ」、『緑の目の令嬢』『カリオストロ伯爵夫人』、そして黒岩涙香の『幽霊塔』などをヒントにして練られたストーリーで、それぞれの原作を読むと、なるほど、とその使い方の旨さに思わず頷いてしまう。
 多少お子様向けテイストのある作品だが、逆に言うと、子連れでも観ることの出来るスラップスティックアニメ映画である。まだ観ていない人は、いっときましょう。DVDも出てます。


千と千尋の神隠し
お勧め度:★★★★★★(6点) 2001年公開
 宮崎駿の作品。もう、多くは語るまい。この作品に関する批評は、皆さん聞き飽きたと思う。
 観終わった時には、星六個分の評価はなかった。だんだん時間が経つにつれて、私の中での評価が高まって行った。いまでは、宮崎駿最高傑作のひとつに名を連ねている。ちなみに他の最高傑作群は、
 『長靴をはいた猫』←厳密には宮崎作品ではないが。
 『ルパン三世カリオストロの城』
 『風の谷のナウシカ』
 『天空の城ラピュタ』
 『紅の豚』
が挙げられる。
 ま、好みは分かれるかも知れないが、胤舜的には「とにかく行っとけ」。観るべき。