最近、先輩に付き合ってボクシングジムに通った男が居る(私の後輩でもある)。もともと、格闘技が好きで、時間さえ取れれば、極真でもキックでも、とにかく道場に通いたい、と思っていた男であった。ちなみに、高校までは体操をやっていた。逆三角形の体型をしている。
久々に会った時に、ボクシングを習った、と聞いたので、とりあえず見せてくれ、と言うことになった。
で、「ジャブを見せてくれ」と頼んだところ、ボクシングらしい、コンパクトな突きを見せてくれた。しかし、である。思わず、「そのまま止まってくれ」と、動きを止めてしまった。
まず、親指が、握り拳の横で真っ直ぐに伸びている。
さらに、第二関節が一番高い位置にある(インパクトの状態、という事)。
ちょっと待て(笑)。
突き指するよ。ボクシング・ルールなら、サミングもあるかもしれないよ。
そう言った所、彼は、「はあ、そうですねぇ」といった感じのリアクションであった。
ちなみに、彼の先輩は、プロデビューもしている、バリバリの武闘派である。
まあ、私の後輩は、プロデビューまでは考えていない。仕事もあるし、とりあえず格闘技の体験がしてみたかった、と言うのが本心かもしれない。また、ジム側も、片手間の道楽ボクシング愛好者相手に、あまり突っ込んだ指導をしなかった、と言えば、それまでかも知れない。しかし、である。
たとえ片手間でも、教えなければならない基本って、あるだろう。まがりなりにも、人を叩く、サンドバッグを叩く、シャドーをする、そのどれを行うにしても、インパクトの瞬間の手の内を教えないのは、ある意味詐欺だと思う。場合によっては、怪我をしかねない。
仮に、エクササイズが目的で、ジム通いをしているのなら、そこまでは言わない。目的が違うのだから、殴ることを細かく教える必要も無いだろう。実際には殴らないので、ケガの心配も無い。しかし、格闘技として習いに来ている練習生を捕まえて、握り方ひとつ教えない、と言うのは、納得が行かない。
格闘技とは、「戦うための技術」の習得を目指すものである。この「戦うための技術」には、「戦う事による自らの負傷を防ぐ」が含まれているはずである。そうでなければ、毎回壊れる、という事になってしまう。格闘技を標榜するのなら、たとえ目的がどうであれ、「殴る基本」は抑えておきたい。そう思う。
ただ、習いに行った当の本人の心掛けが「なんとなくやってみたい」程度では、あまりジムを悪く言う事も出来ない。適当にあしらわれても、当然である。
H180319