アメリカ編1 いざアメリカへ

事の発端

2000年、冬。僕は初めて海外旅行を体験しました。ロサンゼルスとサンフランシスコに8泊10日です。当時通っていた専門学校主催の卒業旅行で、旅行自体が1科目として数えられるので休むと単位を失います。半ば強制的です。別の言い方で修学旅行ともいいます。

とはいえオプショナルツアー形式なので、1日1回の点呼以外は基本的に自由、食糧も自給自足です。学長曰く「海外の空気を自分の肌で感じ取ってもらう目的」で計画された旅行だから、旅行中の行動は学生の自主性に委ねられます。僕は事前の説明会で、ラスベガスとユニバーサルスタジオ、グランドキャニオンに応募しました。この3日以外は自由に行動できます。

今回は、初めての海外旅行にありがちなトラブルや失敗談でも公開しようかと思います。観光名所案内はほとんどありません。かいつまんだ話だけでも長くなりそうなんで、3部に分けることにしました。まずはアメリカへ行くまでのお話です。

準備期間

旅行なんて滅多にしないので、僕はお泊まりセットを持っていません。梅田のloftというお店で買い揃えました。スーツケースは、9泊もするんだからデカい方がいいかなと僕が中に入るくらい馬鹿デカいものを選びました。

「スキンヘッドと口髭との調和がまるで本職みたい

と友達に言わしめた金縁のサングラスも買いました。念のため断っておきますが、僕はごく普通のコンピュータ関係の専門学生です。

予備知識

ナマコのS氏に助言をします。

レインボーフラッグ虹色の旗。同性愛主義者のシンボル。ゲイの町として有名なサンフランシスコのカストロでよく見かける。って知ってる?」
「何それ?」
「サンフランシスコに着いたら、とりあえず虹色の旗持って歩いとき」
「ふ~ん…わかった」

さらにT氏が、飛行機に乗ったことがないと言いました。僕らは彼が恥をかかないよう、飛行機についての一通りの知識を刷り込みます。

「飛行機に乗るときは、ちゃんと靴を脱げよ」

これは信じてくれました。

「風呂がついてるから、ちゃんとてぬぐいを持って来いよ」

これはさすがに疑っているようです。しかし、その場で話を聞いていた教師の助言が効きました。

「機内で1泊するのに、お前は風呂入らん気か?」

さすが教師、T氏も納得です。この頃からT氏に秘められた素質の鱗片が現れ始めます。…あ、彼からは実名公開の許可ももらっていますが、本人の名誉のためずっとT氏で通します。

驚愕の事実

T氏からの爆弾発言が飛び出しました。

「赤道って飛行機からでも見えるん?」

ちょっと面食らいましたが、僕も伊達に20年以上関西人をやってません。ごくごく自然な態度で答えます。

「見えるで」
「じゃあじゃあ日付変更線は?
「もちろん見えるで。よう眺めとき」
「どんな風に見えるんやろ。海の色が途中から変わっとるとか? ブイが浮かんでるんやろか。船が引っかかったりせえへんのかなぁ」

彼は何かとてつもない勘違いをしているようです。1人でブツブツ言っていました。T氏、みんなから一目置かれる存在になりました。

そして空港へ

まずは集合場所の関空へ。僕ん家は関空の近所にあるんで、電車に15分もゆられれば着きます。途中の車内で仲のいい友達と合流しました。

電車が空港内の2階にある駅に到着。空港の入り口は3階にあるのでエスカレータを探します。

そこで小学生の集団に遭遇しました。道行く旅行客達に声をかけ、何やら真剣にメモを取っています。当然のように僕にも声をかけてきました。

「すいませーん、アンケートをとってるんですが、これからどこへ行くんですか?」
「3階です」

後になって、あの小学生達は旅行先を聞いていたんだと気づきました。

集合場所へ徐々に集まってくる面々。対アメリカ用に気合いを入れたのか、友達はみんな金髪とか茶髪に染めてました。どこから見ても理工系には見えません。僕は染める以前に髪そのものがありません。

繰り返しいいますが、僕はごく普通のコンピュータ関係の専門学生です。

機内にて

10時間座りっぱなしになるので、大した事件は起こりませんでした。T氏が「寝てたら日付変更線も赤道も見れんかった」と残念がっていたのが印象に残っています。