墓は一家に1基が理想

もうじきお盆です。墓場に仏様ほとけさまを迎えに行く季節ですね。

たいていの家庭では、『○○家代々墓』と刻まれた墓があって、そこに御先祖の方が一緒に埋まってると思います。しかし僕ん家では夫婦ごとに墓を建てて埋まってます。父方の直系だけで13基。墓場の一区画を占拠しています。

他に弟しかその所在を知らない幻の墓もあるそうです。

その上、「一族が断絶するから墓守を頼みたい」と言われたとか言われなかったとかいう、もう何世代前の誰がどういった経緯で任されたのかよくわからないけど、とにかく墓守を任されている墓まであります。

ウチの宗派では、これが伝統的な埋葬の仕方なんだそうです。しかし夫婦ごとっていうのも考えもの。僕は墓場のはす向かいに住んでいるので、ちょくちょく墓の手入れをしに行くんですが、数が多すぎて草むしりだけで丸1日潰れてしまいます。墓参りともなれば、両腕で抱えきれないほどの仏花が必要になります。

僕がようやく漢字を読めるようになった頃、いつもの様に墓場で草むしりをしていた時のことです。ふと墓石に目をやると、そこにはなんと親父の名前が刻まれていました。

お、親父が死んでいる!

心の底から驚きました。昨日の晩まで一緒に飯を食っていた親父が、僕の知らぬ間に死んで、しかもすでに墓まで出来上がっているのです。もちろん寿陵死ぬ前にあらかじめ建てておく墓。朱色で名前を刻む。ではありません。僕は家まで飛んで帰りました。

あとで聞いた話によると、親父は我が家に先祖代々伝わる名前を授かっているのだそうです。家系図を確認すると、確かに親父と同姓同名の人間が数多く登場していました。

一番古くからある墓石は風化が激しく、建て直す必要もあります。その墓が建てられた当時は知りませんが、今の墓石は数百万もする非常に高価なものなので、なかなか手のでるもんじゃありません。たぶん、僕の代でも建て替えは無理でしょう。

墓を守るのにこれだけ苦労してるっていうのに、親父も「夫婦で墓に入る」と宣言しています。僕は、親父が海外移住ガイドをコッソリ買い集めていることを知っています。どこに墓を建てるつもりですか。

僕は無神論派です。どんな扱いをしたところで、死んだ人間は喜びも悲しみもしないだろうと考えています。墓から「ありがとう」とか聞こえたら、それこそ不気味です。

正味のところ、墓自体に必要性を感じないのですが、体裁っていうのもあります。しかしだからといって、ボコボコと墓を増やせば、後で泣きを見ることになります。余計な手間や出費を抑えるためにも、宗派や見栄にとらわれず、墓は1基だけにとどめましょう。でないと、きっと子孫が苦労します。