どこの家庭にも、その家庭内でしか通用しない常識っていうもんがあると思います。自分では当たり前だと思っていたことが、他の人から、「え?! お前ん家、そんなことすんの?」と言われて、愕然としたりするもんです。そして僕ん家にも、かなり変わった常識があります。
オナラをした後は、お尻を「ペンペンペン」と3回叩く。
これです。僕は長い間、この「お尻ペンペン」を実践し続けました。オナラをしたときの礼儀作法として教え込まれたからです。
確か小5くらいの時だったと思います。一度だけ親父に、「お尻ペンペン」は誰が決めたことなのか問いただしたことがありました。そのときの親父の答えが、こうです。
民法! これは本物だ。憲法でないところが生々しい。違反したらきっと逮捕される。本気でそう思いました。
しかし中学へ進学してから、僕はある事実に気付きました。
オナラをしたとき、誰もお尻を叩かないのです。さらに驚くべきことに、すかしっ屁なるものまで存在していました。
この僕が、「オナラをしたのは私です」と自己申告しているというのに、他の人たちは、他人に気付かれずにオナラをする術を身につけていました。
そう。僕は親父に騙されていたのです。
それから僕は、たとえオナラをしても尻ペンをしないようにしています。いや、心がけてます。習慣とは恐ろしいもので、十年近く経った今でも、オナラをしたとき、つい尻に手をもっていきたいという衝動に駆られるからです。