僕が小さい頃、僕と両親は母屋、祖父母は離れに住んでました。今で言う2世帯住宅みたいなもんです。別の言い方で仲の悪い大家族とも言います。
僕はお婆ちゃん子で、いつもお婆ちゃんに遊んでもらっていました。夜も「お婆ちゃんと一緒に寝るんだ」と、よく駄々をこねたもんです。結局ワガママを押し通して離れで寝てしまうんですが、不思議なことに、朝起きると必ず母屋に戻っていました。
例によって親父に聞いてみると。
と言われる始末。そうか、僕のおねしょはそんなに大量か。人まで押し流すのか。そりゃぁ家族に迷惑かけたな。今度から寝る前のジュースは控えよう。
純粋なのかバカなのか、僕は親父の言葉をそのまま信じてしまいました。物理的に不可能だろとかいう疑いは持ちません。頭の中では、家中おねしょで溢れかえる光景まで鮮明に思い浮かべたりしてました。
おねしょにはずいぶんと悩まされまして、いろんな医者に診てもらい、おねしょを治す薬というのも、粉薬から錠剤まで色々と試したような気がします。実は多いんですね。おねしょ薬。
中でも効果てきめんだったのは、近所の市民病院でもらった錠剤でした。ここの泌尿器科は優秀らしく、今でもたまにTVで見かけます。
やるな、市民病院。
で、この薬を寝る直前に飲むと、嘘のようにおねしょが治ります。飲まなかった日は再発します。これがどうも体中の水分を吸収しておねしょを防ぐ薬だったらしく、うっかり夜中に目が覚めてしまうと、強烈なノドの渇きに襲われて、再び寝ることが出来なくなってしまいます。このときばかりは、おねしょと引き替えに悪魔に魂を売ってしまった気分になります。
親父の戯言は、親父の手によって離れから母屋まで運ばれてる途中で目が覚めたその時まで、疑うことなく信じ続けていました。
おねしょについては、何かのついでに撮ったレントゲンが元で、生まれつき膀胱に異常があるのが発見されて、手術するコトになりました。手術の時は素っ裸に手術着を着るだけです。病室から手術室への移動中に看護婦さんの手が服に引っかかって、廊下で裸になってしまいました。
貴方のその一言が一番癇に障りました。そもカルテには患者の性格まで書かれているものなんですね。まぁ、手術したら一発でおねしょが治ったので許します。