幼い頃の僕は、この「さおだけ」の意味がわかりませんでした。わからないことは聞いてみないと気が済まない当時の僕。このときも、僕は母親に「さおだけ」の意味を尋ねました。
何ということでしょうか。我が町内では、人さらいが当然のようにまかり通っていたのです。この驚くべき事実に、僕は恐怖しました。
もし僕がさらわれたら、きっと家族は悲しむだろう、竿竹売りにだけは決して近寄るまい。僕はそう自分に言い聞かせたものです。
我が町内は狭いです。子供の僕にとって、その行動範囲はさらにせばまります。でもそこには、僕と竿竹売りとの知られざる戦いの歴史がありました。
友達の家の前に竿竹売りの車が止まっていたときのショックは忘れられません。とうとう知り合いから犠牲者が! 本気でそう思いました。次の日、彼の元気な姿を見たときはとても嬉しかったのを覚えています。
子供の頃の恐怖というのはバカにできません。トラウマとなって、後々まで響いてくることもあります。僕は未だに、竿竹売りの声を聞くと足がすくむことがあるくらいです。