老けた小学生

もうすぐ受験シーズンです。これは僕と6つ年の離れた弟の受験にまつわる話です。

弟は三重の山奥にある、ほぼ全寮制の私立中学を受験することに決めました。同じ近畿内とはいえ、我が大阪と三重は遠く離れています。受験には1泊必要で、仕事を抱えた親はついていくことができません。ちょうど高校を卒業し、暇をもてあましていた僕が父兄としてついていくことになりました。

学校に着くと、まず控え室のようなところに通され、学校の説明を受けます。わざわざ私立の中学を受験する子は少ないので、その日はウチを含めて2組しかいませんでした。合間に出された青リンゴ味の紅茶が美味かったです。銘柄を聞きたかったけど、あさましいかと思ってやめときました。

説明のあと、食堂で昼食を頂くことになりました。食堂に入ると、すでに全生徒さんが席に着いていました。休みの日にご苦労なことです。

我々は生徒さんよりも少し離れた位置で、特別に用意された席に案内されました。席に着くと、生徒さん達が一斉にこちらを向きました。何だかイヤ~な予感がします。

と、代表者らしき人が立ち上がり、「これから歓迎の歌を披露します」と宣言し、何百人かの大合唱が食堂内に数分間響き渡りました。気持ちはありがたいのですが、恥ずかしいことこの上ありませんでした。

食事のあと弟が受験の説明を聞いている間、父兄は校舎などを紹介もらうことになりました。

僕個人にずっと付き添って施設間の道案内をしてくれる学生さんが1人、名前を覚えてないんで、仮にAくんとしましょう。あと校舎や寮など各施設にも担当の案内役が1人ずつ、こちらはBくんやCくん。常に2人の学生さんが僕に色々説明してくれます。

まず学生寮に案内してもらいました。が、寮担当のBくんの話し方がどうもおかしい。

「ココが風呂場
「ココが個室

父兄に対する言葉遣いじゃないなあと思っていたら、AくんがBくんに「父兄、父兄!」と耳打ちしていました。どうも僕を受験生と間違えていたようです。

次の施設のCくん君は話し方が丁寧でした。さっきの学生がおっちょこちょいなだけの様です。と思いきや、去り際にこんなコトをと言われてしまいました。

「ウチの学校は、みんなクラブに入ることになっているので、今から考えておいてください」

18歳の僕がなにゆえ小学生に見えたのかは、彼らにしかわからない謎です。