食卓に座ったら、親父が「生きた鯛を買ってきた」と言って大きな鯛がピチピチ跳ねるお皿を出してきた。…のはいいんだけど。
- 僕
- 「鯛って足あったっけ?」
- 父
- 「さぁ? 食べられれば何でもいいんじゃない」
よく見たらエラと尾ひれのあたりに足が生えていた。爪と肉球も付いてる。けど、しょせん魚だからヌルヌルしてて触る気がしない。
ま、いいか。さっそく活け造りにしようと包丁を手に持つと鯛はムクッと起き上がり、4本足で逃げていった。
待てよ僕の晩飯!
そう叫びながら追いかけること数日。僕はベトナムか何処かのよくわからないジャングルにいた。ツタをかけわけながら進んでいくと目の前に逃げた鯛が弓矢を持って立っていた。鏃が僕を向いている。前足で器用に矢をつがえてビュンビュン撃ってくる。
僕の頭上をかすめたそれは、たまたま通りかかった軍用ヘリを撃ち落とすほどの威力だった。
鯛ってホントは恐い生き物なんだ、と思った。