地域生態システム

講義目的

生態学の考え方を基礎に置き,水と緑と土の役割,都市社会との関係を学びます。特に生態系を支える根幹物質としての水に注目し,水の構造と物性,水域生態系,水処理技術について重点的に解説します。同時に,人間活動が自然生態系に及ぼす影響,その対策としての生態系保全について理解を深めます。最後に都市空間に望まれる自然環境のあり方を世代間の視点から考えてみます。以上の内容を学ぶことにより,受講者が知識を柔軟に活用して都市や地域を生態学的な観点から解釈できるようになることを期待します。なお各回のテーマは内容・順番が変更されることがあります。




講義内容

1回 講義の概要・スケジュール,希望調査等
2回 生態学の基本と物質循環(エネルギーと物質の流れ)
3回 水に関する基礎知識(構造と物性,熱輸送)
4回 水域の物理構造と生態系(温度・光学的構造と生態系)
5回 水循環システムT(上水利用の概要)
6回 水循環システムU(汚濁水の浄化)
7回 土の知識(土壌に関する知識)
8回 植物の基礎知識(光合成から木材資源まで)
9回 社会における植物の役割(光・蒸散・熱)
10回 生態系の維持システム(共生によるバランス制御)
11回 都市の環境問題T(物質とエネルギーの流れ)
12回 都市の環境問題U−熱汚染(熱:エネルギーの最終的形態)
13回 東京湾の開発と保全(沿岸環境の現状と保全政策への提言)
14回 都市域における自然環境の意義(世代間の観点から)


履修条件等

 講義を聞くことに意味があるので連続して出席できることが望ましい。自然が好きで環境問題に興味があればなおのこと良い。

教科書

 特定の教科書は使用しない。参考資料・プリント類は各回の講義時に配布する。

評価方法

 出席,レポート,試験を総合して評価する。詳細は初回講義時に説明する。

参考書

 各回ごとに紹介する。








1回 地域生態システム・講義概要

 地域生態システムという名の学問分野が確立しているわけではない。「地域」「生態」「システム」の用語それぞれが広い意味を含む概念であり,一つの用語に一つ以上の学問分野が対応する。それゆえ,「地域生態システム」の解釈もまた多岐にわたる。本講義では,都市や郊外,農村などを一つの地域としてとらえ,その限られたエリアを生態系の視点から考えてゆく方法論を地域生態システムと呼ぶことにする。この解釈は便宜的なものである。

 なぜ生態系的な視点でものを見るのか,それは人間が生態系を理解して模倣し,生活に取り入れることで人間社会の「持続性」が高まると考えられるからである。地球上で生まれた生命は30億年以上もの間とぎれることなく今日まで存在してきた。その営みで育まれてきた多様な生物や資源は,われわれの現代的な生活を支える上で必要不可欠なものとなっている一方,それらの誤った利用や過剰な消費によって生態系そのものの存続に影響を及ぼすまでに至っている。時には原点に振り返って素朴に自然を眺め,バランスの保たれた生態系に学ぶことも必要である。

 生態系の仕組みについて学ぶこととは,水と緑と土に対する理解を深めることに他ならない。河川・海洋が生命の存在と永続を保証し,緑は土を育て土は緑を支えてきた。この自然界の個々の因子について理解を深め活用をはかることは,健全な地域や都市の育成とも深く関係がある。

 本講義では,生態システムの主要な構成要素である水と緑と土が,生態系で,地域で,都市でどのような役割を果たしているのかを理解できるように,原理的な観点から説明を行う。基礎的な知識を重視し,機構や現象の概念的な説明に時間を割く。数理生態や物質循環モデルなどは取り上げない。行く先々で出会う風景を眺めたとき,そこにある水と緑と土が,単に景観だけでなく,生態的・都市機能的にも種々の役割を果たしていることに気付き,また,都市計画や土地取引の現場において,常に水と緑と土の維持と確保を念頭に置くことができるようになれば,本講義の目標は達せられる。






2回 生態学の基本と物質循環

<概要>
 生態学とは「生物と生物の関係を探求する」学問である。その着眼の基本はエネルギー・物質の流れまたは循環であり,生物はこれらの担い手として存在する。太陽エネルギーが可視光の形で地球に入射し,そのエネルギーは地球を暖めつつ,一部は植物の光合成に利用される。光合成の過程では光のエネルギーを利用して無機化合物から有機物が合成される(例えば二酸化炭素と水と栄養物から糖類が生産される)。生態学では植物は「一次生産者」と呼ばれる。物質の流れのなかで最初に有機物を生産する者という意味である。有機物は燃やせば熱になるから,エネルギーを内部に固定していることは明らかである。そしてそのエネルギーの元は地球の外からきたものである。

 我々も含めた動物は全て植物の生産した有機物(=固定されたエネルギー)を利用して生きている。但し,直接的に利用している者と間接的に利用しているものがいる。

 植物を食べる動物は二次生産者と呼ばれ,一般にn時生産者を食べるものはn+1生産者と呼ばれる。生態学的には人間はあらゆる生物のなかでも最も高次の生産者と言うこともできる。しかし現実の生態系はこのような単純な概念で表されるようなものではなく,food webという言葉に代表されるように,複雑に入り組んだエネルギー・物質ネットワーク系を作り出している。その意味で生物というのは「物質という箱に乗ってエネルギーを運ぶなにものか」と表現することもできる。

 エネルギーを物質の授受によって伝えるためには,物質の循環が必要である。物質の循環自体は生命体の中でゆるやかに閉じ,ゆるやかに開かれていなければならない。生物が基本的に流体を袋で包んだ構造になっているのはこのためだと考えられる。ヒトを例にとってみても,皮膚から各器官,細胞の単位に至るまですべて「袋と流体」の構造になっている。内部で循環している量と比較すると物質の出入りは非常に少ない。熱は体表面から温度差を利用して発散する。この物質の循環と熱の出入りの構造は,細胞レベルでも,個体レベルでも,生態系レベルで見てもよく似ており,それぞれのスケールの現象がうまく補完し合って安定した生態系が構成されているものと思われる。

 少し詳しく見てみよう。物質を消費して維持する生命は全体として見ればすべてエネルギーの落差を利用する発熱反応を頼りに生きている。化学反応が起こるたびに熱が発生する。細胞で発生した熱は流体により伝えられて生物個体の表面から放射と対流により逃げてゆく。周囲の環境流体はこの熱を伝達し,また放射作用も加わって,最終的には宇宙空間に逃げてゆく。宇宙は十分に冷たい。だから熱の捨て場に困ることはない。一方,物質は細胞膜,循環器系,皮膚,角質,細胞壁等に束縛され,内部で循環利用される。入力(摂餌)・出力(排泄)した物質も重力という「袋」に束縛されているので地上に留まる。地上では大気・水が物質の輸送を担っている。生命体も地球自身も「熱的には開放系で物質的には閉鎖・循環系」なのである。

 このようなメカニズムが働いていることにより,自然生態系では生物を構成する親生物元素はほとんどリサイクル(循環)され,地球環境に大きな変化を起こさないほどの緩やかなスピードで不要物が蓄積されて行くに過ぎない。したがって数十億年もの間にわたって生態系は維持され,生物種も入れ替わりを繰り返しながら生きながらえることができた。

 現代の人間生活は,かつての生物がゆるやかに蓄積してきた不要物(=石油・石炭)を大量にしかも非常な速度で消費し,また,親生物元素以外の物質も大量に消費・廃棄している。これらの蓄積は生態系の維持という観点から見ると好ましくない面が多い。生態系を手本にして循環型社会の構築を目指さねばならない。



1)エネルギーの単位(cal, J, W)
2)エネルギーの相互変換
3)光で入って熱で出る:地球レベルのエネルギーの流れ
4)物質により伝わるエネルギー:生物は燃える・物質は循環する
5)エネルギー伝達系に物質が乗る。物質に物質が乗る:汚染の拡散
6)ストックとフロー
7)都市・家庭のエネルギー利用
8)農業におけるエネルギー利用の推移
9)まとめ


参考webサイト(一般生態学) http://sv2.humeco.m.u-tokyo.ac.jp/~minato/ptlecture/ecology.html

講義ノート
練習問題の解答




3回 水に関する基礎知識

<概要>
 物質としての水は宇宙空間に普遍的に存在するが,水が液体として存在できる温度範囲は宇宙の温度範囲からみればごく僅かである。宇宙空間では基本的に水は固体として存在する。しかしながら地球上には液体の水が存在する(地球の他には惑星の衛星にその存在が確認されているだけである)。この奇跡が起きた理由は,太陽からの適当な距離,自転速度と公転速度,適度な水の量,地殻下の高温高熱,地球の元素組成,数億年をかけて変化していった大気組成,それに水の特殊な物理化学的性質がうまくバランスしたからである。

 地球上で水は液体,気体,固体の三態で存在している。水分子は水素結合と呼ばれる力が生じる構造を持っており,これにより水の複雑な振る舞いが説明できる。

 水の分子量は18で,これは窒素の28,酸素の32よりも小さい。したがって窒素と酸素から成る空気(平均分子量28.8)よりも単分子の水は軽いのである。これだけ軽い分子なら気体として大気上層に逃げそうであるが,実際はそうではない。常温では液体として存在することができる。水は酸素と水素から成っているが,1)酸素と水素の電気陰性度が大きく違うこと,2)結合に角度(104.5度)があって直線的分子ではない,という大きな特徴を持つ。このため,分子内に大きな電荷の偏りを生じた,+(水素側)と−(酸素側)に分極した分子になっている。このような分子を極性分子と呼ぶ。

 極性分子はお互いの+と−が引きつけ合ってゆるい結合を形成する。これを水素結合と呼ぶ。水が凍るのは水素結合の性質を持つからである。氷は水素結合により配列が決定された水の結晶であり,水分子の形に従って規則正しい配列になっている。氷に熱を加えると水になる。このとき,氷は水よりも軽い。これは水の方が氷の結晶よりも密な配置になっているからである。すなわち,水は氷の結晶の構造を一部残しつつ構造が崩れて行くが,そこで生じた水分子の一部は残された構造の一部に潜り込んでしまう。したがって平均的に見ると単位体積当たりに占める水分子の量は水の方が多くなり,密度が大きくなるのである。最大比重になる温度は3.975℃といわれている。この温度よりも高くなると分子運動が活発になって膨張するので密度は小さくなる。

 液体の水にも当然,水素結合は強く働いているが,この結合によって結ばれているのは,ある瞬間で見れば,数分子ごとの塊とも言われている。数分子の水はこれは空気の分子量から見るとずいぶん大きな値であり,液体で存在する理由もそこにある。

 水に熱を加えていくと水は熱を吸収し,分子の運動エネルギーに転化する。ある限界を超えると水素結合を切断するほどになり,沸騰して一斉に気体になる。気体になった水は多くの運動エネルギーを持っている上に,単分子となっているから空気より軽い。だから高温の水蒸気は空気中を上昇してゆく。これは特筆すべき重要な性質である。

 大気上層に到達した水蒸気は冷やされて熱を周囲に放出する。冷えた水分子は水素結合の働きにより,再び水や氷になる。これが我々の見ている雲である。雲は,水が熱を運ぶという重要な働きを終えた後の姿なのである。雲粒が生長してある程度の大きさになると重力に抗しきれずに雨となって地表に落下する。雨は比較的大きな丸い液滴となって落下してくるが,これも水素結合による表面張力が原因である。一見なにげない水の循環は,このような分子論的なメカニズムによって保証されていたのである。



1)水の基本的物性
2)水の構造:水素結合
3)溶媒としての水
4)輸送系としての水
5)宇宙における水の存在


参考webページ
http://www.con-pro.net/readings/water/




4回 水域の物理構造と生態系−湖沼を例に−

<概要>
 湖沼を水温の観点から見てみよう。冬の寒い日は湖の表層が放射冷却により冷やされている。すると表面には4℃の水が生成し,この水は重いので湖底に向かって沈んでいく。すると表層直下のやや暖かい水がわき上がって表層に供給される。この水は再び冷やされて沈み込んでいく(この現象が起きる時期を循環期という)。このようなことを繰り返し,湖水の温度が4℃以下になると表層から凍り始める。氷は水よりも軽いからである。生成した氷は断熱材の働きを持ち,底層の熱が表層へ逃げるのを防ぐことになる。このような働きのため,数メートル以上の水深を持つ湖は,湖底まで氷結することはない。これは生物が氷結した湖沼でも生存し続けるための重要なメカニズムである。

 大きな水深を持つ湖沼は,その大きな熱容量のために湖水全体の温度が4℃以下にならず氷結しない。これを湖沼学では不凍湖と呼んでいる。その一方で浅い湖は氷結しやすい。例えば富士五湖のうち精進湖・西湖・本栖湖は同じ標高に位置し,地下水脈でつながっているとも言われるが,精進湖だけが結氷する。西湖(-70m),本栖湖(-121m)は結氷しない。

 夏から秋に表層水が十分に暖められると,底層の冷たい重い水と混合しにくくなり,底層水の上が暖かい表層水でフタをされた温度構造になる。これを成層化といい,深い湖ほど安定した成層が形成されやすい。十分に安定な成層で,植物プランクトンによる活発な光合成が起きると,表層水中の栄養塩類がどんどん吸収され,しかも他から供給されにくいので,表層水は貧栄養化してゆく。増殖した植物プランクトンが沈降すれば水は清澄化してゆく。透明度の高い湖が例外なく大きな水深を持っているのは,このようなメカニズムが働くことによる。

 一方で浅い湖では風による混合が容易に起き,また底層まで暖められることにより成層化しにくい。このような湖では底層からの栄養の供給が起こり,結果として活発な光合成・生物活動が引き起こされるので濁った湖となる。以上のように温度構造は湖の特性を考える上で重要なパラメータである。

 湖沼を光と植物の増殖の観点から見てみよう。きれいな水は赤い光をよく吸収し,青い光をよく散乱する。だから貧栄養の湖やダムの水色は青色に見える。植物プランクトンや濁り粒子が増加すると青い光が吸収されるようになり,水色は青緑から緑,黄褐色へと変わってゆく。その湖沼が貧栄養なのか富栄養なのかは水色で見当が付く。

 光は水中では意外に早く減衰する。相対照度が表層の1%となるような深度は補償深度と呼ばれるが,これは経験的に透明度の約2.7倍と見積もられている。日本の代表的な湖沼の透明度はほとんどが10m以下である。したがって多くの湖沼では27m以下では表層の1/100以下の光量になってしまう。補償深度以深では植物が光合成できないため,有機物を消費する二次生産者以降の世界となっている。有機物を消費する反応は基本的に有酸素反応なので,水中から酸素を奪う。水中の酸素は大気中の酸素が水中からとけ込んだものであるから,混合が起きない限り深層には供給されない。このような機構が働き底層水の水は酸素を失ってゆく。補償深度の浅い湖ほど富栄養化しているといえる。

 湖には一生がある。貧栄養湖は"若い"湖である。四方を陸に囲まれて様々な物質の供給を受ける湖は,100年,1000年の間に富栄養化してゆき,堆積物の蓄積により水深は浅くなり,沼沢から湿原,ついには陸地になる。人間活動は様々な物質を湖に供給しているから,湖の"老化"を飛躍的に加速させる働きを持っているといえる。健全な湖沼環境を永く保つために,湖沼学の知見に基づき,湖の水質改善の努力を不断に行わなければならない。



1)湖沼の温度構造と季節変化
2)湖沼型
3)湖沼の光環境
4)湖沼の富栄養化
5)湖沼の一生





5回 地域の生態系と水循環システムT

<概要>
 ダムはリザーバーとも呼ばれ,河川を堰き止めて一定の貯水容量を持つように設計されたものである。堰(せき)もダムの一種と考えてよい。都市生活は水によって支えられており,上水・農業用水・工業用水の安定供給の面から考えてもダムは不可欠なものである。一方,河川生態系から見るとダムは様々な問題を抱えている;1)水量の変動による環境の変化,2)温度変化による生態系の変質,3)堆砂による貯水容量の減少,4)下流域への懸濁物供給の遮断,5)排砂による生態系の破壊,などである。これらは第4回で述べた湖沼学的知見に基づいて対処するべきものであるが,ダムの特性上,問題の解決には多くの困難を越えねばならない。近い将来にはダムのあり方も再検討しなければならないであろう。

 従来においても,堰を作って分水し上水を都市に供給する方法が行われていた。上水としては利用されていないが,玉川上水や神田上水は今でも有名である。これらの上水は自然の傾斜を活用して,溝に水を流したものである。この上水から分水し,途中に埋めた木樋に水を流し,所々に木樋から落ちた水が溜まるように穴を掘ってある。この穴からつるべを用いて水を汲んでいた。水は処理を経ることなく河川水を通水していたが,江戸時代当時は下肥の物質循環(ヒト−農地)が人為的に成立しており,水系にこれらが流入することはありえなかったので伝染病の心配も少なかった。

 現代では上水供給システムは極めて巨大かつ複雑に発達している。ごく一部の農村部を除き,水は浄化処理を経てから上水として供給される。 河川水を原水として上水(飲料水)を造る方法には,大別して緩速濾過法と急速濾過法がある。

 緩速濾過法とは文字通りに,砂層にゆっくりと原水を通過させる方法のことである。河川の地下数メートルに集水管を埋設し,濾過された伏流水を集水する。この水を沈殿池に貯留して砂粒子等を除く。ある程度清澄化した水は厚い砂の層からなる「緩速濾過池」で濾過を受ける。濾過速度は数メートル/日程度である。砂層表面には多様な生物群集が形成されており,この生物膜の働きによって原水が浄化される。とりわけメロシラと呼ばれる糸状の珪藻は厚い繊維状となり,その表面に多様な生物群集が形成されることも手伝って,濾過に非常に役立っている。光合成により栄養塩類の吸収も行うので浄化機能は高い。活発な光合成により酸素を発生し,その泡で自身の一部が浮き上がり除去されていくという自動浄化機能まで持っている。緩速濾過法は単純であるが効果的で,適正な運用を行えば微生物やウイルス,原虫のシストをはじめとして,臭気物質も取り除くことができるとされている。

 急速濾過法はやや工業的な造水方法である。まず原水に凝集沈殿剤(PACなど)を加え,粒子状物質を沈殿物として取り除く。次に砂層に水を通過させて濾過するが,このときの濾過速度は前述の方法よりもずっと早い。砂層は物理的な濾過に用いているのみで生物作用は期待されていない。そのために目詰まりも早く,数日に一度は逆洗浄しなければならない。この方法は単位体積あたりの造水能力が高く効率的であるが,水質は前者に劣る。近年ではクロストリポジウムという塩素耐性の原虫が急速濾過法では取り除けないということが指摘されている。現在の急速濾過による上水は,「水道水の顔をした雑用水」という見解も示されている。

 なおいずれの処理方法でも塩素滅菌が行われた後に末端(蛇口)まで供給される。末端で0.1mgの塩素が検出されないと安全性に問題があるといわれているが,この考えには疑問も呈されている。塩素を含む水道水を生のまま飲用しているのは日本人だけとも言われる。塩素滅菌をせずに配水している国も存在する。塩素滅菌処理を行うと,水中の有機物と塩素が反応して有機塩素化合物が生成してしまうが,これらは遺伝毒性を有する物質であるから摂取しないように努めるべきである。水道水中の塩素や有機塩素化合物は活性炭処理などの簡単な手法で取り除くことができるが,本筋は上質な原水を緩速濾過で処理することにより飲料用水の質をあげるべきである。



1)水の使用可能量
2)ダム:逆から読むと。。
3)緑のダム
4)上水供給システム(過去) 5)上水供給システム(現代) 6)緩速濾過法 7)急速濾過法 8)家の中を流れる川

参考webページ
http://water.shinshu-u.ac.jp/j_ssf/j_ssftop.htm
http://www005.upp.so-net.ne.jp/wanatra/index.htm





6回 地域の生態系と水循環システムU

<概要>
 上水で利用された水は循環利用されるものを除きすべて下水となる。下水は排水路から処理場を経て,また一部は直接放流や土中吸い込みで処理されるが最終的には河川・海へ到達する。下水もその源はダム湖からの河川水や地下水である。下水が河川に流入することは,水収支上・水量確保の点では好ましい。一方,処理が不十分であったり,未処理の下水が河川に流入することは,河川生態系維持の観点から見れば許されないことである。河川の生物群集に影響を与えないような水質にまで処理して放流するような,適切な下水処理システムを河川−都市の水循環系の中に組み込むことが肝要である。

 下水浄化には様々な方法があるが基本は固形物を取り除き溶存有機物を分解することである。溶存有機物は微生物に分解させることにより無機化する。例えば都市における代表的な下水処理法である活性汚泥法は以下のプロセスによって浄化を行っている;1)沈殿物を取り除き,2)生物の力を借りて有機物を分解し,3)もう一度沈殿物を取り除き,4)滅菌して放流する。要するに粗大な有機物を取り除いた後に,下水中の物質を栄養として微生物を培養するわけである。活性汚泥法は効率重視であり,処理水質を追求しているわけではない。その点が急速濾過法とよく似ている。効率は良いが汚泥も大量に発生し,その処理方法が課題となっている。合流式を採用している処理場では,降雨時には処理容量をオーバーすることがあり,このときには流入水は処理されることなく放流される。これは微生物汚染の観点からも問題である。現在は分流式が広がりつつある。

 小規模処理装置には「石井式」「新見式」などの処理システムがある。石井式は高い無機化率を誇り,処理水のBOD・CODともに活性汚泥法の1/10まで浄化できることが報告されている。その装置の要は,適切な流量調整と,ヤクルト容器を利用して多様な流速分布を持たせ,そこに存在する生物群集を利用することである。水問題に関心の深い個人などで利用が進んでいる。

 新見式は土壌の浄化機能を利用した一種の接触型分解処理であり,土中に埋めた素焼の管に下水を通過させることにより処理を行うものである。水中の栄養を土に返すという思想を持つ処理法として,生態学的観点からは魅力的である。一部の農山村で利用例がある。

 下水処理システムを考える上で重要なことは,下肥をどうするか,という点である。わずか50年ほど前までは,日本では都市域の排泄物は近郊の農地に還元されて肥料となり,そこで生産された作物が再び都市で利用される循環が成立していた。現代では,排泄物は水に流されて農地に戻ることはない。農地では肥料不足により貧栄養化が進むため,肥料を購入してまかなっている。加えて日本の食糧の半分以上は国外からきている。このような循環構造の破綻があるので,高性能な浄化設備がいくら増えても,解決できない問題を抱えているのである。

 もう一つ重要な点は,生活者においても水系への負荷を減らせる,ということである。台所から流される食品類の残渣は非常に高い負荷を持つ。これに洗剤等の負荷がさらに加わる。いずれも少しの工夫で水系への流出を防ぐことができるし,かつては流さなかったものも多いのである。

 集水域の山々は昔と変わらず清冽な水を河川に供給している。その河川が定常的に汚れているということは,われわれが日々変わらず汚し続けていることを示している。数日間でも汚すのを止めれば,河川は劇的にきれいになる。

 都市部には流域下水道が設置されているところがある。コンクリートで固められた河川の脇に巨大な地下排水路が建設され,大河川に匹敵する流量の下水が流れている。洪水防止や疫学上の観点からは流域下水道の意義は認められるが,河川生態系の維持や,水資源確保の見地からは好ましいものではない。分流式の施設を増やすとともに,われわれの排泄物の物質循環の真剣に検討しなければならない時期にきている。

 一度使った水はきれいにして元に返す,という作法がこれからの生活者・都市設計の一つの方向となることを期待したい。



1)下水の発生:水を使うということ(何に,用途は)
2)BOD, CODの意味するもの
3)汚濁負荷の大きさ
4)浄化機構の基本:水は放置してもきれいになる
5)活性汚泥法の概略
6)合流式と分流式(大腸菌の話)
7)小規模な浄化施設
8)家庭における負荷の減らし方







7回 土壌の知識

<概要>
 土壌は水とともに陸域生態系を支える根幹であるが,その性質については意外に知られていない。そこで土壌についてまとめてみよう。土壌の定義として優れたものの一つは以下のようなものである。

 「土壌は,地表部における気候・生物・母材・地形の自然環境因子と人間活動および時間的因子の影響下で,岩石の風化物である無機物質と動植物・微生物の遺体およびその分解物の相互作用によって垂直方向に分化した物理性・化学性・生物性の異なる土層の集合した体制で,高等植物の根の生育を支持できる部位をいう。」

 つまり土壌というのは"岩石の粉"ではなく,生物およびその遺骸を含んで変質した独自の存在様式(複合体)であるということである。この「土壌」と呼ばれる部位は数十センチメートル程度しかない。この僅かな厚さしかない層が地上の植物群落の繁栄を支え,またわれわれの食料を生み出してきた。

 岩石は風化により粉砕され粒子化する。地衣類は岩石表面に張り付いて生長し,その生物活動は岩石の風化を助ける。植物の繁茂は空気中の二酸化炭素を地表に固定する役割を果たすとともに,岩石中のリン,窒素などの無機栄養物を有機化して地表に供給する。固定された炭素は地表にいる微生物の栄養となり,微生物は他の生物の餌となり,生物の排出物は植物の栄養となる。ここに栄養物のループが形成される。岩石の破砕物や植物の遺骸を母材として,このループを際限なく繰り返して形成してきたものが土壌である。十分な厚さの土壌生成には数万年以上の時間と適切な環境を必要とする。

 土壌の維持にはその場の植生と微生物が深く関与している。落葉・落枝の分解にはダニ類・菌類・微生物が,微生物・菌類の捕食者として昆虫類や環形動物が,土壌動物の捕食者としてモグラがいる。植物(とくに樹木)は土壌に対して光を適度に遮閉し,落葉・落枝による栄養供給を行う。この働きで土壌生物の活動の場が支えられている。

 土壌は「団粒構造(有機物等の作用により母材どうしが塊になったもの)」と呼ばれる特有の構造を持つが,この構造の形成には環形動物,とりわけミミズが大きな役割を果たしている。ミミズによる耕転は大規模なもので,多くの土壌はミミズにより長くても数十年に一度は耕転されていると考えられているが,この作用によりつねに土壌中の団粒形成が促進され,土壌状態の維持が図られている。団粒構造は植物育成上きわめて重要である。単粒構造の土壌では保水・排水・通気性がよくない。団粒構造ではこれらのいずれも好ましい条件であり,植物の根の伸長・呼吸に有利である。農業においても団粒構造の発達した土において生産性の高いことは周知の事実である。団粒構造は有機物の分解,カルシウムの溶脱,降雨の物理的衝撃,強度の乾燥などにより崩壊して単粒構造になるが,前述の生物作用によって再び団粒構造が形成する。

 土壌中では様々な生物によってネットワークが形成されていることが明らかになってきている。一種類の菌類(菌糸)の存在量を,広い面積について積算した結果,クジラよりも重いことが明らかになったケースがある。多くの植物の根は菌類とつながって菌根を形成している。菌類の菌糸を介して植物どうしが結ばれている可能性も指摘され始めた。地下の世界は想像以上に複雑で未知の部分が多い。

 土壌は地上から供給される様々な有機物が分解・無機化される場所であり,人間で考えれば肝臓のような機能を持っている。人間から肝機能を奪った場合,生存時間は24時間程度だろうといわれている。現在の人間活動は,土壌に毒物を供給するようなことを行っている。開発によって無造作に土壌が削り取られ有効利用されることなく盛り土になったりしている。失われた土壌は半永久的に戻らない。もし土壌からその機能が失われれば,われわれの存在基盤は危うくなる。土壌を生物資源として捉え保全する必要が生じている。



1)土壌とは何か
2)生物の集合体
3)生成に時間がかかる
4)生物との相互作用により生み出される
5)土壌の価値
6)土が痩せると。。
7)汚染すると元には戻せない





8回 植物の基礎知識

<概要>
 植物は現在の地球生態系を支える主要な生物群である。その最も重要な働きは光エネルギーを用いて二酸化炭素と水,栄養塩類から有機物を合成する「光合成」である。光合成は地球上最大の生物化学的過程である。地球上の有機化合物のうち最大量存在するものはセルロース,タンパク質ではリブロース2リン酸カルボキシラーゼ,金属化合物ではクロロフィルと考えられている。これらはすべて植物の光合成に必須の物質である。

 光合成は植物細胞中の色素・タンパク複合体が光を吸収することに始まる。利用できる光の質(400〜700nm)と強さ(10〜1000μmol-photon/m2/s)は限られており,太陽放射のすべてを有効に利用できるわけではない。青色と赤色の光は特に吸収されやすいが,これに較べると緑色の光は吸収がやや鈍い。これが植物の葉が緑色に見える理由である。色素に吸収された光は電荷分離という過程を通して電子の流れとなる。植物は電子の流れ(還元エネルギー)と酵素の作用を巧みに利用して二酸化炭素(=炭素の酸化物)を糖類(炭素の還元物)と酸素を生産する。酸素は植物にとっての廃棄物である。

 植物の形態および細胞器官は光を効率的に利用できるように特化されている。様々な形態の樹木や草本類は,光利用の効率化を図るために独自の様式を取っている。例えば光が足りないとき,葉緑体は細胞内に広がっている。ある種の植物は日照強度にしたがって葉の調位運動が起こったりする。一方,光が強すぎるときには細胞の一箇所に集まったり,葉緑体本体が縮んだりする。強い光は細胞に対し毒として働き(光毒性),色素の分解が起きたり活性酸素の発生を促進したりするが,このような細胞内部で生じた毒性物質に対しても処理系を発達させている。すなわち,過剰な光エネルギーの一部は光として(蛍光放散),熱として(キサントフィルサイクル),物質として(光呼吸)逃がし,細胞内で生じた活性酸素は拡散する前にカロチノイド等で消去するシステムが作動している。このような光に対する柔軟な適応能力は,植物の生き残りに役立っているだけでなく,植物近傍の環境の安定化にも貢献している。

 植物は光合成によりまず糖類(グルコース等)を生産するが,糖類はその重合度合により多様な化合物となる。低分子の糖類はグルコース,シュクロースなどで,高分子糖類ではデンプンやグルコマンナンなどの存在形態がある。難分解性の高分子糖類としてはセルロースが挙げられる。綿花はほぼ純粋なセルロースである。木材は多量のセルロースとミクロフィブリルという微小繊維,リグニンとの複合体である。これらいずれの化合物もわれわれの生活を支える重要な資源である。

 低分子〜高分子の糖類重合体は,そのほとんどが生物によって利用可能であるが,セルロースだけはごく一部の生物(セルラーゼを持つ一部の昆虫・菌類・微生物)によって利用されるのみで,他の生物には利用できない。光や熱などの自然環境因子の変化にも強く,構造材としては理想的な性質を持っている。水と遮断することによって生物の劣化を防ぐことができ,材の性質をうまく活用すると建築材として数百年の耐用年数を持たせることができる。単位重量当たりの強度(比強度)は鉄材を越え,大型建築物を造ることも可能である。耐用年数の長い木材建築を作ることは森林資源の保護につながるだけでなく,固定化炭素のストックを増やすことでもあり,環境を考える上でも大切なことである。

 不要用材は土壌に帰すことで微生物の成育を促し,僅か数年で分解されて二酸化炭素・腐食・微生物等に転化し,再び植物の光合成の原材料となる。これは強度の優れた他の構造材では考えられないことで,廃棄という面から考えても木材は循環性の優れた資源ということができよう。

 現在の都市は大量の木材資源を消費している。コンクリート打ち込みのベニヤ材に見るように,その消費実態は理想とはほど遠い。一方,木材の生産は地球上の光合成量からみて明らかに限りがある。環境の破壊も進行している。われわれは都市開発とバランスが取れるように木材利用の方法を見直すとともに,森林育成に努めなければならない。



1)植物:光と水と空気から「あらゆるもの」を作る魔法の生物
2)光合成の基本:宇宙のエネルギーを地球に留めるメカニズム
3)環境に応じて柔軟に適応する
4)植物の作り出す物質:糖・高分子・アルカロイド・化石燃料
5)炭素固定の地球環境的意味
6)海の植物もまた重要である
7)木材利用のタイムスケール





9回 植物の役割−特に都市域における−

<概要>
 地球の歴史を振り返ってみても,生命が存続するために植物が果たした役割はかけがえのないものといえる。嫌気性環境から有酸素環境の創出。電子受容体としての酸素の利用を可能にしたのも植物である。大気中の酸素濃度の増加はオゾン層の発生を促し,生成したオゾン層は紫外線を吸収して陸地の光環境を安全なものとした。陸上植物は自ら生産した有機物を地上に散布することにより岩石圏を肥沃にし,他の植物が生長できる土壌を生成してゆくとともに,動物の生存も可能にした。多量の植物の繁茂は温度・水環境を安定にし,動植物の生物多様性が増すことを可能にした。

 これらのような植物の役割が重要であることは都市域でも変わりがない。しかし都市空間では十分な土壌・植物保全用地が確保できないため,植物の役割を最大限に引き出して有効活用しなければならない。都市においても植物は多面的機能を有している。 1)熱調整機能(光吸収・反射・蒸発散=微気象緩和): 樹木上部から下部にかけて連続的に光を吸収・反射する構造になっているため,光を和らげ,地面への直接日射量は少なくなる。葉面では温度が上昇するが,一部の光エネルギーは固定され,一部は反射,一部は蒸散により奪われ,残りが熱になる。このため植物が存在すると地面付近の温度上昇が穏やかになる。一定数以上の樹木が存在すると,このような緩衝機能の規模が大きくなり,微気象を緩和することができる。樹木は放射熱の遮蔽にも効果がある。
2)土壌流出防止機能(斜面・法面保護): 植物の根系は土壌間に深く入り込み,土壌粒子をネットで覆うような機能を発揮している。このため植物が繁茂しているところでは土壌粒子の流出が少なく崩落の危険も少ない。また砂地等の地域においても植物を繁茂させることにより風による飛散を防止することができる。これらの機能に着目して高速道路法面や鉄道施設法面等に灌木を植える例などが増えつつある。
3)生態系維持機能(一定の生物相の保護): 植物は生態系の出発点である。都市といえどもそれは変わらない。積極的な緑化や植樹によって,一定の生物相を保つことができる。クスノキ−アオスジアゲハ系は良い例である。都市に純粋な自然環境を望むのは現実的ではないが,人工的であれ都市独自の生態系として積極的に保護育成することは重要である。
4)大気・水質浄化機能:樹木の表面積は広く,空気中の様々な物質を吸着・吸収する。窒素酸化物や二酸化炭素は栄養として利用する。これは空気側から見ると浄化作用である。緩速濾過による浄水過程では糸状藻類が浄化に関与している。河川における付着珪藻も栄養塩類の吸収に役立っている。
5)延焼防止機能:屋敷林や街路樹は火災の延焼防止作用がある。緑地帯は防火帯としても機能する。
6)防風:中高木には顕著な防風機能がある。平均風速の低下は住環境として好ましいばかりでなく,粉塵の舞い上がりを抑え,都市の化学環境改善にも寄与する。
7)景観維持機能:都市に風格を与え,人々の心理に安らぎを与える効果は大きい。
 都市開発は一極集中型で行われてきた。連続的かつ広域にわたる緑地面積を持つ都市は少ない。一定面積の公園確保などの政策(都市計画法)も採られてきたが,緑地確保の観点から見ると不十分な都市も多い。公園にはより多くの樹木を植え,上述の機能が十分に発揮できる状態にすることが望ましい。

 生態系維持機能の観点から見ると,都市内の緑は多様な種でかつ連続していることが望ましい。一つの系内の生物群集は多様であり,これらの群集を安定して保つためには,それを支える植物が広い面積にわたって連続して分布し,また河川沿いに湿度条件が勾配的に連続的に分布していることが重要である。

 これらの観点から近年では,「緑の東京計画(東京都)」「千葉市緑と水辺の基本計画(千葉市)」「京都市緑の基本計画」に代表されるように,都市計画上緑の確保は重要な課題になっており,都市域に十分な緑をつくりだすような動きが広まっている。

1)樹木の基本的形態
2)蒸散のメカニズムと冷却作用
3)根茎による土壌流出防止:好例と失敗例
4)生態系維持機能
5)都市域でとくに有用な機能
6)緑の維持に向けた動き





10回 生態系の維持システム

<概要>
 森林には多様な生物が生息しているが,それら生物間には非常に複雑な相互作用が働いている。単一種だけが優占するような状況が出現することは稀で,あるレベルで均衡がとれるようなシステムになっている。森は生きている,と表現される根拠はここにある。

 ブナ林生態系で見てみよう。ブナは中部以北の日本で普通に見られ,「ブナの森」を形成している。しかしブナが密林となって栄養不足となり,全体として枯死するような傾向は見られない。全国の杉林が密植林によって荒廃しているのと対照的である。ブナは数年に一度実を付け,これらの実は林床で一斉に発芽する。発芽した実生のブナはその殆どが一年を経ずに枯死する。ブナの実には,樹上にある段階で微生物に感染していて落下後にゆっくりと死滅するのである。これらの死滅した実は感染している微生物はもとより,多数の土壌(微)生物,またブナ自身の栄養源にもなる。生き残った若木も十分な光の供給が受けられない条件では枯死してしまう。最終的に高木になるのは,親木が倒壊して森林に光のギャップ(穴)ができた場所に限られる。つまり埋め合わせるようなシステムになっている。

 ブナには実だけでなく枝にも様々な微生物が住み着いているが,これらの生物の感染力が強まってブナ自体を枯死させることは稀である。落枝となり落実となったときに速やかに分解する。これら有機物の分解には菌類が非常に強力な作用を有している。菌類はセルロースやリグニンに対する分解作用により木質成分を土壌に還元する役割を果たしているが,他にも自身が分泌する微量化学成分が他の生物の栄養素となっていることも知られている。また菌類の子実体(きのこ)は動物類の餌料として優れている。菌類は地下で植物の根とつながり菌根を形成するものが多い。菌根を形成した植物は生育がよく,栄養物の授受をしていることがしられている。

 一部の昆虫類が多く発生し,ブナを食い荒らすことがある。ブナアオシャチホコ(蛾)の大発生時にはブナ林が「丸坊主」になるほどの食害がある。この状態が長期化すればブナは光合成能力を失い,枯死するものと考えられる。しかしそうはならない。二番芽はタンニンの含有量が多く,これを食べたブナアオシャチホコの死亡率は上昇する。植物−植物間の情報伝達作用により,食害を受けていない植物もタンニン含有量が増している可能性もある。ブナアオシャチホコは地中で蛹となるが,このときに菌類の感染を受け,数十パーセントもの個体群が死滅してしまう。このときに感染する菌類は特定の種類で,ブナアオシャチホコの大発生時に連動して発生してくる。したがって次の世代のブナアオシャチホコの個体群は著しく減ってしまう。

 高齢のブナは心材腐朽菌等の働きにより中心部が空洞化し,やがて物理的強度が低下して倒木となる。倒木は種々の菌類が分解しその菌類を餌料とする昆虫類が増殖する。外皮,辺材,心材,枝,葉はそれぞれを専門とする生物が分解してゆく。後に残されたギャップには再びブナなどの幼木が成長して樹冠目指して伸びてゆく。

 このように森林生態系は生物間の複雑な相互関係により均衡を保ちつつ存在し続ける一つのシステムなのである。ヒトはこの生態システムに対してどのような位置づけにあるのだろうか。



1)ブナの発芽と枯死:間引きの意味(間引かないとどうなるか)
2)森林ギャップと成長
3)リターの分解者の役割
4)菌根
5)食害と防御,寄生菌による個体群制御
6)倒木更新





11回 都市の環境問題T−ゴミ問題を例に

<概要>
 生態系存続の基本は,完全な使い捨てが完全なリサイクルになっており,両者の速度がバランスしていることにある。使い捨てがリサイクルにならなかったり,新たなエネルギー投入を必要としたり,使い捨てとリサイクルのバランスがとれないときに環境問題が生じる。この観点から見ると,エネルギー的にも物質的にも自立していない都市には必ず環境問題が生じていることがわかる。  国内の物質収支を重さベースで見ると圧倒的に輸入が超過である。主要輸入資源である鉄・エネルギー関連で数億トン,国内生産のコンクリート・砂利が10億トンのレベル,輸出は一億トンのレベルである。日本全体で年間億トンレベルの物質の蓄積が続いている。この量は国内に存在する乗用車の総量に匹敵する。

 これらは統計上あらわれる廃棄物の総量である。資源採取の現場をみればわかるように,採取現場では「資源だけ」が採掘・輸送されるわけではなく,資源とならない不要物も同時に発生する。これらの不要物の質量は統計上はカウントされないが膨大で,「隠れたフロー」あるいは,エコロジカル・リュックサック(製品が背負った重荷)と呼ばれている。エネルギー資源の場合は旧来からエネルギー・コストという考え方があるが,これを質量の観点から物質一般に広めたものと解釈できる。一例として国内採取資源を見ると,採取の10.7億トンに対して隠れたフローが11億トンにもなっている。日本の物質消費量は一人一年当たりで45トンと計算されており,そのうち3/4が海外で間接的に消費している物資量(=隠れたフロー)であるという研究結果が報告されている。

 物質の輸出入のデータからでも物質蓄積の情報を得ることができるが,フローとストックの動態を正確につかむことが今後重要となる。高度経済成長期(1955〜1972)に建設された構造物の寿命がまもなく訪れる。これら膨大な量の構造物が都市内で用をなさなくなったとき,巨大な廃棄物と化す。これを資源化するためにコンクリートや鉄骨のリサイクルも進んできているが限界がある。多量のエネルギー資源の投入を要する上に,将来において需要量以上に建築廃棄物が発生することが見込まれているからである。産業系廃棄物処分場の新規立地はきわめて難しい課題であり,まさに廃棄物があふれる社会になりつつある。

 ゴミ問題への取り組みはまず,物質フローのバランスを取ると共に,消費総量を少なくすることである。捨てるよりはリサイクル,リサイクルよりはリユースが望ましく,また輸入分に相当する物質を輸出しなければならない。しかし物質の出入りにはエネルギー資源が必要なので,輸出入の質量バランスでゴミ問題を解決しようとすると,エコロジカル・リュックサックが生じてしまいこれが環境悪化の原因となる。物質の消費量を減らすことが第一である。



1)生態系存続のメカニズム(復習)
2)エネルギーと物質の使用量
3)蓄積してゆく物質
4)統計に表れない不要物の存在
5)ストックの行方
6)リサイクルは万能か
7)最後は生態系に倣うしかない





12回 都市の環境問題U−熱汚染

<概要>
 温室効果気体の大量放出により地球大気の熱特性が変化し,急速な地球温暖化が進行するのではないかとの懸念が生じている。しかしより急速に温暖化している地域がある。都市である。温度の目で陸域を見ると,都市域だけが高い温度分布となっており浮き上がって見える。等温線を描くと地図の等高線と同じ形状になる。これがヒートアイランドと言われるゆえんである。

 エネルギーを利用すると必ず熱が発生する。熱はエネルギーの最終的形態であり,必ず高温側から低温側にしか流れない。地球上に生じた熱の最終的な行き先は宇宙空間である。

 都市に熱が蓄積してゆく原因は幾つもある。

a) 都市においてエネルギーが集中的に消費されること
b) 都市の道路,地面がアスファルト化,コンクリート化して水の蒸発が抑えられ蒸発熱による冷却作用がないこと。これは都市化による熱雷の発生が減少することとも関係する。
c) 都市の建物の多様化が,表面のでこぼこを著しくしアルベドを小さくしていること
d) 大気汚染物質がダストドームを形成し,地表面からの放射を吸収し,温度上昇に寄与すること
e) 地表面からの大気の動きが悪くなり,熱を運ぶ大気の動きが弱くなること
f) 都市のコンクリート,アスファルトが日中に熱を蓄積し,夜間にそれを放出すること。都市では夜も気温が低下しないのはそのため
g) 河川流量が減少し,また多くの河川が地下を流れるようになり低温熱源が減ったこと
 東京23区を例にみてみよう。一平方メートル当たりのエネルギー消費密度は40Wを越えている。千代田区では部分的に140Wを越えているとされ,これは日射エネルギーの総計をも越えている(a)。500万台に近い自動車からは大量の熱と汚染物質が排出されている(a)。土中の水分は植物を通じて蒸散し,そのときに奪う潜熱が熱輸送に役立っている。しかし地面が不透水性物質で覆われて植物が減少するとこの効果は期待できない(b)。種々の建築物が高密度に複雑に入り組んでいるので光トラップ効果を生じ,光を効率的に熱に変え(c),風の通り道を遮断している(e)。都市の熱が上昇気流を生み出し,郊外の空気を巻き込んで上層に輸送し,上空ではこの反対の大気の流れができ,ダストドームを形成する。ダストドームは熱を抱え込んで閉じこめるばかりか,地表面からの放射も熱に変えてしまう(d, e)。コンクリートは重量の半分が水であるから,蓄熱性が高く冷めにくい。アスファルトは太陽光を効率よく熱に変える。これらの働きが都市の温度上昇に寄与している(f)。河川から水が奪われ,また多くの都市河川が地下に埋設されたため,河川経由による熱の輸送量が減少した(g)。

 将来展望はかなり厳しいものとなっている。現在でも都市建築物の高層化が進んでいる。超高層マンションやインテリジェントビルも盛んに建設されている。このことは,単位面積当たりの消費エネルギー量がさらに増加することを意味している。熱は消えることがなく,逃がすことしかできない。そのため今後もエネルギー消費レベルの高い状態が続けば,ヒートアイランド現象は改善しない。2031年頃には,真夏の東京都心部(18時)で43℃にも達するという試算も出ている。

 ヒートアイランドの原因はこのように複合的であるので解決は容易でない。基本的な解決法は上に述べたa〜gに対策を施すことである。最も重要なことは緑地面積を増やすことである。都市構造物を蓄熱性の低いものに変えていき,舗装は透水性にして,河川を復活させる。自動車の保有と通行を制限し,風の通り道を作る。この対策は,究極的には都市の中に自然生態系を復活させることに他ならない。生態系保全・水環境保全・省エネルギー政策等を相互に関連させながら,熱的な環境としても優れた都市づくりが必要である。ヒートアイランドが顕著な自治体はすでに対策を打ちつつある。市民レベルでも積極的に協力することが望ましい。



1)エネルギーの相互変換と最終産物:熱
2)エネルギーは保存される。熱の逃げ場は宇宙。
3)ヒートアイランド現象とは
4)エネルギーの使い過ぎが主因
5)熱の逃げ道を塞いだことも主因
6)対策の基本は省エネルギー:炭酸ガス排出も抑制
7)時間をかけて都市構造を変える


参考webページ
http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/kikaku/heat/





13回 東京湾の開発と保全

<概要>
 東京湾はかつて江戸湾と呼ばれ,当時世界最大級の都市であった江戸の重要な資源であった。江戸前,という言葉は都市に隣接した漁場,という意味も込められている。

 東京湾は天然の良港で,多摩川・荒川・利根川といった主要河川が運び込む土砂が堆積して遠浅の干潟が続き,また河川水に含まれる栄養物により豊かな生産が維持されていた。生産性と多様性は特筆すべきもので,江戸湾の漁獲はつねに高い水準を保っていた。

 天然の河口域はきわめて生産性の高い水域である。淡水から海水まで連続的に変化する塩分,陸から供給される栄養塩類,泥質から砂質までの多様な底質環境,遠浅でかき混ぜられやすい水塊構造,これらが植物プランクトンや海藻類の活発な増殖を促し,多くの魚介類を育むのである。なかでも湾岸域の干潟は塩の満ち引きにより大きな濾過能力を発揮し(浄化機能),干潟に補足された懸濁物は底生生物の餌となり,活発な生物生産が維持された。アサリ・アカガイ等の砂質を好む二枚貝の生産も活発であった。他方,冬期の海況はノリの生育に適していた。全国で生産されるノリも,かつての本場は東京湾であり,ノリの養殖技術が確立したのも東京湾(富津)であった。

 埋め立て等の湾岸の改変は江戸期から始まっている。最も大きな変化は利根川流路の変更であろう。東京湾に注いでいた利根川を流路変更により小貝川・鬼怒川・渡良瀬川の流れと併せ,銚子沖に流れるようにした。これが江戸湾に与えた影響は大きい。流入水量が減少したために河口域の干潟の形成が遅くなり,底質の組成が変化したため,ベントス生物の生息環境としても変化があったものと見込まれる。魚族等の生態系の高次部分においても連鎖的に影響が生じていたであろう。

 明治期に入ってからは工業化に伴う港湾施設の建設が続き,自然の汀線が破壊されてきた。東京港は港湾施設という点でも世界最大級の規模を持っている。輸出入物資の積み上げのため,汀線の干潟や砂浜は埋め立てられ,コンクリート護岸(カミソリ護岸とも呼ばれる)となった。海岸の多くが鉄鋼・エネルギー・物流産業の私有地となった。現在の人工海岸率は75%を越え,我々が自然海浜を見ることはほとんどできなくなっている。沖合も開発が進んでいる。

 流入河川にも大きな変化が生じてきた。ダムの建設,河川水の高度利用,川砂利採取等は河川水量と運搬物質の減少をまねき,干潟形成に悪影響を与えた。生活系・産業系排水の流入,中小河川の廃止・地下水路化による水質悪化は湾内の生態系にきわめて大きな打撃を与えた。

 これらの開発に伴う自然浄化機構の低下は著しいと考えられている。干潟は物質を補足して他の生物類の餌料とする場であった。遠浅の砂浜は濾過能力が大きく海水の浄化に寄与していた。遠浅の汀線には多くの海草・海藻類が繁茂して生物繁殖の場として格好の機能を有していた。岩礁においても同様である。この機能がコンクリート護岸化により失われたのである。

 浄化機能が低下しているところへ有機物・栄養塩負荷の多い河川水が定常的に流入し,湾内は常に富栄養状態となった。植物プランクトンが増殖して高密度になり,それらが沈殿して海底で分解する。分解には酸素が必要なので,海底付近の酸素が失われてゆく。この度合が増すと無酸素水が大量に形成し「青潮」と呼ばれる状態に発展する。青潮が海底を這うとそこに生息する底生生物(有酸素呼吸のもの)は窒息して死滅してしまう。青潮はアサリなどの漁獲物に与える影響は大きいばかりか,海底で浄化機能を担っていた生物が逆に酸素消費源にまわることとなり悪循環が形成される。平均水深わずか15メートル程度の浅海でこのようなことが起きているのである。

 東京湾も地域生態系の一つである。単なる水たまりではない。原生林保全と同様の意味において,従来の自然を残し保護に努めなければならない。護岸化を解消して自然海岸を復活させ,人々が海に親しめる場を創り出すとともに,流入負荷を削減して物質循環のバランスを取るべきである。補償金と引き換えに活動の場を取り上げられた漁業従事者が再び活躍できるように,50年かけて開発した東京湾を50年かけて復元してゆく必要がある。



1)改変は昔から始まっている
2)きわめて優れた良港:東京湾
3)自然汀線が消えた
4)流入河川も汚くなった
5)生物の住めない海となった
6)水面下は見えない:もし見えたらこれほどひどくはなかったであろう。
7)見放された海:東京湾
8)50年かけて元に戻す:汚濁負荷を半減に
9)結局は生態系の循環に学ぶしかない





14回 都市域における自然環境の意義

<概要>
 自然認識は生活の中で育まれる。我々が生物であり,地球レベルで見れば生態系の法則から一歩も外へ踏み出せない存在であることを考えれば,万人が自然認識を深めていくことが<何よりも>大切である。我々に求められる自然認識は,持続性をキーワードに考えることができる。ヒトが生物種として存続するためには,他の生物も同時に存続しなければならない。人間生活と関係のない(と思われている)生物も,複雑な生態系ネットワークを介して見ると,決して無関係とはいえない。どのくらいの生物を失ってもヒトは存続可能か,という問に対する結論は出ていないし,今後も出ないであろう。とするならば,最大限に安全側の考え方をすることも必要であろう。すべての生物種を絶やさないようにすべきである。

 世代論の観点から見ると,大人−子どもの間にいろいろな不公平が起きている。例えば,体験の場としての自然環境,化学物質等による環境汚染,社会環境からみた活動時間,遊び場スペースの面積など,子どもが成長してゆく過程で重要な要素において不公平が見られるのである。このほか,パソコンや電子ゲーム,学習塾,生活品や玩具などにおいては物・量の豊富さから考えて過去は欠乏しており現在は飽和している。これも不公平であろう。このように世代の間で生じている不公平を「世代間の不公平」と呼ぶ。  時代とともに社会が変化してゆく世の常を考えれば,世代間の不公平の完全な解決などあり得ないし求めるべきでもないだろう。科学や技術の発展に伴って,あるいは社会の仕組みの改変によって我々の生活は変わっていく以外にない。しかし世代を通して変わらない方が望ましいし,変わるべきでないものもある。それが自然環境である。

 我々は,植物−動物−微生物の関係から成り立つ,複雑でしかも閉じている生態系ネットワークの一員である。すでに述べたように,生物はエネルギーの乗り物であり,植物以降のエネルギーの受け渡しは生物間の相互作用でのみ行われる。だから我々は生態系の一員から決して外れることはできない。都市生活においては,一見,自然環境の存在価値を見失うこともあろう。しかし私たちが口にする魚も野菜も穀類も,それらはまぎれもなく生態系の一部なのである。我々はこれからも生態系の物質循環の中でその一部を食べ,そこに排泄して暮らさねばならないのである。高度消費社会に暮らすわれわれには,生態系の連鎖があまりにも見えにくくなっている。

 人類が健全な生活を存続させるためには,何よりもそれを支える自然環境が健全であり,生態系における物質循環が正しく機能していることが求められる。したがって,都市生活者も,郊外生活者も,農村生活者も,身近な自然環境を十分に経験し,重要性を正しく認識し,保全に努めなければならない。

 このときに大事なことは,モデルとなるような自然が豊富に存在することである。もし幼少の頃からどす黒い川ばかり見て育ったら,河川に対してどのような認識を持つだろうか。清流で毎日遊んでいた子どもと較べて,自然環境保全の観点からどのような意識の違いが出て来るであろうか。言うまでもないであろう,多様で豊かな自然環境を経験した子どもの方が,<護りたい自然>という<大切な価値観>が芽生えているであろう。河川に限らず,雑木林・原っぱ・丘陵でも全く同じことがいえる。

 現状を見るとどうか。都市河川は一時の極限までのよごれからは改善したが,多くはコンクリート護岸の水路と化し,市民が憩いの場として利用していたかつての面影はなくなっている。雑木林は整地されてマンションとなり,丘陵は切り崩されてニュータウンとなった。原っぱは見つけることも難しくなってきている。この状況では,都市に暮らす子どもは,身近な生活空間に体験の場がないのであるから自然環境に関心が持てないであろう。これは<感心を持たせてもらえない>という世代間の不公平である。<大人>の世代は身近な自然環境の中で遊んだ経験を持っているからである。

 正しい自然認識は,机上で学ぶべきものではなく体験すべきものである。そして我々が,守るべき自然という認識を持たなければ,貴重な自然−水と緑と土−を回復不可能なまでに改変してしまうこともあるだろう。

 我々が正しい自然認識を世代を越えて受け継いでいくために,模範と見なせるような自然環境が市民の生活範囲に必要なことは明らかである。自然の教育力を利用するために都市内に豊かな自然環境を創り出すということは,包括的に捉えれば,都市問題−水汚染・大気汚染・熱汚染−の解消への道そのものともいえる。人類の多くは今後も都市生活を続けていかざるを得ないが,これからの都市開発・都市再生においては,十分な規模の自然環境を都市の内側に含めることが必要である。



1)大都市圏にこそ自然が必要である
2)人々の多くは都市に住んでいる
3)自然環境からなされる意識形成
4)世代間の不公平を考えよう:子どもに本物の自然を
5)まずは大人が取り組むことが大事
6)自然環境のもつ教育力
7)第一次産業の維持・復興と自然環境の保全
8)世代を越えて守らねばならぬなもの
9)講義を終わるにあたって





15回 試験






関連文献紹介

1 環境・社会・経済分野

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石川英輔 大江戸えねるぎー事情 講談社 1990年
石川英輔 大江戸リサイクル事情 講談社 1994年
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岩波書店編集部(編) 子どもたちの”地球を救え” 岩波書店 1992年
宇井純 公害原論(合本) 亜紀書房 1988年
宇井純 検証ふるさとの水 亜紀書房 1983年
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河宮信郎 必然の選択−地球環境と工業社会− 海鳴社 1995年
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末石富太郎 都市にいつまで住めるか−地球環境時代の都市づくり− 読売新聞社 1990年
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中西準子 水の環境戦略 岩波新書(赤)324 岩波書店 1994年
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日本環境学会編集委員会(編) 環境科学への扉 有斐閣双書Gシリーズ 有斐閣 1984年
沼田真 自然保護と生態学 共立出版 1973年
沼田真 都市の生態学 岩波新書(黄) 岩波書店 1987年
農文協文化部 石油文明と人間 人間選書5 農山漁村文化協会 1977年
半谷高久,加藤辿(編) 水とつきあう 化学同人 1983年
原田正純 水俣病 岩波新書B113 岩波書店 1972年
原田正純 水俣が映す世界 日本評論社 1989年
福岡克也 森と水の経済学−自然と人間 共生の文明へ 東洋経済新報社 1987年
本間都 やさしい下水道の話 北斗出版 1988年
松井覚進 水 朝日新聞社 1992年
宮島信夫(編) エネルギー浪費構造 亜紀書房 1980年
宮島信夫 大量浪費社会 技術と人間 1994年
室田武 雑木林の経済学 樹心社 1985年
室田武 水土の経済学 福武文庫 福武書店 1991年
室田武,多辺田政弘,槌田敦(編著) 循環の経済学−持続可能な社会の条件− 学陽書房 1995年
森住明弘 汚れとつきあう−地球にやさしい生活とは− 北斗出版 1990年
綿抜邦彦 地球−この限界 テクノライフ選書 オーム社 1995年
安田喜憲 文明は緑を食べる 読売科学選書 読売新聞社 1989年
山下惣一 土と日本人−農のゆくえを問う NKHブックス498 日本放送出版協会 1986年
山田國廣 水循環思考−ハイテク病社会の水汚染− 北斗出版 1989年 
アメリカ合衆国政府/逸見謙三,立花一雄(監訳) 西暦2000年の地球1 家の光協会 1980年
アメリカ合衆国政府/逸見謙三,立花一雄(監訳) 西暦2000年の地球2 家の光協会 1981年
イーディス・B・ワイス(著)岩間徹(訳) 将来世代に公正な地球環境を 日本評論社 1992年
シュレーダー=フレチェット(編)京都生命倫理研究会(訳) 環境の倫理(上) 晃洋書房 1993年
シュレーダー=フレチェット(編)京都生命倫理研究会(訳) 環境の倫理(下) 晃洋書房 1993年
D.H.メドウスほか(著)大来佐武郎(監訳) 成長の限界 ダイヤモンド社 1972年
H.T.エンゲルハートほか著,加藤尚武,飯田亘之(編) バイオエシックスの基礎 東海大学出版会 1988年
バリ・コモナー(著)安部喜也,半谷高久(訳) 何が環境の危機を招いたか (B189)講談社 1972年
NHK取材班 日本の条件6 食糧(1) 日本放送出版協会 1982年
NHK取材班 日本の条件7 食糧(2) 日本放送出版協会 1983年


2 水圏環境科学・植物生理学・基礎科学分野

有賀祐勝,川崎健,渡辺競(編) 温排水と環境問題 厚生社厚生閣 1975年
小倉義光 一般気象学 東京大学出版会 1984年
井口和男ほか 無機化学 廣川書店 1980年
石倉成行 植物代謝生理学 森北出版 1987年
大沢昭緒ほか 無機化学 廣川書店 1978年
影山昇(編著) 水産教育と水産学研究 成山堂 1995年
川合禎次ほか(編) 日本の淡水生物−侵略と攪乱の生態学− 東海大学出版会 1980年
環境庁水質保全局監修・水質法令研究会(編) 改訂水質汚濁防止法の解説 中央法規 1988年
北野康・三宅泰雄 水質化学分析法 地人書館 1960年
北野康 化学の目で見る地球の環境−空・水・土− 裳華房 1992年
北野康 水と地球の歴史 NHKブックス380 日本放送出版協会 1980年
桐谷圭治・笹波隆文 環境汚染と生物T−農薬と生態系− 生態学講座33 共立出版 1972年
黒木敏郎(編) 海洋環境測定 厚生社厚生閣 1982年
小泉清明 川と湖の生態−生態学への招待5− 共立出版 1971年
合田健 水質工学−基礎編− 丸善 1975年
合田健(編) 水質環境科学 丸善 1985年
近藤一二 無機化学とその理論 明星大学出版部 1984年
佐佐木行美ほか 新教養無機化学 朝倉書店 1986年
佐藤七郎 細胞(UP BIOLOGY) 東京大学出版会 1977年
清水誠 海洋の汚染−生態学と地球化学の視点から− 築地書館 1972年
清水誠・檜山義夫 水産生物と環境 大日本図書 1974年
杉浦吉雄 海と環境 環境科学ライブラリー2 大日本図書
須藤英雄(編) 海からみた地球環境 成山堂 1994年
住明正ほか 地球環境論(岩波講座 地球惑星科学3) 岩波書店 1996年
高井康雄・三好洋 土壌通論 朝倉書店 1977年
地学団体研究会(編) 岩石(新地学教育講座4) 東海大学出版会 1976年
地学団体研究会(編) 星と宇宙(新地学教育講座13) 東海大学出版会 1977年
津田松苗 日本湖沼の診断 共立出版 1975年
津田松苗 汚水生物学 北隆館 1964年
津田松苗 陸水生態学 共立出版 1974年
津田松苗 水質汚濁の生態学 公害対策技術同友会 1972年
津田松苗(編) 水生昆虫学 北隆館 1962年
角皆静男 化学が解く海の謎−赤潮・マリンスノー・マンガン団塊など− 共立出版 1985年
手塚泰彦 環境汚染と生物U−水質汚濁と生態系− 生態学講座34 共立出版 1972年
西村雅吉 環境化学 裳華房 1991年
西村光雄 光合成 岩波書店 1987年
服部明彦(編) 湖沼汚染の診断と解析 日刊工業新聞社 1988年
服部勉 微生物生態入門(UP BIOLOGY) 東京大学出版会 1978年
半谷高久 水質調査法 丸善 1960年
半谷高久・安部喜也(編) 水質汚濁研究法 丸善 1972年
半谷高久(監修)大谷千代子(編) 日本環境図譜 共立出版 1978年
半谷高久(編著) 地球化学入門 丸善 1988年
中村運 一般教養 生物学の基礎 培風館 1984年
日本海洋学会編 海と地球環境−海洋学の最前線− 東京大学出版会 1991年
日本水産学会(編) 水域の自浄作用と浄化(水産学シリーズ30) 厚生社厚生閣 1979年
日本水産学会監修・吉田陽一(編) 水域の窒素:リン比と水産生物 厚生社厚生閣 1993年
日本水産学会監修・石田祐三郎ほか(編) 赤潮と微生物 厚生社厚生閣 1994年
日本地球化学会編 水汚染の機構と解析 産業図書 1978年
日本分析化学会北海道支部編 水の分析(第3版) 化学同人 1981年
野崎義行 地球温暖化と海−炭素の循環から探る− 東京大学出版会 1994年
野田晴彦・丸山工作 生物学入門(改訂版) 培風館 1983年
水野信彦・後藤晃(編) 日本の淡水魚類 東海大学出版会 1987年
宮代彰一 自然系実験−科学的な考え方と進め方− 放送大学教育振興会 1985年
宮地重遠(編) 光合成 朝倉出版 1992年
宮地重遠(編) 代謝 朝倉出版 1992年
村上枝彦 入門生化学 培風館 1977年
門司正三・高井康雄(編) 陸水と人間活動 東京大学出版会 1984年
本川達雄 ゾウの時間 ネズミの時間−サイズの生物学− 中公親書1087 中央公論社 1992年
山県登 水と環境 大日本図書 1973年
山県登・大喜多敏一(編) 環境汚染分析法2−サンプリングと評価 大日本図書 1973年
山岸宏・古田能久・福原晴夫 水界生物生態研究法T−淡水の魚類とベントス− 共立出版 1976年
山岸宏 現代の生態学(新版) 講談社サイエンティフィック 1982年
山崎不二夫(編著) 水資源を考える−危機の打開− 三共出版 1981年
柳哲雄 海の科学−海洋学入門− 厚生社厚生閣 1988年
吉村信吉 湖沼学 三省堂 1937年
ウィルキンソン J.F./大隅正子監訳 小堀洋美・大隅典子訳 微生物学入門 培風館 1989年
ティンズレイ I.J./山県登(訳)環境汚染の化学 産業図書 1980年
プラット R./梅田敏郎・石弘之・西岡正(共訳) 水−生命をはぐくむもの 紀ノ国屋書店 1975年
COMPTON C./石森達二郎ほか訳 Compton化学T−その本質の理解 東京化学同人 1981年
COMPTON C./石森達二郎ほか訳 Compton化学U−人間社会とのかかわり 東京化学同人 1981年
MOORE J.W., MOORE E.A./岩本振武 環境理解のための基礎化学 東京化学同人 1980年





2003年3月6日