---鈴木智子報告---
今回のワークショップは、第3回までの講師、光島氏からバトンタッチされ、私が担当することとなりました。いつもはサポート側で「どんな作品ができあがるのだろう」と愉しんでいますが、講師の立場になると画材やテーマ選びにもかなり悩んでしまいます。
「できれば今までにない画材を…」という思いがあったところ、光島氏より提案をいただきました。その画材は”蜜蝋”です。
蜜蝋は常温では固体ですが、湯せんで温めると柔らかくなり、溶け出します。
その溶けた蝋を筆に取って紙に描く。すると、また紙の上で冷やされてそのまま筆あとを残し固まるのです。
手で触ると、指の腹に蝋のキュッとしたひっかかりを感じながらも、柔らかな温かみのある触り心地をあたえてくれます。
また、筆で描くと、描く時のちからの加減によって、線に強弱がつき、その人の特徴がでてきます。線が揺れたりぶれたりすることのおもしろさもあるでしょうし、「これならば、いろいろな可能性が広がるのではないか…」と思い決めました。
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さて、当日のワークショップ、『ことばと絵』と題して、2部構成で作品づくりを行いました。
まず初めは「ことばからイメージするもの」。
方法は、参加者それぞれに自分の「好きなことば」を小さな紙に書いてもらいます。それを集めてシャッフルし、ひとりひとり引き当ててもらい、そこに書かれた「ことば」から自分がイメージするものを絵にするのです。 |
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他の人からのことば、しかも文脈のないことばですから、難しいかも…と思っていましたが、どんどんと描き進めていかれる様子にこちらの方が圧倒されるほどでした。
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●第一部の皆さんの作品●
※クリックすると拡大画像を表示します |
白井さん:幸せな一日 |
山川さん:ありがとう |
宮沢さん:若葉 |
奥野さん:ソフィーの世界 |
平野さん:魔法 |
光島さん:心 |
河合さん:イケイケブットピ系 |
斉田さん:愛 |
Tさん:こころ |
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1部を終えて、「蜜蝋で描く難しさ」を指摘する声がありました。
湯せんで溶かした蜜蝋を筆にとって描くのですが、紙の上で線をひこうとしてもすぐに固まってしまうため、長い線が思うようにひけないのです。
サポーターさんとの連携プレイをできるだけ素早くしてもらうしかなく、私も大いに反省しきりです。
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第2部では、「詩のことばからイメージするもの」を描いてもらいました。
選んだ詩は、谷川俊太郎の『生きる』です。
1部と同様に画材は蜜蝋ですが、絵にはアクリル絵の具で彩色もしていきます。
また、紙ではなく、板(百円ショップで売られているコルクボードを利用しました。)
に描きます。板には、蜜蝋の色や絵の具の色が鮮やかに出るようにと白い下地剤をぬっておきました。 |
点字と墨字で配った詩
クリックすると詩を見て頂けます | |
みなさんの作品を見ると、同じ詩を聞いても、描き手によってイメージするものが違うのだとよくわかります。風景をイメージした方もあり、抽象的な絵もあって、詩のことばに自分なりの考えを持って描いておられました。
彩色もサポーターさんと話しをしながら色づくりをしていたようで、作品には色鮮やかなものがたくさんありました。
今回のワークショップは、湯せんした蜜蝋を使うことと、筆を使うということで、「いつもと違う!」ものにしたいと思っていました。
蜜蝋は使いやすい画材ではないかも知れませんが、描かれた作品には、蜜蝋の量感を上手く出しているものや、筆の動きのおもしろいもの、色の使い方などにひとりひとりの違いがあり、蜜蝋という画材の幅の広さを感じられました。
どんな画材を使うかということは、好みもありますし、万全なものなど、なかなかありませんが、いろいろなものにいろいろな可能性があるのだと感じてもらえたら嬉しく思います。
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●第二部制作中の皆さん●
※クリックすると完成作品の拡大画像を表示します |
奥野さん:愛 |
山川さん:ANTENA |
光島さん:手 |
白井さん:グチャグチャライブ |
平野さん:手のひらを太陽に |
Tさん:揺れるブランコ |
河合さん:チャレンジ |
宮沢さん:道 |
斉田さん:ヨハンシュトラウス
美しく青きドナウ |
*Special Thanks*
○蜜蝋を画材に使うと聞いて、以前、染色をされていた宮沢氏が蜂の巣から取れた蜜蝋の原形を持って来てくれました。六角形がびっしりと並んだ まさに、蜂の巣型。蜂がこれをつくったのかと思うと自然の不思議を感じました。参加者の方々も手で触っては、「ほーっ」と感心されていました。
○蜜蝋は独特のニオイがあります。あまりいい香りとはいえず、ワークショップを公共の施設でするのは難しく、アクセス・ビューの山本氏の工場にあるスペースをお借りしました。
ありがとうございました!
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