あべこずえ報告──
大阪のココルームの事業である視覚障害者と晴眼者によるアート参加プログラム
「読歩プロジェクト」が催され、ココルームからの依頼により、ゲスト参加で鑑賞ツアーを
おこなってきました。
大阪現代美術センターでは、大阪のアート系のNPO団体があつまって企画した展覧会
「大阪・アート・カレイドスコープ」展が催されていました。
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待ち合わせは、美術センターの地下に通じる、谷町4丁目の改札口です。
センターまでの途中の広場で、読歩プロジェクト主宰の飯島さんから、今回の企画
の概要についてお話があり、そしていつものように3人ひと組みのグループ分けを
しました。
今回は、視覚障害の人が少なかったので、見える人だけのグループも作りました。
全員にアイマスクも配り、言葉をつかってお互いが感じたことを伝え合う、ということに
重点をおいて鑑賞しました。
アイマスクを使って鑑賞することに意味があるのか?
ちょっとどきどきでしたが、
今回の読歩プロジェクトのテーマが「線のからだ、そして言葉」だったことも
あり挑戦。
美術センターまでの階段をのぼるのに、アイマスク体験をしてもらいましたが、
その後もアイマスクをして美術館まで移動する人も何名かいました。展示室に
入るまでに、すっかり盛り上がり、視覚以外の感覚も研ぎ澄まして、鑑賞にはいりました。
今回の企画は、少し変わった作品展示です。
展示室Aと展示室Bがあり、Aの方は、理想のアートセンターのエントランスを
展示室の中に作ってしまったという空間展示でした。展示室Bは隣の建物で、
エレベーターで地下に移動します。
展示室Aは、部屋の3分の1がカウンターで仕切られています。カウンターには、
人がいて、クロークや椅子がレンタルできるところ、カフェ、ちらしの情報ブースが
あります。カウンターの奥は、まるみえの事務所で、応接のためのソファーや
蜂の巣のような八角形のおしゃれな本棚があったりします。
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カウンター以外の空間はだだっぴろく、壁には、いろいろなアーティストの映像
の作品や写真の作品、不思議なソファーのような展示台のようなもの、そして、
カウンターの上には光島さんの「REPEAT」という大きな透明の作品が展示されて
います。
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まずは全員で展示室Aに入り、荷物や服を預けそして、そこからグループごとに
別れ鑑賞スタートです。
そのまま展示室Aから見るグループとBに行くグループと別れました。
見える人どうしは、交代でアイマスクをしたり、弱視の方がアイマスクをした人を
展示室まで誘導して鑑賞したりしました。
展示室Aの方は、いろいろ工夫のされている空間を探検ということで、
レンタル椅子を借り、自分の場所を見つけたり、とにかくぺたぺたさわったり、
なんだろう??と身体を動かして鑑賞しました。
あるグループは、凹凸のある展示台もいすなのか?
凹のほうに座るのか、凸のほうに座るのか、などの憶測がされていました。
詩人の上田暇奈代さんの詩が、機械をつかって、音声で聞こえてくるという作品があり、
これはおもしろい、と集まって聞いていました。
すでにこの展示空間を何度も知っている読歩プロジェクトの飯島さんも、グループに
なって再び鑑賞することで、また違ったイメージを持ったとおっしゃっていました。
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 |
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展示室Aに比べ、地下にある展示室Bは、すこし薄暗い部屋に、しばたゆりさんの
作品がおいてあります。
ポニーテールがばっさりと切られた束になった髪の毛の作品。中央には白い布の
かかったテーブルのような、でももこもこした作品。
そして、窓際には本物の苔を使った作品がありました。
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白のテーブルのもこもこは何にでも見えます。あるグループは、弱視の方が、2人
のアイマスクをした見える人を誘導し、男性の背中に見える、女性の胸のようだ
などと、手をのばして作品をなぞり、盛り上がっていました。
また別の見える人同士のグループは、マンホールの丘のような苔の作品をみて、
ハイジのいるメルヘンチックな印象だとか、いや、日本庭園のような渋い印象だと
言い合っていて、見えている人同士お互いの印象の違いを語っておられました。
プログラムの後半は、トークが行われました。
ゲストとしてダンサーの北村茂美さんと、光島さんと、ビューからは阿部が参加です。
なんと!北村さんは鑑賞中に引き続いて、トークの時もアイマスクをされたままで
マイクを持ち、話をされていました。
彼女の言葉で印象的だったのが、アイマスクをすることで、最初はぎこちなかった関係も、
導かれることで信頼関係ができ、安心して話すということが体験できた、
とおっしゃっていました。
光島さんからは、アイマスクをすることで、アイマスクをはずせない視覚障害の人の
気持ちがどこかまでわかるのか、という提議がされていました。
今回はいつもと違った鑑賞ツアーとなりました。グループがとても仲良くなり、
盛り上がっていたようです。
見える見えないに関係なく、まず「信頼関係をつくる」ことが、作品を前に自分の気持ちを
言葉にできる大前提だなぁと気づきました。
お昼の鑑賞ツアーだったので、終わってから腹ぺこ!で、韓国料理屋に行きました。
おいしいひととき、ツアーの余韻を楽しみました。
参加者からの感想は、「弱視の自分が、アイマスクをした人たちが見えないということを
楽しんでおられるのに刺激をうけた。私の身体は、半分が視覚障害者で半分が健常者で、
それをうまくいかして何かできたらいいと思いました」「アートが単に鑑賞するだけでなく、
人とつながることを含め、いろいろな可能性を感じた」という感想がありました。
今回の展覧会のサブタイトルどおり「すべての人は表現者」で、みんながみんな、
作品に対して何かを発したという印象がありました。いろいろな作品を見るだけ
でなく、いろいろな鑑賞方法を今後も試していきたいなぁと思いました。
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