── 光島貴之報告 ──
以下は、ワークショップの案内文の一部です。
ぼくは、もうずっと街並みを見ていません。昔見えていた人も、ずっと
見たことのない人も、立体コピーで街をさわってみませんか。
ぼくの歩いているまちは、点字ブロックと、ときどきぶつかる電柱や足音、
人々の話し声で構成されているのかなぁ。
デジカメと立体コピーを組み合わせれば、普段手の届かない街並みがさわれるように
なるのではという思い付きから、このワークショップの企画が始まりました。
(光島貴之)
こんな思いを実現すべく、京大塩瀬研究室の協力を得て11月11日、
京都大学総合博物館2階セミナー室にて、ワークショップを開くことができました。
遠くは、東京や香川からも申し込みがあり、見えない人10名、サポーター20名、見学やスタッフも含めると40人近くのメンバーで実施することになりました。
まずは、セミナー室にて自己紹介、チーム分けの後、デジカメの使い方や、データの受け渡し方法、撮影場所についてのオリエンテーション。
14時頃から、チームごとに学内を散策しながら撮影。 |
オリエンテーション |
京大構内地図の立体コピー | |
ぼくは、いつも使い慣れている音声ガイド付きの携帯で撮影することにした。
どんなものを撮りたいかとか、場面の説明をききながらということは、目の前にしているのが絵ではなくて、風景だという違いはあっても、普段ビューでやっている絵の鑑賞に通じるものがあったと思う。
そして納得したところで写真を撮る。対象物がちゃんと画面に入っているかを確認してもらい、ぼく自身で携帯の決定ボタンを押すようにした。
時計台付近や図書館の建物、高い校舎に登って、周辺の山並みにも挑戦。
さてここからが、京大スタッフの腕の見せ所です。
撮影したデータを画像処理して、シンプルなデータにしてプリントアウト。それを立体コピー用紙にコピーして、立体コピー機に通す。
かなりがんばってくれたのですが、この一連の処理に時間が掛かってしまいました。 |
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京大スタッフ達も大奮闘 | |
撮影の途中でも、メモリーカードを回収して、効率的な処理を目差してもらったのですが、何しろ初めての経験。
頭の中で計算したようにはスムーズにいかなかったようです。
結局、後半に予定していた見えない人が普段感じている街を作るというプログラムは、中止しなければならなくなったけれど、
その分、立体コピーの写真を触りながら、チームごとにゆっくり話し合う時間ができてよかったと思っています。 |
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最後に、感想や今後への課題を記して、まとめとさせていただきます。
1.写真を撮るという行為を通して、見える人との対話(見える世界と見えない世界の違いを明らかにできた)が
成立した。
2.対象物だけの輪郭を知るなら、そのもののかたちだけを抜き出すことで可能になるが、知りたいのは、写真としての雰囲気である。
3.しかし、情報が多すぎても認識できない。対象物と周囲の風景を分けて出力できないか。
4.コンピュータの自動処理の限界は、どの程度だろうか。視覚障害者が、手持ちのデジカメで撮影して、データをホストコンピュータに転送すれば、即座に自動処理されて、立体コピーになって戻ってくるようなことは、夢ではない。
5.遠近法を理解する手がかりになった。
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