さわやかな秋晴れのなか比叡山、比良山を仰ぎ、目前に琵琶湖をのぞむ美しい自然に囲まれた佐川美術館にて鑑賞会を行いました。
佐川美術館は大胆な切妻型の大屋根を特徴としたモノトーンの建物でさざなみ漂う水庭に囲まれた「水に浮かぶ美術館」として1998年に開館した比較的新しい美術館です。
まず、学芸員のかたから日本の自然美、生活文化、仏教文化の
ルーツ、和の心を大切にした美術館のコンセプトなどの説明を受けました。
今回の鑑賞会でははじめて立体作品を中心に鑑賞。
現代日本の具象彫刻を代表する今年90歳を迎えられた佐藤忠良氏のこれまでの歩みをテーマにアトリエを再現したような展示室のなかにごく自然に配置されたブロンズ像、素描作品を鑑賞しました。
参加者は総勢23名でしたが今回は視覚障害者の参加者は4名で少しアピール不足だったかと反省しています。
少人数のグループに分かれて思い思いに鑑賞しましたが、私たちとともに学芸員のかた2名が適宜解説をしてくださったり、質問に答えてくださったり、また、今回の鑑賞ツアーでは美術館の諸注意を守ったうえで直接ブロンズ像に手で触れることもでき、これまでとは違った鑑賞を楽しむことができました。
むやみに作品に触れることはできませんが、作品を傷つけないために手の汚れは洗い落としておき、また指輪や腕時計など金属類が誤って作品に触れてしまわないように身からはずしておくことなどを守ったうえで、美術館の了承を受け、やさしく作品に触れて鑑賞することはできます。
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顔の輪郭、顎の線、頬のふくらみ、目鼻唇、皺、身体の曲線美、しなやかなポーズと緊張した筋肉、やわらかな脂肪、裸体にまとったシャツ、目深に被った麦藁帽子、股上の浅いジーンズのうえのおへそ、語るような指先の表情。
身近なひとびとをモデルにした作品が多く、同一モデルの作品では年齢を重ねることによる身体的、内面的な変化までも繊細にまたおおらかに表現されているようでした。
両親とともに参加された少年は、ブロンズ像を無心になで、にっこりとした表情。頭像とおとうさまの顔を交互に触れて、その感触を較べて楽しんでおられました。
あるグループでは若い女性の頭像を見て、「外は雪の降りしきる寒い冬の夜、暖かい部屋のなかでくつろぎながらテレビを見ているような表情。」と印象を語る
ひとがいたり、自由な発想でさまざまな想像力をかきたてられるような会話で盛り上がっていました。 |
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また、常設展の平山郁夫のシルクロードや日本の寺院の絵の鑑賞では日本の伝統芸術や仏教文化に造詣のあるひとの話を聞きながら作品の奥深くの世界に誘われるような場面もありました。
自分で絵を描くことが好きだった、数年前に視覚障害者になったかたは、残された視力でじっと絵を見つめ、ガイドの補助的な説明で絵画のなかの世界を確認しながら鑑賞されていました。
青い闇の中、月光に照らし出された銀色の廃墟の静けさ、夕暮れの空を背景にシルエットで描かれた砂漠を歩く駱駝の列。
圧倒的なブルー、オレンジの美しさ、そのなかに浮かび上がったモチーフを心の目に焼き付けておられたのでしょうか。
鑑賞の合間には館内のレストランで食事をしながらしばし休息。
初参加のかたがたも交え、偶然の出会いのなか、それぞれの思いを重ね合わせながら、美術作品のもついろいろな面を発見することのできた鑑賞会でした。
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