第20弾創作ワークショップ
「さわり言葉で絵を読み、物語を作ろう!」

 
 


2011年6月5日(日)
場所 山科身体障害者福祉会館
参加者 見えない人・見えにくい人 : 5名
見える人 : 8名
ビュースタッフ : 7名
講師 : 光島貴之

── 光島貴之報告 ──

なぜこのような企画をやろうとしたのか?

昨年(2010年)8月に、NTT インターコミュニケーションセンター [ICC]で行なわれた 「触り言葉で話してみよう」という ワークショップに参加させてもらったのが、今回の企画のヒントになっています。 というか、とにかくおもしろかったので、ビューのワークショップでもやってみたいと 思いました。だからほとんど物まねです。
でも、いくら何でもまるごとコピーではダメですよね。どのあたりをビューらしく やったかを説明しながら、報告に代えさせていただきます。

ビューでは、言葉による絵の鑑賞を続けて来ました。一方で絵を理解するためにも 自分で絵を描くということにも挑戦して来ました。
今回の創作ワークショップでは、それらの二つの行為を結びつけるような体験を 目指しました。

見えない人は、当然指先が敏感になっていると思われがちです。点字を読んでいる ところを見かけると「すごいなぁ!」って言われたりします。
しかし、指先が敏感だからと言って、感性豊かなさわり心地を持っているとは限り ません。
指先からどんな感覚が伝わってくるか、それをうまく言葉にして伝えることができたら さわることの楽しみが一気に増加するのではないでしょうか。そして、そのような 感性が広がることは、見える人にも楽しいことだと思います。

さわったものを表現する言葉は、たくさんあります。「さらさら」「ざらざら」「ぬるぬる」 「ごつごつ」などさわり心地と共に気持ちも動いていろんな記憶もよみがえって来ます。 見える人も見えない人も、さわり心地だけで楽しむプログラムを目指しました。


準備

今回は、サンプルピースに使う素材集めとそれらを模式図にして用意するという準備作業 が大変でした。ご協力いただいたスタッフの皆さま、ありがとうございました。
素材集めは、ひゃっきん。一つの素材を参加人数分用意して、自由に選んで使ってもらえる ように準備。素材の種類は、25種類になりました。
触り言葉の模式図 集めきれなかった素材としては、金属系や石材系のプレート状のものです。
ホームセンターや、手芸用品の店などを丹念に回る必要があるようです。

模式図は、ザラザラからつるつるに向かう変化。
堅いものからふわふわしたものへの変化。
弾力性のある堅いものから、ベタベタしたものへの変化。
などが分かりやすいように並べてみました。


ワークショップ当日

ワークショップ会場 見えない人1人と見える人2名でチームを作りました。
参加者20人。5チーム。

導入としては、ブラックボックスにサンプルピース(4センチ四方、厚さ3ミリのパネルに 様々な手触りの素材を貼ったもの)を入れてさわってもらい、その感覚を言葉にしてみま した。
最初は、1枚だけ、次は、違う手触りのピースを2枚並べてさわってもらいました。どちら の手触りが好きか、手触りから思い出すものがあるかなどを言葉に置き換えていきました。
ブラックボックスを触る1 ブラックボックスを触る2 ブラックボックスを触る3
何度か繰り返す内に、触り言葉の扱いになじんできたところで、絵の鑑賞を試みました。
1枚の絵を配り、その絵をさわり言葉に置き換えながら鑑賞するのです。
使った絵は、マネの「草上の昼食」です。
まず絵をいつもの言葉で鑑賞しながら、部分的な手触り感を触り言葉の模式図から選ぶ ようにしてもらいました。
例えば女性の肌は、もちもちしていて滑らかだとか、背広を着た男性の髭は、ザラザラ した紙やすりとか、絵全体は、じめじめした粘着質を感じるなどの会話が続きました。
絵と模式図の会話1 絵と模式図の会話2
しかし、全体を触り言葉だけで表現すると言うのはちょっと難しかったかな。絵を言葉で 鑑賞するときは、いろんな方向にイメージが広がる方がおもしろいです。ところが、 さわり言葉に当てはめるという作業は、何か答えを探すようなことになってしまい、 イメージを狭めてしまう方向に作用したのかも知れません。もっと工夫する必要を感じました。

最後に、さわり言葉を組み合わせて、思い出に残っている情景や物語を3〜5枚のサンプル ピースを使って表現してもらいました。
サンプルピース選び サンプルピースで物語作り1 サンプルピースで物語作り2
テーマは、夏・旅・家・恋・自由の中から一つ選んでもらうことにしました。
発表は、サンプルピースを台紙に貼り合わせたものを見せながらの、語りになりました。
物語の発表1 さわるという感覚を思い起こしながら語り始めると、みんな止まらない感じでそれぞれ おもしろい話を聞かせてくれました。
見えない人も、手元に模式図を置いて、隣の人に使われているサンプルピースを教えて もらいながら語りを聞いたので、リアルタイムで話についていけたと思います。
発表されたものからいくつかを紹介しておきます。
タイを旅して感じた不安、人間関係、投げ出された感じ。その思考過程を明らかに。
地下鉄のドアに白杖が挟まって列車を止めてしまった失敗談から始まり、そのとき親切に してくれた人への淡い恋心。
現在のマンションの材質を、五つの素材で表現した作品。
会話をテーマにしたさわり語り。喫茶店や居酒屋で交わされた会話の雰囲気や、その変化 をサンプルピースを触りながら絶妙な語り口で表現。
子ども時代、夏休みに森を冒険したときの気持ちの動き。
娘時代から現代にいたる人生を語る人。
ヨーロッパでの貧乏旅行を語る人。
物語の発表2 物語の発表3 物語の発表4 物語の発表5


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