第21弾創作ワークショップ
「アニメーションを作ろう!〜香り&匂いでshort story〜」

 
 


2011年10月30日(日)
場所 京都市山科区身体障害者福祉会館 1階会議室
参加者 見えない人・見えにくい人 : 5名
見える人 : 8名
ビュースタッフ : 5名
講師 : 鈴木ともこ

── 鈴木ともこ ──

「アニメーションを作る!」を目的にした今回のワークショップ。
以前も一度行っていて好評だったのと、鑑賞ツアーで映像作品を鑑賞するときに 参考になることもある為、もう一度取り上げてみたいと思いました。
嬉しいことに今回参加された見えない人・見えにくい人の殆どが初アニメ作り。
新鮮な作品が生まれる予感です。

初めの説明 参加者全員が集まり、まずは「アニメーションの作り方」から説明を始めました。
見える人にはパラパラマンガを想い浮かべてもらい、一コマ一コマをデジカメで撮影し、 パソコンで繋げて動画にすると言えば分かりやすいと思うのですが、見えない人にとっては、 それだけでは伝わりにくいと思い、
「自分の腕を少し上げて、写真を一枚。更に少し上に上げて、写真を一枚。」
そうした写真をパソコンで映画のフィルムのように繋げると、一連の動作が 映っている動画になると説明しました。
けれど、「アニメーション自体、そもそも何ぞや?実写とどう違うのか?」という 質問が飛び出して…一瞬あたふたです。
何とか答えたのは、例えば人間がジャンプした瞬間を写真に撮る。
また少し場所を変えてジャンプし、それを撮る。そうしていろんな場所で ジャンプしたものを繋げると人が空中を動き回っているような動画になること。
実写で撮っても加工することで、現実には起こりえない状況や話を作ったものを アニメーションというのでは?と答えました。定義付けは難しいですね。
すっきりと理解!には至らなかったようですが…

次に今回のアニメ作品をつくる上でのテーマの説明です。
「香り&匂いでshort story」と題しているように、いろいろな香りの素材を集め、 1グループに2つの素材を渡して、その香りから連想する記憶や心の動きを 話し合いながらストーリーを固めてもらいました。

香り&匂いの素材は、
コーヒー豆、材木、シナモン、ゴム、花(百合)、ぎんなん、枯葉、バニラエッセンス、 オレンジ、フレーバーティー(カシス)、お香
香りの材料1 香りの材料2
花の香りを確かめる グループごとの話し合い
あるグループは材木から「なつかしい感じ」「温泉」などいろいろな言葉を連想 している内に、
”匂いとは何か?”の話しに発展していました。「匂い→ずっとあるものではなく、 すぐになくなってしまうもの。消えていくもの。」と考え、「物が少しずつ 切り取られていって消えていくイメージ」をアニメで表現することになりました。

グループでの話し合いは20分ほどで終え、いよいよ撮影開始です。
使う材料は折り紙やモール、紙粘土や色付きマスキングテープなど様々用意しました。
それらをホワイトボードに貼付けて、デジカメで一場面づつ撮影していきます。
50場面ほど撮影できれば10秒ほどのアニメが出来上がるので、目標50枚!と お願いしました。
材料を探す1 材料を探す2
登場させる人物や物をどの材料で作るか?いろいろな材料が並ぶ中で素早く決めなくては いけません。「どんな色にします?」「手触りは?」と確かめながら、登場するものを パーツごとに切り分けていきます。中には香りの素材として渡していた枯葉を場面設定に 使っているグループがあり、上手く利用しているな〜と感心しました。

今回は見えない人・見えにくい人が監督担当でしたので、場面設定、ストーリー展開など 難しいことはないだろうか?と少し心配していましたが、どのグループの監督さんも、 場面、いろいろな登場人物(物)の動きを頭の中にイメージされているようで、
「次は◯○を登場させて…」など指示されていました。
また、グループで話しをする内に、おもしろいアイデアが出れば「それ!やりましょう!」と スパイスが加わっていきます。現場の雰囲気で一層盛り上がっていくところを見ていると、 映画作りもこんな感じかも?と思います。作り手側にしか分からない”ワクワク感”が あるのでしょうね〜。
制作過程1-1  ⇒  制作過程1-2
制作過程2-1  ⇒  制作過程2-2
制作過程3-1  ⇒  制作過程3-2
制作過程34-1  ⇒  制作過程4-2
制作過程5-1  ⇒  制作過程5-2
そうして出来上がった5作品。ページ下をご覧ください。

完成作品鑑賞 アニメーション作りが終わって、参加者全員で鑑賞会をしました。
一枚一枚写真を撮っている時は、どんな風に動いて見えるのか不安だったと思いますが、 アニメーションとして出来上がった作品を見ると、「おぉ〜!」と声が上がります。
流れるような動きでなくても、想像以上に上手く繋がっていて、アニメとして 完成していました。
「どの作品もストーリーがしっかりあってすごい!」との声も多くありました。
見えない人からは「制作を経験してみて、少しはアニメーションってこんな ものかな〜と感じ取れたような気がします。」とのことで、みなさんに楽しんで もらえたかなと嬉しい限りですが、ひとつ反省点が。
今回のアニメーションは音声が何もありませんでした。
見えない人・見えにくい人と言葉で鑑賞するビューなので、こうした形もよいと 思うのですが、音響効果などは、やはりもっと考慮すべきなのかなと。
制作時間の短さを考えると、なかなかそこまで手が回りませんが、テーマ設定の時に 上手く組み込めたらよかったと思いました。
アニメーションは平面だけでなく、クレイアニメなどいろんな可能性があって おもしろい題材です。
いつかまた、アニメーションのワークショップをする機会がありましたら、 立体アニメにも挑戦してみたいと思います。


《山川チーム》
「日曜日の午後」

●匂いの素材
オレンジ
バニラエッセンス

◆日曜日の午後、落ち着いた雰囲気の昔ながらの喫茶店の木製チェア。 オレンジの浮かんだアイスティーを飲みながら、思いにふける彼女。 すると携帯電話に着信が。「○○君からのメールやわ。」 間もなく彼もドアを開けて入ってくる。 弾む会話、コーヒーにおかわり。 やがて彼と彼女のことばは溶け合い重なり合っていく。

《茨木の風太郎チーム》
「モグラとシナモンケーキ」

●匂いの素材
枯れ葉
シナモン
◆枯葉が積もった秋色の公園。枯葉の下からはモグラが顔を のぞかせています。女の子がシナモンケーキを手に ブランコにのって遊んでいるとブランコの勢いあまって、 シナモンケーキがフォークの先から飛んでいってしまいました。 それと同時に女の子の姿が消えて… モグラはしっかりケーキをキャッチ!ごちそうさま。

《とのたチーム》
「フレグランスパーティー」

●匂いの素材
ユリの花
コーヒー
◆とある部屋の中。コーヒーカップからは深い珈琲の香り。 花瓶に挿した花からは優しい香りも流れてきて...。 2つの香りは手を取りあってテーブルの上で輪になってダンスを始めます。 美しい音楽も流れて、楽しいパーティーが続きますが、 やがて1つ、2つと花が散り始め、すべての花が散った時、香りもサッと姿を消します。 あとに残るのは、窓辺で寄り添う2つの残り香...。

≪光島チーム≫
「香りの行方」

匂いの素材
材木
カシス
◆香りや匂いは、広がりながら消えて行きます。 年輪と香りの実が、画面に現われ、それらは、外側に向かって広がって行きます。 画面からはみ出してすべてが消えた後、たった一つの実が現われます。

《たぬこチーム》
「お茶目な動物と種」

●匂いの素材
ギンナン
お香
◆大きなイチョウの樹からギンナンが落ちてきました。 そこへ散歩に来た犬が「おいしそう!」とギンナンを食べると… あまりの匂いにびっくり!思わず吐いてしまいました。 逃げ帰った犬の後には鳥が飛んで来て、ギンナンを食べますが 今度は鳥のフンとなって地面に落ちて… フンの中にあった種から芽が出て次第に花が咲きました。


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