#4 ディスカス>ディスカス向けの漉過槽 ヒロちゃん 動物&植物SIG FORUM8 #4101〜#4103 93/5/11 より転載 ヒロちゃん ID:RBE21221 *ディスカス向けの濾過槽(その1) 十年以上前となる濾材はウールと硅砂、そしてpH安定に珊瑚砂を使うのが最も ポピュラーに濾過槽でした。そして、ディスカスの飼育にも一般的にはこの濾材が 使われていたのです。 しかし、十数年前、ディスカス改良の神様である、ジャックワットレイ氏初来日の 際に「水替えに優るフィルターは無い。」と残した言葉によって、日本のマニアは 毎日の水替え地獄とはまって行ったのです。 その頃フィルターとなると前述の様に、ある程度pHを安定させるようなシステ ムだったので、水換えとなると平気で2週間から1ヵ月に一度と言うペースが普通 でしたから、大量給餌をするようなディスカスがすぐに調子を落として死んでも、 今考えてみれば全く不思議ではなかったのです。 そして、こんな状態で飼っていましたから、ワットレイ氏の奨める毎日の水換えに 切り替えてみれば、ディスカスの調子が良くなるのはあたりまえで、この辺からデ ィスカス水槽のフィルターには水作8を1個使用し、毎日換水するのが結構流行り ました。 そして、毎日の水換えにマニア達は精を出していたのです。 エーハイムのパワーフィルターが日本に入り始めたのもこの頃です。 日本の代理店はこれを販売すべく、ドイツのディスカスブリーダーの飼育現状を紹 介しましたが、これはワットレイ氏とは全く反対の方法で、換水をあまりせず濾過 システムを強化するというものでした。 そして、日本のマニアで換水派でない人達は、こちらの方へ走ったのです。 そして私は、換水量を三日に一度程度と増やすことはしましたが、基本的には濾材 は以前のままという中間派を続けていました。 換水量をそこそこ増やす事によって、ディスカスをまともに育てる事が可能とな ったら、今度は繁殖という課題が主な話題となったのは当然で、ボチボチ繁殖成功 者のレポートが聞かされるようになりました。 すると今度は、珊瑚砂の溶出成分が取り沙汰され、理由はないまま、それが繁殖の 妨げになると説明されていました。 そして、それによる勘違いからか、ディスカスの飼育全般では、珊瑚砂は元より、 溶出成分のある濾材は不向きであると、マニア達は判断してしまったのです。 その上、難しいディスカスでの濾過システムなら、一般魚にも良いだろうと、それ が尚更広まってしまったのです。 そして、その頃エーハイム用として販売されていた、溶出成分の全くないセラミッ ク濾材のエーハイメック、エーハイサブストラット等が注目され始めたのです。 そして、数年前あたりからの熱帯魚ブームによって、あっちこっちのメーカーから 、溶出成分の全く無いセラミック濾材が発売されはじめました。 私も世の中がそうなってくると、それに合わせて徐々にセラミック濾材を使い始 めたのですが、あるとき壁にブチ当たったのです。 それは、ある程度、家のディスカスが増えてしまった頃、給餌量も多すぎるためな のか、どうしても濾過が安定せず、いつも水槽の水が濁っているという問題でした 。 始めの内は、過密飼育の為ではないかと思い、毎日の換水も実施していたのですが 、どういうわけかpHの降下速度が異常に早く、たったの1日でpHが6.5から 一気に4.5まで落ちてしまっていたのです。 そして、これは濾材を洗ったくらいでは、数日で戻ってしまうので、また別の濾材 に換えて見るというくり返しをしていたのです。 それと同時に、この頃ディスカスエイズが世をはびこり始め、病状悪化の引き金が 、換水という問題も出て来た上に、水道水の水質悪化がこれまで以上に深刻になっ てきたのです。 そんなこんなで、毎日の換水と色々な工夫でトラブルを回避ししては来たのです が、気持ちとしては当然まだまだベストな方法とは思えず居たのです。 そして、その状態が1年半程経過した頃、あるプロのブリーダーのアドバイスから 、昔の方法を試してみることにしたのです。 それは先ず、以下のような問題が考えられたからです。 1.毎日の水換えは危険が多い。 最近、水道水の質が悪いというのも前提にあるのですが、それ以外に水温、水質 調整などが十分に出来な ければ、大量にはなるべくやらない方がいいからです。 少なくとも、前処理のフィルター(中空糸膜+活性炭の浄水器か工業用のミクロ フィルター)を通した水 を半日以上エアレーションして汲み置きした水でなけれ ば、魚に大きく負担がかかってしまいます。 しかし、残念ながら私の住居にはその汲み置きできるスペースがないのです。( 最近は大量換水時のみ風呂 桶に汲み置きしてます。) そして、また、濾過槽に既に問題があるときは、水換えでは対処できないのです 。 2.セラミック濾材は酸化してしまったら再生しにくい。 セラミック濾材は、濾材そのものが酸化するわけではないのですが、長期にわた って使っていると多孔質 のために濾材の奥の方に酸化物質がしみ込んでしまう様 です。 そして、この濾材を続けて使うと、水のpHを下げてしまいます。 また、濾過バクテリアも当然その濾材上では繁殖できなくなり、アンモニアや亜 硝酸濃度が上がり、水も 普段から白濁しやすくなります。 この場合、何等かの方法でセラミック濾材を再生するよりは新しいものと取り替 えたほうが手っ取り早い ようです。(捨てる必要はありません、乾燥すればまた 使えます。) これな対し、硅砂や大磯砂等は単に洗うだけで、表面の酸化物質は簡単に落ちる ので、続けて使うことが できます。 ただし、濾過バクテリアの付着のしやすさを考えに入れれば、この問題点を解決 しながらであれば、セラ ミック濾材は優れています。 3.セラミック濾材には上部フィルターに不向きなものが多い。 セラミック濾材というのはもともとパワーフィルター用に開発されたもので、な かなか目詰まりを起こさ ない高い通水性をもっています。 勿論、中には細かい粒の物もありますが、その大半はパワーフィルター内の流速 に合わせた通水性を持つ ものなので、もともと濾過能力に貧弱な上部フィルター 向きではありません。 上部フィルター用として考えるなら、直径3ー5ミリ程度で硅砂のようにデコボ コした形状をした粒の方 が、上部フィルター向きの通水性を確保できるようです 。従って、セラミック濾材でもその程度の通水性を確保できるのなら、それにこし たことはありません。 エーハイサブストラット等を金槌でたたいて小さくしてからフルイにかけ、粒を 揃えて使うというのもひ とつの手でしょう。 また、セラミックと硅砂を混ぜて適当な通水性を確保するのもまた一つの手です 。 以上の3点から、セラミック濾材と毎日の換水をベースにしていた水質管理を止 めることにしたのです。 先ずは、アドバイスの通り、最初に100%ウールにすることにしてみました。 もともと、使っていたウールを一番上に敷き、下の方には新品を入れたのですが、 かなり短期間で濾過槽を完成することが出来たんです。 完成した濾過槽は過密水槽でも、水を透明にしディスカスは元気になったのですが 、今度は目詰まりがやたら早いためにその良い状態を長期的に維持できないという 問題が出てきました。 そこで、セラミックを50%使うことにしたのですが、今度はやはり濾過には通水 性が高すぎるので濾過に満足行かず、結局セラミックを半分出して硅砂を足してみ たのです。 すると、今度は適度な通水性が確保され濾過がスムーズになったのです。 そして丁度同じ頃ですが、別に管理しているディスカスにも同じ様に濾材をセット していたのですが、こちらはあまり換水できないので、珊瑚砂を少々いれていたの です。 そしてあるとき、こちらの濾過槽を一方の濾過槽に比べると、濾過槽内に吸い上げ られた残り餌まで奇麗に分解していて、大変良い状態だったのです。 そこで、こちらの水槽でもあらためて昔の様に珊瑚砂も加えて試して見たところ、 同じ様に分解されウール洗浄などのをメンテナンスをしなくても殆ど目詰まりを起 こさなくなったのです。 これは恐らく、pHが長期的に安定しているために、濾過バクテリアが常に活性化 し繁殖しているためだと思われます。 もし、珊瑚砂を使わなければ、換水量を増やさなければならないため、それによる 塩素等の濾過バクテリアへのダメージが考えられ、その上pHが不安定に上下しま すからバクテリアの活性状態も断続的になってしまう事が考えられます。 こうして、あらためて昔の方法に感心し、元に戻すことにしたのです。 ただ、セラミック濾材も珊瑚砂を入れることによって、問題点を回避できるので、 何か良いことがあるのではと併用するようにしました。 *ディスカス向けの濾過槽(その2)(#4102) 飼育している魚によって、餌の種類、量はかなり違い、それに対する十分な能力 を持った濾過槽が必要です。特に、ディスカスとなると、高温飼育による大量給餌 と高タンパク飼料によって、その濾過を十分満足するするには、濾過槽の効率を最 大限に引き出さなければなりません。 また、濾過槽は、一般的な上部フィルター、パワーフィルター、と分けられますが 、濾材は、それぞれに向いた形状のものを使わなければ、効率の良い濾過は出来ま せん。 私の所ではスペースの問題から、主に上部フィルターを使用していますが、濾材 の容積や、その設計構造等を含めてその効率を見ると、圧倒的にパワーフィルター の方が勝っているように思います。(勿論、私もパワーフィルターを一部に使って います。)一般売りの上部濾過は、随分昔に設計されたためなのか、単に水を流し ているだけの設計であるために、容積がある様にみえて もその効果を発揮出来るスペースは、パワーフィルターに比べると大変少なく、ま た、構造上、全体に均等に通水することも難しいのです。 しかし、そんな濾過槽でも「その1」で書かれた様に濾材を工夫することによっ て、何とか、そこそこ活性化させることも可能で、過密と言えるレベルでもディス カスの飼育が可能ではあります。 「その2」では、上部濾過を対象に、濾過バクテリアも全く無い状態から濾過槽 の完成へと話しを進めたいと思います。 熱帯魚をこれから始める人は、当然、濾過バクテリアが活性化した濾過槽など持 っていませんから、そこから濾過バクテリアの付着したウール等は持ち込むことが 出来ません。 従って、濾過槽作りは最初から始めなければなりません。 先ずは、上部濾過槽の準備です。 一般に水槽セットというと、濾過槽とともにロックウールベースの濾材が添付され てくるのですが、これをベースにすると濾過が発揮するまで大変時間がかかり、何 かのトラブルがあった時に もその回復が大変です。(上部に向いているとは思えない。) これは、どちらかと言うと、全く何の手入れもしない人には大変向いているとは思 いますが、ここではお奨め致しませんので、以下の材料を用意してください。 ・ウールマット ロックウールにも付いて来ると思うがもう一枚 ・硅砂 粒が3ー5ミリ程度の物で高級品でない一般品 ・濾過バクテリアの素 これまで使ったものではニッソーのバイオミックスがどこにも売っているポピュラ ーな上、価格も安く効果も確かです。 500g×1袋のAタイプと100グラム×5袋のBタイプがありますが、殖菌に 使うだけなのでBタイプが丁度良いです。 液体タイプの物なら、サイクルが結構良いです。 (濾過バクテリアはPSBとは違うので注意。) ・活性炭 もし、濾過が完成する前から魚を入れるには必ず用意する必要もありますが、完成 初期でも、念のため入れたほうが良いです。 (濾材のザルに200グラム、2つあれば400g) ・パイロットフイッシュか肉 濾過バクテリアの餌、アンモニアを供給します。 通常、死んでもいい魚か、それが嫌なら肉を一塊使います。(50グラムもあれば 十分)魚は、あまり小さかったり少なかったりすると時間もかかりますが、金魚な ら結構水の汚れに強く、体のわりに餌も沢山食べますから良いようです。 ・枝珊瑚 珊瑚砂より粒が大きいので入れすぎた時、取り出し安いのでお奨めです。 最初からは使いませんから、後でも結構です。 さて、材料が用意できたら、先ず硅砂をフルイに掛けてください。 これは、絶対に必要では無いのですが、なるべくなら砂のような細かい粒と、逆に 大きすぎような粒をとり除いたほうが良いからです。 フルイに掛けたら、よく水洗いして下さい。 もし、ここでセラミック濾材を使うのであれば、水洗いしてから適当に混ぜてくだ さい。 水洗いをしたら、濾過槽に3センチ程の厚さになるように敷き詰めて、同時にバイ オミックスを濾材ザルにそれぞれ1袋ずつ入れます。 そして、ウールをその上に二重に敷いて下さい。 もし、バクテリアの素が液ならば、この上から適量をふりかけて置きます。 濾過槽が準備できたら、水槽にセットし、パイロットフィッシュか肉を水槽に入れ 、ポンプを回します。 水温は、なるべく高めにセットしてください。(30度くらい) ここで、巧い具合に水が汚れてくれば、約半日程で水の白濁が始まります。 これが、最初の段階の濾過槽の出来具合を見るバロメーターとなります。 そして、このまま1週間ほど様子をみてください。 また、パイロットフィッシュには餌を与えてかまいません。 もし、何等かの原因でパイロットフィッシュが死んでも、そのままにします。 肉の場合、それが段々溶けて無くなっていくのが分かると思います。 そして、ある程度来ると、今度は水が透明になりはじめます。 これが、濾過の効き始めで、段々と効果が大きくなっていきます。 通常、ここで肉の残りやパイロットフィッシュを取り出して、換水を多目(80% くらい)にし、半日以上待って完全に水が安定してから魚を入れてください。 もしその時点での濾過能力が追い付かない場合は、アンモニアや亜硝酸が大量に発 生しますから、ここへ、用意しておいた活性炭を水洗いしてから追加します。 この状態で、熱帯魚飼育は始まりますが、最初の内は特に餌を控え目にし、その状 態を見ながら給餌量をコントロールしてください。 このまま、飼育を続けてある程度濾過がしっかりし、ウールが汚れて来たら活性 炭やバイオミックスを取り出してください。 そして、最後に枝珊瑚をここへ手に一握り程いれて出来上りです。 また、珊瑚砂は、どんどん溶けて無くなって行きますから、時々補充します。 ところで、珊瑚は地域によって不必要な場合もあります。 もし、換水しなくても、かなりの期間pHを維持できるのであれば、使用しないで ください。 また、ディスカスの様な高温飼育下では、溶存酸素量も少なくなりがちでそのわ りには給餌量が多いので、エアレーションはお奨めです。(意外に、濾過バクテリ アの酸素消費量は大きいのです。) エアレーションには、ついでですから、スポンジフィルター等を予備として設置す るのも良いと思います。 *ディスカス向けの濾過槽(その3)(#4103) 私としてはコストとスペースが許せば、ディスカスの濾過槽にはパワーフィルタ ーの方をお奨めしたいと思います。 これは、上部フィルターに比べパワーフィルターの方が、濾過その物が十分研究さ れて作られいる為です。 濾過バクテリアがちゃんと濾材に付着するには、水の流速が肝心なのですが、パワ ーフィルターはその辺が十分計算されています。 また、密閉型であるために、あの筒状の中を満遍なく水が流れるため無駄なスペー スが無く、全ての濾材が均一に働きます。 そして、濾材の占める容積もフィルター全体の体積からすると大変効率よく、沢山 入ります。 (フルーバルの方はこの辺に若干不満があります。) 「その3」では、パワーフィルターを対象に、濾過バクテリアも全く無い状態か ら濾過槽の完成へと話しを進めたいと思います。 先ずは材料です。 ・エーハイメック等の筒状セラミック濾材 筒状の濾材は、パワーフィルター内の水流を均一化するために使います。 容積比で30%用意。 ・エーハイサブストラット等メインの濾材 私としてはアクアキープ等もお奨めしたいと思います。 容積比で70%用意。 ・活性炭 容積比で30%用意。 ・濾過バクテリアの素 液状タイプを用意してください。サイクルがお奨めです。 (濾過バクテリアはPSBとは違うので注意。) ・枝珊瑚 最初からは使いませんから、後でも結構です。 以上の材料が用意出来たら、先ず、濾材を洗ってください。 エーハイムの場合、下から、エーハイメックを入れます。 そして、2段目にメインの濾材を容積比で40%入れます。 つまり、半分近くのメイン濾材は残して置きます。 そして、一番上に水洗いした活性炭を入れ蓋を閉め水槽にセットします。 (ここでは空気抜きの話しは省略します。) そして、ポンプを起動します。 また、パワーフィルターは密閉型ですから、何等かの形でのエアレーションは必 ず必要です。 例えば、パワーフィルターの出水口にディフューザーを使ったり、スポンジフィル ターをセットしたりして、少し多めのエアレーションをしてください。 「その2」でも述べているように、高水温下では酸素の溶存も低くなる反面、給餌 量が多くなりますから、それを分解するバクテリアのためには、酸素が大変多く必 要です。 さてこのセットの場合、パワーフィルターには活性炭が詰っていますから、セッ ト後1日程待った時点で水が安定していれば、魚をいれて構いません。 この時、一緒に濾過バクテリアの素も水槽に入れてください。 あとは、そのまま様子を見ながら餌を与えます。 そして、その後、1ヵ月程経過したら、最初に詰めた活性炭を取り出し、残りのメ イン濾材を詰めて戻してください。 活性炭は、そのままにしておくと、必ず目詰まりを起こします。 から、忘れずに残りのメイン濾材との交換を、お願いします。 枝珊瑚は、pH降下がある程度起こるようになってから使います。 使い方は、ネット等に詰めて水槽中の適当に水流のあるところにぶら下げます。 量はそこでの溶け具合に応じて調整してください。 量は取り敢えずは手に1ー2握り程度で良いかと思います。 そして、当然、珊瑚は減って行きますから、それに応じて補充します。 珊瑚は「その2」で述べたように、不必要な地域では不要です。 それと、珊瑚はパワーフィルターに入れると溶けるスピードが早すぎるので、入れ ない様にしてください。 しかし、お金が許せば、やはり100%シポラックスにしたいですね。 バクテリアの付着具合が、他の濾材比較すると大変良いので、やはりお奨めです。 PC-VAN RBE21221 / NIF HGB01564 ヒロちゃん