#21 水質＞もう少し、燐酸ナトリゥムの話し　　　　　　　可良時寿子
動物＆植物の国　FORUM8　#244 91/11/23　より転載
可良時寿子　ID:KBB53931

　これは、ちょっとした雑談です。

　前の方のメッセージで、第２燐酸ナトリゥムの値段が、食塩と変わらないくら
いと書きましたが、これは、工業用の話です。

　試薬特級になると、２桁くらい上がります。
　で、ディスカスの水槽を第１燐酸ナトリゥムで、ｐＨ調整をしているショッ
プを複数知っていますが、大量に使うため、いずれも工業用を使っていました。
　客が希望すると、小さな袋に詰めて売りますが、この時は試薬特級並の値段で
すね。

　まあ、こんなことはどうでも良いとして、魚を飼育する水を工業用燐酸ナト
リゥムで調整するという神経に、恐ろしさを感じます。

　試薬特級の値段が高いのは、勿論不純物が少なく、精製されているためです
が、燐化合物の品質を見るとき、最も紛れ込み易く、除去の難しいのが毒性の強
い「砒素」です。
　何故、分離が難しいかと言うと、原子の周期率表を見てもらっても解るよう
に、燐と砒素の化学的性格が極めて似て居るためです。そのために、次に述べる
ような悲惨な事件も発生しています。

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【森永砒素ミルク事件】

　１９５０年代の後の方（正確な年は忘れましたが、たぶん私が中学１年生の
年）、つまり、ＪＤＯで沢山のメッセージを書いている人たちが生まれたか、ま
だ生まれていないかと言う古い話ですが、多数の子供と、親を不幸の底にたたき
込んだ「森永砒素ミルク事件」と言うのがありました。

　知らない人が多いと思うので、簡単に説明すると、ドライミルクの原料の牛
乳を貯蔵する過程で、鮮度が落ちると、ｐＨが下がり、商品の品質が落ちると言
うわけで、仕入れたミルクを貯蔵するとき、第２燐酸ナトリゥムを加えて、ｐＨ
の低下を防いでいました。

　ところが、この時にコストの廉い工業用の規格のものを使ったために、不純物
として、多量の砒素が含まれており、製品のドライミルクの中に、砒素が混入し
て、多くの死者と、死なないまでも、重大な後遺症の残る砒素中毒患者が全国的
に発生したと言うわけです。

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　私自身は、ディスカスの繁殖の時、燐酸を使いますが、このために、試薬特
級を購入し、その品質表示の中の、Ａｓ（砒素）の混入率には特に気を使ってい
ます。
　ちなみに、手元の燐酸の品質表示を見ると、
            Maximum Inpurities
        Haavy metals(as Pb) --------------- 0.0005%
        Iron ------------------------------ 0.0005%
        Arsenic(As) ----------------------- 0.00005%    <-----  注目
        (その他省略)

　多くのショップで、工業用燐酸ナトリゥムを平然と使っているのを見る度に、
心が痛みます。

　熱帯魚用の各種商品には、メインの成分さえ表示していないのですから、不純
物については、押して知るべしす。
　燐を主成分とした製品には、絶えず砒素の危険性がついて回るということさえ
も気がつかずに、薬品といえば、１００％が目的の成分だと考え、安心して使っ
ているのではないでしょうか。

　みなさんは、成分の書いていない薬品を平気で使えますか。
　成分が書いてあったときは、不純物として、何がどの程度はいっているかと
か、○○と言う成分なら、◇◇と言う不純物が入り易いが、その純度は？、と考
えたことがあるでしょうか。

可良時寿子