#28 アロワナ>アジア・アロワナの解剖記録 (1/2)    可良時寿子
可良時寿子 ID:KBB53931

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  90年9月23日、繁殖を狙いながら、長年飼育してきたオレンジ・アロワナ
(アジア・アロワナの体色が鮮やかなオレンジ色をしたタイプ)を死なせて仕舞
い、沢山の方から、慰めやら、悔やみやらのメッセージを戴き、有り難う御座い
ました。

  本来なら、すぐにお礼のレスを書くべき処、余りにもショックが大きく、何も
手に付かない状態が暫く続いていたので、失礼しました。

  『生有る物は何時かは滅びる。』.

  どんな生き物も、飼い主がどんなに大切に育てようと、このことは避けられま
せんが、死んだ後も、今後の参考になるように扱えば、多少は、アロワナも浮か
ばれると思い、死因を追求するために、解剖しました。

  私の経験が少しでも参考になればと思い、記録をまとめて置きますから、アロ
ワナの繁殖を狙う方の参考になり、誰かが繁殖に成功するのに役立てて下されば
幸いと思います。
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◆入手の来歴。

      84年6月、大阪の熱帯魚ショップ『アフリカ』(現在の、東三国の店舗
    ではなく、JR東淀川駅前の狭く、小さなショップの時代)ショップの入り
    口正面の狭い水槽の中に、見事なゴールデン・オレンジの体色をしたアジ
    ア・アロワナが、非売品として展示されて居たが、商品としては、こんな見
    事な赤味の強い個体を販売しているショップは何処にも無かった。

      アロワナは、既に各種を飼育しているが、この赤味の強いアジア・アロワ
    ナを是非とも飼育したかったので、入手の可能性を訪ねた。

        『近い中に、入手できる見込みですよ、小さいので、1匹18万円くら
        いで、どうでっか?』

    と言う事だったので、

        『入荷すれば必ず購入するから、絶対に忘れんと、電話を下さい』

    と言って、予約をし、自宅の電話番号を伝えて置いた。

      8月の夏休みに、1週間ほど家族旅行をして、帰ってきても一向に、アフ
    リカからの電話が無いので、9月に入ってすぐ、こちらから問い合わせの電
    話を入れると、

        『8匹ほど入ったんで、電話をしたけど、誰も出えへんから、しゃぁ無
        いし、他の人に売ってもた。あの電話番号は、勤め先か何処かのだった
        んデッカ?』

    等という、思いがけない返事。

      電話ではラチが開かないと思い、慌ててショップへ飛んで行き、

        『予約して有ったのに!!!』

    とわめくと、何と

        『実はなぁ、ここだけの話しやけど、一番綺麗のを1匹だけ、売らずに
        残して有るんヤが、ホンマは売りとう無いんで、どうしてもって言うん
        なら、プレミアムを付けてくれまヘンカ』

    と言う話し。

      次の機会を待っていると、何時になる事やら解からんと言う事で、1万円
    のプレミアムを付け、19万円で、購入する事にし、1週間後に引き渡しの
    約束をし、84年9月8日に入手した。
      この辺りの事は、簡単に『アロワナ賛歌』にも書いたが、実際の処は、隠
    して有る商品など無く、同業他社の在庫を融通して貰ったのではないかと、
    推定している。
      (同時期、同じ大阪の、「佐野熱帯魚」にも入荷し、こちらの方は、売れ
    足が遅かったと言う事が解っている)

      この時の、購入個体の特徴は、

      体長  26cm。

      体色  背鰭、尾鰭、尻鰭、の三つの鰭は、鮮やかな、シミの無い紅色。
            ヒゲは一部に黄色い部分があるが、黒っぽい灰色。
            体は、頭も、鱗も何処にも赤味がなく、全身が銀色。

      年齢  推定で生後1年強(この時、もう1匹アジア・アロワナを、メダカ
            を食う事も出来ない、パール・グーラミィと同じ大きさの稚魚から
            育て上げた経験で、体のサイズより推定した。)

      体型  スポッテド・バラムンディ程ではないが、体型が細長く、スマート
            で、当時、熱帯魚雑誌では、『最近、新しく入荷する様になった
            オレンジ・アロワナは、従来のゴールデン・タイプ依りも体型が細
            長く、同じ種類とは思えない』と書かれていたが、確かにその通り
            で有った。

      で、これが鮮やかなオレンジ色に成るのかと思うような個体であったが、
    東南アジアの業者は、若い中から赤味が出ている個体は、成長した後、鮮や
    かな赤色が出ないと評価している事を聞いていたので、暫く観察する事にし
    た。

      飼育条件は、120cm × 45cm × 45cmの水槽で、
    アジア・アロワナ(体色はゴールデンのタイプ)、スポッテド・バラムンデ
    ィ、ノーザン・バラムンディ(何れもオーストラリア産のアロワナ)と混泳
    させた。

      水槽に収容し、1時間ほど経ち、水槽内の様子が解ると、他のアロワナと
    喧嘩を始めたが、心配するほど激しい物ではなかった。
      アロワナの混泳は難しいと言われているが、時々スポッテド・バラムン
    ディが、他の個体を攻撃する事は有った物の、大した喧嘩にも成らず、暫く
    平和共存が続いた。

      その後、このタイプのアロワナの評判が好く、どんどんと入荷する様に
    なったが、最初の2回を除き、3回目以後に入荷した物は、何れも背鰭に
    ダーク・グリーンのシミが入っており、小さな時からオレンジらしい色が出
    かけていたが、これらを購入した知人の、その後を観察すると、何れもほん
    の少しだけ赤身を帯びたゴールデンと言う体色で、名前倒れの物であった。


◆体色。

      体色が、鮮やかなオレンジ色に成る迄、1年以上を要し、一応3才迄に、
    色が出た事になるが、これは、完成ではなく、その後も死ぬまで、年月の経
    過と共に鮮やかに成り続けた。


◆餌。

      餌は、鶏の心臓を細長く6つ割に切った物(殆ど餌金と同じサイズ)を主
    食にした。

      実際に与えてみると、他のアロワナは喜んで食べたが、このオレンジ・タ
    イプは、鶏の心臓は好きでないと見え、余り喜んでは食わなかった。

      また、鶏の心臓と言うのは、これは肉だけであり、カルシゥムが不足しな
    いように、一週間に一度だけ金魚を与えた。

      餌金は好きで「小赤」と呼ばれる最も小さなサイズの金魚を、一度に5匹
    位食べた。

      真空乾燥したクリルも好みにあったのか、良く食べた。

      テトラ社の大型魚用の餌、「ドロミン」は、腹が減っても食わなかった。

      また、この個体だけの個性か、喉が細いようで、餌金を与えた時、他のア
    ロワナは一気に飲み込むのに対し、このオレンジタイプは、持て余し気味
    で、モグモグと咬み砕き、潰してから、飲み込むという特徴があった。


◆飼育設備。

      アロワナを飼育する設備は次の通り。

            水槽            120 × 45 × 45cm

            主フィルタ      エーハイムのパワー・フィルタに濾剤として、
                            カルチャ・リングを2.4Kg使用。

            補助フィルタ    60cm用底面フィルタに濾剤として
                            大磯砂を使用。
                            エア・リフト方式。

            ディスプレイ    10Kg程の石を2個。
                            流木、多数。

            水草            アヌビアス・バルテリー・バー・バルテリイ。
                            ウィローモス。
                            アマゾン・ソードの鉢植え。

            底砂            大磯砂を使い、底面フィルターの上以外は、底面
                            からの光の反射を防ぐために、砂が1層に並ぶだ
                            け、薄く入れる。

            水温            28℃。

            サーモスタット  電子式。

            ヒーター        150W、2本をカバーに納めて、水槽の側壁に
                            固定。


◆水温。

      アジア・アロワナは、他の熱帯魚よりも、高水温を好む。

      28℃以上で有れば、旺盛な食欲を見せるが、水温が26℃まで下がる
    と、極端に食欲が落ち、運動量も落ちるから、飼育水温は、1年を通じて、
    28℃以上に保つ必要がある。


◆立鱗病?。

      85年3月2日、最初の病気に見舞われる。
      鱗が白っぽく曇り、少し体から浮き上がっており、立鱗病の初期症状のよ
    うに思えた。
      「グリーンFゴールド」を投与し、1週間で、治癒する。


◆ペアリング。

      このオレンジ・タイプのアロワナを入手した頃より、わが国がサイテス
    (野生動植物の種の保護に関する条約、わが国では、73年に条約が採択さ
    れた会議の開催地を採って、「ワシントン条約」と呼ばれる事が多い。)を
    守っていないと言う、国際的な非難が強くなってきた。

      その当時は、対応する国内法もなく、堂々と輸入、販売されて居り、雑誌
    でも盛んに人気を煽る記事が掲載されていたが、このままでは、将来アジ
    ア・アロワナは購入できなくなると言う気配が感じられたので、手持ちの2
    匹のアジア・アロワナで、繁殖させる事を計画した。

      勿論、高等動物の繁殖と言えば、雄と雌のペアが必要な事は言うまでもな
    いが、手持ちのアロワナの性別は判定のしようが無く、50%の好運に懸け
    る事とした。
      繁殖となると、狭い水槽に、他のアロワナがひしめいていたのでは、邪魔
    になるので、バラムンディ等は、85年7月21日、捨て値同然で、ショッ
    プに引き取って貰った。

      2匹になったアロワナは、飼育密度が下がり、縄張りを主張する余裕が出
    来たので、猛烈な喧嘩を始めたので、止む無く、それぞれ120cm水槽に
    1匹ずつ隔離せざるを得なかった。

      アロワナの喧嘩のやり方に付いて、少し説明して置く。
      アロワナは、シクリッド(エンゼル・フィッシュやディスカス等)と同じ
    ように、テノトリー(縄張り)を主張し、複数飼育すると、猛烈な喧嘩をす
    るが、飼育密度が高くなると、喧嘩の相手が多すぎ、縄張りを主張するのを
    諦めて、温和しくなる処は、シクリッドに似ている。
      しかし、それでも小競り合いをする事は止まらない。

      喧嘩のやり方は、シクリッド等とは全く異なる。
      シクリッドの場合、喧嘩は、正面から向かい合い、頭突きをカマセルが、
    アロワナの場合は、30分くらい、お互いの尻尾の方に頭を向けて、相手の
    力量を観察するようにグルグルと周り、喧嘩の決断が着いたところで、隙を
    見て、相手の尻尾に咬み付く。

      こう成ると、後ろの方の三つの鰭(背鰭、尾鰭、尻鰭)は、縦に裂けて、
    丁度破れたウチワの様になるが、この段階で有れば、ダメージは小さく、喧
    嘩が出来ないように隔離すると、破れた鰭はおよそ1週間で元通りに回復
    し、傷跡も解らなくなる。
      もっと長時間喧嘩を続けさせると、弱い方は、胴体を咬まれる事になる
    が、こう成ると致命傷を受ける恐れがある。

      88年末までに、4回ほど、ペアリングを試み、喧嘩に備えて、朝から一
    日中観察できる様に、休日を選び、ゴールデン・タイプの方を、オレンジ・
    タイプの水槽に移すという実験を試みたが、何れの時も、同居させてから
    30分ほどで猛烈な喧嘩が始まり、その度にアミを入れて、引き離した。

      なお、大きな魚を網ですくう時の注意を述べて置くと、網は大きな物を二
    つ用意し、二つの網で、挟み込むようにして捕まえ、長い柄の部分ではな
    く、アミの枠の部分を両手で持って、2枚のアミが開かないようにしてすく
    い上げる必要がある。
      1枚のアミで単純にすくうと、ジャンプされて、アミから飛び出し、脳震
    盪などを起こしたり、運が悪ければ、魚を死なせたりする事になる。
      また、魚が重いので、柄の部分を持って、水から引き上げる事は不可能で
    ある。

      そのうち、魚のサイズが益々大きくなり、温和しくしている時ならいざ知
    らず、喧嘩をしている物を取り押さえるのが困難になってきたので、どちら
    かが抱卵し、繁殖のタイミングを掴み易くなるまでは、ペアリングの実験を
    中止した。


◆寄生虫の侵入。

      アロワナと言うのは、丈夫な魚であり、滅多な事では病気にならず、水替
    えの時の温度ショック以外で死なせる事は滅多にないが、私の飼育している
    オレンジ・タイプのアロワナは、イカリ虫が寄生した事と、原因不明の病気
    が1度だけ有った。

      85年11月2日、餌金に寄生して水槽にイカリ虫が侵入。
      尻鰭に、イカリ虫が1匹だけ寄生していたので、薬を使うよりは、ピンセ
    ットで抜く方が安全と判断し、魚を網ですくって、寄生虫をピンセットで抜
    く。

      処が、1週間後の11月9日に、またイカリ虫の寄生を発見したので、お
    そらく前回の虫の卵が残っており、大量のイカリ虫が発生する可能性がある
    と判断し、殺虫剤を使う事とした。
      0.7gr/200リッターの濃度で「リフィッシュ」を与え、これで成
    虫は殺せたが、11月13日程に、水槽内に残った卵から再発したので、も
    う一度「リフィッシュ」を与える事で、無事に解決した。
      こういう事があったので、注意をしていたところ、この後、購入した餌金
    にイカリ虫とか、チョウ(ウオジラミ)が寄生しているのを発見した事が何
    度か有るが、事前の観察で、水槽への侵入は、予防する事が出来た。

      87年6月、毎年、気候の不安定なこの時期になると、白点病に罹った餌
    金か出回るが、わが家のアロワナも、白点病のような物が感染し、痒そうに
    体を擦り着けるので、「サン・エース」(殆ど、メチレンブルーが主成分の
    薬)を与える。
      外見上の病気は治ったが、食欲が落ち、2週間後、エラから、白い粕のよ
    うな物を吐き出し(おそらく、病原菌に侵されて、死んで仕舞ったエラ細胞
    と推定する)、その後、正常に戻る。

◆サーモ・スタットの故障。

      アロワナの水槽は、電子サーモを使い、ヒーターは切れる事を予想して、
    150ワットの物を2本使っているが、実際には、ヒーターよりも、サー
    モ・スタットの信頼生の方が遥かに低かった。

      85年5月21日、サーモ・スタットの故障により、夜の間に水温が
    22.5℃まで低下し、殆ど運動しなくなったが、予備のサーモに取り替
    え、ヒーターで、時間を掛けてゆっくりと水温を上昇させ、正常に回復し
    た。

      86年3月27日、再び、サーモ・スタットの故障により、夜の間に水温
    が22℃まで低下したが、この時も、正常に回復した。

      88年11月3日、三度、電子サーモの故障で、水温が22℃まで低
    下。
      この時は、後に述べる、病気に罹り、治療に苦労させられる。

◆拒食。

      アロワナを飼育していると、原因不明の拒食を経験する。
      1カ月ほど、原因不明のまま餌を食わないが、外見上、病気を疑うような
    処は発見できない。

      86年7月18日、3日程、全く餌を食わない事が続いた後、口から胃の
    内壁を一皮剥いたような、袋のような物を吐き出した。

      吐きだした袋のような物には、血が滲んでいた。
      また、この時、フンも血が滲んだ腸壁の様な物を排泄した。

      その後、また正常な食欲を回復する。

      この現象は、同じ個体で、それ以後、もう一回経験している。

      また、この現象は、いま報告しているオレンジ・タイプの個体だけの特徴
    ではなく、他の個体でも、全く同じ経験を、数回しているので、原因は良く
    解らないが、心配する様な物でなく、野生動物の生命力の強さを信頼して居
    れば良い。
                                                                (続く)

                 動物&植物の国 ライブラリー より転載