#35 熱帯魚への誘い>(1) 可良時寿子 可良時寿子 ID:KBB53931 本日より、熱帯魚入門講座『熱帯魚への誘い』の連載を始めます。 全体のボリュームは、19巻。 1巻あたり、100〜150程のものです。 なお、表題の『誘い』は、「さそい」では無く、「いざない」と読んで下さる よう希望します。 本資料は、PCVANのJDOと、今は無き、TWIN NETのトロピカル 図書館に発表したものに、若干の手を加えたものです。 主たる読者は、これから熱帯魚の飼育を始める人を想定しています。 内容は、私の経験のまとめを中心にしているため、市販の解説書と大幅に異な る部分も有りますが、経験の裏付けがあることを保証します。 NIFTY-FAQUA & ASCII-tropic.fish Multi-Post ASCII/net55370 NIFTY/NCC02701 PCVAN/KBB53931 Oo。(^。^)y-゚゚゚ 可良時寿子 総目次 01 入門講座「熱帯魚への誘い」の目次 (今見ているこの文章。) 02 入門講座執筆に当たっての前書き。 必要な設備 (1)。 A、水槽のサイズと材質。 03 必要な設備 (2)。 B、フィルタと濾材。 04 必要な設備 (3)。 C、サーモスタット D、ヒータ。 E、エアポンプ、エアストーン、チューブ。 F、蛍光灯。 G、温度計。 H、水替え用サイフォン。 I、水槽の蓋。 05 水槽のセット (1)。 設置場所の選定。 砂を洗う。 砂を入れる。 06 水槽のセット (2)。 ヒーター等の固定。 水を入れる。 サーモスタットの設定。 07 水作り。 濾過バクテリアの働きと、フィルターの原理。 パイロット・フィッシュの役割。 08 水替え。 水替えの必要な理由。 掃除の仕方。 注水・・・・・・カルキの抜き方。 水温の合わせ方。 09 飼育する魚の選択と購入 (1)。 A、水質による分類。 10 飼育する魚の選択と購入 (2)。 B、餌による分類。 C、サイズによる分類。 11 初心者に推薦する魚 (1)。 A、グッピー。 丈夫で飼い易く、繁殖も簡単。 卵でなく、いきなり子供を産む。 B、ベタ、ドワーフグーラミィ等。 小さな容器で飼育可能。 魚とは思えない、情熱的な産卵行動の魅力。 C、ネオンテトラ等の小型カラシン。 キラキラと美しいが、ちょっと弱いところも。 12 初心者に推薦する魚 (2)。 D、ゼブラダニオ等の鯉科の魚。 東南アジアの鯉科の魚。 丈夫で値段も廉い。 E、エンゼルフィッシュ、アピスト等のシクリッド。 比較的繁殖も容易で、子育てをする。 F、コリドラス。 おとなしい、ワキ役。 G、プレコ。 水槽のコケ掃除は、これにお任せ。 H、ディスカス。 熱帯魚の王様。 難しいと言われるが、実は難しくない。 ドーピングされた商品に注意。 13 飼うのを止めたほうが良い魚。 A,国産グッピー。 初心者にとっては、猫に小判。 B,スマトラの仲間。 他の魚の長い鰭を齧り、ノイローゼに追い込む。 C,キッシング・グーラミィ。 なんでも嘗め回す困り者。 D,ピラニア。 他の魚とは、同居できない、水槽の殺しや。 E,ドーピングディスカス。 すぐに色があせ、絶対に繁殖出来ない。 F,ミドリフグ。 ヒョウキンな動作が可愛いが、鋭い歯で、他の魚の鰭を齧る。 G,大型魚。 将来、大型水槽を設置する必要がある。 大型魚の引き取り価格の仕組みに付いて。 14 日常の餌。 餌のやりすぎは、トラブルのもと。 15 フィルターの掃除。 折角わいた、濾過バクテリアを殺さないように。 16 水草を植えよう。 水草の効用。 観賞価値。 水の浄化。 育て易い水草。 水草の肥料の特殊性。 17 魚の病気と治療法 (1)。 一般的な知識。 A,白点病。 誰でも、一度は悩まされる病気。 18 魚の病気と治療法 (2)。 B,尾腐れ病。 C,エラ病。 D,イカリムシ、チョウ。 E,シミーモーション。 F,亜硝酸中毒。 19 エピローグ、言い忘れたこと等。 A,設備はしっかりとした物を。 良い設備は、技術の未熟を補う。 B,高価な魚は危険。 値段と美しさは、無関係。 C,小さな水槽ほど管理が難しい。 D,フィルターは水槽のサイズで決められない。 E,一本の水槽に複数のフィルターを。 F,温度計、pHメータは正確なものを。 G,観察と記録を残す。 飼育日誌専用のノートを用意し、 自分だけのデータ・ベースを作りましょう。 ◆ 入門講座執筆に当たっての前書き。 わが国の風物詩として、夏になれば、どこでも夜店の金魚すくいがありますが、 貴方もこれを掬ってきて、洗面器などで飼ったことが今迄に一度はあるでしょう。 始めて金魚を飼ったときは、餌をやるのも楽しかったと思いますが、この時の 金魚は、大抵数か月で死んでしまい、恐らく正月まで生きていなかったのではな いかと思います。 友人の家で見たような綺麗な熱帯魚を飼いたいが、『難しそうだ、金魚でさえ 死んだのに。』と思ってためらっているならば、心配無く。 たしかに、熱帯魚というのは名前の通り熱帯地方に棲んでいる魚で、低温には 弱いですが、最近は熱帯魚を飼育するための設備が沢山出回っており、此等を準 備すれば誰でもあの美しい魚を自分の部屋に泳がすことが出来ます。 しかし、簡単とは言っても、相手は生き物ですから、健康に長生きをさせ、何 時までも美しい姿を楽しむためには、単に餌さえやっておけば良いと言う訳には いかず、それぞれの魚の種類に応じた適切な日常管理を欠かすことは出来ません。 生き物を飼育する趣味といえば、犬や猫も有りますが、これらと、熱帯魚の飼 育の最大の相違点を二つ挙げることが出来ます。 一つは、魚というのは、自分の生活環境である『水』を自分の排泄物で汚しま すから、水槽という限られた空間の水質を、飼育者が管理してやらないと、長生 き出来ないということです。 もう一点は、犬や猫と違って、健康と生命を守ってくれるプロの獣医は居ませ んから、魚の飼育を目指す者は、自らが必要な知識と技術を身につけた獣医とな り、最低限度、魚の健康を維持できる日常の管理が出来なければ、楽しむことの 出来ない趣味であるということです。 何事も、自分で経験してみなければ、人に聞いたり、本で読んだだけの知識で は身についたものとなりませんが、自分一人で失敗を繰り返しながら、正しい知 識を身につけようとすると、なにしろ、相手が生き物ですから、沢山の魚を殺し、 生命を粗末にすることになります。 しかし、幸いなことに、私達は他人の経験に学ぶことが出来ます。 つまり、永年熱帯魚飼育の経験を積んだ人(つまり、それだけ沢山失敗を経験 し、多くの魚を死なせた人です)の”整理された経験”を参考に出来れば、無駄 な失敗によって魚を死なせたり、挙げ句の果てに『熱帯魚はやはり難しい』と言っ て、挫折することが避けられます。 そこで、これから熱帯魚の飼育を始めたいと思っている方、或いは、飼い始め てみたがうまく行かないと言う方の為に、私の経験をもとに熱帯魚飼育の入門講 座を開いてみますから、参考にしてください。 なお、熱帯魚と言うのは、熱帯地方に棲んでいる魚の総称ですから、一口に熱 帯魚と言っても、生息する水質によって大別すれば、『熱帯性海水魚』と 『熱帯性淡水魚』の二つに分けることが出来ますが、私は海水魚を飼育した経験 が無いので、『熱帯性海水魚』の飼育法の解説は、他の適当な方にお願いするこ ととして、ここでは、『熱帯魚』といえば『熱帯性淡水魚』を指すことに限定し ます。 夜店で掬って来た金魚なら、水を入れる適当な容器、例えば、洗面器などが有 れば飼育出来ますが、熱帯魚の場合は、少しばかり、専用の設備が必要です。 勿論、金魚を飼育する場合でも、健康に、長生きをさせようと思う場合は、こ れから述べる熱帯魚用の設備があれば理想的ですし、逆に、熱帯魚のなかにも、 ”ベタ”と呼ばれる魚の仲間の様に、洗面器どころか、インスタントコーヒーの 空きビンさえ有れば夏の間は飼育できると言う種類もありますが、ここではもう 少し一般的な魚について説明します。 ◆ 必要な設備 (1)。 初めて熱帯魚を飼育する人は、必要な設備として、最低限度、 A、水槽。 B、フィルタと濾材。 C、サーモスタット。 D、ヒータ。 E、エアポンプ、エアストン、チューブ。 F、蛍光灯。 G、温度計。 H、水替え用サイフォン。 I、水槽の蓋。 を揃える必要があります。 A、水槽のサイズと材質。 水槽は材質によって、ガラス水槽、アクリル水槽、等があり、その他にもカブ トムシを飼うような透明な塩ビ製のプラ容器なども有り、特に前の二つ、ガラス 水槽とアクリル水槽は実に様々な寸法の物が販売されており、更に要望に応じて、 特別なサイズの物も自由に作って貰えますが、ここでは幅60cmのガラス製水 槽の使用を奨めます。 何故60cmが良いかと言うと、要するに値段が安いのです。 わが国では、幅60、奥行30、高さ36cmと言う水槽のサイズが業界の標 準となっており、最も大量に生産されている為に、これより小さな45cmや3 6cmの水槽を買っても値段が安くならないのと、後に述べるフィルタとか蛍光 灯等が、この60cmの水槽に使うことを想定して設計されています。 この、60cmと言う水槽のサイズは、色々な魚を飼育していると、小さ過ぎ ると感ずることも多々有り、事実、こんな小さなサイズが標準扱いされているの はわが国だけだと思いますが、これは多分、わが国のウサギ小屋の様に狭い住宅 事情を考え、小さなサイズで、尚且つ20Wの蛍光灯が乗せられる、ということ で決まったのではないかと推定していますが、先に述べた様に値段が安いと言う 魅力がありますから、取りあえずはこれでスタートすることにします。 ◆ 必要な設備 (2)。 B、フィルタと濾材。 魚を飼育していると、当然のこととして、餌の残りや魚の排泄物により、水が 汚れてきて、このままでは長期に魚の健康を維持することが出来ませんから、い つかは水替えをする必要に迫られますが、排泄物に含まれる毒性の強いアンモニ ア等を酸化してを、毒性の殆ど無い硝酸に変え、水を浄化して、水替えの頻度を 減らすために必要なものが、このフィルタです。 フィルタの機能は、大きく分けて、 1、目に見えるゴミや濁りを取り、水を澄ませる「物理フィルタ」。 2、バクテリアの力によって魚の排泄物や餌の残りを分解する 「生物フィルタ」。 3、イオン交換樹脂等を使ってカルシゥムや重金属などを 吸着して取り除く、「化学フィルタ」。 の三つが有りますが、化学フィルタは経費も高くつき、メインテナンスも大変な ので、特別な目的以外には使われません。 魚というのは、自分の生活している水中に排泄物を出し、その中で生活してい ますが、野性の魚が棲んでいる池や川には、一見これがフィルターで有ると解る 様な目に見えるフィルターは無い様に思えるので、初心者は、見た目に綺麗な透 き通った水さえ有れば魚が飼えるものと考えがちですが、天然の川や池の水に棲 んでいる魚の密度を考えてみる必要が有ります。 魚の密度を論ずるとき、匹数で言うと個々の魚の体の大小もありますから、水 を汚す原因となる糞の量は魚の体重に比例すると考えて、水1トン当たり何グラ ムの魚が棲んで居るかと考えると、それ程多くの魚が棲んでいる訳では有りませ ん。 単位水量当たりの魚の量が少なければ、当然、排泄される糞の量も少なく、底 土の少ないバクテリアでも十分アンモニアを分解することが出来、分解された結 果発生する硝酸を吸収するに十分な水草も生えて居り、その上、絶えず上流から 綺麗な水が流れ込んで来ますから、天然の川では私達に直接目に見えない処で水 の浄化が計られており、魚は健康を維持出来るのです。 しかし、私達が家のなかに置かれた水槽のなかで魚を飼育するとなれば、新し い雨水も入らず、何よりも水の量に対する魚の体重が、自然の河川の 100〜1000倍にも成る高密度であり、水槽の中に多少の水草を植えたくら いでは、魚が生活できる水質を維持することが出来ません。 勿論、世の中には『バランスドアクアリューム』と言って、水槽全体にビッシ リと水草を植え、良く探してみないと何処に居るのか解らないくらいの小量の魚 を飼って、殆ど自然のままで長期に水質を維持すると言う楽しみ方をしている人 も居ますが、この方法は相当な経験者でないとうまく行かないことが多いので、 普通はフィルターの働きによって水質の維持を計ります。 水質維持の仕組みを簡単に書きますと、 最初の、きれいな水 ↓ 魚の排泄物 アンモニア(強毒性) ↓ バクテリア(ニトロソモナス)と酸素 亜硝酸塩(強毒性) ↓ バクテリア(ニトロソバクター)と酸素 硝酸塩(弱毒性) ↓ 水草、水替え等。 再び、きれいな水 と言う過程で、魚の生活できる水質を維持します。 ニトロソモナスとか、ニトロバクターと言うのは、フィルターの濾材の表面に 住み着き、水質の浄化に役立つバクテリアです。 ここまで読んでくださった方は理解できたと思いますが、フィルターの最も大 切な役割は、見た目にゴミの少ない澄んだ水を作る「物理濾過」では無く、魚の 排泄物のなかに含まれているアンモニアを無害な物質(ここでは硝酸)に分解す る「生物濾過」です。 普通、ショップで売っているフィルタと言うのは、物理フィルタと生物フィル タを兼用した様な働きをするものが多い様で、最近は、「バイオテクノロジィ」 と言う流行語にあやかって、生物フィルタの効果を強調した製品が、沢山出回る 様に成りました。 フィルタには、その設置形態から、 1、本体が水中に沈められている「内部フィルタ」と、 2、本体を水槽の外におく「外部フィルタ」 に分けることが出来ます。 内部フィルタは、昔から使われ、濾過能力が十分ある底面フィルタが最も一般 的で、これは底面に敷いた底砂を濾材に兼用しますが、最近は、水槽の内部側面 に取り付けるタイプで濾材として、スポンジとか、ウールマットを使うものが各 社から売り出されています。 しかし、此等の生物濾過を主体に考えられたスポンジフィルタ等は、濾過能力 が低く、ディスカスの繁殖等、是を使うと役に立つ場面もありますが、あくまで も、補助的なフィルタであり、単独では濾過能力が足りないということを覚えて おいて下さい。 皆さんには、底面フィルタ、或いは上部フィルタ(水槽のうえに乗せて使う フィルタ)のどちらか、あるいはこの二つの併用を奨めます。 底面フィルタには、水を循環させる方法として、 1、小型の水中ポンプを使うもの、と 2、エアの力で循環させるもの。 の二方式がありますが、水中ポンプ式は音が静かで、エア方式は、ブクブクと言 う、エアの吹き出す音がしますが、値段が安いのが魅力ですから、初めはこれが 良いでしょう。 底面フィルタの場合、濾材は大磯砂を使います。 大磯砂は底面フィルタのうえに4〜5cmの厚みに敷きつめて使いますが、こ の時注意してもらいたいことは、濾材となる大磯砂は、フィルタの有る部分だけ に敷き、フィルタの無い部分には敷かない様にしないと、砂の中の水が淀んだと ころで水が腐敗し、魚に病気を引き起こす恐れがあるということです。 しかし、水草が沢山植わり、砂のなかに根を張って元気良く成長しておれば、 植物の吸収作用に因って、砂の中の水が強制的に循環されますから、水の腐敗を 防ぐことが出来ます。 外部式のフィルタは、水槽の中がスッキリして、魚に刺激を与えずに掃除をす ることが出来ますが、それだけ、外部に余計なスペースが必要です。 一般的には、値段の安い上部フィルタで十分ですが、予算に余裕があれば、パ ワーフィルタも検討して下さい。 上部フィルタの濾材は、生物濾過用に大磯砂、もしくはセラミックを円筒形に 焼成したカルチャリングを使い、その上に、物理濾過の為のウールマットを乗せ ます。 カルチャリングは値段が高いものですが、隙間が大きく、目詰まりが起こらな いので、フィルタの調子を長期間に渡って維持することが出来、それだけ飼育が 楽になります。 パワーフィルタも最近はエーハイム以外に複数のメーカから発売されています が、此等は、動作音が低く、静かなうえに、濾過能力も強力なので、高い値段相 当の価値は有ります。 パワーフィルタの場合、濾材を詰める厚みが大きく、水の流通するパスが長く なるので、大磯砂の様な粒の細かい濾材ではすぐに目詰まりを起こしてしまい、 正常な濾過が出来なくなるので、値段は高いが目詰まりの起こらないカルチャリ ングを使う必要が有ります。 ◆ 必要な設備 (2)。 C、サーモスタットと D、ヒータ。 熱帯魚は、生存できる水温の範囲が、およそ20〜30度なので、わが国の場 合、夏の間は問題が無いとしても、冬の低温には耐えることが出来ませんから、 なんらかの手段で、水温を高く維持する方法を講ずる必要が有ります。 事業として熱帯魚の飼育をするのであれば、専用の温室を用意し、一日中エア コンを入れても採算が採れますが、私達が水槽を一本だけ持って熱帯魚を飼育す るのであれば、電気ヒータに依って保温するのが、手間も掛からず、経済的です。 当然のことで、改めて説明をする迄もないと思いますが、ヒータは水温を上げ る効果は有りますが、夏の、高すぎる水温を下げる効果は有りません。 まあ、私達の生活道具に例えて言う成れば、コタツかストーブの様な物です。 このヒーターは無限に温度を上げるばかりで、それ自身としては温度を一定に 保つ能力が有りませんから、サーモスタットと組合せて、魚の飼育に適した温度 に保ちます。 ヒータには、消費電力によって色々なワット数の物がありますが、60cm水 槽であれば150Wも有れば十分です。 ただし、ヒータは時々切れる事があり、こうなると魚が凍え死ぬことになるの で、安全を考えるなら、ヒータは二本使うことを奨めます。 ヒータを使った時の電気代は、ヒータのワット数や、ヒータの本数には無関係 で、水槽の表面からどれだけの熱が逃げて行くかで決まりますから、二本のヒー タを使っても、スイッチが切れている時間が長くなるだけで、電気代が二倍にな ることは心配する必要が無く、魚にとって安全度が増すだけです。 サーモスタットには、 1、ガラス管の中にバイメタルを入れ、小さなネジで温度を設定する 『バイメタル式』と、 2、ICを使い、ダイアル式の目盛りで温度を設定する 『ICサーモ』 が有り、いずれも、わが国で販売されている熱帯魚用のサーモは、二本のヒータ を接続できるようになって居ます。 バイメタル式のサーモは、直径3cm位のガラス管の中に全ての機構が組み込 まれており、この本体を水中に入れて(勿論、上部は水面上に出しておくが)使 う為、水槽の中が目障りになるのと、温度を設定する方法として、温度設定ネジ を強く右に回しておき、(うんと高い温度に設定する状態にする)希望の水温に なれば、パイロットランプがチカチカと点滅するところ迄ネジを戻すと言う方法 なので、温度の設定値を変更する必要に迫られたときは、設定に時間と手間が掛 かります。 ICサーモは値段は少し高いのですが、水槽の中には細いセンサを入れるだけ で、本体は外にあるので、水槽の中がスッキリと纏ります。 温度の設定もダイアルを希望の温度目盛りに合わせておけば、1度以下の誤差 で温度を合わせることが出来、取り扱いが楽です。 サーモスタットも、人間が作ったものである以上、故障することが避けられま せんが、バイメタル式とICサーモでは、その故障モード(故障の様態)が少し 異なり、バイメタル式のサーモスタットは、スイッチの入り切りを機械的な接点 で行なっているので、この接点が焼き付き、ヒータが切れなくなり、気が付くの が遅いと、魚を煮殺してしまうと言う故障モードが多い様です。 ICサーモは、これとは逆に、ヒータが入らなくなり、魚を凍え死なせる様な 故障が一般的ですが、水槽が室内に置かれている場合、一晩くらいであれば、魚 が死ぬ程までは温度が下がらないことが多いので、ヒータが入りっぱなしになる 故障よりはましと言えます。 なお、この二つの方式のサーモの信頼性を比べた場合、値段の高いICサーモ が、値段に比例して故障が少ないかと言うとそうでもなく、故障の確率は同じよ うなものです。 E、エアポンプ、エアストーン、チューブ。 エアリフト式の底面フィルタを使う時に必要なのが、このエアポンプで、大容 量の物は、モータを使ったコンプレッサ式などが有りますが、水槽の数が少ない 場合は、値段の廉い『ダイアフラム式』で十分です。 普通、熱帯魚屋でエアポンプと言えば、このダイアフラム式のポンプを売って くれます。 ダイアフラム式エアポンプと言うのは、永久磁石と電磁石を接近させておき、 この二つの磁石の間の、吸引、反発力に依って、ゴム製のダイアフラムを駆動し て、エアを送り出す方式で、その原理は、30年以上も前から全く変わっていま せんが、ゴムの疲労によってダイアフラムが破れると言う以外に、故障が発生す る所がなく、値段が廉い割に何のメインテナンスも必要でなく、かつ、信頼性が 高いと言う優れた物です。 エアポンプには、普通、エアの取り出し口が一つのシングルタイプと、二つの ダブルタイプが有りますが、ダブルタイプを購入して下さい。 何故、ダブルが必要かと言うと、一つは底面フィルターに使い、もう一つは、 エアストンをつないで、水槽の中に泡を吹き出す為です。 このエアストンの泡は、見た目にも、涼しげで、熱帯魚の観賞価値を高めます が、ここではもっと実用的に、水中に溶け込んだ酸素の量を増やすことで、フィ ルターの濾過能力を高め、水質を維持するのが目的ですから、単なる観賞の為以 上の役割を期待します。 フィルターの生物濾過は、濾材の表面に繁殖した『ニトロソモナス』と 『ニトロバクター』と言う、二つの種類の好気性バクテリアに依って、魚の排泄 物中のアンモニアが、魚にとって無害な硝酸に変換されるのですが、この時、水 中に溶け込んでいる酸素を沢山消費するので、エアストンからの泡で、水中の酸 素を補給してやり、濾過バクテリアの活動を活発にさせてやると、同じ様に餌を やっていても、水が汚れ難いと言う訳です。