#39 熱帯魚への誘い>(5)              可良時寿子
可良時寿子 ID:KBB53931

◆ 日常の餌。

  魚は生きものですから、飼育していると当然のこととして、餌をやる必要が有
りますが、餌をやるというのは、魚に限らずペットを飼育する者の楽しみの一つ
です。

  理想的な餌は、その魚が自然界の野性状態の時に食べていた物と、同じ物を食
わせることですが、実際には難しいことなので、私達が容易に入手できる餌の中
から、それぞれの魚が好みそうなものを幾つか選び、栄養が方よら無い様に気を
付けます。

  自分の飼育している魚が、自然の河川や湖で何を食べていたかを正確に知る事
は、繁殖させるときなどには是非とも必要なことですが、文献などが無くとも、
水槽の中に泳いでいる魚の姿(口の形と構造)を観察すれば、大体見当が付きま
す。

  皆さんが、これから色々な魚を飼育する時にも、初めは周囲の熱帯魚愛好家や
ショップにアドバイスを求めると思いますが、是非とも自分の飼育している魚の
口を観察して、自分なりの餌を工夫してみて下さい。

  観賞魚の餌が備えるべき条件は、魚が良く食べて、栄養が豊富なことは勿論で
すが、その他に、
      衛生的であること。
      保存が利くこと。
      1年中供給できること。
      経済的であること。
等の条件を充たす必要が有ります。

  グッピー、ベタ等の様に上向きの口を持つ魚は、水面に浮いているか、水面近
くの、つまり、自分の体よりも上の方の餌を食べるのが得意ですが、下に沈んだ
餌は殆ど食べることが出来ないので、飼育下においても水面に浮かぶ餌、例えば
テトラミンの様な浮上性のフレークフードが適しています。

  また、これらの上向きの口を持つ魚は、物を噛み千切ることの出来るような、
鋭い歯を持っていないのが普通で、餌は口の中に入るような小さな物か、固めた
餌で有っても容易に小さくバラケる物でないと食べることが出来ないので、例え
水面に浮く餌であっても、砕かれていない乾燥クリル(オキアミ)の様なものは、
食べることが出来ませんから注意して下さい。

  これとは逆に、下向きに口が付いているコリドラスなどは、川底の泥の中に口
を突っ込んでかき回し、泥の中に居るミミズの様な物を探しだして食べているの
で、飼育下でも底まで沈む餌を与えてやらないと、水面に浮かんでいる様な餌は、
食べることが出来ません。

  また、こういう口をしている魚は、歯が有りませんから、上向きの口の魚と同
じく、丸呑みできる小さな餌を与える必要が有ります。

  口が正面を向いている魚、このタイプが圧倒的多数派で、本来は水中に泳いで
いる小魚や、水棲昆虫を食べているのでしょうが、飼育下にあっては、餌を取る
範囲は水面から底面まで、何処でもお構い無しと言う逞しさで、これに歯が付い
ていると、どんな餌でも食べることが出来る、最も飼育し易いタイプですが、綺
麗に植え込んだ、大切な水草を食べてくれるのも、このタイプの魚です。

  グッピーの様な小型の魚で有れば、餌を食う量も少ないので、市販のフレーク
フードで間に合うのですが、シクリッド等を飼育していると、餌も沢山食べるの
で、フレークフードでは経済的に大変です。

  ショップへ行くと各種の餌を売っていますが、シクリッド等は金魚用のソフト
タイプの餌なども経済的で、良く食べてくれます。

  生きた餌としては、イトミミズが売られており、これは動くので魚の興味を引
き、良く食べてくれるのは良いのですが、イトミミズと言うのは、ドブ川等、メ
タンガスが発生している様な、腐った泥土の中に棲んでおり、これを集めてきた
ものですが、イトミミズは川底の泥を食べて、その中の有機物を栄養源にしてい
るので、イトミミズの体の中には雑菌が混じった泥が詰まっており、これを吐か
せて綺麗にしたものを与えないと、水槽の中に病原菌を持ち込む元凶となります。

  イトミミズを浅い洗面器の様なものに入れ、水道の水をチョロチョロと流して
2日位保管すると、体の中の泥を吐き出し綺麗になりますが、ドロの他にも、ヒ
ドラ、ミズミミズ、プラナリア等と言う、魚に対しては害が無くとも、見た目に
気持ちの悪い寄生虫が、水槽に紛れ込んでくる元になるので、この餌は余り感心
した餌とは言えません。

  自然界の虫を利用する餌としては、この他に、ミジンコ、アカムシ等がありま
すが、此等は生きた状態で流通させるのが難しい、取れる量に季節変動がある、
ということと、最近は下水道が整備され、国内で余り取れないので、中国から輸
入されるものが多く、初夏の一時を除いては生きたものは販売されて居らず、冷
凍品が出回っています。

  アカムシと言うのはボウフラ(蚊の幼虫)ですが、私達の血を吸うイエカでは
無く、セスジユスリカの幼虫で、人間の血液と同じようなヘモグロビンを持って
いるので、英語ではBLOOD−WORM(血の虫)と呼ばれる、赤い色をして
いるのです。

  此等の、冷凍餌は、ヒルやミズミミズ等と言う、寄生虫を水槽に持ち込む心配
は有りませんが、各種の細菌性病原菌は冷凍したくらいでは死にませんから、
『冷凍すれば安全だ』と考えるのは危険です。

  ウィルスとかその他の細菌は加熱により死にますが、冷凍によっては殺すこと
が出来ません。
  これは、各種の微生物を扱う研究機関が、純粋培養した微生物の、生きた標本
の長期保存の方法として、微生物とグルタミンソーダの混合状態で、−180度
で(家庭用のフリーザはどんなに頑張っても−18度ですから、何と1桁違いで
す)半永久的に保存しているのを見れば分かります。

  中型のシクリッドとかカラシンの様な大飯食いには、人間の食べるアジとかカ
キの身を細かく刻んだものもご馳走ですが、肉質の餌ばかりでは魚も便秘になる
ので、植物質の餌が必要で、栄養のバランスも考えると、理想的なのはディスカ
ス用のハンバーグですから、ディスカスに限らず使うことを奨めます。

  市販のハンバーグには、色揚げ効果を狙ってホルモン剤を混ぜたものが売られ
ていたり、値段も高いので、ここは一つ、私の書いた、
    『ディスカス・ハンバーグの作り方』
を参考に、自作することを奨めます。
(注:これはまた、別の機会に発表します)

  次に問題になるのは、餌の量で、よく、どれくらいの餌をやれば良いのかと、
聞かれることが有りますが、これは、例え同じ魚であっても、成長期には多くの
餌を必要とし、成魚に成ってしまうと却って餌の要求量が減ります。
 その上、餌の成分の違いも有るので、一概に体重の何%等といえず、経験に
よって掴んでもらうより他にないと思います。

  自然界の魚は(一部の夜行性のナマズ等を除き)、明け方と夕方の2回、積極
的に餌を探し、日中は殆ど餌を食わないことは、魚釣りの経験のある人で有れば
解っていることと思いますが、飼育下の魚には
      朝。
      夕方(会社や学校から帰った時)。
      夜。
の3回に分けてやり、1回当たり、10分位で食べ切る量とし、夜は、消灯の
30分前には食べ終わって居る様にして下さい。

  ただ、ディスカスだけは例外で、この魚は餌の吸収効率が悪いのか、30分位
かけて食べる量を与えてやらないと、だんだん痩せてきて、一度痩せさせるとな
かなか回復せず、将来の繁殖にも支障が出てきます。

  餌をやりすぎ、食べ残すと、急速に水が腐るので、どちらかと言えば不足気味
の方が安全で、餌不足で飢え死にさせるよりも、やりすぎて失敗するのが、初心
者の陥るパターンてす。

  もし、消灯前に食べ残した餌が有れば、エアチューブ等をサイフォン代わりに
して、その日のうちに取り除いておくことが必要です。

  次に、旅行等家を留守にするときの餌やりですが、普段魚の世話を一緒にして
いる家族が居る場合は、餌やりも頼めますが、普段世話をしていない人に餌やり
を頼むのは、極めて危険なことです。

  シクリッド等の中型〜大型の魚は、脳味噌が大きく賢いので人に慣れやすく、
人が水槽の前に立つと、ガラス面に顔を擦り着けて愛敬を振り播いてくれますが、
普段魚の世話をしていない人は、これを見ると、『魚が餌を催促している』と誤
解し、食べきれない程どんどん与え、急速に水質を悪化させ、病気を引き起こし
たり、死なせたりと言う結果を招きます。

  家族に餌の世話を頼むときは、普段与えている量の1回分をはっきりと示し、
1日に1回だけ与えてもらい、魚が可愛くとも、決して2回以上は与え無い様に、
念を押しておきます。

  また、こうして普段よりも餌を少なくしても、水質の悪化は進行しますが、お
そらく世話を頼まれた人は、正しい水替えが出来ないと思いますから、留守にす
る前に、水替えを済ませておいて下さい。

  野性の魚の場合、毎日決まって餌を食える訳ではないので、鳥と違って1カ月
位までは絶食が利きます(多少は痩せますが)から、一番安全なのは、家族には
朝晩の蛍光灯の点滅だけを頼み、魚は絶食させておくことです。

  家族全員が出掛け、蛍光灯の点滅をする人も居ない場合は、タイマーを使って
自動的に点滅させると言う手も有りますが、窓から外の明かりが入る場合は、蛍
光灯を消し、もし、雨戸を閉めて真っ暗になる場合は、蛍光灯をつけっ放しにし
ておけば良いのです。

  間違っても、『食い蓄めをさせてやろう』等と考えて、普段より多い、食べき
れない程の餌を与えてから、留守にするようなことはしないで下さい。

 くどいようですが、もう一度、念を押して置きますと、
        『魚は1カ月くらいの絶食は耐えることが出来、飢え死にさせる例は殆
        どないが、餌の与え過ぎで殺す例は、沢山ある』
と言うことです。


◆ フィルターの掃除。

  魚を飼って餌をやっていると、当然水が汚れてくるので、「水作り」の項で述
べた要領で、水替えをしていると思いますが、暫らくするとフィルターが物理的
な汚れで詰まってくるので、日常の水替えだけでは魚を飼育する水質が維持でき
ず、フィルターの掃除をする必要に迫られます。

  理想的なフィルターシステムと言うのは、物理フィルターと生物フィルターの
機能が分離しており、生物フィルターの方は永久に掃除をする必要がないと言う
システムで、私がディスカスの繁殖をしている水槽はそれに近く、生物フィル
ターの中の濾過バクテリアは貴重品の様に大切に扱われていますが、皆さんの水
槽に設置された外部濾過装置(上部フィルターとか、パワーフィルター)は、こ
のような機能の分離が行なわれて居らず、物理フィルターと生物フィルターの機
能が兼用された使い方をされていますから、どうしても1〜2カ月に一度の掃除
が必要です。

  上部フィルターに濾材としてカルチャリングを使い、その上にウールマットを
乗せて物理濾過をしている場合は、定期的に(詰まる前に)古いウールマットを
捨て、新しいウールマットを乗せるだけで、濾材の掃除は特に行なう必要があり
ません、

  同じ上部濾過装置でも、濾材に大磯砂等を使っていると、ウールマットで取り
きれなかった細かいゴミが大磯砂の間に詰まり、水の流れが悪くなっていますか
ら、ウールマットの交換とともに、濾材を取り出して洗う必要が有ります。

  洗い方としては、折角繁殖させた濾過バクテリアを殺しては、苦労した水作り
も「元の木阿弥」ですから、次のパワーフィルターの濾材の洗い方を参考にして
下さい。

  パワーフィルターは、内部では下から上にむかって水が流れており、一番下に
目の粗いマットを敷き、その上にカルチャリング等の濾材を詰めておくと、内部
の動作としては物理濾過を受け持つ部分と、生物濾過を受け持つ部分が別れてい
ることになるのですが、掃除をするときには、物理濾過の部分だけを掃除するこ
とが出来ない構造になっているので、全ての濾材を外に出して洗うことになりま
す。

  パワーフィルターに接続されているホースを、タップの所で切り離し、本体の
蓋を開けて、内部の濾材を全てバケツ等に出します。

  カラになったフィルター本体の内部を綺麗に洗い、物理濾過のマットも水道の
水で綺麗に洗って元通りにセットします。

  ここから後が、管理能力を問われる濾材の洗浄ですが、皆さんならどうします
か。

  汚いゴミを洗えば良いと思って、濾材を入れたバケツの中に冷たい水道の水を
入れて、勢い良くジャブジャブとかき回せば簡単に綺麗になる、と思うのは初心
者が陥りやすい落し穴。

  私の近所の家で金魚を飼育している人も、天気の良い日曜日などに、家の前の
空き地で濾材を掃除しているのを見ると、大体こうやっており、ひどい人になる
と洗剤まで用意する人が居ますが、掃除といっても、人間の目で見て綺麗にする
ことが目的ではなく、魚にとって棲みやすい環境を維持するのが目的だというこ
とを忘れてはなりません。

  今まで、苦労して濾過バクテリアを繁殖させ、水作りをして来た訳ですから、
濾材の掃除に当たっても、折角繁殖した濾過バクテリアを殺さない様に配慮し、
物理的な大きなゴミだけを取り除く様にします。

  具体的には、濾材を水道の冷たい(冷たくない微温湯でも結果は同じですが)
水で洗うと、水道水には細菌を殺して人間の健康を守る目的で、カルキを混入し
ていますが、このカルキは濾過バクテリアも無差別に殺してしまうために、折角
苦労して繁殖させた濾過バクテリアが無くなり、目で見て綺麗になっても、魚の
為には水質を浄化出来ないということになるので、濾材を洗う水は、現在魚を飼
育している水槽からバケツに汲み出し(この水にはカルキが残っていないはず)、
決して新しい水道水を使わない様に、注意する必要が有ります。

  フィルターの掃除と言うのは、濾過バクテリアを殺さず、濾材の目詰まりを解
消することだけが目的で、出来ることなら濾材を洗わずに無ませたほうが、良い
訳ですから、濾材は余りゴシゴシと綺麗に洗わず、水槽から汲んできた水で、大
きなゴミだけをサッと流す程度に止め、まあ言ってみれば、物臭な人が手抜きを
しながら洗った程度の洗い方が、一番良いのです。

  私は、魚を飼育するときの決め手はフィルターシステムの善し悪しに有ると考
えているので、フィルターとその中で働く濾過バクテリアに留意することを強調
していますが、フィルターと言うのは、その水槽内に発生する魚の排泄物(言い
換えれば、その水槽に持ち込まれる餌の種類と量)と、水替えの頻度、水草の茂
り具合等で、効果が決まるもので、良く、雑誌の広告にある様に何cmの水槽な
らコレと言った決め方は出来ないことを強調しておきます。

  そこで、皆さんが、もし2本以上の水槽を設置できる場合には、例え同じよう
な魚を飼育するにしても、それぞれの水槽ごとに別々のフィルターシステムを採
用し(例え同じパワーフィルターでも、濾材の質と量を変えるとかして)、自分
の管理のし方(水替えの頻度とか、餌の量等)に最も適したフィルターシステム
を自分で探すことを奨めます。

  本文の様な講座は、最大公約数的な所を採って解説していますが、飼育される
魚が違うと、これが一番と言う、絶対的なフィルターシステムを決めることが出
来ないので、複数のフィルターシステムを設置し、『アレは駄目だな』と言うこ
とが解れば、経済的には多少無駄をしたように見えても、お金では手に入れるこ
との出来ない管理技術を、身に着けることが出来、魚を死なせたり、病気にした
りと言う悩みが少なくなります。


◆ 水草を植えよう。

 魚を暫らく飼育していると、何処からともなく胞子が飛んできて、水槽の中の
アンモニアとか、硝酸態窒素を栄養源にしてコケが蔓延り、ガラス面が曇って、
魚が見えなくなります。

 対症療法的には、水槽がガラス製で有れば、カミソリの刃で擦り落とす様に掃
除をすれば綺麗になりますが、水槽がアクリル製の場合は、カミソリの刃をを使
うと水槽にキズを入れてしまうので、同じアクリルの板(文房具屋で売っている
3角定規が良い)を使って、擦り落とします。
 最近売り出された、水槽の内面の苔取り用具としては、ダイカの『苔取る君』
が、値段も易く、アクリルに傷を付けずに、落としにくい「斑点状の苔」もきれ
いに落とせますから、これを薦めます。
 『苔取る君』と言うのは、見た目には、金属箔で出来たタワシの様に見えます
が、ポリエステル・フィルムにアルミを真空蒸着したものを細く切って、タワシ
のように丸めた物で、アルミを蒸着することで適当に腰が強くなり、アクリル水
槽に傷を付けずに、苔だけをきれいに落とすことが出来ます。

 根本的にコケ対策をしようとするので有れば、水草を植えます。

 熱帯魚の水槽の中に植えられた水草は、
   いかにも自然らしくて、観賞価値を高める。
   魚が落ち着く。
   魚の種類によっては、繁殖の場所となる。
   アンモニアや硝酸を吸収し、水質を安定させ、水替えの回数が減らせる。
   コケが生え難くなる。
等の効果があります。

 ヨーロッパてもオランダの様に北の方へ行くと、冬の寒さが厳しく、部屋の中
に観葉植物を飾るのが難しいので、大きな水槽に後が見えないほどたくさんの水
草を植え、魚は何処に居るのか分からないくらい少ない水槽を作り上げ、1年中
水草の緑を楽しんで居り(何しろ、水槽のなかは1年中熱帯で、保温の経費も余
り掛かりません)、こうなると理想的なバランスドアクアリゥムの世界ですが、
魚を主体にした水槽にも水草を植えると、うまく行けば、フィルターの能力を2
倍にしたのと同じくらいの、水質浄化能力を発揮してくれ、その上、観賞価値も
格段に上がります。

 水槽の中に水草を植えると、初めはコケの方が優勢で、水草の葉の上にまでコ
ケが生えたりしますが、水草の根が延びて勢い良く成長を始めると、肥料となる
水中の硝酸態窒素を水草が奪ってしまうので、コケが栄養不足になり、余り生え
なくなります。

 水草も、熱帯魚ショップへ行けば沢山の種類が売られていますが、栽培の易し
い、値段の廉いものを選んでください。

 値段が廉くとも、『有茎植物』と呼ばれる、1本の幹が木の様に立ち、その周
囲に葉が付いているものは奨められません。

 例えば、俗に金魚藻と呼ばれる『カボンバ』は、何処のショップでも廉い値段
で売っていますが、これはビニルハウスの様に、強烈な日光の当たるところで栽
培されたもので、私達が普通に設置するような蛍光灯の光では、光線が弱すぎ、
決して育てることが出来ません。

 育て易いのは、茎の無い水草で、
   ウオータースプライト、ミクロソリゥムなどの水性シダの仲間。
   アマゾンソード等のエキノドラス類。
   ネジレモ等のバリスネリア類。
   タイガーロータス等の睡蓮の仲間。
   アヌビアス等のサトイモ科の仲間(これは値段が高い)。
   ウィローモス(流木や石に着ける)。
等が有りますから、ショップの水槽を覗き、自分の好みに合ったものを選んで下
さい。

 上に上げた水草のうち、アヌビアスとウィローモスは流木に活着させ、その他
の物は砂に植え込みますが、水草を植える為には底砂の厚みが5cm位必要で、
不用意に植えると、厚い底砂の中の水が淀み、腐敗して、水質浄化のつもりが逆
効果になりかねないので、水槽の底には、底面フィルターの上以外は底砂を敷か
ず、水草は小さな素焼きの植木鉢に植え、水槽の底に沈めておくのが一番安全で
す。

 特に、アマゾンソード等エキノドラスの仲間は、根を動かされることを嫌い、
植え替えの度に草が小さくなって行きますから、植木鉢に植えてやると、調子を
維持でき、1本有れば、水槽一杯になるくらい大きく茂ってくれます。

 なお、植物が勢い良く成長するために必要な肥料の3大要素は、学校でも習っ
た通り、
   窒素、リン、カリ
で、園芸店に売っている肥料は、以上の要素が適当に混合されていますが、水槽
のなかでは、窒素とリンは魚の排泄物の主成分であり、此等を吸収させるのが、
水槽の中に水草を植える目的ですから、肥料を外からやるのは
        『100害有って1利無し』
ですから、決して園芸用の肥料を与えてはいけません。

 熱帯魚ショップには、水草の肥料と称して、様々な肥料が売られていますが、
此等は、園芸用と違い窒素成分を含まず、カリと鉄分を主体にしたもので、これ
は害には成りませんが、こんな肥料が必要なのは、水槽一杯にビッシリと水草を
植え込む場合ですから、皆さんは、水草に肥料を施す必要は有りません。

 水草を育てていると、葉の枚数は無限に多くなるのではなく、古い葉から順番
に枯れ落ちて行くのが解りますが、この枯葉を水槽の中に残しておくと、急速に
水質が悪化しますから、古くなった葉は、枯れる前に切り取って下さい。

 大体、水草というのは、魚の排泄物を肥料に成長しているのですから、水草の
葉は言ってみれば、魚の排泄物が無害の固形物に変化した様な物で、この葉が枯
れて、水槽のなかで腐るということは、折角固形化されて魚の排泄物が、元に戻っ
て水槽の中にバラ播かれる様なものだと言えば、古い葉を、枯れる前に刈り取る
作業の意味が解ってもらえると思います。

 古い葉を処分するとき、手で千切ろうとすると、草の本体が抜けて根が傷んだ
り、汚く千切れて傷口から水草の病気が発生したりするので、小型のハサミ(水
に濡れても錆びないステンレスのハサミ)を用意しておき、水草を傷め無い様に
丁寧に切り取って下さい。


◆ 魚の病気と治療法 (1)。

  熱帯魚に限らず、動物を飼育して行くうえで避けて通れないのが、病気とか事
故です。

  熱帯魚の事故の大半は、サーモスタットの故障と、飛び出し、水槽の水漏れ位
で、何れも日頃の注意で防げるものですが、どんなに注意していても見舞われる
のが、病気で、魚は『腹が痛い』等と言ってくれない為に、発見が遅れ易く、ま
た、早期に発見できたとしても病気の正体を見極め、適切な治療を施すのは容易
なことではありません。

 特に強調して置きたいのは、魚の場合、犬や猫と違って、病気の診断と治療を
専門にするプロの医者が居ないということです。
 その為に、面倒なようでも、魚の病気を見分け、適切な治療を施せる技術を身
につけないと、飼育を楽しむことが出来ません。

  魚は体が小さく、水のなかで泳いでいるので、病気になっても、体の外に症状
が表れなければなかなか判断が難しく、例え外から解る症状が表れたとしても、
良く似ている病気が沢山有るので、病気の名前と表れる症状の関係は、文章や言
葉では正確に表すことが出来ないので、良く知っている人(今まで沢山の魚の病
気を経験し、沢山の魚を殺してきた人です)に見てもらって、一つ一つ覚えて知
識を身につけるより有りません。

  もし、魚を飼育していて、好運にも全く病気を発生させた事がなければ(こん
なことは、実際には有り得ないことですが)、そのひとは、魚の病気の治療法に
関する知識が何も身につかず、イザと言うときには、なすすべを知らないという
ことになります。

  要するに、魚の病気の治療法については、病気を出さ無い様に配慮することは
当然必要なことですが、病気を経験した事がないというのは、何も自慢できるこ
とでは無く、飼育する人自身が、実際の魚の病気を経験し、失敗を重ねながらノ
ウハウを蓄積し、病気になっても早期発見の出来る観察眼を持ち、適切な治療が
出来てこそ『飼育技術を身につけた』と言えるのです。

  魚の病気には大別して、
      新しく購入した魚、水草、生き餌等について、外部から侵入してくるもの。
      水槽内部に原因があるもの。
      ウキブクロ、その他の先天的な欠陥。
が有りますが、外部からの侵入を防ぐ手段は、観察しか有りませんから、自分が
買おうとしている魚が正常に泳いでいるか、体色は正常か、ヒレなどが欠けてい
ないか、と言うことを良く観察すれば、先天的な欠陥も含めて病気の魚を買うこ
とを避けることが出来ます。

  この時に大切なことは、自分の買おうとしている個体だけでなく、その水槽の
中の全ての個体を観察し、もしその水槽の中に、1匹でも様子のおかしな魚が居
れば、例え、自分が購入したいと思っている個体が健康そうに見えても、その水
槽の中の魚を購入しない、と言う注意を払うことに拠って、病気の侵入を防げま
す。

  水槽内部に原因がある病気というのは、水温の急変と、水質の悪化に注意を払
い、フィルターの点検を怠らなければ、多くの場合、避けることが出来ます。

  熱帯魚の病気は沢山有りますが、解り易い、代表的なものだけを次に、治療法
とともに挙げておきます。


A,白点病。

  症状=表皮に米粒より少し小さい白点が着き、魚が痒がり、ひどくなると皮膚
      に血が滲んでくる。

  治療法=飼育水温を28度以上とし、メチレンブルー、エルバージュ等を与え
        る。
          食塩(濃度は1%以下とする)も有効。

  白点病は人間で言えば『カゼ』の様なもので、水温を急変させたり、魚の体力
が落ちたときに発病します。
 良く発生するのは、梅雨時のように気温の不安定なときと、水槽を設置して間
がなく、濾過バクテリアの発生が十分でないときです。

  白点病の病原菌はイクチオフティリウスと言うカビに近い寄生虫で、この菌は
空気中の何処にでも居ますが、魚が体力があり、元気なときには発病しません。
 また、水の中では、微生物どうし、猛烈な生存競争をしており、濾過バクテリ
アが十分に活動しているときは、白点病、その他の感染性の病原菌は活動を抑え
込まれ、発病し難くなります。

  水温の急変などのストレスを与えると発病し、菌は
      魚の表皮の栄養を採って成長する。
      魚から離れ、底砂の中に落ちる。
      多数の幼体に分裂する。
      再び、魚について、栄養を取り、成長する。
と言うサイクルを1週間位で繰り返しますが、薬が効くのは、菌が魚から離れて
いる時です。

  水温を28度以上にすると、うまく分裂できず、栄養補給をたたれた菌は5日
位で死んでしまいますから、水温を上げる方法は、簡単で、かつ、有力な対策で
す。

  薬をやっても現在魚の皮膚に寄生している菌体は死なず、これが2〜3日で体
を離れたのを菌が死んだと誤解しやすいのですが、このままでは再発しますから、
白点病対策としては、魚の皮膚が綺麗になっても気を許さず、1週間の間隔で2
回投薬するのが正しい対策です。

  メチレンブルーと言う薬は名前からも解るとおり、染料ですが、カビには良く
効き、魚に対する副作用は有りませんから、普通は魚がやっと見えるくらい色が
着くまで入れるのですが、多少入れすぎても大丈夫です。

  エルバージュを使う時は、水100リッターに2.5グラム、従って60cm
水槽で有れば、1.25グラム入れます。

  食塩と言うのも多くの病気に効く便利な薬ですが、急に入れて、浸透圧を急変
させると、魚にショックを与えて却って弱らせることになるので、時間を掛けて
少しずつ入れて、最大でも1%を越えない様にして下さい。