#46 熱帯魚辞典>(06) 《こ、さ、し》 可良時寿子 可良時寿子 ID:KBB53931 【コンゴ・テトラ】 アフリカを代表するカラシン = Phenacogrammus interruptus。 ゴールデン・グリーンを基本とした、虹の様なメタリックな輝きを持ち、 見る角度に依って色が変化する。 雄、雌ともに、殆ど同じ体色であるが、雄の方が、僅かに体色が鮮やかで ある。 本種の雌雄の判別は容易で、成熟すると、雄の尾鰭の中央部が長く延びて くるので、間違う事はない。 【コントラ・コロライン】 ドイツのテトラ社より販売されている、カルキ抜きの商品名。 カルキを抜くという役割にしては、値段が高く、成分も、濃度も明記され ていないので、安心して使えない。 水道のカルキを無害化して、重金属を中和する(この地球上どこを探して も、重金属を中和するような化学反応を起こせる物質はない。重金属は、沈 澱させることは可能であるが、中和は出来ない)等という、マユ唾ものの、 非科学的な広告を平気で行なっている。 それだけ、でやめておけば良いものを、ついでに、アクア・セイフ(これ も、成分や濃度が明記されて居らず、何がどう効くのか、さっぱり解らない と言う、イイカゲンな商品)と併用して下さい等という、厚かましい広告を している商品。 多分、ハイポを水に溶かしただけだと推定するが、それにしては値段が高 過ぎ、こんなものを使うのは、広告やショップの口車に、簡単に乗せられ、 自分の頭で考えるという努力をしない、お人好しのお金持ちだけ。 なお、本品を含め、テトラ社の水質調整剤はすべて、原文ではガロン当た りとなっている使用量が日本語の説明書ではそのままリッター当たりの使用 量と訳されており、そのまま信じて使うと、3.8倍も使うことになるので 注意すること。 まあ、正体不明で、最適使用量の表示もいい加減なものは使わない方が安 全というもの。 ★参照 → カルキ抜き、チオ・硫酸ナトリゥム。 【コンバントリン】 ファイザー製薬より売り出されている人間用の虫下し。 幼児用のドライシロップと呼ばれる顆粒タイプと糖衣錠があるが、ドライ シロップが使いやすい。 本剤は、ヘキサミタ症の様に腸管内に寄生する細菌を処理するのに、食欲 を失った魚をフラジール等で処理して、食欲を回復した後で餌に混ぜて、腸 管内に送り込み、最後の仕上げに使う。 使い方は、ディスカスハンバーグ100grにドライシロップ1包を良く混 合して、もう一度凍結させた物を作り、これを普段の餌の変わりに使う。 ちょっと味に癖があるのか、100grに2包以上混ぜると急速に食欲が落 ちるので、1包位混ぜた物を4〜5日間、連続投与するのが良い。 なお、本剤は人間用の薬であり、熱帯魚ショップでは購入出来ないので、 薬局で購入する。 ★参照 → ヘキサミタ症、メトロニダゾール。 【サイテス=CITES】 Convention on International Trade In Endangered Species of Wild Fawna & Flola = 野生動植物の種の国際取引に関する条約の略。 1973年3月にワシントンで、条約が採択されたので、わが国では、一 般に、ワシントン条約と呼ばれることが多い。 絶滅の危機にある野生動植物の商業取引の規制に関する条約で、私たちに 関係する部分では、アジア・アロワナ、造礁サンゴ、リクガメ等が、保護対 象にリスト・アップされ、取引が禁止されている。 指定された種は、生体だけでなく、剥製、加工品も、規制の対象に含まれ る。 これは、野生個体の乱獲を防ぐという意味であるから、牙や革の取引を規 制しないと、個体数の減少を防げないと言う意味である。 本条約は、あくまでも野生生物の保護が目的であるから、人工的に繁殖さ せた物は、規制の対象外である。 この人工的に繁殖させたと言うのは、野生の個体を捕まえて、これを繁殖 させた世代は、人工繁殖世代とは認められず、更にその後の世代、つまり、 両親共が人工的に繁殖させた個体から得られた子供以後、野生の世代から数 えて孫以後の世代を指す。 【臍嚢 = さいのう】 卵から孵化したばかりの稚魚が、体の中に取り込んでいる、栄養体で、こ れがある為に、数日間は餌を食わなくとも、生存できるだけでなく、成長も できる。 ヨーク・サックとも言う。 ★参照 → ヨーク・サック。 【サイフォン】 水槽の水替えをする時に、ゴミや糞を吸い出すための道具。 ジャバラ状になったホースの先端に、手でパコパコと押さえて水を吸い上 げるポンプが付いており、基本的には、手動式の、灯油ポンプと同じである が、吸い込み口の部分が、太く膨らんでおり、ここを底砂の中に差し込んで 水を吸い出すと、砂の中のゴミだけを吸い出す事が出来る。 砂の中には、ゴミが溜まっているだけでなく、淀んだ部分があると、亜硝 酸なども溜まっているので、これらを水槽の中に拡散させない様に吸い出す 必要がある。 吸い込み口先端の、ゴミ集めの部分を垂直に底砂の中に挿入し、出口を指 で押さえて、水流の強さを調整し、ゴミだけを吸い出し、チューブの中に綺 麗な水を吸い込むようになると、まっすぐに垂直に引き上げ、少し横に移動 して、また新しい部分の掃除をする。 この様に、底砂の中に垂直に挿入し、垂直に引き上げる事が大切で、こう すると、底砂の中に溜まった物を水槽の中に拡散させずに綺麗に掃除する事 が、出来る。 砂の中に挿入したまま、横に移動させると、ゴミや亜硝酸が舞い上がり、 水槽の中に拡散させる事になるので、決して、横に動かさない事が大切であ る。 最近は、五味商事から「そうじやさん」等という商品名で、電池で動く電 動式も販売されているが、何を考えているのか、吐き出し口に布の袋を着け て、ゴミを集め、水はもう一度水槽に戻すような使い方を宣伝しているが、 目に見えるゴミを取っても、亜硝酸や硝酸が無くなる訳ではないので、こん な使い方をしても、水は綺麗に成らない。 これは、魚を飼育する水の浄化という事の、本当の意味が解っていない人 が思いついた商品であって、気休め以上の役には立たない事を知らなければ ならない。 【サカサ・ナマズ】 ナイル川に棲む、ナマズ = Synodontis nigriventris。 本種が腹を上にして、逆さまになって泳ぐ事は、大昔から知られていたと 見えて、ピラミッドの中の壁画にも、本種が逆さまになって泳いでいる姿が 描かれている。 本種が、何故、逆さになって泳ぐのか、理由は良く解っていない。 逆さになって泳ぐのは、本種だけの専売特許ではなく、他にもいる。 魚の体色と言うのは、一般に背中の方が黒っぽく、腹の方が白い物が多い が、これは、水上から見たときに、川底の色にまぎれて見え難くなるととも に、下の方から見上げた時には水面の明るさに溶け込み、敵に発見され難く して、生存率を高めるために発達した物で、本種の場合、逆さに泳ぐ為に、 腹の方が黒くなっている。 初めて見た、生態の良く解っていない魚が、逆さに泳ぐかどうかは、腹と 背中の色を見れば、大体見当を着ける事が出来、本種の他にも、背中よりも 腹の方が黒く、逆さに泳ぐと推定でき、現実に水槽の中で、逆さに泳ぐとこ ろを観察できる魚は、何種か居る。 【雑種】 複数の遺伝形質を受け継いでいる物を言う。 外見上に現れている、形質を表現形と言うが、雑種の場合は、表現形以外 の形質を持って居るが、これは飽くまでも、遺伝子として持っているのであ り、外見上は現れない物である。 従って、或る個体の親が分からないときには、その個体の外見を見ただけ で、雑種であるかどうかは判断できない。 しかし、繁殖させてみると、様々な表現形の子供が生まれ、親と全く同じ 形質の子が揃わないので、雑種と分かる。 【雑種強性】 雄、雌が別々の系統に属する純系である場合、これを交配すると、新しい 雑種が出来るが、この時得られる雑種は、両親からそれぞれ良いところだけ を選んで受け継いだ様に、素晴らしい物が得られる場合が有る。 これを雑種強性といって、新しい有用な新種を作り出す一つの手段として 利用される。 この初代の雑種はF1と呼ばれるが、これ自身が雑種であるため、その子 ども、つまりF2以下は、様々な形質の子どもが生まれることになり、安定 した形質の子を採るための親としては使えない。 雑種強性を利用した品種を得るためには、親はそれぞれ、純系である事が 要求される。 【サーモ・スタット】 ヒーターを用いて、水槽の温度を維持するとき、水温が上がり過ぎると、 ヒーターを切り、水温が下がるとヒーターのスイッチを入れ、絶えず一定の 水温を維持する様に、ヒーターを制御するための物である。 現在、わが国で市販されている、熱帯魚用のサーモスタットは、動作原理 に着目すると、『バイ・メタル式』と、『アイ・シー=IC式』の2種類が ある。 ★参照 → バイ・メタル式サーモ、IC式サーモ。 【サルモネラ菌】 亀の様な、爬虫、両生類が保有する菌で、保有しているペット自身は発病 せず、人間に感染する。 感染した場合、強い下痢が続き、嘔吐を繰り返すので、絶食した上で、脱 水症状を防ぐよう、生理食塩水を点滴する必要がある。 感染した人間の治療には、一週間ほどを要する。 サルモネラ菌を保有した個体から生まれた子供は、卵の中に、既にサルモ ネラ菌を保有しており、一度感染した個体から除菌するのは難しい。 一時、ミシシッピー・アカミミガメ(何処のショップでも見かける、ミド リガメの事)が、殆ど全個体がこの菌に汚染されており、問題になったが、 卵に対して抗生物質を注射すると、無菌の個体が孵化するという技術が確立 され、「清潔な無菌カメ」と言って売り出されたので、事態はかなり改善さ れた。 【サンゴ砂】 主成分は、炭酸カルシゥムの多孔体で、造礁サンゴの骨格のかけら。 主に、海水魚を飼育する時の底砂とか、濾材に使われるが、淡水魚でも、 pHと硬度の高い水質を好む魚を飼育するときに、底砂や濾材として使用す る。 また、他の種類の魚を飼育するときにも、一時的にpHが下がり過ぎた物 を調整するときに、利用する事が出来る。 【サンショウオ】 ウオと言っても魚では無く、手も足もある両生類。 名前の由来は、皮膚の粘膜に触ると、山椒の臭いがする事に因る。 半分に引き裂いても生きていると言われる生命力の強さから『ハンザキ』 と呼ぶ事もある。 わが国にも、6種類以上居り、そのうち、オオサンショウオは、天然記念 物として、捕獲、飼育が禁止されているが、その他のカスミサンショウオ、 トウキョウサンショウオ等は、自由に捕獲できる。 雪に埋もれて冬眠中のサンショウオは「イモ」と呼ばれ、山間部の住民の 重要なタンパク源であった。 餌は、海老、カニ、魚等の肉食性。 幼体は、外鰓を持つ。 オオサンショウオは、両生類の中で最大のサイズとなる。 現在、世界一のサイズを誇るのは、琵琶湖文化館で飼育されている、体長 1.3mのオオサンショウオである。 【三色出目金】 両眼が体から飛び出した特異な体型の金魚、出目金にアサギ色が乗った、 変わった金魚。 金魚の中にはアサギ色の種類が沢山有るが、これらのアサギ色は、何れも 一方の親に三色出目金を使って、モザイク透明鱗を実現した物である。 即ち、 三色出目金×琉金 = シュブン金 三色出目金×オランダ・シシガシラ = アズマ・ニシキ 三色出目金×ランチュウ = エド・ニシキ 等がある。 ★参照 → アサギ色、モザイク透明鱗。 【酸素パック】 魚を輸送するとき、水と魚を袋にいれ、空間の空気を追い出し、代わりに 純酸素ガスを詰める、輸送方式。 こうすると、水の中に高濃度の酸素がとけ込むので、長時間の輸送に耐え る事が出来る。 この方式を考え出したのは、わが国の金魚生産業者で、従来の、空気を詰 めた方式では、アメリカ迄金魚を運んだとき、部止まりが悪かったのを、酸 素パックにしてから、飛躍的に生存率を上げる事に成功した。 【産卵ケース】 グッピ等、自分の子どもを食べる習性のある魚の繁殖をする時に使用する もの。 水が流通するように、小孔が開いたプラスチックスのケースで、水槽の内 側に吸盤で固定する。 内部に、細い溝状の隙間のある中底を入れ、この上で、子どもを産ませる と、産まれた子どもは溝から下に落ちて、親に食われずに助かる。 グッピの他にも、途中で吐き出してしまったアフリカン・シクリッドの卵 や、混泳させたのでは他の魚に食われてしまうような小さな魚を、小数保護 するのに、使われる。 変わった処では、水槽内の水流を弱めたい時に、フィルターの水の排出口 の近くにセットし、排水を受けとめるような使い方もある。 一つ用意しておくと、何かと便利な小道具である。 【産卵筒】 ディスカス、エンゼル等の基質産卵のシクリッドを繁殖させるとき、水草 や有り合わせのパイプ等に産卵させると、安定した産卵場所が確保できない ので、特に、ディスカスの産卵のために、円筒形の焼き物が売られている。 以前は、産卵筒と言えば、下の方にこぼれた卵や稚魚を受けとめる為の鍔 が付いていた。 しかし、この鍔は何の役にも立たないことが分かってきて、最近売り出さ れた物は、鍔がなく、下の方には産卵できないように、くびれさせて、オー バーハングしている形の物が、出回っている。 レンガやカワラで、代用できるが、手元に代用品が無い場合は、アレコレ と思案せずに、これを使うのが便利。 白い土を使った焼き物で、柚薬は掛けていないが、茶色の塗料を塗ってあ り、使っているうちに剥げてくる。 しかし、魚は色を気にしないから、例え、塗料が剥げても、実用上の問題 はなく、長期に使える。 【ジェイドゥ=JDO】 Jump-DOubutu の略で、商業ネットPC−VANの中のSIGの一つ、 「動物植物の国」にアクセスする時の、ジャンプ・コマンドに由来する。 ここは、観葉植物と、ペットに興味を持つ人たちのSIGで、野生生物は 扱っていない。 かつては、猫と犬が幅を利かせ、魚は少数派であり、魚関係の新しい書き 込みの無い日さえ有ったが、最近は、逆転して魚派が幅を利かせている。 犬、猫派が幅を利かせていたときは、初めてアクセスすると、どこかの幼 稚園のSIGに迷い込んだかと、錯覚するような、独特の幼児言葉が、飛び 交っており、一種独特の雰囲気があったが、最近はこの雰囲気も薄らいだ。 魚関係は、病気、繁殖まで話題が豊富であるが、堅苦しさがなく、初心者 がとけ込み易い雰囲気がある。 反面、無制限一本勝負の論争も可と言うもここの特徴。 【シー・オー・ツー=CO2】 炭酸ガスの事。 水草の成長促進に使う。 ★参照 → 炭酸ガス。 【シー・オー・ディー=COD】 化学的酸素要求量(Chemical Oxygen Demand)の略で、水の有機物を化学 的に酸化して浄化するのに必要な酸素の量を現し、これが大きいほど水が汚 れていると言うことになる、汚れ具合を表す尺度。 実際には、過マンガン酸カリゥムまたは、重クロム酸カリゥムなどの酸化 剤で水を酸化させ、必要な酸素量に換算して表す。 場合によっては、過マンガン酸カリゥムの消費量そのもので表現する場合 もある。 BODと対になって使われることが多いが、CODの場合、BODでは酸 化出来ないポリエチレン等も酸化出来たりすので、この二つの数値は一致し ないのが普通である。 ★参照 → ビー・オー・ディー=BOD。 【雌性発生】 高等動物の繁殖と言えば、雄と雌がいて、両親から遺伝子を半分ずつもら う事で、子どもが出来るという事が常識になっている。 この、両親から半分ずつの遺伝子を受け取ると言うのが、最も大切なとこ ろで、このことで、遺伝子の組み合わせが非常に複雑になり、環境に適応し て進化できる、根拠にも成っている。 子孫に伝えられる、遺伝子の組み合わせが単純になると、現在の環境には 都合が良くても、新しい生息地を広げたり、将来環境が変化した時に、対応 出来なくなって、種が滅んだりする可能性がある。 しかし、人間の都合で、食料とか、観賞対象として生き物を見た場合、望 ましい形質の個体を、金太郎飴の様に、一様に受け継いでもらいたいという 事が起きる。 この時は、出来れば雄と雌の交配をせずに、クローンを増やす事が出来る と有り難い。 世の中は、良く出来たもので、雄が居なくとも、立派に繁殖している生き 物がいる。 わが国に自生するギンブナは、雄が居ない事が知られている。 メキシコのアマゾン・モリー(アマゾンと言うのは川の名前ではなく、ギ リシャ神話に出てくる、処女戦士の事)も雄が居ず、雌だけで、子孫を残し ている。 これらの、雄のいない魚の繁殖のメカニズムは、他の種類の雄の精子が必 要であるが、精子は、卵が細胞分裂を起こす、きっかけとしての刺激を与え る役割を果たすだけで、授精して、遺伝子を伝えている訳ではない。 また、ウニの卵を針で突いて刺激すると、細胞分裂が始まるが、この時は 途中で死んでしまい、一人前のウニに育たない事も、実験で確かめられてい る。 そこで、卵を何らかの刺激で細胞分裂を開始させ、その後も、順調に発生 を続けさせる事が出来れば、優れた雌のクローンを大量生産できるので、品 種改良が、一気に能率良くなる。 針で刺激されたウニの卵が途中で死ぬのは、染色体の数が、正常値の半分 しかないためで、ここを騙してやれば良い。 魚の卵に、殺して授精能力を無くしたか、元々授精できない他種の精子を 接触させ、その刺激で細胞分列が始まりかけた時、一時的に低温に曝すか、 高圧力をかけると、コピーされ、二つに分かれかけた、染色体は、あたかも 雄と雌の両親から一組ずつ、遺伝子を受け取ったかのような反応を起こし、 正常な発生を続けて、一人前の個体に成長できる。 これを『雌性発生法』と言い、現在は、単価の高い錦鯉等で成功し、実用 化されている。 この方法は、純系をつくるのに10世代もの選抜、淘汰をする必要がない ので、品種改良の速度を飛躍的に高めることが出来る。 即ち、雑種の雌を使って雌性発生をさせると、親は雑種であったから、実 に様々な形質の子が得られ、弱い形質を受け継いだものは育たず、強い形質 を受け継いだものだけが育ち、しかも、現在は隠されていて、将来表に出る ような遺伝子は、もはや持っていないので、多種多様な純系を沢山つくった ことになる。 このうち、望ましい形質を持った個体だけを選んで育て、やはり雄を使わ ない、雌性発生で繁殖をすれば、ここで得られた子供は、100%が雌おや とそっくりのクローンであり、理想的な純系を作りだしたことになる。 ★参照 → アマゾン・モリー。 【シャム・タイガー】 本ナンダスとも呼ばれるダトニオイデスのこと。 「本物」、とか「ニセ」、と言っても、体の黒帯が1本多いかどうかとい うことで、魚が真似をしている訳でなく、人間の勝手な命名である。 ★参照 → ダトニオイデス。 【受精卵】 精子が結合し、正常な発生を続けることが出きる、卵のこと。 魚の場合、体外授精であるが、雌の体から生み出され、数分以上経つと、 体外の水に触れる事によって、卵の表面が変質し、精子と接触させても授精 しないことが多い。 【純系】 表現形以外の遺伝子を持っていない系統をいう。 これは、個体を見ただけでは、純系であるか、雑種であるか分からなくと も、繁殖をさせて、多数の子を採った時、全ての子の表現形が揃っており、 金太郎飴の様に、親とそっくりの子どもばかりであれば、その系統は純系と 判断できる。 品種改良は、雑種の中から望ましい形質を選抜し、不要な遺伝子を取り除 き、純系を作る作業である。 【硝酸】 HNO3 = Nitoric acid。 これは、生物濾過を受け持つ、もう一つの硝化バクテリア、ニトロ・バク ターが、亜硝酸と、酸素を消費して作り出す物である。 蓄積すると、酸性を示し、pHが下がるところは、亜硝酸に似ているが、 魚に対する毒性は弱い。 コケや水草は、硝酸を肥料として利用する事が出来るので、これらの植物 が有れば、水質の悪化を防ぐのに役立つ。 好気的な生物濾過では、最終的な物質で、これを更に無害化する、好気性 バクテリアは居ない。 魚に対する毒性が弱いと言っても、これが蓄積すると、水が淀んで、酸素 が不足した部分があると、容易に還元されて、亜硝酸に戻るという事と、硝 酸が蓄積すると、ニトロ・バクターが、自分の排泄物で酔った様な状況にな り、亜硝酸を処理する能力が落ちて仕舞うので、蓄積させるのは、極めて危 険である。 水草の消費量よりも、遥かに多くの硝酸が生産されるような飼育条件(つ まり、魚を沢山収容し、餌を沢山与えている状態)では、最終的に飼育者の 手に依って、硝酸を水槽の外に捨てる作業が必要になる。 この、硝酸を捨てる作業が、所謂、水替えと言われる作業で、安定した水 質を維持するためには、定期的な水替えが要求される。 ★参照 → 生物濾過。 【白勢晃三】 シラセ・サンダー・フラッシュ・ターコイス・ディスカスの作出者。 ★参照 → シラセ・サンダー・フラッシュ。 【シラセ・サンダー・フラッシュ】 わが国の、白勢晃三氏が作出した、ディスカスの系統名。 初めに、R.R.B.とターコイス・ディスカスを交配し、ストライプの 太いディスカスを作出して、発表した。 これに、次々とフルボディ(全身がベタ青になる)のターコイス・ディス カスを交配し、現在は殆どフルボディの体色を見せており、初期のストライ プの面影は無くなった。 ヒロセペットから、さも高級品のように、大々的に売り出されている。 【シルバー・アロワナ】 南米アマゾン川に棲むアロワナ。 学名は Osteoglossum Bicirrhosum。 体長は約70cm、名前の通り銀色の体色をした、魚食魚。 わが国には、10月から2月位にかけて、臍嚢(さいのう=卵黄の詰まっ た袋=ヨーク・サック)をぶら下げた、稚魚が沢山輸入され、アロワナの仲 間の中では、最も値段が廉い。 しかし、毎年性凝りもなく大量に輸入されるところを見ると、輸入量の 90%以上が1年も活きていないと推定できる。 ★参照 → アロワナ 【シルバー・シャーク】 シャークと言うから、鮫の仲間かと思ったら、体型は鮫に似ているが、東 南アジアの鯉の仲間である = Balantiocheilus meranopterys 銀白色の体で、各鰭の先端は黒くなる。 雑食性の、中型のバルブで温和しいが、水草も齧る。 【シュミット・フォッケ】 ドイツを代表する、ディスカス・ブリーダであった。 J.Wattleyより、ターコイス・ディスカスの種親を導入し、ブ リーディングしているが、地肌の赤い原種と掛け合わせる事で、地肌が煉瓦 のような赤味を帯びた、ストライプ模様の、ロート・ターコイス・ディスカ スの改良を追求していた事で有名。 数年前に、心臓病が悪化し、ディスカスのブリーディングを止めたが、止 めた途端、彼の名前を付けた赤色系のターコイス・ディスカスが多量に出回 り、偽物のブームが起き、現在でもその名前の強さが知れ渡っている。 ★参照 → ターコイス・ディスカス。 【食物連鎖】 この地球上の生命体は、極一部の深海生物を除き、太陽のエネルギに依存 している。 深海には、海底火山の周辺に棲む、チューブ・ワームと言って、ゴカイの 仲間のような虫がおり、これは、火山から吹き出す硫化水素を、エネルギ源 にしている。 しかし、この様に、地球のエネルギを直接利用している生物は、例外的存 在で、我々の目に触れるところの生物は、全て例外無しに、太陽のエネルギ を利用して生きている。 植物は、直接太陽のエネルギを利用して、栄養体を合成する、第一次の生 物である。 植物と言えば、根や葉がある高等植物を連想し勝ちであるが、一見、植物 などが生えていないように見える広い海も、植物性のプランクトンが大量に 生産されている。 この植物性プランクトンを、動物性プランクトンが利用し、動物性プラン クトンは、イワシなどの小型魚が、餌として利用する。 小型魚は、スズキ等のような中型魚の餌になり、中型魚は、マグロのよう な大型魚の餌になる。 この様に、植物を餌とする小型動物の上に、中型動物がおり、その上に大 型動物がいて、食う、食われるの関係の、ピラミッドが出来上がっているの は、水中に限らず、陸上も、空の生物も全く例外ではない。 意外と思うかも知れないが、この地球上の食物連鎖の頂点に居る生物は、 人間である。 人間は、体も小さく、肉体的な力はそれほどでも無いが、他の生物と決定 的に違うのは、道具を使ってあらゆる生物を征服できると言うことである。 そして、食ったり食われたりする関係の、横断的な位置を食性のレベルと 言うが、食性のレベルが一段上がるごとに、そのレベルに属する個体数は 1/1000以下になる。 これは当然のことで、餌になる生き物が沢山居ないと、それを食べて生き ている生物を、養うことが出来ない。 これは、熱帯魚の世界でもまた同じである。 魚食魚は、魚を食べて生きているので、本来、多種多様な小型の魚を餌と して与えるのが、最も自然な形である。 実際には、飼育魚には、安定して入手できるという理由から、人工的に養 殖した金魚を与えているが、出来ることなら、金魚ばかりを与えるのではな く、もっと変化に富んだメニュを用意したい。 また、「金魚を与えるのは、可愛そう」と言う論議もあるが、草食動物以 外は、全て、何らかの生きた動物を食べるのが、自然な姿であり、可愛そう と言う人間自身が、この地球上で、食物連鎖の頂点に立っていることを忘れ た、感情的な論議である。 食物連鎖を考えると、あらゆる生物が、複雑に絡み合った、依存関係にあ り、世の中に、居ても居なくても良いという、連鎖から離れた生物は存在せ ず、全ての生物が、絶妙のバランスを保っていることに気がつく。 詰まり、この地球上に、他の生物の生存に貢献していない生物は居ないわ けであるから、あらゆる生物が生きて行けるような環境を保護することが、 食物連鎖の頂点に位置する、人類自身の生存を、保証することになる。 野生動物を保護すると言うのは、単に珍しい動物を守るという、ペット趣 味の領域の話ではない。 【尻鰭】 体の腹側、肛門の後ろと、尾鰭の間に着いている鰭。 普通、泳ぐ時の安定に役立つだけで、推進力を生み出す鰭ではないが、フ グは、背鰭と尻鰭を、同時に左右に振って泳ぎ、尾鰭よりも推進に役立って いる。 普通、尾鰭は一つであるが、金魚は尻鰭が二つに成っており、この点が、 先祖であるフナとは、決定的に異なる。 金魚の場合、梶鰭と呼ぶ。 【上部フィルタ】 水槽の上に乗せて使う、外部フィルタで、60cm水槽の場合、ちょうど水 槽の横幅いっぱいに、乗せるサイズの物が市販されている。 水は、モータ・ポンプで汲み上げられ、濾材を納めた箱の、上から下に向 かって流れ、水槽に戻る。 濾材は、何時も水中に沈んでいるような構造になっている。 濾材だけを簡単に取り出せるように、独立した容器に納められているのが 普通で、濾材の掃除は楽である。 物理的なゴミが詰まった様子は、目視で確認し易いが、たとえゴミに依っ て濾材が目詰まりを起こしても、周囲に水がこぼれ無いように、オーバー・ フロー・パイプが付いている物が多い。 しかし、この為に、水が流れているからと安心していると、目詰まりを起 こし、フィルタが機能していない事が多いので、注意を要する。 ★参照 → 濾過装置。