#50 熱帯魚辞典>(10) 《は、ひ》 可良時寿子 可良時寿子 ID:KBB53931 【バット】 一体成形され、継ぎ目の無いガラス容器を言う。 最近は、様々な分野で、このBattと言う言葉が使われ、厳密な定義は ないが、習慣的な意味として、底面積が大きく、深さの浅い容器の意味で使 われる事が多い。 材料も、ガラス製に限定せずに使われている。 本来の語源はBattery、つまり、蓄電池の略称である。 最近の蓄電池(この場合は、鉛蓄電池を指すが)のケースの材料は、大型 の、据置用蓄電池はエボナイトで、自動車用蓄電池は、軽くて、半透明なポ リプロピレン樹脂で、出来ているが、昔は、蓄電池と言えば、全て継ぎ目の 無い、透明ガラスの一体成形品であった。 今の様に、室内で魚を飼育して、観賞するという事が一般的でなかった時 代には、商品としての水槽などが販売されていなかったので、使い古した蓄 電池のガラスケースを流用するのが、普通であった。 そこから、ガラス製の継ぎ目の無い容器の事をバットと呼ぶようになり、 魚の飼育以外の目的にも、色々と利用されたので、バットと言う名称が一般 的になり、今では、語源が解らないままに使われている。 ついでに言うと、野球のピッチャーとキャッチャーのペアをバッテリと言 うのも、語源は、蓄電池のBatteryに由来する。 詰まり、ピッチャーとキャッチャーの間で、ボールをやり取りするのが、 (バッターに打たれた状態は、この際無視する必要があるが)蓄電池の内部 での化学反応の依る、電子のやり取りと、全く良く似ているからであり、こ の用語を作った人は、かなり化学の知識が豊かであったと、想像できる。 【白点病】 熱帯魚に感染する、最もポピュラーな病気。 体表粘膜に、カビが生えて、白い塊を作るから、白点病と呼ばれる。 水温を急変させたり、魚の体力が落ちると発病する、人間の病気に例える と、風邪の様な物。 熱帯魚の飼育をしている人は、経験の浅いときに、一度は経験している、 病気である。 白点病だけで有れば、死に至る事はないが、皮膚が痒いので、体を物に擦 り付け、この刺激で、体表の粘膜を傷つけて、酷くなると、血が滲んでくる ので、他の病気の引き金になる。 白点病の病原菌は、原生動物絨毛虫のイクリオ・フチリウス = Ichthyophthirius multifiliis と言い、空気中の何処にでも居り、魚が体 調を崩したときに発病する。 梅雨時の気温が不安定で、水槽の温度が変動し易いときには、特に発病し 易い。 この菌の生活史は、 a、魚の粘膜から栄養を採って、成長する。 b、魚体から離れ、底砂の中で、幼体に分裂する。 c、再び、魚に寄生して、栄養を採る。 と言うサイクルを繰り返しており、薬が効くのは、魚体から離れている時で ある。 魚を移動するとき、アクリフラビン(黄色い薬で、水草に対しても害は与 えない)を投与しておくと、予防になる。 症状が進んだ場合は、魚に対する副作用の少ない、メチレン・ブルーとい う、染料が良く効き、食塩も効果があるが、メチレン・ブルーは水草を枯ら すと言う、副作用がある。 薬を入れると、魚の体表が綺麗になるが、薬が効いたのは底砂の中に落ち ている幼体に対してだけであり、体に着いていた菌は死んだのではなく、底 砂の中に落ちただけであるから、一週間ほどの間隔で、2回以上薬浴をする と、完全に治療できる。 また、この菌は、高温に弱く、水温が28℃以上になると、幼体に分裂す る事が出来ず、暫くすると、栄養が遮断された菌は死んで仕舞うから、水温 を高めるのは、一番確かな治療で、その上に多少の食塩を投与して置けば、 なお良い。 フィルターがしっかりと働いており、水温の急変が無ければ、滅多な事で は、発病しない。 例え発病しても、治療は簡単であるから、慌てる必要はない。 ★参照 → イクチオ・フチリゥス、メチレン・ブルー、食塩。 【バジス・バジス】 インド原産の小型の魚 = badis badis。 体長は約6cm。 周囲の環境に応じて、頻繁に体色を変化するので、カメレオン・フィッ シュとも呼ばれる。 同種を複数飼育すると、縄張りを主張し、喧嘩をし易い。 【バタフライ・フィッシュ】 大きな胸鰭で、良くジャンプする Pantodon buchholzi。 アロワナやピラルクと同じ、オステオグロッソム目に属するが、Pantodon 科の1科1属1種と言う、珍しい魚。 絶えず水面の近くにおり、餌が水面に落ちると、その時の波紋の伝わり方 から餌の方向を知り、素早く飛びつく。 主食は昆虫であるが、人工飼料で飼育できる。 大きな胸鰭を広げ、飛び魚のように長距離をジャンプするので、水槽の蓋 をしっかりして置かないと、僅かな隙間から飛び出し、日干しになる。 【発眼】 魚の卵は、半透明な殻に覆われているので、外から発生の状態を観察する 事が出来る。 順調に発生が進むと、殻の中で個体の姿が完成するが、この時、眼が大き く、他の器官は小さくて見分けるのが難しくとも、眼が完成したところは、 容易に観察できる。 発生が順調に進み、外部から、眼が完成した事を確認できる状態になった 事を、発眼と呼ぶ。 発眼が確認できれば、孵化は間近で有る。 【バック・スクリーン】 水槽の後ろに張り付け、観賞価値を高める為の、プラスチックス製のシー トをバック・スクリーンと呼ぶ。 青、黒などの単色の他、水草の写真を印刷した物などがある。 この使い方は、水槽の背面のサイズに合わせて切った物を、水槽の外から 張り付けるのがよい。 間違って、水槽の内側に張り付けると、スクリーンとガラスの間の水が流 通せずに、腐ったり、隙間に、ネオン・テトラの様な小型の魚が挟まれたり する。 魚の写真を撮影する時は、黒のスクリーンを使った方が、魚の体色が引き 立つ。 撮影の場合は、一時的な処置であるから、内側に張り付けた方が、背面ガ ラスからの反射を防ぎ、ガラスに付いたコケ等の汚れを隠す効果が大きい。 【発生】 卵生動物の卵は、初め単細胞であるが、受精して、適当な環境下に置かれ ると、やがて、細胞分裂を繰り返し、個体の形が出来上がって行く。 この過程を発生という。 【発電魚】 特殊な発達をした筋肉で出来ている、発電機構を持つ魚。 餌を攻撃したり、外敵からの攻撃から身を守るための武器として、高電圧 を発生する、強力な発電能力を持つ、デンキナマズやデンキウナギ等と、攻 撃能力がなく、濁った水の中を自由に行動する為の、レーダーとしての機能 を持つモルミルスの仲間などが居る。 ★参照 → デンキ・ナマズ、エレファント・ノーズ・フィッシュ。 【鼻上げ】 天気が良く、気温の高い時など、池の鯉が、水面に口を出し、チュパユパ と、空気を吸う事がある。 これは、熱帯魚の水槽でも起こるが、水中の溶存酸素が不足した時、口か ら空気を吸って、口の中で水に溶かして、鰓から呼吸している状態で、魚に とっては、非常に苦しい状態である。 こんな時は、エアレーションを行い、強制的に溶存酸素を増やしてやる必 要がある。 ★参照 → エアレーション。 【バナナ・プランツ】 和名をハナカガブタと言う水草 = Nymphoides aquatica。 リンドウ科の植物で、一カ所から葉柄を出し、ハート形の葉を着ける。 底砂の中に植え込んで仕舞えば、何の変哲もない水草であるが、底砂の中 に植えずに、水中に漂わせて置くと、根が太くなり、バナナの房のようにな るので、見た目にも面白い。 弱酸性の、軟水を好む。 バナナの様になった、太い根を切りとり、砂に植え込んで置くと、芽を出 し、増やす事が出来る。 【原田哲男】 金に飽かして、質の良いディスカスを集め、大量繁殖に成功したので、京 都府八幡市で、ショップを開き、診察時間の合間に、商売をしていた。 選抜繁殖した物に、「モルフォ・フラッシュ」と言う名前を付け、派手に 売り出した。 また、かなりの自信家で、自分の魚に自信を持っているだけでなく、イザ となれば本業は別にあり、食うに困らないと言う立場から、F.M.誌の広 告では、他人の批判を遠慮無くやると言う、異色の広告を出していた。 攻撃的な内容の広告が多いが、内容は筋が通って居た。 92年、惜しくもショップを閉店した。 【腹鰭】 名前の通り、腹に付いている鰭。 胸鰭より後ろで、肛門より前に付いている。 陸上動物の後ろ足に相当する器官である。 グーラミィの仲間は、非常に細い、髭状に変化し、前の方にも自由に動か す事が出来、周囲の状態を探る重要な触覚の役割を果たす。 この腹鰭の位置を見ると、その魚の進化上の位置を知ら無くとも、原始的 な物か、進化の程度が進んだ物か、大体見当を着ける事が出来る。 即ち、古代の魚は腹鰭が後ろの方に付いており、進化とともに、腹鰭は体 の前の方に移動してきたので、腹鰭の位置で、進化の程度が解るのである。 【バランスド・アクアリゥム】 植物は、光合成した栄養体を動物に提供し、動物の排泄物や死骸を肥料と して成長する。 また、動物は、呼吸作用を行い、酸素ガスを消費して、炭酸ガスを排出す るが、植物は、炭酸ガスを吸収して光合成を行い、酸素ガスを排出する。 この様に、動物と植物は、補完関係にあって、お互いに相手の生命を支え 合っている。 水槽の中でも、もし、水草の量と、飼育されている魚の量がバランスして 居れば、水替えなどをし無くとも、限られた量の水草と魚が永久に生きて行 けるはずである。 この際、水面から蒸発する水は、無いものと仮定すれば、理論的には、水 替えの不要な水槽が実現しそうなことは、解る。 これを、「バランスド・アクアリゥム」と呼び、実際には難しいことであ るが、水草を沢山植えれば、それに近づき、水質維持の楽な水槽が出来上が ることになる。 これは理想の話であり、実際には、バランスを保てる限界以上の魚を飼育 して、餌を沢山与えるということに、成り勝ちである。 しかし、理論的に厳密なバランスド・アクアリゥムは実現し無くとも、こ のことを念頭に起き、水草と魚の共存を追求すると、メンテナンスが楽な、 水質の安定した水槽を作り上げる、一助になる。 【パワー・フィルタ】 密閉式の外部フィルタで、エーハイム社の商品が最も普及しているが、最 近は、この方式のフィルタの良さが認識されてきたので、各メーカから似た 様な物が発売されている。 給排水のホースを伸ばすと、設置場所が自由に選べるので、見た目の綺麗 さを大切にしたいインテリア水槽に適している。 濾材を沢山詰め込む事が出来るので、フィルタの能力が大きく、掃除もし 易くなっている。 排水口を、水面下に設置すると、泡を巻き込まないので、水草を主体にし て炭酸ガス = CO2 を強制的に添加している水槽でも、炭酸ガスを逃がさ ないので、水草水槽には、特に適している。 ★参照 → 濾過装置。 【阪神熱帯魚】 国道43号線沿い、阪神尼崎駅の近くにある、熱帯魚ショップ。 古びた「文化住宅」、即ち、言葉とは正反対に、文化のかけらも感じられ ない、汚い長屋の1階に在り、店も小さく、汚い。 淡水魚と海水魚が半々位であるが、淡水魚の管理状態は、目を覆いたくな るほど酷い。 海水魚には自信を持っているようで、小さな水槽に沢山の魚を詰め込んで いる。 店に入ると、潮の臭いがする。 客にも、小さな水槽への詰め込み飼育を勧め、沢山飼って(買って)、沢 山殺し、授業料を払って腕を磨けと言う指導をする、スパルタ主義の店。 設備さえしっかりとお金を掛けたら、沢山魚を飼えると信じ込み、実行し ている。 淡水魚を置いていなかったら、腕の良い店主だと信じて貰えるのだが。 【伴性遺伝】 個体の形質というのは、雄、雌の両親から半分ずつ遺伝子を受け取り、こ れを合成した形質を受け継ぐのか普通である。 しかし、遺伝情報の依っては、個体の雌雄を決定する、性染色体とセット になって遺伝する物があり、これを『限性遺伝』とか、『伴性遺伝』と称す る。 例えば、グッピの体側に、毒蛇のコブラの頭部に有る様な、曲がりくねっ た模様が入る「コブラ」と呼ばれる系統。 このコブラ模様は、優勢であり、どんな系統と交配しても、その子供の雄 には、必ずコブラ模様が現れる。 その子供には、100%コブラ模様の遺伝子が伝えられたように見えるの で、孫を採って観察すると面白い現象を発見する。 コブラと何かを交配した子供の雄は、必ずコブラの模様が発現し、その時 生まれた子供の雄と、何かの雌を交配した子供(孫)の雄にも、必ずコブラ 模様が現れる。 詰まり、一度コブラ模様の遺伝子を組み込まれると、その系統からコブラ 模様を抜き取る事が、出来ない事が解る。 グッピの雌は、日本のメダカに似た地味な物であるが、遺伝情報はしっか りと伝わっている筈である。 そこで、コブラと何かを交配した子供の雌を選び、これと何かの雄とを交 配すると、得られた孫には、期待に反し、全くコブラ模様が発現しない。 つまり、コブラ模様を発現するための遺伝子は、雄を通して子孫に伝えら れるが、雌にはこの遺伝子が伝わらない事を示している。 こうしてコブラ模様の遺伝子は、個体の性別を決定する、X染色体とY染 色体の中、雄になる為のY染色体とペアで伝えられる、遺伝情報である事が 解る。 この様に、特定の性(グッピのコブラ模様で有れば雄)と、セットで伝わ る遺伝情報を、伴性遺伝という。 【バンデリ=Vandelli】 1829年に、アマゾンのシルバー・アロワナを世界に初めて報告した、 魚類学者。 カンディルの学名、Vandellia corrhosa CUVIER に名前をとどめている。 【ビー・オー・ディー=BOD】 生物化学的酸素要求量(Biochemical Oxygen Demand)の略。 水の汚れの原因となっている有機物を微生物の働きで酸化させるときに必 要な酸素の量を表し、この値が大きいほど、水の汚れがひどいことになり、 河川の汚れ具合を表す、指標の一つになる。 普通は、20℃、5日間で消費される酸素の量を測定するので、測定に時 間がかかるとともに、水によっては、殆ど微生物が居ないものもあり、この 場合は、外部から微生物を添加する必要がある。 普通、河川の汚れ等を示すときにCODと対になって使われるが、酸化さ れる対象となる汚れ成分が一致しないこともあり、二つの値が一致しないの が普通である。 ★参照 → シー・オー・ディー=COD。 【ピグミー・アコルス】 セキショウの小型種 = Acorus gramineus ver.pusillus。 東南アジアの、サトイモ科の水草で、セキショウを小型化したもの。 栽培条件は、セキショウと同じで、弱アルカリの水質がよい。 ★参照 → セキショウ。 【ピグミー・チェーン・アマゾン】 小型の水草 = echinidorus tenellus。 地下茎を延ばして良く繁殖し、サイズが小さいので、水草水槽の、前景の 底砂ををカバーし、丁度芝生の様な使い方が出来る。 丈夫で、良く殖える水草。 【PSB】 嫌気性光合成細菌、Purple non Sulphur Bacteria の略。 高濃度に培養した物は、オレンジ色をしており、硫黄の臭いがする。 酸素の存在しない、嫌気的な環境で、光のエネルギを利用して、硝酸を窒 素ガスと水に分解する、濾過バクテリアの一種。 最近、これを培養した物が、熱帯魚ショップで販売されているが、このバ クテリアの使い方は難しい。 良く見かける光景であるが、新しい水槽をセットする人に、フィルターの 濾材にPSBを振りかけて置くと、すぐにでも水作りが出来るかのような指 導をしているショップがあるが、これは、何重もの間違いを犯している。 先ず、PSBが処理をするのは、ニトロ・ソモナスとニトロ・バクターと 言う二つの好気性バクテリアが、アンモニアを処理した結果である硝酸を処 理する物であるから、好気性バクテリアが用意できていない、新しいフィル ターでは、PSBが働く余地がない。 普通、魚を飼育している水は、魚の呼吸のために、多量の空気を溶かし込 んでおり、酸素の豊富な環境であるから、ここに直接混ぜても、この様な好 気的環境ではPSBは、光合成をしない。 PSBに硝酸の処理をさせる為には、嫌気的な環境を作り、なおかつ、光 を照射する必要がある。 光の当たらない、その上、本来好気的な環境にあるフィルターの中では、 PSBが働くわけがない。 また、バクテリアと言うのは、水中をフラフラと漂っているような状態で は、活性が低く、能率良く働かせる為には、何らかの多孔体の基質の上に植 え付けてやる必要がある。 詰まり、PSBを使うためには、 a、バクテリアを付着させる濾材があり、 b、そこに十分な光が当たり、 c、なおかつ酸素がない嫌気的な環境 という、三つの条件を満たす事が必要で、これを無視して、魔法のバクテリ アの如く売りつけるのは、とんでもない間違いで有る。 最近、透明なプラスチックスのボールにPSBを入れ、ピンホールを開け て、そこからヒモを垂らし、ボールを水面に浮かべて置く、などと言うアイ デアが発表され、市販もされているが、この場合は、少なくとも光を供給す る事に就いては、解決した事になり、飼育水に直接溶かすよりはましだと思 う。 残念ながら、PSBに本来の能力を発揮させるようなフィルター・システ ムが無いままに、バクテリアの販売だけが先行している。 【PG−2】 植物の成長に有効な赤と青の光の成分を、発光するランプで発光効率は低 いが、魚や水草が綺麗に見えるので、熱帯魚の水槽の照明に使われる。 緑の成分は、殆ど含んでいない。 ★参照 → 植物成長ランプ。 【PG−3】 PG−2が含んでいない、緑の光を多く発光する物で、これ自身は水草の 成長には役立たないが、水草を綺麗にみせると言う効果がある。 ★参照 → 植物成長ランプ。 【ビー・シュリンプ】 東南アジア産の小型の淡水海老 = Neocaridina sp.。 水草を植え込んだ水槽で、コケを食べさせるために利用できる。 ゾエアの時代を卵の中で済ませ、孵化したときには、親海老と同じ姿をし た、ポスト・ラーバと成っているので、繁殖のために海水が不要で、純淡水 の水槽内でも、容易に繁殖する。 【ピースフル・ベタ】 雄を複数飼育しても、喧嘩をしないフーケット島産のベタ。 ★参照 → ベタ、フーケット・ベタ。 【ヒーター】 熱帯魚は、名前の通り、熱帯地方に棲んでおり、これらの魚の故郷の水温 は、最低でも15℃以上は有る。 この様な気候に順応した物を、わが国で飼育すると、夏は良いとしても、 冬の低温には、耐える事が出来ないので、何らかの手段でもって、暖かい水 温を維持してやる必要に迫られる。 水温は、特別な対策をしなければ、周囲の気温に連動するので、温室を作 るか、部屋全体を暖房してやれば良いが、趣味として、小規模に飼育する時 は、水槽の中に電気ヒータを投入して、加温するのが、手軽で、かつ、経済 的である。 熱帯魚用のヒータとしては、ガラス菅、またはセラミック管の中に、ニク ロム線を封入した物が、使われる。 水槽の大きさに応じたワット数の物を使えば良いが、消費電力は、水の量 でなく、熱が放散する、水槽の表面積に比例するので、飼育水のリッター当 たりに必要なワット数は、小型の水槽ほど、大きくなる。 また、消費電力は、ヒーターのワット数とは無関係で、これも、水槽の表 面積だけで決まり、大きなワット数のヒーターを使うと、休止期間が長くな るだけであるから、断線事故に備え、各水槽に2本ずつのヒーターを使って 置くのが安全である。 ヒーターを設置するとき、底砂の中に埋め込むと、熱効率が悪く、電気代 が無駄になるだけではなく、砂の中が局部的に高温になり、水槽のガラスが 割れたり、アクリルが溶けて穴が開くという事故の他に、砂の中の濾過バク テリアが死んで仕舞い、水質悪化の原因となる。 従って、ヒーターは水槽の側面や、低面に直接接触させず、底砂の上に転 がして置くのが、一番安全である。 この時、底を這い回る、泳ぎの遅い魚は、ヒーターの上で休んだりして、 火傷をする事があるので、飼育する魚の種類に依っては、ヒーターを剥き出 しにせず、ヒーター・カバーを使用する必要がある。 これは言うまでもない事であるが、ヒーターと言うのは、無制限に暖める だけで、冷やす事はおろか、適当な温度に調整する機能もない。 従って、水温を調整するためには、ヒーターの消費電力を調整するサーモ スタットと組み合わせて使う必要がある。 ★参照 → サーモスタット。 【ヒーター・カバー】 ヒータは、底砂に埋め込まず、ゴロンと転がして置くのが良いが、肺魚、 各種のナマズ、エイ等のように、底に腹を着けて休息する癖のある魚は、 ヒータで火傷をする事があるので、これを防ぐために、ヒータに魚が直接触 れないようにするカバーが市販されている。 カバーは、金属製、プラスチックス製など有り、正常に使う限りどちらで も良いが、水替えの時、ヒータが水面上に露出して、空炊き状態になったと き、プラスチックス製のカバーは溶けてしまう。 なお、前記の、火傷し易い魚を飼育するときは、ヒータにカバーを被せた 上で、底に置かず、側面ガラスの途中に、底から少し持ち上げて固定する のが良い。 なお、ヒーターが働くと、熱により、水槽内の水を対流させる作用が働く が、この時、先ず周囲からヒーターに向かって、水が集まり、ここから水面 の方向に流れるため、ヒーターは水槽の中のゴミを集める作用があり、ヒー ター・カバーの中には沢山のゴミが集まるので、定期的に掃除をしないと、 水質を悪化させる原因となる。 ★参照 → 火傷。 【ビタミン】 動植物の成長、代謝、繁殖などに関わる微量栄養素をビタミン、或いはホ ルモンと呼ぶ。 ビタミンとホルモンは殆ど同じ物であるが、動物の体内で自家合成を出来 る物は、ホルモンと呼び、自家合成できず、餌を通じて体外から取り込む必 要のある物をビタミンと呼ぶ。 ビタミンはその性質に応じて、A、B、C、D等に分類される。 また、ビタミンの別の性質に着目すると、体内の脂肪にとけ込んで蓄積さ れる脂溶性ビタミンと、脂肪分には溶けないが水に溶ける水溶性ビタミンに 分ける事が出来る。 例えば、ビタミンAの様な脂溶性ビタミンは過剰に摂取すると、体内に蓄 積し、ビタミン過剰症も引き起こす。 ビタミンCの様な、水溶性ビタミンは、過剰に摂取しても尿と共に排出さ れ、過剰症は招かない。 【PDF】 パソコン通信の世界には、PDSと言って、腕に覚えのあるアマチュアが 自作した、便利なコンピュータ・ソフトを無料で配布する制度があるが、こ ちらは、その熱帯魚版である。 PDF(Public Domain Fishの略)と言うのは、パソコン通信のPDFを モジッタ言葉で、要するに、会員が自分で繁殖させた魚を、希望者に無料で 配布する活動を意味する。 しかし、パソコン通信の世界で、著作権の関係でPDFと言う用語が死語 になったことに対応して、91年7月以後、FFS(Free Fish Service) と改称した。 ★参照 → FFS。 【ピート・モス】 コケが、半分炭化しかけたもの。 水のpHを下げて、弱酸性化させる効果と、ミネラルと結びつき、沈澱さ せて、軟水を作る効果がある。 また、ピート・モスを使うと、水が茶色に成るので、神経質な魚を落ちつ かせる効果もある。 煮沸消毒した後で、袋に詰めて、フィルターの中に入れて使う。 園芸用のピートと同じ物であるが、園芸用の物は、繊維が短く、ゴミが沢 山混じって居る。 弱酸性の、軟水を要求する魚の、飼育とか、繁殖用の水質調整に使用する が、効果の持続期間は意外と短く、およそ1カ月が限度であり、適当な期間 で取り替える必要がある。 テトラ社から、ブラック・ウォーター・エクストラと言う商品名で、ピー トの抽出液を濃縮した物も、販売されている。 【ヒドラ】 ヒドラと言うのは、イソギンチャクとか、サンゴの仲間で、海には、非常 に多くの種類がいるが、ここで問題にするのは、淡水ヒドラで有る。 イト・ミミズ等の、生き餌を与えていると、餌に混じって水槽に浸入し、 ガラス面や水草の表面に着生し、良く殖える。 見かけは半透明の、白っぽい色で、海のイソギンチャクを細長く引き延ば したような格好をして、触手を広げ、水中の微生物を餌にする。 ガラス面などに着生し、移動しないので、魚に対しては、何の害もなく、 魚に与えるブラインシュリンプを、横取りされるくらいであるが、見た目に 気持ちが悪く、観賞価値を著しく損ねるので、嫌われる。 一度水槽に浸入されると、底砂や、水草の間に潜り込んだ物が多いので、 全滅させるのが難しい。 イト・ミミズを与えている限り、ヒドラが浸入する事を避ける事が出来な い。 ★参照 → イト・ミミズ。 【表現形】 外部からの観察で容易に解る形質の事を、表現形と言う。 例えば、鰭以外の形質が同じで、鰭の長い魚と、鰭の短い魚を交配したと き、生まれてきた子供は、鰭の長さに関し、「短い」と言うのと「長い」と 言う、二つの形質を遺伝されるが、これは、一つの個体に同時に表に現れる 事の出来ない、対立形質であり、生まれた個体は、どちらかの形質が外見に 反映される。 他方の形質は、遺伝子として受け取っては居るが、表面に現れてこない。 そこで、例えば、鰭の長い子供が採れたとき、「表現形は鰭が長い」等と 言う。 時には、両者の中間を採り、中の長さの鰭が子供に現れたりすると、「鰭 が長い系統と、短い系統を交配すると、得られた子供の表現形は、中間にな る」等と言う。 【ピラニア・ナッテリィ】 アマゾンの中型カラシンで、有名な Serrasalmus nattereri。 ピラニアは鋭い歯を持ち、自分よりも大きな敵にも噛み付き、良くTV等 で牛を食い殺すシーン等が放映されるので、有名。 ピラニアの仲間は、10種類以上居るが、本当に獰猛なのは、本種を含め て、3種くらいである。 本種は、銀色に光る体に、黒いスポット模様が入り、成熟すると、顎の下 から、腹に掛けて、赤い色が付き、観賞価値も高い。 わが国で販売されている、本種は、国内で繁殖した物が多く、現地採集物 は少ない。 血の臭いを嗅ぐと、ヒステリー状態になり、集団で大型動物も襲うが、普 段は温和しく、臆病な魚である。 水槽内で飼育する時も、臆病で、積極的に人間に噛み付いてくることは、 殆ど無いが、掃除をする時に、脅えて逃げ回る中に、誤って手に触れると、 怪我をする。 本種の餌として、餌金が使われる事が多いが、鋭い歯にものを言わせ、噛 みちぎるので、半分に成った金魚の死体が浮いている事が多く、余りよい感 じを与えない。 初心者が、名前を良く知っていると言う親しみから飼育し、大きくなった ら持て余して、ショップに引き取ってくれと、泣きついてくる、「持て余し 物」の代表である。 本種が大きくなったとき、布製の網では、切り裂かれて仕舞うので、すく う事が出来ない。 こういう時は、竹かプラスチックス製のザルを二つ用意し、挟み込むよう にするのが良い。 【ピラルク】 アマゾン原産のオステオ・グロッスム目の魚。 学名は、Arapaima Gigas CUVIER。 語源は「赤い魚」と言う意味で、銀分をまぶした様なメタリックな黒い鱗 に赤い模様が入る、古代魚で、アロワナの親戚。 体長4mに達する、世界最大の有鱗淡水魚。 わが国の水族館でも、2.5m位の個体が飼育されている。 野生状態での餌は、ピラニアを丸飲みする。 成長が早く、小さな水槽で飼育しても、他の大型魚の様に成長が止まらな いので、水槽に激突してブチ破り、アマチュアでは最後まで飼い切れず、下 手に手を出すと持て余す。 現地では、重要な食料資源であり、CITESにも、第2種の保護対象に 指定されている。