#68 実験>アンモニア添加による高水温、濾過バクテリア増殖実験 豊雪 豊雪 ID:EDM70203 95/ 1/14 #567,#575 熱帯魚☆倶楽部 以前から濾過バクテリアの増殖には、大変興味がありました。そんな折り 可良時寿子さんから、次のようなMSGがUPされました。 >#323/327 水中散歩 魚&水草 >★タイトル (KBB53931) 94/11/24 15:45 ( 31) >濾過>バクテリアの増殖温度。 可良時寿子 >(前略) そうそう、濾過バクテリアの増殖最適温度が37℃で、この温度 >に維持すると25℃の時に比べて1桁位早く増殖できるので、フィルターの >立ち上げ時間を短縮 (中略) NIF の実験は、アンモニアは使ったが温度 >は通常の温度だったので、あれは参考に成らないからねぇ。(中略) > だれか、パイロットフィッシュの代わりにアンモニアと高水温で3日でフ >ィルターを完成させると言う実験に挑戦する人は居ないだろうか。 と、まあ、この可良時寿子さんのMSGに触発され、たいした知識がある 訳でもない不肖豊雪が、無謀にも実験を思い立ち、試みに相成った次第です。 で、結論からもうしますと、アンモニア滴下高水温3日で濾過バクテリア の増殖は望めませんでした。しかし、何らかの参考になればと、実験結果を まとめてみました。 なお、参考までに、短期濾過バクテリアの増殖は、「バクテリアの素」使 用の実験も試みました。興味のある方は、「バクテリアの素使用、高水温・ 濾過バクテリアの短期増殖実験」のリポート近々UPしますから、そちらも、 ご覧下さい。 ============================================================================ セット時のデータを下記に記します。 ・水槽 600×300×360 (56L) ・水温 37度 (参考・室温24度) ・濾材 硅砂+ウールマット2枚 (バクテリアの素、使用なし)上部濾過 アンモニアを添加する前の水質検査(水道水をハイポで中和処理) ・アンモニア濃度 0.0mg/l 検出無し ・亜硝酸濃度 0.1mg/l 以下 ・硝酸塩濃度 12.5mg/l 以下 註)水質検査の測定は、テトラ水質テストキット使用。添加したアンモニ アは、健栄製薬(株)日本薬局方 アンモニア水。 添付の説明書の組成覧に、 「本品はアンモニア(NH3)9.5〜10.5W/V%を含有する」の記載有り。 さて、問題の添加量ですが、アンモニアを添加しながら、水質テストキッ トで濃度を割り出しました。 56Lに対し、アンモニア水 1ccで 濃度 0.25mg/l ←長期的には、魚に有害 2cc 1.5mg/l ←魚に危険な状態 3cc 5mg/l ←ほとんどの魚が死ぬ ↑(テトラの解説による) ここでは、3cc滴下、濃度5mg/l(ほとんどの魚が死ぬ)を「餌」としまし た。 テトラ社が各濃度に対し、記している解説は下記のとおりです。 アンモニア濃度 ・0.00mg/l 理想的な水質。 ・0.25mg/l 長期的には魚に有害。 ・1.5mg/l 魚に危険な状態。 ・5mg/l ほとんどの魚が死ぬ。 亜硝酸濃度 ・0.1mg/l以下 理想的な水質。 ・0.15mg/l まだ許容できる状態。 ・0.25mg/l 水質に問題あり。 ・0.5mg/l 海水魚に危険、淡水魚にも長期的には、 有害。 ・1mg/l以上 ほとんどの魚にとって非常に危険 硝酸塩濃度 ・0.00mg/l 大変きれいな水 ・12.5mg/l きれいな水 ・25mg/l 一部の水替え必要 ・50mg/l 水替えが必要 ・100mg/l 全部の水替え必要 測定結果をある程度ビジュアル化したつもりです。しかし、文字テキスト 故、制限がありますので、あくまでもイメージとして捕らえてください。 ついでに、も一つ言い訳です。測定結果では、各濃度のアップダウンが、 デジタル的に変化していますが、実際の変化の大半は、アナログ的に変化し ました。これは、テトラの比色のランクに依存した結果です。 略 NH3(アンモニア) NO2(亜硝酸) NO3(硝酸塩) ==+=====+================================================== 日|項 目| 測 定 結 果(単位 mg/L) --+-----+---------+---------+---------+---------+---------+ 1| NH3 |ロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ 5.0 :| NO2 |ロ 0.1 2| NO3 |0.00 --+-----+---------+---------+---------+---------+---------+ 3| NH3 |ロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ 5.0 :| NO2 |ロ 0.1 4| NO3 |ロロロロロロロロロロロロロ 12.5 --+-----+---------+---------+---------+---------+---------+ | NH3 |ロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ 5.0 5| NO2 |ロロ 0.15 | NO3 |ロロロロロロロロロロロロロ 12.5 --+-----+---------+---------+---------+---------+---------+ 6| NH3 |ロロロロロロロロロロロロロロロ 1.5 :| NO2 |ロロ 0.15 10| NO3 |ロロロロロロロロロロロロロ 12.5 --+-----+---------+---------+---------+---------+---------+ | NH3 |ロロロ 0.25 11| NO2 |ロロロロロ 0.5 | NO3 |ロロロロロロロロロロロロロ 12.5 --+-----+---------+---------+---------+---------+---------+ 12| NH3 |0.00 :| NO2 |ロロロロロロロロロロ 1.0 13| NO3 |ロロロロロロロロロロロロロ 12.5 --+-----+---------+---------+---------+---------+---------+ 14| NH3 |0.00 :| NO2 |ロロロロロロロロロロ 1.0 16| NO3 |ロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ 25.0 --+-----+---------+---------+---------+---------+---------+ 17| NH3 | 0.00 :| NO2 |ロロロロロ 0.5 18| NO3 |ロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ 25.0 --+-----+---------+---------+---------+---------+---------+ | NH3 | 0.00 19| NO2 |ロロ 0.15 | NO3 |ロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ 25.0 --+-----+---------+---------+---------+---------+---------+ 20| NH3 | 0.00 :| NO2 |ロ 0.1 26| NO3 |ロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ 25.0 --+-----+---------+---------+---------+---------+---------+ 以上が、26日までの結果です。当初目的としたパイロットフィッシュ替わ りに、アンモニアを使用し、高水温3日の濾過槽立ち上げは叶いませんでし た。 しかし、26日間経過するなかで、 1.アンモニア濃度が下がるに連れ、亜硝酸濃度が上がる。 2.亜硝酸濃度が下がるに連れ、硝酸塩濃度が上がる 各種バクテリアの変化がみられ、尚かつ、ほぼ、一カ月経過した濾過です。 濾過が完成したと判断しても良いかと思われましたが、実験を始めて7日め に、ぱるすさんから、次なるご意見をいただいておりました。 >(前略) ここが少々疑問で、アンモニア溶液による立ち上げで発生したバ >クテリアが、実際に生物を入れた段階でも活躍し続けるのだろうかと思います。 > 硝化細菌にとって、アンモニア溶液と生物による餌の供給が全く同じ環境に >あるのでしょうか? > > とは言うものの、生物飼育に切り替えたときは、アンモニアで育ったバク >テリアが一気に絶滅するわけではなく、アンモニア育ち(笑)のバクテリアが >活動しながらも、徐々に生物の排泄物育ち(笑)のバクテリアがとって変わっ >ていくのだと思いますけど。 > > と〜、訳の判らない話を書いてしまいましたが、想像ですので、実際にア >ンモニアから生物飼育に切り替えたときの観察も行なわれるのならばその結果 >を是非教えてくださいね。 当初の目的は達成出来ませんでした。が、上記のぱるすさんや、ヒロちゃん (後記)からの、ご指摘をいただき、「アンモニア育ちのバクテリア(ぱるすさん命名) で、実際の飼育をしたらバクテリアは、どのような変化を示すか?」を観察するこ とにしました。 26日経過時点で、2/3 の換水。その結果の水質、その他のデータです。 ・アンモニア濃度 検出されず ・亜硝酸濃度 検出されず ・硝酸塩濃度 0.0mg/l 最低値です。 ・水 温 25度 ・飼育魚 体長5〜6cmの金魚10匹(概ね60cm水槽の適性飼育数) ・選定理由 安くて丈夫・他の魚より水質汚染度大 ・餌 フレーク 略 NH3(アンモニア) NO2(亜硝酸) NO3(硝酸塩) ==+=====+================================================== 日|項 目| 測 定 結 果(単位 mg/L) --+-----+---------+---------+---------+---------+---------+ 1| NH3 |ロロロ 0.25 :| NO2 |ロ 0.1 3| NO3 |ロロロロロロロロロロロロロ 12.5 --+-----+---------+---------+---------+---------+---------+ | NH3 |ロロロ 0.25 4| NO2 |ロロロ 0.25 | NO3 |ロロロロロロロロロロロロロ 12.5 --+-----+---------+---------+---------+---------+---------+ | NH3 |ロロロロロロロロロロロロロロロ1.5 5| NO2 |ロロロロロ 0.5 | NO3 |ロロロロロロロロロロロロロ 12.5 --+-----+---------+---------+---------+---------+---------+ | NH3 |ロロロロロロロロロロロロロロロ1.5 6| NO2 |ロロロロロロロロロロ 1.0 | NO3 |ロロロロロロロロロロロロロ 12.5 --+-----+---------+---------+---------+---------+---------+ | NH3 |ロロロ0.25 7| NO2 |ロロロロロロロロロロ 1.0 | NO3 |ロロロロロロロロロロロロロ 12.5 --+-----+---------+---------+---------+---------+---------+ | NH3 |0.00 8| NO2 |ロロロロロロロロロロ 1.0 | NO3 |ロロロロロロロロロロロロロ 12.5 --+-----+---------+---------+---------+---------+---------+ 9| NH3 |0.00 :| NO2 |ロロ 0.15 10| NO3 |ロロロロロロロロロロロロロ 12.5 --+-----+---------+---------+---------+---------+---------+ 11| NH3 |0.00 :| NO2 |ロ 0.1 15| NO3 |ロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ 25.0 --+-----+---------+---------+---------+---------+---------+ 16| NH3 |0.00 :| NO2 |ロロ 0.15 19| NO3 |ロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ 50.0 --+-----+---------+---------+---------+---------+---------+ ○通算45日間の測定結果です。 実際に飼育してから3日目に、アンモニア濃度が急激に上昇しました。すでに 濾過が完成してると思っていた私は、この時点でのアンモニアの上昇が疑問でし た。 なぜなら、完成した濾過なら(飼育匹数などが適切であることが条件) バクテリアが、発生するアンモニアや亜硝酸を硝化し、それらは、測定には現れず、 硝酸塩のみが徐々に上るはず、と考えていたからです。 で、その旨の発言をしたところ、ヒロちゃんのご指摘がありました。 >#138/138 熱帯魚☆倶楽部 >★タイトル (CABOMBA ) 94/12/28 2: 4 ( 84) >レス>歓迎・出巣粕さん、他 ヒロちゃん >★内容 --------------前略--------------- > 考えてみると、濾過能力というのは、毎日生産されるアンモ >ニア量に対しての処理能力を言うのではないかと思うんです。 > 毎日定量のアンモニアを加えていって、それがどの位処理さ >れたかによって、濾過がどの程度完成したと考えるべきだと思 >うのです。 > 従って、金魚を入れたことによって、アンモニアの数値があ >る程度上昇したというのは良くわかります。 > つまり、濾過はまだ完成されておらず、単に最初に滴下され >たアンモニアが、処理能力は小さくともゆっくりと処理され、 >濃度が薄くなったと考えるべきではないかと思うんです。 > つまり、この時点では、濾過が完成したというより、生態系 >が先ず完成したと考えるべきでしょうね。 > ここから、その生態系に関るバクテリアが増殖を続け、そし >て、毎日供給され続けるアンモニアの処理能力が増加し、そし >て、その処理能力が供給量を上回ったとき、濾過が完成したと >考えるべきなのでしょうね。 > ここで、新しい試みの金魚を入れた水槽というのは、興味深 >いデータを与えてくれるのではないかと期待しています。 > どうか、続けてレポート下さるようお願い致しますネ! さらに、ぱるすさんからもいただきました。 >#175/175 熱帯魚☆倶楽部 >★タイトル (PPM16822) 94/12/30 1: 0 ( 47) >レス>バクテリア増殖実験>豊雪さん ぱるす >★内容 > > バクテリア実験、なかなか興味深い動きが出てきましたね。 > 私の想像では、アンモニアから実際に魚を入れた状態に変えたときに > 少なからずアンモニア濃度が上がるはずだと思ってましたから > あながち間違ってはいませんでしたね。ヨカッタ(笑) > ヒロちゃんの御意見にもありましたが、私もだいたいそんなようなことを > 考えてはいました。 > あと、ちょっと気になるのは、純粋にアンモニア溶液を入れているときと > 違って、魚を入れた状態ではアンモニアだけが排出されているわけではなく > 他にも糞や残り餌から、色々な物質が出てくるはずですよね。 > それらが濾過に及ぼす影響はないのかなぁと思いました。 > 余計な物質が増えて藻類が発生し、それによりバクテリア群に変化が現れたり > することもあるのかなぁと思っています。 > 藻類とバクテリア群は一種共生したりもしますので。 > > それから、バクテリアの素を使用した方ですが、濾過が完成したと > 見なされておりますが、ちょっと懐疑的に思ってます。ごめんなさい。(^^;) > 何故かと言えば、初心者の方が実際にバクテリアの素を使って魚の飼育を > はじめたときに失敗している事例が多いからなんですよ。 > それらのほとんどが飼育をはじめたときには大丈夫でも、暫くしてから > つまり、バクテリアの生存競争が激しくなりバクテリアの種類が変わるように > なったころに、色々と影響が出てくるためではないかと思っているんです。 > その上、バクテリアの素に含まれているバクテリアと言うのは > ニトロソモナスだろうがニトロバクターだろうが、1つの仲間につき > 数種類が含まれていると思います。 > これらがいくら仲間だと言っても、最後までなかよく共存するわけもなく > 数が増えていけば自分達が生き延びるための生存競争が厳しくなっていきます >ので、そこで問題が起きることが多いのではないだろうかと思います。 > > でも、まぁ、要はバクテリアの増え方と減り方、個体数等のバランスが > うまく取れて、徐々にしかも上手に主体となるバクテリアが増えていけば > 問題なくスムーズに濾過が完成するんでしょうね。 その後のバクテリアの推移は、ヒロちゃんと、ぱるすさんのおっしゃってる通 りの変化でした。 さすが、ベテランのお二人。感服すると共に、実験を適切な方向に導いて 下さったことに深謝します。 で、金魚を飼育してからのバクテリアの変化は、教科書通りの推移をみせ、現 在、ほぼ、濾過が完成したとみて良いのでは無いかと思います。あえて苔の 発生などに条件が悪い、南向きの太陽の陽射しを受ける廊下にセットして有 りますが、今のところ全く発生していません。糞なども一夜にして綺麗に消 滅しています。 ですが、この方法による濾過の立ち上げが、適切なモノとは思いません。 あくまでも、アンモニアを使用し、高温、3日で濾過を立ち上げる目的からスター トし、目的叶わず、成りゆきで進んできた実験です。 実際に飼育してから6日目当たりには、亜硝酸濃度が、1mg/l以上にもな りました。これは、テトラに言わせれば、ほとんどの魚に非常に危険と有り ます。丈夫な金魚でしたから落ちずに済んだと思われますが、デリケートな 魚でしたら、どうだったでしょう? それに、手間の割には、あまり効率も良くありません。これだけ時間を掛 け手間を掛けるなら、やはり、登録ライブラリーに掲載されてる諸先輩の濾 過立ち上げの方法が、安全で確実だと思います。 実験にあたり、数々のアドバイス、応援や励ましいただいた皆さんに、心 から感謝いたします。ありがとうございました。 以上 豊雪 ---PC-VAN(EDM70203)-from SHIZUOKA by HOUSETSU--14 Jan.1995(18:38)--- 濾過バクテリア増殖実験レポート 豊雪さん ぱるす ぱるす ID:PPM16822 95/ 1/14 #556 熱帯魚☆倶楽部 落ちてから、あらためて読み直しましたが、やっぱりこのレポートは 有意義な素晴らしいものと思います。本当に貴重なデータであると思います。 で、レポートを読みながら、少々思うところもありましたので、私の意見を 述べさせていただきます。 レポートに書いてあった推移を見ると、アンモニア育ちのバクテリア(笑)から 生物の排泄物育ちのバクテリアへの移り変わりは気にしなくてもいいみたいですね。 もう少し劇的な変化が現れるかと思ってましたが、結果だけ見るとそれほどでも ないようですから、アンモニアでの濾過立ち上げは手間や効率を別にすれば 特に問題はなさそうですね。 ただ、ヒロちゃんが言ってたとおり、「毎日生産されるアンモニア量・・・」 というのが引っかかってきますので、それで生物を入れたときにアンモニアが 上がったと考える方が妥当だし、現実的でしょうね。 で、ここで理屈がわかっている方は考えるはず。 毎日、アンモニアや亜硝酸が供給されたわけではない。ということは、つまり アンモニアは経過途中でゼロになっているし、亜硝酸の値もかなり低くなっている のであれば餌がないわけで、実験段階でニトロソモナスやニトロバクターなど (以下、硝化細菌とします)の個体数はかなり減っていく、もしくは死滅すると 思う方もいてもおかしくはないです。 私も確かに減っているとは思います。 ただ、アンモニアがゼロになったからと言って、それは試薬で目に見える範囲の ものであって、実質的にはアンモニアが完全にゼロになることは有り得ません。 何日も経過した後ですから、目に見えない原生動物、硝化細菌以外のバクテリア それらが必ず発生しているはずです。 例えば、一見透明に見える水槽でも藻類は必ず発生しています。 もちろん植物プランクトンとして分類される藻類も含めてです。 この藻類は自分達で作り出した栄養分のうち10%程を体外に放出しています。 藻類だけではありません。水草があればそれらも似たようなことをしているのです。 では、なぜ、そのような無駄なことをするのでしょう? この放出された栄養分はバクテリアが繁殖するためには、非常に有益なものと なります。この放出された栄養分をバクテリアは捕獲しているのです。 間違えないで欲しいのは、この栄養分とはアンモニアや亜硝酸などではなく アミノ酸やグルコースなどの生物が体を構成するために必要な栄養分であり、 硝化細菌に限らず多くの細菌が利用します。 ここでわかるのは藻類は利用する硝酸塩などが欲しいわけで、それを 作り出してくれる硝化細菌には増えてもらいたいわけです。 そのためには、自分達が作り出した栄養分の10%くらい与えても、それで 結果的に自分達が利用する硝酸塩が増えるのであれば、無駄にはならないわけです。 しかし、当然のことではありますが、これらの栄養分があってもアンモニアや 亜硝酸がなければ、硝化細菌などは減っていってしまいます。 そこで出てくるのが、アンモニアや亜硝酸を他の窒素態から作り出すことの 出来る生物です。 藻類の中には水中に溶け込んだ窒素ガスをアンモニアに変化させるものがいます。 これなどは、自分が放出する栄養分の他にアンモニアまで供給してくれるのですから 硝化細菌にとっては非常に有益な藻類でしょう。 もちろん、バクテリアの中にも窒素ガスからアンモニアを作り出すものがいます。 このバクテリアは好気性であり、通常の水槽の水中には必ずいるものです。 他に度々、話題になる脱窒細菌と言うのもいますね。 簡単に言ってしまえば、硝酸塩を亜硝酸に、亜硝酸を窒素ガスにと言うように 変えていく細菌です。 この脱窒細菌はそのほとんどが、分子状酸素(つまり水に溶け込んでいる酸素)の 存在するところでは生活できない偏性嫌気性バクテリアか、もしくは他の好気性の バクテリアに自然淘汰される可能性はあっても分子状酸素が存在するところでも 生活できる通性嫌気性バクテリアですので、好気性の水槽には全くいないと 思われがちですが、他の原生動物や藻類の存在する水槽中には僅かでも必ずいます。 例えば、藻類が付着しているところには、その藻類を食べる原生動物がいます。 また栄養分を放出する藻類ですから、真っ先にその栄養分を取り込めるように 藻類自体に着床するバクテリアもいるわけです。 そのバクテリアを食べる原生動物もいます。これらの原生動物は当然のことながら 酸素を消費しますので、その原生動物達の集まっているところの僅かな一部分は 嫌気性になります。その僅かな嫌気性部分で嫌気性の色々なバクテリアが生活し 繁殖しています。 これで、水槽中にも脱窒細菌がいることは分かると思います。 なにしろ、酸素量の豊富な水が次々と流れてくる河川でさえも、藻類が付着して いる所を調べると、嫌気性のバクテリアが発見されているのですから。 しかし、考えてみれば、脱窒細菌は亜硝酸を窒素ガスにしてしまうのですから アンモニアを直接供給してくれるわけではないと気づいた方もいると思います。 脱窒細菌は硝酸塩還元細菌と呼ばれるグループの細菌の一つで、実はこの 硝酸塩還元細菌の中には亜硝酸塩をアンモニアに変えてしまうものもいます。 どちらも同じ様な環境で生活するのです。 これで窒素ガスにまで至らなかった亜硝酸やアンモニアもあるわけです。 なお当然のことですが、この脱窒細菌を含めた硝酸塩還元細菌と言うのは硝酸塩が 多い水ほど個体数が増えていきます。(限度はありますが) 忘れていましたが、単純に動物性プランクトンだってアンモニアを供給して くれているわけですから、植物プランクトンを含む藻類のいる水槽ならば アンモニアの供給があるわけです。 それに、それらプランクトンや原生動物、バクテリアの死骸からもアンモニアは 供給されます。 私が豊雪さんに藻類の状態も調べて欲しい、藻類とバクテリアは一種の共生の ような状態にあると言ったのも以上のように複雑な生態の絡み合いがあるためです。 ただ、私の言葉の意味合い的には、実際には藻類だけでなく、それとともに生活する 原生動物なども含まれているのです。 以上の理由から、アンモニアや亜硝酸が絶対にゼロになることはありません。 試薬では測定できない僅かな量であることは間違いありませんが。 そのために実験者のアンモニアの供給が最初だけとは言っても、それがすぐに 硝化細菌の完全絶滅には至らないわけです。 ただし、濾過の本当の意味での完成を目指すのであれば、硝化細菌に毎日 適量の餌を与えるのが一番であって、それが濾過の完成も早めると思います。 考えてもみれば、過去の文献などには「魚を入れず水を回しておく」という 記述があります。これは今では効果的な方法ではないということは判明しています。 ただ、この場合にも時間の経過に従って、様々な細菌、プランクトン、藻類などの 様々な生物が発生してくるわけです。 それにともなって、アンモニアや亜硝酸なども増加して、硝化細菌が僅かづつ 増えるであろう事は予想されます。 しかし、皆さんが実感しているように、この水を回すだけの方法では時間がかかる のは当然のことで、いくら時間を与えても急激な生物の増加にともなうアンモニアの 増加には、水を回す方法だけで発生する硝化細菌では処理し切れるわけもないと いうことがあらためて実感できることと思います。 つまり、購入してきた魚を入れて、それらの排泄物から発生するアンモニアの 処理には、硝化細菌の個体数が絶対的に足りない上に、それに対応する個体数の 増加が間に合わないため、アンモニアや亜硝酸の値が急激に増えるわけです。 長々と難しい話を書いてしまいましたが、今回の豊雪さんの実験結果は 私自身にとっても他の方々にとっても、非常に有益であることに変わりはない でしょう。 もう一つのバクテリアパックを使った実験の方の総括的なレポートも楽しみです。 あちらは今のところ私の考えている状態にはならずに、割とうまくいってる ようですね。 最近のバクテリアパックって濾過の完成までのこともきちんと考えられた、 まともなものになってきてるんだろうかと考えを改める必要があるかも 知れません。(^^;) ぱるす (^o^)o/\ [PPM16822] '>゚ゞ ~~~~~~~~~~~~