入居直後
ずっと,気にかかっていたんです。キクイムシのような虫がウロウロしていることを。
だけど,念願のマイホームに入居直後からキクイムシが家賃も払わず住んでいるなんて思いたくないじゃないですか。
確かめる勇気もないまま,そのうちいなくなってくれたらラッキーなんて思っていたんです。
しかし,いつまでも気がかりなままでいるのも,精神衛生上良くないし,本当にキクイムシだとしたら放置しておいて悪くなることはあっても良くなることはないので2年点検をきっかけに確かめることにしました。
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発生場所は主にサードです。特に,写真の蛍光灯カバー内に掃除しても掃除しても死骸がころがっています。 |
こんな感じで,ゴロゴロと。死骸だけでなく,フローリングを我が物顔で歩いていたりします。せめて,名を名乗れぃ! |
木材研究室で教授から「としまろくん,高度成長期にはな,新築の家でも夜中に壁や天井からカリカリ音がすることもあってな,合板をはがしてみるとヒラタキクイムシの幼虫の食害の形跡がよく発見されたもんだよ!」などというゾゾッと恐ろしい話をマンツーマンで聞き,目をそらす僕の目の前にわざわざヒラタキクイムシの写真をグリグリと押しつけるように見せられた記憶が!!!
見れば見るほど,この虫,ヒラタキクイムシにそっくりなんですけど。
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大きさわずか,4mmほど。これは死骸なので,足も触覚も縮こまっていますが,生きているものはこれに足と触覚がはっきり見えます。歩く速さはそれほど速くなく,なんと飛ぶこともできます。つぶすと白いものがグニっと出てきます。オエッ。 |
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スキャナーで取り込んでいます。あんよを縮めて死んでいます。 |
背中から写したところです。これは触覚がはっきりと写っていますね。 |
2005年7月22日
2年点検です。構造体以下の下地および仕上げについての保証がここで切れてしまいます。保証については大成建設発行の保証書をご覧ください。保証書に「ヒラタキクイムシによる木部の食害」については保証期間は2年と明記してあります。
まずは,死骸をビニールの小袋に集め,監督さん(わが家では引き渡し後も一切の窓口は現場監督さんです)に手渡し,調査を依頼しました。
監督さんを通じて,広島市の保健所分室へ虫の鑑定していただきました。広島市では,1997年4月1日より各区にあった保健所は廃止され,厚生部・地域福祉センターに保健所の機能を一部移転しています。
数日後,監督さんより電話連絡。「『ヒラタキクイム』で間違いないということですね。」サッと血の気が引く思いがしましたが,今後の対応について話をしました。
−引き渡し時に虫が付いていたのか,家具にくっついて虫が入ってしまったか−こんなことを言われ,のらりくらりと対応をしぶる様子が伝わってきます。そりゃそうでしょうね。ヒラタキクイムシの食害部を探すのは結構大変なことだし,分かっても,徹底的に排除するのは費用も時間もかなり必要ですから。
こりゃ,一度家具をすべて運び出す必要があるなと思い,大変だぞという思いと同時に,食害の形跡はないわけなので本当にヒラタキクイムシかどうか,疑いを持ってきちんと確かめる必要があるなと思いました。
2005年8月4日
困ったときの神頼み,Dr.JUN頼みということで,頼るは現役ハウスメーカー社員(1級建築士)が住まいづくりのナゼ?に答えてくれるサイト『Dr.JUNの住宅情報館』に相談しました。
ヒラタキクイムシについて
投稿者:としまろ
投稿日: 8月 4日(木)11時58分18秒
こんにちは。としまろといいます。建築時には大変お世話になりました。今回は,ヒラタキクイムシについて教えてください。
我が家はPCコンクリート造2階建てに置き屋根(2×4工法)にて小屋裏利用しています。入居2年目が過ぎようとしています。
入居後直後から小屋裏の蛍光灯アクリルカバー内に春から夏にかけて虫の死骸が入ることがときどきあります。私は木材加工を勉強したことがあるので,ヒラタキクイムシじゃないか?と思いながらも確信を持てず,食害されたところもないので,そのままにしていました。
このたび,2年点検を迎えるにあたって,担当者にこの虫について聞き,サンプルとして虫の死骸を持ち帰ってもらいました。今年は,生きて歩く虫を4回くらい見つけました。
後日,担当者からやはりこれはヒラタキクイムシである,という返事をもらいました。しかし,食害されたところもなく,数匹のことなので,外部から侵入したのではないかということです。
確かに,どこをさがしても食害された特有の穴や木くずは見あたらないのです,何とも気持ちの悪い話です。メーカーはヒラタキクイムシの食害について2年間の保証をしています。(実際の補修?殺虫?工事?となると,どこが責任を取るかでかなりもめるということですが。)どこかはぐってでも見てもらっていた方がよいのでしょうか。
我が家は裏手が山になっていますが,ヒラタキクイムシは乾燥した辺材しか食害しないので,山から来るとは思えません。
ヒラタキクイムシが家の外からこんなふうにやってくることはあるのか,我が家が取るべき対応は何か教えてください。
>ヒラタキクイムシについて
投稿者:Dr.Jun
投稿日: 8月 6日(土)01時07分3秒
としまろさん、おひさしぶりです。
さて、今回は難しい質問ですね!私もヒラタキクイムシを実際に見たことは1回しかありませんので正確には回答できないかもしれませんが・・・
では早速回答です。
【質問内容の確認】
@ ヒラタキクイムシの死骸があるのに食害の跡が見当たらないがなんらかの対策を打った方が良いのか?
A ヒラタキクイムシが山からやってくることはあるのか?
【回答の結論】
@ 様子を見てからで良いと考えます。
A 絶対に無いとは言えませんが・・・
【回答の解説】
まずヒラタキクイムシについてですが・・・
そもそも、この虫の一般的な進入経路ですがご存知の通りですが乾燥した木材、つまり建材が多いことは間違いありません。特にナラ材やラワン材に多く発生します。つまり、構造材よりもフロア材や建具や建具枠、また甲板類での発生が多い虫です。しかし、よく見落とすのが家具です。机や椅子、それにタンスやベッドです。実際に私が知っている進入経路も海外、特に南方系で生産されそのまま持ち込まれたような家具についてきて、それがフロアや建具に広がっていくというパターンです。日本ではヒラタキクイムシなどの木材被害は保証対象にしているハウスメーカーが多いですから、建材メーカーもかなり扱う建材に注意をしています。しかし、海外で生産された家具などは保証などがついていないことが多いのでそこから発生することがよくあります。
また、ヒラタキクイムシは多くの虫に見られるような集光性を持っています。しかし、たしかにあまり自然界では見かけません。例えばクワガタを採るために集光採集をしてもヒラタキクイムシを見たことはありません。(クワガタを採ろうと思っているわけなので見落としているのかもしれません。実際にクワガタ以外の記憶が殆んどないですし、クワガタを趣味にしている訳でもないので回数もかなり少ないのですが・・・)しかし、やはり虫ですし、人間が乾燥させた木材以外で生息できない訳がないですし、どこかにはいると考えます。ただ、やはり、通常よりも乾燥した木材を好むのも事実ですから、最も考えられるのは「隣のお家から光にめがけてやってくる」というパターンではないでしょうか。そのことからも食害の痕跡を見つけてからそれを駆除するという対策が最も適当です。今のところは静観して良いと考えます。
2005年8月7日
Webで検索すると,ヒラタキクイムシに似た虫に『コクヌストモドキ』というのがいることが分かりました。しかも,こいつなぜだか新築の家が好きでフラッとやってきて数年でいなくなる虫だそうで.....
ありがとうございます。虫の専門家って?
投稿者:としまろ
投稿日: 8月 7日(日)08時07分15秒
Dr.JUNさん,分かりやすく,ていねいなご回答ありがとうございます。
私の場合,キクイムシは写真で見たことがあるだけで実物は見たことがなかったので,その後,本当にキクイムシかということを疑うことにして調べてみました。
そうすると,やはり同じようなケースが見られました。
「ヒラタキクイムシ」とよく間違われる虫に,「コクヌストモドキ」があるようです。
「ヒラタキクイムシ」は木材を食害するのに対して,「コクヌストモドキ」は主として穀粉やその加工品を食害するのだそうです。早速,パントリーなどの小麦粉やらその他疑われる物を点検しましたが.....特に異常はありません。
さらに調べてみると,近年,新築住宅にコクヌストモドキが飛来(?)発生(?)し,住人を困らせる原因となっているそうです。
社団法人 農林水産技術情報協会 Web内の質問コーナー(http://www.afftis.or.jp/QandA/box/index.html)より引用・抜粋します。
『(コクヌスモドキの)発生はほとんど屋内に限られ、野外で見かけることはめったにありません。また、日本の野外では低温のため冬を越すことができません。ところがここ1〜2年、この虫の成虫が野外から屋内に大量に飛来・侵入するケースが頻発し、各地で新たな問題になりつつあります。とくに、なぜか郊外に新築した家での事例が多く、現在、官民共同で原因究明の研究が始められたところです。したがって、こうした現象が急に始まった理由も、発生源もいまのところ不明です。』
『新築家屋へのこの虫の飛来については、建材に用いられたなんらかの化学物質が誘引源になっていることは間違いないと思われますが、その物質は依然特定されていません。』
『最近、穀物などの餌となる発生源がないのに、屋内でコクヌストモドキが発見される例が多く報告されています。
新築の家に多く、一般には3年くらいで少なくなります。』
ヒラタキクイムシとコクヌストモドキの写真を手がかりに虫の死骸と昨日偶然見つけた生体を観察してみるとどうやら「コクヌストモドキ」のようです。大変!お騒がせしました。しかし,我が家の担当者はヒラタキクイムシであると断言して帰ったし,どっちか私自身,自信がないしで,う〜ん............
いずれにしても,何の虫であるかは「専門家」に尋ねるのが一番のようですが,身近にいる「専門家」ってどなたを頼れば良いのでしょうかね。住宅相談室の趣旨から逸脱しているように思います(いつもすいません!)が,Dr.JUN
さんならどういった機関や先生を紹介されますでしょうか。
>ありがとうございます。虫の専門家って?
投稿者:Dr.Jun
投稿日: 8月 9日(火)10時30分55秒
としまろさん、こんにちは。
う〜ん、たしかに似ている虫はいますからね。また、我々の業界と昆虫に詳しい人間がリンクするとなると難しい話です。私の会社で問題になった場合は自分たちで調べるというよりも、発生した部位の建材メーカーに調べさせます。我々の業界は完全に建築&不動産業界です。これが建材メーカーとなれば建材・材木業界になります。更に進めば農林水産業界になり、それなりに詳しい人間も出てくるという無責任な話です。
しかし、これではあまり今回の問題の解決策になりませんね。
そこで・・・
私の場合、昆虫で解らないことがあれば、まず私の弟に聞く事にしています。私の弟は趣味がクワガタなので昆虫に関してはかなり詳しい様です。(クワガタの世界では結構、知られているみたいです。)もっとも、私がクワガタを飼っている訳でもなく昆虫に関して質問事項が発生する事も殆ど無いのであまり質問する訳でもないのですが・・・。
今回の件は大きな被害がでて緊急の問題になっているとも考えられませんので私の方から弟に聞いておきます。(弟からその仲間に当たって貰えば公的機関などよりは余程ましな回答が帰ってくると考えられます。「マニアは学者に勝る」)
そこで、としまろさんのお家に発生した虫の写真を送って頂けないでしょうか?
2005年8月9日
>ありがとうございます。虫の専門家って?−送信
投稿者:としまろ
投稿日: 8月 9日(火)15時49分43秒
お世話になります。
さて,虫の写真をメールにて送信いたしました。Dr.JUNさんだけでなく,弟さんにまでお世話になり,いつもながら変な質問ばかりで申し訳なく思います。
それでは,よろしくお願いいたします。
RE: >ありがとうございます。虫の専門家って?の件
2005/08/23 (火) 16:32(Dr.JUNさんより返信メール)
としまろさん、お待たせいたしました。住宅情報館のJunです。
弟に確認したのですが結果、良く解らず、さらにそこから紹介してもらった人など色々と当たった結果、下記の様なことが解りました。
まず、この昆虫ですが恐らく、ヒラタキクイムシでもコクヌストモドキでもないのではないでしょうか?
写真を見る限りヒラタキクイムシにしては頭が小さい様な気もしますし、コクヌストモドキにしては細長い様な気がします。勿論、写真の取った方角もありますし、昆虫は住んでいる地域によって亜種化することで形が微妙に変ったりします。
そこで、考えられる限りでは、オオナガシンバムシかチビタケナガシンクイムシではないかと考えられます。
前者はヒラタキクイムシと同じ様な被害をもたらす虫ですがより竹を好みます。後者は殆ど竹(しかも乾燥したもの)しか食べないようです。チビタケキクイムシの場合は住宅への被害はさほどないのではないかと考えられます。
また、この種類は日本に約60種類以上が存在している様なのでもしかするといずれでもない可能性もありますし、新種の可能性だって否定はできないとのことでした。
また、この種の昆虫は成虫と幼虫が同じ物を食べるもの、成虫と幼虫が違う物を食べる種類があるそうです。この場合、成虫の食べる物がもともと少ない地域にいた場合、幼虫は何かを食べて成虫になると殆ど物を食べずに繁殖だけして死んでしまうということもあるそうです。実際に私の家の近くではヒラタクワガタを採取することが出来ますがクワガタが生息出来る様な樹液の出る樹木は見た事がありません。そこで、随分、前の話になりますがその生態環境を調べてみると越冬するはずのヒラタクワガタが成虫になるとすぐに繁殖行為に至り(通常は成虫になってから1ヶ月程度は行わない)、そのまま死んでしまうということが解りました。そのため、本来のヒラタクワガタよりも一回りか二回り小さい物しか採取できません。
駆除するにしても虫の種類を断定しなければなりませんが、わりと綺麗な生体ないし死骸が手に入る様なのでそれをお近くの保健所にお持ち下さい。この種の害虫は種類の特定及び駆除方法などを保健所で指導してくれるそうです。
2005年8月24日
やはり,保健所に戻ってしまいました。しかし,保健所ではすでに『ヒラタキクイムシ』と断定された訳だし,何だか複雑な気分です。
再度,厚生部・地域福祉センターへ妻を派遣しました。(自分で行かないところが何とも.....でしょ。)以下,妻の話より。
ビニールの小袋に入った虫を出し,鑑定を依頼すると速攻「これは『ヒラタキクイムシ』ですよ。ついこの間も鑑定しましたよ(多分,わが家が監督さんを通じて依頼したもの)。」とのこと。
「いえ,ヒラタキクイムシに似た虫に『コクヌストモドキ』というのがいるのですが,コクヌストモドキではないですか。」
えっという一瞬の驚きを見せ,何やら図鑑のようなものを探し出す職員さん。そこへぞろぞろと他の職員さんも集まりはじめる。何やら相撲で『物言い』がついたような様子。
「うぅん,確かに,コクヌストモドキのようにも見えます。この虫を預からせてください。虫に詳しいものはここにいませんので,専門のものに見せます。後日連絡させてください。」 |
結局,本庁の専門家も分からなかったとのことでした。その後,わざわざ広島市森林公園のこんちゅう館に持っていってくださり,鑑定してもらったところ『コクヌストモドキ』ですよとのことでした。
こうして,ようやくお墨付きをいただき,とりあえずはほっとしました。
それにしても,たくさんの方に親身に相談にのっていただき,感謝しております。
しかし,よく考えたらこんちゅう館は子どもたちを連れてよく遊びに行くところです。そうですね。ずいぶん身近に専門家っているものですね。
2007年8月10日
入居から4年が経過しました。今年はこの虫をみることがずいぶん少なくなりました。(たまに見かけるし,相変わらず蛍光灯のカバー内にも時々死骸があります。)昨日,1階のウッドデッキで久しぶりに見ました。おっ!と思ったら飛んでいきました。やはり,こやつ新築の何かにひかれて飛んでくるのでしょうね。
お世話になった皆さま方(ありがとうございました!)
農林水産に関する色々な情報を手にすることができます。今回,コクヌストモドキの情報を手にしたのはQ&Aからです。
現役ハウスメーカー社員(1級建築士)が住まいづくりのナゼ?に答えてくれるサイトです。特集記事も一見の価値ありです。
中四国唯一の「こんちゅう館」ではたくさんの蝶々が舞うパピヨンドームが有名です。