デュロック中尉の嘆き

「毎朝霧が続くな」 映画『Dien Bien Phu』で、Ｃ−４７のパイロット、デュロック中尉が出撃前のケルヴェガン大尉にそうぼやくシーンがあります。せっかくディエン・ビエン・フーに来たのですから、是非この霧を見た〜い！と思い（ミーハー）、早朝4時30分に起床、眠い目をこすりながらホテルを出ようと玄関まで行ったのは5時頃だったでしょうか？ 　ところがいきなりハプニング！なんと玄関に鍵がかかっているではありませんかっ！南京錠なので、鍵がなければ開けることは出来ません。「なんてこった〜」と心の中で叫びつつ、ドアをガタガタやっていると、従業員のお兄さんが眠そうな顔で起きてきてくれました。なんだかどこかで出会ったような光景･･･（PCGONO参照）なんとか外へ出ることが出来ました。 　ディエン・ビエン・フーはハノイやホーチミンと比べると小さな田舎町ですが、昼間はそこそこ活気があります。しかしまだ日の出前、通りには殆ど人の姿はなく、耳を澄ましても虫の声しか聞こえません。静寂とはまさにこのこと。滑走路方面の平地を見渡せるＴ字路まで来てみると、一面の霧が視界を遮っていました。 　ふと思い出したのは映画『Dien Bien Phu』の１シーン。霧の立ち込める中、照明弾の鈍い光に映し出され「ラ・マルセイエーズ」を歌いながら丘を登る兵士たちの姿…。 エリアーヌ4（ベトナム独立同盟側の名前はC2） の標識。画像処理で若干明るくしてあります。 これ何でしょうか？ 燃料か何かを投下する為の容器？ 　どり〜む☆しつつ、PCを通り、エリアーヌ2まで歩いて行きます。やはり史跡にを訪ねるときには人気の無さが不可欠！というのが私の持論。 　せっかくなので、大通りをそれてちょっと脇道に入ってみることにしました。するとやはりありました。削られた山肌に丘の標識が。フランス軍が付けた名称とベトナム独立同盟側のそれは異なるのですが、C2と書いてあるのでエリアーヌ4でしょう。 　ここまでは目的もなくぶらぶらと歩いていたのですが、ふとまだドミニク陣地へ行っていないことに気付きました。幹線道路（旧RP41）を真直ぐ北上すればドミニク1、2の丘が見えるはず…。だったのですが、麓を歩いているとなかなか発見できません。一度は通り過ぎてしまい、引き返したところでようやくそれらしき丘を見つけ坂を登って行きました。 　このころになると日の出直前の太陽の光であたりも明るくなり、体操をする人や犬の散歩をする人が目に付き始めます。坂道を登ること数分。ふと視線を右側に移すと、体操をするおじさんの向こう側に例の標識が！ ゴミ置き場の奥にドミニク2 （ベトナム独立同盟側の名前はD1）の標識を発見！ ドミニク2の丘の麓付近から ドミニク１を望む。日の出の頃です。 「やった！」 　ベトナム独立同盟側表記でD1ですから、ドミニク2です！（D1がドミニク2、D2がドミニク1。どうせなら同じにしてもらいたかったです…。そういう訳にもいきませんよね^^；） 　手前側にあるゴミ置き場を通り抜け、写真を一枚。幸せな気分に浸っていた私でしたが、ここでまたもやハプニング！うっかり手を滑らせてしまい、デジカメが落下！ショック！電源を入れてもカードエラーの文字が･･･。一瞬頭の中が真っ白に･･･。 「こ、ここまできて今まで撮ってきた写真が無に帰してしまうのか〜！？」 　がくりと膝を付き･･･とまではいきませんでしたが、暫し放心状態の私。気を取り直してカードを入れなおすと、幸いにもデータは全て残っており、撮影もちゃんと出来ました。あーよかった☆ 　かれこれ2時間近く歩き続け、お腹もすいてきたのでホテルへ戻ることに。道端のお粥を売る屋台や、ブンチャーというベトナム風肉団子（これは絶品！）を焼く匂いの誘惑にフラフラしつつ、なんとか帰還。ディエン・ビエン・フー滞在最後の朝を、どり〜む☆に浸りながら過ごすことが出来ました。 　さ、Ｈ女史を起こして朝食を食べに行こう（笑） ホテルの前に架かる橋の上から 川の上流側（北側）を望む。すごい霧！ ホテルの前からエリアーヌ1を望む 靄の中に浮かぶ朝日がきれい！ ライフライン 　3日目、という枠の中に入っているのですが、ここではディエン・ビエン・フーでの飲食にスポットを当ててみたいと思います。 　ディエン・ビエン・フーでは英語があまり通じません。訪問する前に、必要最低限の単語は覚えていったほうが良いでしょう。特に数字。1〜10までと、千、万を覚えていれば買い物は大丈夫。 　 3日間の食事内容は下記のとおり。 1日目夕食　ベトナム航空直営ホテルの横にあるレストラン 　ガイドブックには「英語メニューには価格表示なし」となっていましたが私たちに出されたものにはきちんと表示がありました。流石にホテルのレストランだけあって、価格もかなり高め。しかし味はいまひとつ満足出来ず（笑）。 2日目朝食 　ううむ。何を食べたのか思い出せません。記憶が戻ったら追加いたします。 2日目昼食　ベトナム航空直営ホテル向かいのおばちゃんのお店 　Ｈ女史はフォーを注文したつもりだったのですが、おばちゃんが間違えたのか、分かっていてわざと出したか、鶏肉のグリル焼きのような代物がテーブルに置かれてしまいました。しかも超びっくり価格！果たしてこれはぼったくり？ 　とにかくリピーターにはならないであろうというお店でした。 2日目夕食　ヴィンさんのお店 　お昼に食べられなかったフォーがどうしても食べた〜い！ということで、今度は注文する前に本当にフォーが出てくるのか、値段はいくらなのか重ねて確認をしました。ここのご主人、ヴィンさんは多少英語が出来るらしく、「まぁ座って座って」と中へ促してくれました。 　テーブルに着いてお店の中を見回すと、奥の陳列棚（冷蔵庫ではなくあくまでも陳列棚^^;）にハノイビールを発見！日本では「サイゴン」や「333」がベトナムビールとして名が通っていますが、私はハノイで出会ったこのハノイビールがお気に入り☆冷えていなかったのですが、一本注文。10000VND（約90円）也。ぐびっとやっているうちにフォーが出てきました。ダシがきいていて美味し〜い☆ ヴィンさんのお店のフォー。 生の香菜もトッピング可能。 　食後、お店の前に集まっていた常連さんらしき人達に呼び止められ、お茶をご馳走になりました。この時がベトナム語を少しでもやっておけばよかった〜と思った2度目の瞬間（1度目はエリアーヌ2の丘）。言葉は分からないながらも、楽しい一時を過ごすことが出来ました。 3日目朝食　ヴィンさんのお店 　朝の散歩からの帰途、ヴィンさんの奥さんに会いました。「朝食を食べていったら？」と言っているようなのですが、まさかＨ女史が寝ている間に抜け駆けする訳にもいかず（笑）、「後で来るから」と日本語とジェスチャーで伝え、ホテルへ戻りました。その後Ｈ女史と共にお店へ行き、昨晩と同様フォーを頂くことに。今日の飛行機で帰ると伝え、名残惜しくはありましたが、記念写真を撮りお店を後にしました。 3日目昼食　ハーちゃんのお店 　「ハーちゃんのお店」とは、ベトナム航空直営ホテルの並びにある雑貨屋さんのこと（正式名称は不明）。雑貨屋さんといっても商品は飲料とアイスがメインで、何度かミネラルウォーターを購入しました。ここでお店番をしていたのが中学生のハーちゃん。 　3日目の朝食後、ベトナムコーヒーが飲みたいと思った私は、ここがカフェだと勘違いし、コーヒーを注文。するとインスタントコーヒーの小分けパックを出してきたので、「違う違う、その奥にある…」と、カウンターの奥にあるベトナムコーヒー用のフィルターを指差しました。しかしどうやらそれはご家庭用だった様子。それにもかかわらず、ハーちゃんのお母さんらしき人がお店の奥から出てきてわがまま日本人のためにコーヒーをいれてくれたのです〜。なんという優しさ。 　しかもその後、お店の前の椅子に座ってコーヒーを頂き、ハーちゃんと一緒に写真をとろうと声を掛けたことがきっかけでお昼までご馳走してもらうことに。う〜ん。ベトナムの家庭の味☆まさか体験できるとは思っていませんでした。 一言アドバイス 　ディエン・ビエン・フーの食事で共通しているのは、ハノイではジュ〜シ〜☆だった鶏肉が「半端でなく硬い！」ということ（笑）。試してみたいという方以外は牛肉・豚肉を頼んだ方が無難でしょう。 Au revoir！ディエン・ビエン・フー 　荷物をまとめ、ホテルのロビーで空港まで行くベトナム航空のバンを待っている時、長身のドイツ人男性がやってきて「空港まで行くのか？」と尋ねてきました。（荷物に小さな国旗が縫いつけてあったので、おそらくドイツ人でしょう。）「ええ」とその時は英語で答えたのですが、何故か「この人はディエン・ビエン・フーの戦いに参加した人の親類縁者に違いない〜っ！！☆」と思い込んでしまった私は、空港へ向かう車の中、フランス語で話し掛けてみました。するとなんと流暢なフランス語が返ってくるではありませんかっ！まぁ地続きのお隣の国ですからね。話せても全然不思議ではないのですが。「ＤＢＰに何しにきたの？」と聞かれとりあえず「観光で」と答える私。嘘じゃないし（笑）。 　空港までは約1km。車だとあっという間に到着です。チェックイン後、待合室で滑走路の写真を撮ろうかどうか悩んだ挙句に決行できず。何故って、ベトナムは社会主義国なのでなんとなく不安だったのです〜。撮った瞬間に公安に囲まれるんじゃないかと（笑）。 　でも、実行すべきでした。今凄く後悔の念に苛まれています。結局ディエン・ビエン・フー空港〜ノイバイ空港（ハノイ）間で撮った写真は、訪問記1日目「いよいよ到着」に載っている排水溝ただ一枚（しかもピンぼけ）。機内からエリアーヌ2の丘も見えたのに〜。司令部跡も見えたのに〜。くぅぅ〜。 　ハノイ、ノイバイ空港到着後、2日目の陣地訪問時にホテルのフロントで車の手配をしてくれたベトナム航空のお兄さんがいてちょっとビックリ。この日からハノイ勤務なのでしょうか？どうやら一緒の便だった様子。大きく手を振ってお別れしました。 　とその時、例のドイツ人が話し掛けてきました。「どうしてディエン・ビエン・フーにいたの？」。うーん。どうやらすごく気になっている様子。結局ディエン・ビエン・フーの戦いに興味があり、どうしても現地を見たかった旨伝えると、彼もディエン・ビエン・フーをめぐる歴史には心惹かれるとの事。「きっとこの人はディエン・ビエン・フーの戦いに参加した人の親類縁者に違いない〜っ！！☆」と再び思い込んでしまった私でした（笑）。 　私達二人はホーチミン行きの飛行機に乗り継ぐため、ハノイ市内へ行くという彼とはここでお別れ。「アウフヴィーダーゼン！」ドイツ語で言うとちょっとビックリしたような顔をして手を振り返してくれました。 　ハノイ→ホーチミン→成田間にも、ベトナム軍の軍人さんに「ちょっと荷物見ていてもらえないか？」と頼まれたり（何故か握手をして別れた）、一人旅をしていたという日本人の大学生とベトナム体験談で盛り上がったり、ホーチミンの乗換であたふたしたりと、最後まで飽きのこない旅行となりました。 　ついにこの旅行記もこれでおしまい。旅行から帰ってきたのは数ヶ月前ですが、旅行記まで終わってしまうのはなんだか寂しい感じがします。 　帰国後、ディエン・ビエン・フーの戦いを更に調べていくうちに、沢山の事を見落としてきてしまったことに気付き大きなショックを受けました。「あ〜私のばかばかっ！」と己を叱咤しつつ、更なる研究（笑）を重ねた後、ディエン・ビエン・フー陥落50周年にあたる2004年には再び彼の地への訪問を心に誓う私でありました。