独白


薄暗い部屋の中で、アスランは目を開けた。
そこに漂うのはけだるい雰囲気。
体に残る赤い印とうずくような痛みが、今さっきまで行っていた情事を思い起こさせる。
横に寝返りを打てば、シャランと音を立てそうな銀の髪が頬に当たった。
その合間から見える端麗な顔は抜けるような白さで。
思わず見とれてしまう。

そして、思う。
これで彼に抱かれるのは何度目だろう。
もう、数え切れないほど。
そしてその回数分、僕は彼を裏切った。


いきなり押し倒してきたのはイザークで。
数日後「好きだ」と告げてきたのもイザ−クで。
思ってもみなかったことに少しの間、呆然としてしまった。
まさか自分を嫌っていた人間が、そんなことをつぶやくなんて、思ってもいなかったから・・・。

そして・・・・・・うなずいたのは、自分だった。

かといってその時彼を好きだったわけではなく。
今も特別これと言って愛情を感じたことも無い。

ただあの時は。

さびしかった・・・。

友人と呼べた戦友は死に。
一番大切で大好きだった人は、自分と敵対して手の届かないところへ行ってしまった。

一人きりの孤独。

それは思っていたよりも自分を苛み、縛り付ける。

だから、つい受け入れてしまった。
誰でもいいからそばにいてと。
ぬくもりを分けて欲しいと。

ただ、それだけの理由。

罪悪感なんて無かった。
それぐらいの偽りは許されるだろうと、勝手に思い込んでいた。

でも。次の瞬間。
はじめてイザークの微笑みを見た瞬間、心にズキッと何かが刺さった。

それからだ。

抱き合うたび、その冷たい眼差しが少しゆるくなるたび。
後ろめたい気持ちにさらされた。
自分の汚さ、醜さを思い知らされた。
ケガレテイル。
ヨゴレテイル。
相手の想いを知っておきながら、それを利用するなんて。

いっそのこと、嘘だったと告げられればどんなにいいか。
けれど慣れてしまった体温は手放しがたくそれ以上に。
相手に自分の愚かさをさらけ出す気になれなくて。
満たされてもつらくて。
愛されても痛くて。

もう、どうしたらいいのかわからない。


そっと、いまだ眠る相手を盗み見た。
そして、軽く抱きしめてみる。
ゴメンと。
謝る権利すらもう自分にはないけれど。
こんな僕のそばにいてくれることに、ありがとうを伝えたい。
愛はなくても大切で。
そばにいて欲しい人だから。


― 今は好きではなくても
               いつかきっと、もしかしたら ―







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