大切だからこそ―アスVer.―








戦争が終結してしばらく経った頃、この出来事は起こった。















その時、俺は昨日の軍の仕事で疲れて、ぐっすり眠っていた所だった。

(………ん?……ドア……開い、た…………??)

それでも俺はそのまま…また寝なおす。




あの…アスラン!!!」






「…………………。」←マジ寝。



































































(………?何か………視線を感じる……。。。)











「………ん…………。。…Σうわっ!!キラ!!?」

「あ。起きた。おはよう、アスランv」

「…あ、ああ…。。おはよう、キラ……………っじゃなくて!!!!」

目の前に、キラが…居た。

寝ぼけた頭が、一気に覚醒して、ガバッ!と起き上がる。
何で……キラがここに?昨日、確か…別々の部屋で寝てたよな!?
というか、キラの格好………



「何で、キラがあちこちにリボンつけてここに…俺の部屋に居るわけ?」

「変かな?…似合ってるって言われたんだけど………」


(いや、変とかそーゆーんじゃなくてなぁっ!!………そりゃあ、…似合うけど。)


「誰に!!?ってゆーか何でキラがそんなカッコするに至ったんだ?!」


大体予測は出来るが……キラは自分からすすんで、こんなカッコしないからな。
キラはどんなカッコしてても、似合うし可愛いし…………今日はまた一段と可愛らしいが。


「……………………………………………だって………アスラン、今日…誕生日でしょ?」

(………言われてみれば……今日は……俺の、誕生日だったな…。すっかり忘れてた。)
こんな時、おずおずと上目遣いで言うのは止めて欲しい。
キラはわかっていないんだ。俺がヤりたくなるのをどんなに苦労しているか。








「誕、生日……?………でも、何でキラが、そんなカッコしてるんだ……??」

ちなみに、現在のキラの格好は…………首と、頭にピンクのリボン、猫耳と、ダボダボ(大きなサイズ)のTシャツ――膝上くらいまである長袖のTシャツだが――…、あと右足にこれまたピンクのリボンが編み上げられてる。
可愛くて仕方が無い。……くっ、、、鼻血を噴きそうだ…。。

「装飾品♪」

「…いや、そうじゃなくて……ι(キラ、その意味をわかっているのか、その意味を!!!)」

「この間ね、思い出したんだ。小さい頃に、アスランが言った事。」

「?」

(……俺が…言った事?)




――――――――回想。。

「ねえアスラン?」

「何だいキラ?」

珍しく甘い声を出すキラに、ノリノリで答える(嬉しそうな)アスラン。

「今度の誕生日プレゼント、何がいい??」

キラ。」

「……………………即答?」

(キラ以外に、俺が欲しいモノなんてない。)

「何言ってるんだ。それしかないじゃないか!!」

「…………………………聞いた僕が馬鹿だったよ。。」

げんなりとした顔でため息をつくキラ。

(?だってそう訊いただろう?)




「……って事があったじゃない?」

「あ、ああ…。(そういえば……)」

「あの時は結局、僕が作った僕自身の人形だったけど……。
思い出してさ。だから、今年の誕生日プレゼントは、だよ




Σぐはぁっっ!!!




「あ、ああアスランっ!!!血、血出てるよ;;!!!」

「大丈夫だ………。。」

「でも、血………。。。。」

「大丈夫。ちょっと待ってて、顔洗って来るから。」

「うん。」


俺はそのまま顔を洗いに行った。
………誕生日だというのに、かなり無様だ。

(まさか今頃それを言ってくるとは思わなかった……不覚だ。)

そのおかげで、あんな可愛いキラを見ることが出来たのだが……

(本当に、誰がキラに入れ知恵したんだ……ι?)

ディアッカか?それともラクスか………もしや、ニコルか?
…そんな事を考えつつも、手は確実に動き、顔を洗い。身支度もついでに済ましてしまう。


………そして、すぐにキラの元へ戻った。







「キラ………一応確認するぞ。」

「うん。何?」

「俺達は、恋人同士だよな?」

「うん。」

「じゃあ……すでにキラが俺のモノだって事、わかってる?」

「…………………………………………。」

ピタッ。と効果音がしたかのようにフリーズするキラ。

(やっぱり………意味、わかってなかったのか……。)

ガッカリしたような、ひと安心したような気持ちが広がる。
…やはり、キラはこうでないと。


しだいに、ポカスカと自分の頭を叩くキラ。
なんだかキラらしくて、つい、含み笑いをしてしまう。…キラは気づかなかったようだからよかったけど。

「やっぱり………よくわかってなかったんだな?
一応俺達同棲してるんだけどな……。」


終戦後、キラはプラントに住む事になった(※軍の命令で)。
だが……キラの両親はオーブにいる。消息は…不明らしい。だから、家族と連絡が取れずにやむを得ず一人で。

でも、あんな状態だったキラを一人で暮らさせるわけにはいかなかった。
落ち込んで、沈み込んで……今までの事を考える時間が出来たためだろうが……あんなキラを見ているのは嫌だった。
だから…

『キラ、一緒に住まないか?』

と、提案してみた。
俺が、どうにかしてやりたいと思ったから。
少しでも、キラの元気が出るように。寂しい思いをさせないように。



それから、
二人で物件をいくつか回って、二人で住む物件を探して。

そして現在、キラと俺との二人で同棲状態。
誰も止める人が居ないので、俺は何でもヤりたいやりたい放題だ。
俺からすると、得ばっかりだ。キラは…………どうなんだろうか。あの頃よりは元気になったみたいだけど。



「ご、ごめんアスラン…。けどっ!これ以外に思いつかなかったんだもの、………誕生日プレゼント。」

ポツリポツリ、と呟くように言った言葉を、アスランは一字一句聞き逃さなかったようだ。

「キラ。………気持ちだけで、充分だから。俺は……キラさえ居れば、それでいいんだ。」

「アスランっ……!!」

目を潤ませて俺を見上げてくるキラ。
それに、嫌だろうにこんなカッコをしたのも、全て…俺の為。
俺の誕生日だから、

こんなキラだからこそ俺は………キラが、好きだ。



「えへへ…vアスラン………大好きだよ!!」

キラは、笑顔満面になって、俺に抱きついてきた。


「Σわっ///き、キラ…?」

「大好きだから////……ずっと、ずっと、大好きだからねっ!!///」

「キラ………。」

俺はキラをしっかり抱きしめる。
柔らかで、華奢なキラ。今にも折れてしまいそうな細い体。
いつも温かくて、俺を安心させてくれる、愛らしい笑顔。
キラの全てが、とても愛しい。

「………ねえ、キラ。そろそろ離れて?
俺からキラの顔がよく見えないだろ?」

「あ・うん…。。」

キラが慌てて少し離れる。

(…抱き合ってたらお互い顔が見れないし。)

「………あ。」

「何?キラ。」

「結局、誕生日プレゼントどうしよう………。」

しょげるキラ。何だか、怒られてうなだれる小さな子猫のようで、抱きしめたくなった。

(でもここで何か打開策を出さないとキラはずっと悩むからな。)


しかし、キラが出来る得意な事といったら…プログラミング能力がそうだと言えるだろう。……その所為で戦争中に大分利用された事もあったが。

昔ハッキングをして遊んでいた頃にも、ムチャクチャな組み方をしていたが、中身はちゃんとしていて、俺より早かった。
でも、今ではそれは一般企業のプログラムの構築、開発に使っているだけだ。

――世界が平和になった今、俺もキラも軍を抜けて、平和な暮らしをおくっている。


(キラが俺に………『ヤらせて』ってのはいつも言ってるし…)

何か。
キラにしてほしい事。



(あ。…あれが、あった。)




「じゃあ、こうしないか?」

「?なあに??」

「………こういうのは駄目?――……。」

その後俺が言った言葉は、
キラをゆでだこ状態にするに充分だったらしい。

「…………クスッ。…キラ、顔真っ赤だよ。」

「だ、だだだだだだって……っ/////」

「……………やめる?」

「………いや!!」

ちょっと意地悪っぽく笑う。昔から、負けず嫌いのキラは、俺がこう言うと頷く。
まるで昔に戻ったみたいで、微笑ましくなる。

しばらくして、キラが決意したようにこっちを見つめてきた。
真っ赤だけど、真剣な顔のキラは付けている猫耳にまで神経が通っているように張り詰めたものだった。

























途中、ギィ…と、扉の開くような音がした。
が、そんなのお構いなしだ。どうせまた新聞の勧誘か、ディアッカがいたずらに訪ねてきただけだろう(迎撃システムを用意しているから別に支障は無いが)。
キラは、そんなの構っている余裕がなさそうだし。




「あ…………あ、……愛してるよ、アスラン////////」


ぽそっ…と呟くようなキラの言葉。
言った途端すぐに顔を伏せてしまう。

(……うわ…顔熱い…///)

真っ赤な顔で、もじもじと上目遣いに言ったキラの言葉こそ、
俺がキラから聞いた事の無い唯一の言葉。

(好き、とか大好き、とかはよく言ってくれるけど、愛してる、とは言わないし。)

そこがまたキラらしいのだが。
恐る恐る見上げてくるキラに、ニッコリ笑う。
……まだ、顔がちょっと熱い。少し赤くなってるかもしれない。
そんな俺を見て、キラがにこっと笑った。
これだけで、心がこんなにも温かくなる。




それから、キラは危なっかしく、俺にキスをした。
……キラから、なんて初めてだから…あまり上手くはなかったけど。

首筋、おでこ、頬…………そして最後に唇。

いつも、俺がキラにやっているように。
一生懸命やっているキラが、とても可愛い。少し……というか、かなり驚いたけど、とても嬉しかった。

―――だから、いつの間にかある気配に気が付かなかったのかもしれない。


































「………アスラン、いつになったら僕達に気づいてくれるんですか?」

(げ。)

「!ニコル……」

「私も忘れては困りますわ。」

(うわ…。)←すっげー不愉快。

「ラクス!貴女まで………」

「「アスラン、わざとらしい(です)(ですわ)。」」

(わざとに決まってるじゃないか。)

えええええええええーーーーーーっ!!?//////」

キラが、大声をあげて驚いた。まーた赤い顔して。ラクスとニコルのおもちゃにされるぞ。

“何で二人がここに居るの!?”と、言いいたかったつもりだったのだろう…口はただパクパクするだけで何も言葉を発する事が出来ていない。


「で?何で二人がここに居るんだ?(折角イイトコだったのに!)」


「だって、今日はアスランが誕生日だからパーティーを開くって……」
「キラから聞きましたの。」

“ねー?”

息ピッタリのラクスとニコル。





(は?)







キラに……………呼ばれた











「キ〜〜〜ラ〜〜〜〜〜〜〜?」

恨みがましくキラを睨む。

「あ、あはは……ごめん、アスランι」

どうして謝る必要があるんだ?(どうして俺が怒ってるのか、本当にわかってる?)」

「え、っと……その………;;;」


キラが困ってる所に、ニコルとラクスが、俺達の間に割って入った。


「アスラン、誕生日おめでとうございます。プレゼントは、後日お渡しする、という事で…」
「僕達はこれで帰りますv」

「…………わかった。(さっさと帰ってくれ。)」

俺が頷いたのを見ると、ラクスもニコルもドアの方に引き返した。

「え?ちょ、ラクス、ニコル!!………いい、の?」

「ええ。構いませんわv」
「面白いモノ……というか、可愛いキラさんが見られたので、よしとします♪」

「………………もしかして、二人共…………見てた?」

「それはもう、」
「バッチリですわvv」


「〜〜〜〜〜っ////////」


それでは、…と、二人は帰っていった。
キラは真っ赤になって固まるばかり。








「…………キラ。」

「Σ!!!………アスラン……////」

「“愛してる”…って、やっと言ってくれたね。」

「あ、あれはっ////アスランが……言って欲しいって言ったんじゃないか//////」

「…キラが恥ずかしがって言ってくれないからな。」

「んもうっ/////」

プイッとほっぺを膨らませてそっぽを向く。……そんなことしても、可愛いだけなのに。
くす……、といつの間にか笑みが洩れる。

「………キラ、愛してるよ。…ずっと。」

キラの耳元で静かに囁く。なるべく甘く、優しく。
そう言うと、キラは、そのままの状態で、一言、言った。



「…お誕生日、おめでとアスラン//////」

「ありがとう、キラ。」

俺がそう言うとキラが振り返り、俺を見た。
我知らず、俺は満面に笑っていた。
そして、キラも…ずっと真っ赤な顔のままで、はにかんだような笑顔をつくった。

(邪魔は入ったけど、…まあ、いいか。)










その日、一日中俺とキラは一緒に居て、ずっと側に居た。
一緒にご飯を食べたり、話したり、ショッピングに行ったり遊んだり。
何の変哲も無いこんな日常が手に入った今だから、…だからこそ、大切にしたい。




「………ずっと……愛してるよ、アスラン////」

キラが俺にキスを一つ落として、眠りにつく。
寝たふりをしているだけで、本当は起きているだが、キラは気づかなかったようだ。


完全に眠ってしまったキラに、一人呟く。

「……………俺だって、ずっと…愛してる。昔から、俺にはお前しか見えていなかったんだから。
……ありがとう、キラ。」

そして今度は、俺からキスをして、俺も眠りについた。



――――幸せな日常に浸りながら――――――。



















〜〜オマケ〜〜〜



「アスラン、この間、誕生日だったんだろう?おめでとう。」

「ああ…。ありがとう、カガリ。」

「?あれ?今日、キラは??」

「キラ?…キラなら…今買い物に行ってるけど。…それがどうかしたのか?」

あれから一週間経って、久し振りにカガリが俺とキラの家に遊びに来たのだ。
彼女は終戦後、オーブを纏めるのに忙しいらしく、今日も、プラントの最高評議会の面々と話してきた帰りだという。
キラはカガリの弟(兄?)なのだから、キラのことを心配するのも当たり前か。

「いや……。先週はどうだったのかと思って。」

「先週……」

先週は俺の誕生日。

(……………………………まさか。)

「キラ、可愛かっただろう?アレ、私がアドバイスしたんだ♪」

「!!!!!(やっぱり。。)」

「モルゲンレーテ社の特製品なんだ。エリカとラクスがノリノリで作ってくれて。
随分といいものが出来たんだ。」

「何でラクスが!?」

「?何処からか知って、造る日にモルゲンレーテに来たぞ、彼女。」

「〜〜〜〜ι」

ラクスらしいと言えばラクスらしい。
(……………あれは、カガリとラクスの差し金だったのか。。)

ガックリとうなだれる俺を余所に、カガリはキョトンとしている。
…そうしていたら、キラが帰ってきた。

「ただいま〜〜♪……あ、カガリ!いらっしゃい!!」

「や、久し振りだな、キラ♪」

「うん、久し振り〜〜♪」


「それよりキラ、この間のアスランの誕生日、どうだったんだ?」

「え!?……と、あの、その……っ//////」

「ふ〜ん…?その様子からすると、上手くいったんだな。」

クスリ、と笑うカガリ。

「アスランは何も知らなかったから、呆けてただけか。」

「え!?い、言ったの!?///」

「?ああ。いけなかったか?」

「よくない〜〜〜〜〜!!!////」

ポカポカとカガリを殴るキラ。…あれでは別に痛くないだろう。
カガリも、ただ笑っている。


(…………これがキラなんだから…ま、いっか。)


「はいはい、そこで止めようね、キラ。
カガリも、あんまりキラで遊ぶなよ?キラは俺のモノなんだから。」

ぎゅ、とキラを腕の中に確保してから、軽く牽制するようにカガリに言う。

「キラは私の大事な弟だからな。私のだ。」

「いや、俺のだ。」

「わーたーしーのーだーーーー!!!」

延々と続く言い争いに、キラが俺の腕の中から大声をあげた。



二人共、ケンカは駄目ーーーー!!!




今日もまた、平和な日常が続いている。……いつまでも、こうだといい、と思う。
いや、こうしている。こんな日常が、ずっと続くように、俺がしてみせる。










END








あとがき。

「書くよ!」とか宣言しておいて、今はもう大分時間が経ってしまった…。
このあいだ書いた「大切だからこそ」の、アスラン視点を書いてみました。
……ついでに、キラ視点から書けなかったオマケも。キラのカッコの秘密を書いてみました。

はい、ラクス・クラインとエリカ・シモンズです。ミリィやマリューも…と思ったのですが、、彼女達はキラの為にしか行動し無さそうだな、と思いまして(笑)。
(結果でも何でも)アスランの為に……ってのはしないかな〜…と(作者の偏見)。やきもち妬いちゃいます。
本来ならエリカ・シモンズも何もしないのですが、やはりお姫様からのお願いというのと面白そうだったからに他ならないのでしょう。
ラクスは、キラの可愛い姿が見たいのと、アスランを出し抜く為、ですね。
彼女がどこから製作情報を知ったのか…は、秘密です。彼女の情報源はあちこちにある、としか言えませんね(笑)。


2003.11.16