愛らしい少年と、大人びた端麗な少年が肩を並べて歩いていた。
「それじゃ、僕は用事があるので。」
「どうしたニコル。今日も何かあるのか?」
ここのところ、ニコルはいつも訓練が終わるとどこかへ去っていく。
「ええ、まぁ・・・・。」
ニコルは答えに困ったようにあいまい返答した。


(ふぅ・・・・ニコルがいないと、本当にすることが無いな・・・・。)
取り残されたアスランは、持て余した暇を、どうしたものかと思案していた。
(仕方が無い、居間に行けば番茶をすすっているイザークとディアッカがいるだろう。)
ザフトにそんなもの有るのか・・・?という疑問は置いておこう。


しかし、居間に行っても誰もいなかった。
この時間帯はイザークがひそかに大好きなお笑い番組・8時だよ!全員集合があるはずだ。
忘れているのだろうか?・・・いや、そんなはずはない。
馬鹿らしい、と言いながら毎週欠かさず見ているし、かと○ゃんのヒ○ダンスには食い入るように見入っている。
さらに現在はビデオの予約録画機能が故障中なのだ。見ないわけが無い。
アスランは、8時だよ!全員集合がやっている事を知らせるべくイザークを探し始めた。


「あっ、隊長。」
「どうしたんだね、アスラン。」
変態仮面、もといクルーゼ隊長にでくわした。
「イザークを見かけませんでしたか?」
「イザークは今大事な任務についている。後にしたまえ。」
「しかし・・・!今はイザークの大好きな8時だよ!全員集合が!!!」
クルーゼ隊長だってイザークが、8時だよ!全員集合を楽しみにしている事を知っているはずだ。人が悪いではないか。
「とにかく、だめだ!・・・・9時になったら、ニコルの部屋へ行くんだ。呼んでいたぞ。」
「9時ですか?・・・・わかりました。」
クルーゼ隊長は不満そうに去っていくアスランをおもしろそうに眺めていた。
(大丈夫だアスラン。8時だよ!全員集合が見れなかったイザ−クは、今夜私が慰めてやる!)


8時45分。
まだ少し早いが、する事が特に無い。
これでもラクス嬢への貢物、新作ゴールド・ハロの考案で時間を潰したのだ。
(もう行こうか・・・・。)

    コンコン★

「ニコル?何か用か?」
「・・・アスラン!?もう来たんですか?」
ドアの向こうから、ニコルの慌てた声と激しい物音が聞こえた。
「どうした?いけなかったか?」
「いえ、どうぞ。」
アスランがゆっくりと扉を開けた。


パ〜ン!パパ〜ン!


クラッカーが鳴り、目の前に色とりどりのリボンが散らばった。

「HAPPY BIRTHDAY!」

アスランは目をきょとんとさせている。
「アスラン、今日は何月何日ですか?」
「え・・・・?10月29日。」
(あ・・・・。)
まだ可愛いエプロンを身につけたままのニコルが微笑んでいた。その後ろには大きなケーキがみえている。
上を見上げると、可愛いデザインの「アスラン誕生日おめでとう」と書かれた垂れ幕がかかっている。イザークの字だ。
ケーキの横には、アスランをモデルにした人形が置いてある。ディアッカが作ったらしい。
アスランは感動した。
「ありがとう。ニコル・・・・ディアッカ・・・。それにイザーク・・・8時だよ!全員集合を我慢してこんな事を・・・・!」
「ふん・・・・1時間遅いが全員集合だ!」
照れているのかイザークは顔を背けた。
垂れ幕に書かれたアスランの似顔絵がやけに可愛い。
その後、アスランの誕生日会はニコルのピアノ、イザークの手品、ディアッカの日舞で盛り上がった。


〜終了後〜

「ニコル、部屋がこの状態ではニコルが寝れないじゃないか。」
飾りつけなど手が込んでいて、ニコルの部屋は寝るには不適切な状態になっていた。
「大丈夫ですよ、適当な所に寝ておきます。」
「ニコルが良ければ、一緒に寝るか?ここよりはスペースはあるが・・・・。」
「え?いいんですか!?」
こうなる展開まで想定しての事・・・・かどうかはわからないが、そうするしか選択肢の無い部屋を後にした。


「今日、よく我慢したな。8時だよ!全員集合。」
ディアッカがイザークに優しく微笑んだ。
「ふん、あんなもの・・・・。」
と、いいつつ悲しそう。
何処からともなく現れたクルーゼ隊長より1歩先に、ディアッカがイザークの肩に手をまわした。
「・・・・今日は俺たちも一緒に寝るか。」
「・・・・あぁ。」
ガ〜ン・・・・。
クルーゼ玉砕。
アスランの誕生日は、(1人を除いて)熱い夜となった。




END