僕の気持ち  
 

龍蘭 暦




「アスランなんか、嫌い。」
「………え?」

アスランは、今起こった事…キラが言った事が信じられずに、
すっかり固まってしまった。


「だーかーら、アスランの事なんか、嫌いって言ったの。」

「………え、ちょ、キラ、何で?!」

(さっきまで、すごく楽しそうに笑っていたのに…。どうしていきなり?!
僕が何かしたのか!!?それで嫌いになったのか?いいや、キラはそんな簡単に
僕のコトを嫌ったりなんかしない!!!!)←何気に決め付けてる。

「僕ね、今日こそはハッキリ言うよ。アスランなんか、大ッ嫌い!!

ガアーーーン!!!!

衝撃!!アスランがキラに振られた!!!
アスランは、あまりの衝撃の強さに放心状態となっている(笑)!

「ん?アスラン、どうかした?」

“おーい!”とアスランの目の前で手を振るキラ。
しかしアスランには、それすらも目に入っていないらしい。
すっかり自分の世界に入っていた。

(何でなんだ、キラ!!あんなにあんなに仲がよかった僕を!!
兄弟のように育った僕を!!ああ…キラはいつも僕を頼りにしていたっけ…?
マイクロユニットが苦手なキラ。ちょっと短気な僕は、すぐに叱ったっけ……)

完全に現実逃避している。しかも、昔の記憶にまで遡っている。

(キラ……トリィを作ってあげて…3年も離れてたけど…その間、
僕は、ずっと…トリィを通してキラを見ていたんだ。キラのなんと可愛いことか!!
もう“好き”や“大好き”どころじゃない。愛してるvv……ん?待てよ…)


「…ラン………アスラン!!!」
「うわっ!!…ああ、キラ!」

やっと夢の世界から帰ってきたアスラン。でも、目の色が……いや、言わないでおこう。。

「もう、アスランってば何度呼んでも返事しないんだもん!どうかしたの?」

“大有りだよ…”と言いたいのを堪えて、アスランは切り出した。
でも、笑顔で切り替えしたところが、はっきり言って怪しい。

「ねえキラ。」
「ん?なあに?」

そのアスランの様子に気づいてないのか、純真無垢に笑顔で答えるキラ。
(うっ!可愛い〜〜〜…////やっぱりこの笑顔は俺だけのものだ!!)


「僕のこと、愛してる?」

ピタッ。

キラが笑顔のまま止まった。…そして、

「ううん。愛してないよ?だって大嫌いだもんvv」

これまた最上級の笑顔で言った。


ガガガガーーン!!(By運命)

(そ、そんな…………いや、大丈夫だ!キラだって笑顔で答えてくれたし!!)

ものすごい逃避してます。大嫌いって言われてるのに、聞いてません。
笑顔以前の問題って気づいてません。


「…じゃ、じゃあ……僕らって…恋人……だよ、ね…?」

“………………………”

少しの間、沈黙が二人の間を流れた。

「何言ってんの?僕ら、ただの幼馴染でしょ?」

にっこりv

「……そん、な………嘘だ!!」
「嘘じゃないよ?」

「…だって、あんなに仲よかったじゃない!!」
「そお?僕にはただの兄弟みたいなカンジだよ?」
「兄弟みたいって事は、仲がいいってことだよ!」
「でも、アスラン、怒ってばっかりだったじゃない。」
「う………。」

それを言っちゃおしまいだ。
確かに、短気(?)なアスランは、しょっちゅうキラを叱ってた。


「キラ…誰か……他に好きなヤツでも、……できたの?」

恐る恐る訊いてみるアスラン。顔に冷や汗まで浮かべている。

「僕の好きな人が、誰かってこと?」


「……………………そう、だよ。。。」

(俺の事嫌いって言ってたっけ…)

また思い出してしまったアスラン。
認めたくなくて、返事をするのが鈍くなる。

が、キラは気にせず、ちょっと顔を赤らめて、言った。

「……イザークさん//////」

(何ぃいい!!!?イザークだと!?俺のキラの事をつけまわしていた、
あのストーカー男が!!?キラの“好きな人”だと!!?)

あんたも人の事言えないってアスラン。。トリィに盗聴・盗撮機能つけたの誰だよ。
しかも一人称変わってる……。

「…………キラ。」
「何?アスラン。」
「…………あんな……」
「?あんな??」

「あんなオカッパのどこがいいんだ!!?あいつはただのストーカーだろ!!?」

ストーカーはお前だろ、アスラン。しかもオカッパじゃない!ボブカットだ!!Byイザーク


「まさか…まさかイザークなんかと……ニコルなら………ってニコルもよくない…
(あいつは腹黒だった…)何でイザークなんだよ!!?キラ、嘘だと言ってくれ!!!!」

これじゃあアスランは、振られたのに言い寄る振られ男だ。

…キラは、しばらく黙って俯いていた。……泣いてるのか?


そして。














「嘘だよ。」


と一言、言った。












「えええええーーーーーーーー!!!?」

「あははははっ!アスラン、ひっかかったひっかかった〜♪
今日はエイプリルフール!!嘘をつく日なんだよ?」

“あははは!!”

キラは、泣いていたのでは無く、ただ笑いを堪えていただけ、のようだ。
まだ笑ってる。

(コーディネイターには、そんな習慣ないからわかんなかった…。)

それでも、キラと一緒に育ってきたアスランである。
確か、毎年イベントは全てキラと共に行ったはず。

(忘れてた…今日、4月1日だ……。)


「僕がアスランのこと嫌いになるはずないじゃない。」

「…じゃあ、イザークって言って顔赤らめたのは?」

「アスランの事を思い浮かべながら、イザークって言ったの。」

「……さっきまでの事、嘘なんだよね?全部。」

「うん。…アス、ラン……?(汗)」

そこまで言って、やっとキラはアスランの様子がおかしいのに気づいた。
…雰囲気が、ただ事じゃない。

そろ〜っと逃げようとしたところ、、

「…どこに行くんだい、キラ?」

満面の笑みを浮かべたアスランに、キラは捕まった。

「あ、え…っと……」
「…少しは、償ってもらわなきゃ、ね……。」
「な、何が………?」

「嘘とはいえ、僕は…すごく……すごく、傷ついたんだよ?」

哀愁ただようアスランの顔。(もちろん嘘。)
そんなアスランを見て、キラは…言ってしまった。

「ごめんアスラン。僕が悪かったよ。償いはする。」

…あ〜あ……言っちゃった。もともとエイプリルフールは、
人を騙す為にあるのだから、普通は償いなんて必要ないのに。――

が、言ってしまった以上、アスランの天下である。

「じゃあ、カラダでvv」

「ええ!!?嘘!?」

「ホントだよ〜v大丈夫、優しくしてあげるからvv」

有無を言わさずキラをお姫様抱っこして、家の中に入っていくアスラン。
さっきとは大違いで、すごくご機嫌。

「……こんな嘘、やめときゃ良かった…。」

ぽつりと呟いた、キラ。結局、キラはアスランには勝てない。
今日のところは互角だった、という事にしておこう。






余談。

その次の日、言い合い↓をするアスランとキラを、ニコルが目撃したそうだ。

「アスランの所為で寝不足だよ!!」
「まーまー。落ち着いて。」
「それが、あんなことした人の言葉!?誰だよ、“優しくしてあげるから”
なんて言ったのは!!?」
「ああ、アレ、嘘だよ。」
「嘘おーー!?」
「うん。だって、エイプリルフールでしょ?」
「……ねえアスラン?あの時、もう日付変わってたよ。」
「ええ!!?嘘!?」
「本当。………もう、アスランなんか知らない!!いいもん!浮気してやる〜!!」

と言って走り去るキラを、

「ああ!!ごめん、キラぁああ〜〜〜!!!!!」

と追いかけるアスランの姿。



……だった。

そして。。アスランは3日、口を利いてもらえなかった上に、
キラとイチャつくイザークの姿を見せ付けられたらしい。


 
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