髪の毛との戦い(それぞれの戦い番外編)
〜イザークの大いなる秘密〜





「何をやっているアスラン!腰抜けめ!」
「臆病者!(ニコルに対して)」
いつもイザークはピリピリしている。
イザークは焦っていたのだ。自分の秘密がばれやしないかと。
それでいつも怒鳴り散らしていた。
「・・・・・。(くそっ、ばれてたまるか!)」
「・・・イザーク?どうしたんだ?」
「うわぁ!ディアッカ!驚かすなよ!」
イザークの心臓はクルーゼの大切な花瓶を割ってしまった時よりドキドキしていた。
「何を考えてたんだ?」
「何でもない!(言えるわけないだろ〜!)」
そう言ってイザークはパイロットに与えられている自室へと逃げ込んだ。
「あっ、イザーク!・・・・。」
愛しのイザークにふられてしまったディアッカはとっても寂しそう。


「ふぅ・・・・。」
パイロットの自室でため息をつくイザーク。
そこには豪勢な装飾品、そしてその部屋の隅っこの方に、他の扉とは違うかなり地味な扉があり、イザークはまっすぐそこへ向かっていった。
・・・・・・カチャッ。
その扉の向こうにはさらに扉があり、今度は暗証番号を入れなければならなかった。
ピッポッパッポ・・・・ッ。
暗証番号は「俺様はかっ・・・」いや、イザークのプライバシーの為にこれ以上は止めておこう。
「言えないぜ・・・・・、こんな事。(俺が・・・・俺が)」
とにかく扉は開いた。すると大きなカーテンがあって、それをめくって目に入るものとは。
「育毛トニック」「すぐハエ〜ル」などなどザフトの注目新商品から手にいれる事のできないと言われている幻の毛はえ薬まで。
「(俺がハゲだなんて〜〜〜〜〜〜〜!)」
数え切れないぞ、どうやって集めたんだこんなに。
暗証番号を入力してまで入った部屋だから他に誰もいるわけがないのに、念入りに周囲を確かめて。
そしてイザークは自らのカツラをはずした。
「いや・・・ハゲだなんて言い過ぎだよな。すっ少し薄いだけだ。てっぺんだけだし・・・・。」
第一波平よりはあるぞ、とイザークは思った。
そしてイザークは高級育毛剤をてっぺんに丁寧に塗り始めた。
あらゆる種類をそのてっぺんに塗り、その後てっぺん周辺を優しくもみ始めた。
はたから見れば、若いのに大変だねぇ〜っていう結構涙もろい(?)話。
ピピピピ・・・ッピピピピッ。
通信が入った。
「やばっ・・・。」
イザークは急いでカツラをかぶり、ボタンを押して通信画面を見た。
「アスラン!・・・何だ?」
「クルーゼ隊長が・・・。・・・・??イザーク、髪型がおかしくないか?」
やばい。急いでかぶったもんだから・・・・。
「あ、いや、・・・(汗)シャワーを浴びた後だから、髪が濡れておかしく見えるんだよ。」
「そうか?まぁとりあえずクルーゼ隊長がお呼びだ。あしつきを発見したとの話も聞いたからそれかもな。じゃあ。」
プッ・・・・。
イザークは急いでカツラのズレを直した。


「あっ、イザーク。遅いですよ。」
そういうニコルの横にはアスラン、ディアッカが既に揃っていた。
「?あれ?イザーク。全然濡れてないじゃないか。」
アスランが不思議そうに言った。
ぎくっ。
「ド、ドライヤーで乾かしたんだよ。ほら、隊長に会うんだからきちっとしないと失礼じゃないか。」
「さすがイザーク☆(陶酔)」
・・・おい、ディアッカ。(汗)
「あぁ、それで遅かったのか。・・・それにしても乾くのが速いな?」
「俺のドライヤーは性能がいいんだ!」
「へぇ、使ってるメーカー教えて下さいよ。」
「だめだ!」
「なぜ?」
「えっ・・・いや、俺のお気に入りだからだ。」
「(あぁイザークのドライヤーになりたい・・・・。)」
クルーゼが部屋に入ってきた。イザークにはまさしく天の助けだった。
「諸君、もう知っているとは思うがあしつきが発見された。明日の明朝には出撃する用意をしておけ。」
「はっ!!!!!」


「やっと出撃か・・・・。楽しみだねイザーク。」
「んっ・・・・?あぁ、そうだな。」
「ねぇイザーク。さっきから考え事してばっかり。何考えてるの?もしかして俺の事?」
・・・悪寒。
「ふざけるなっ!それよりはやく明日の用意をしておけ!」
またもやイザークは自室へと逃げ込んだ。
「(ばれる・・・・!やばい・・・・!!!)」
イザークは泣きそうだった。
ストライクは憎いがそれどころではない。
「ばれたら俺の人生がぁ・・・・っ。」
部屋にある全身鏡の前に行き、もう一度はえ際を確かめた。


「ストライクを発見!全員でかかれ!」
「キラ・・・・・。」
と、こんな切ない気持ちになっているのはアスランだけのようだ。
イザークはこの瞬間が好きだった。ストライクを狙っている時はハゲのことを忘れられるからだ。
「ストライク〜!」
デュエルガンダムの激しい猛攻が始まった。
「ディアッカ!」
「OK〜!(俺はイザークの為なら何でもするよ☆)」
バスターがストライクの後ろにまわり、さらにストライクは厳しい状況となった。
デュエル&バスターの猛攻でストライクはもう限界に来ていた。
キラは最後の力をふりしぼって思いっきりイザークを中傷した。
「く・・・っおまえになんかやられてたまるかぁっ!このぉ〜ハゲ〜〜〜〜〜!!!!」
ガ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン
「うっ・・・・・うわぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!」
キラにしてみれば無意識にでたありきたりな中傷だったが本当の事だけにイザークは深く傷ついた。
そして取り乱したイザークは逃げていった。
「あぁどうしたのイザーク!?」
愛しのイザークの異変に気付きディアッカは心配そうにイザークの後を追いかけていった。
その隙にストライクはアークエンジェルに帰還し、難を逃れた。


アスランはキラが助かってホッとしているし、ディアッカはイザークを心配しているし、ニコルはもともとそういう性格ではないので、誰もイザークを責める人はいなかった。
「どうしたんですかイザーク?なんだかイザークらしくないですよ。」
「・・・・。」
「あっ、そうだ、打ち上げでもやりましょうよ。戦いも終わった事ですし。」
「打ち上げ?いいねぇ。」
ニコルの提案とディアッカの賛同により、打ち上げパーティーの開催が決まった。


4人の為にささやかな宴席が用意された。カラオケセットまである。
「イザーク、俺とデュエットしない?」
「アスラン、紅茶にしますか?それともお酒にしますか?」
こんな感じで打ち上げは結構盛り上がっていた。
・・・・・その時。
「ア〜スラ〜ン!!!!」
「ハロ!?」
突然現れたハロはまっすぐアスランのもとに飛んでいった。
反射神経の優れたアスランは構えていたし、このまま行けばアスランの手の中にハロが収まるはずだった。間にイザークがいなければ。
スッコ〜ン!
ハロはイザークの頭・・・・ではなく持っていたお茶にヒットした。
中身のお茶がイザークにぶっかかった。
その後すぐにやってきたラクスが必死で謝った。
「あぁすみませんイザーク様。アスランがここにいると聞いて・・・・本当にハロがすみません。」
「い、いや・・・・。」
むかつきはしたが頭に直撃してカツラがずれるよりはマシだ。イザークはそう思った。 イザークは、ラクスがあまりにも必死に謝るので、それに気を取られて、タオルを持ちながら近づいてくるニコルに気付かなかった。
「大丈夫ですかイザーク。」
イザークが気付いた時にはもう遅かった。既にニコルはイザークの頭にタオルを被せ、ビショビショに濡れた頭を乾かす為に、思いっきりふいた。
「うわあぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
もちろん、イザークのカツラはしっかりとれ、てっぺんハゲがあらわになった。
「イザーク・・・・おまえ・・・・・・・。」
アスランがイザークを同情するような目で見た。
「あっあのっ!すみませんっ!僕は何も見てませんっ!」
タオルでカツラをずらしてしまった(もちろん善意なのに)ニコルは必死だった。
「お、おまえら、バカにするなぁっ!畜生ハゲてて何が悪い〜!!!」
「俺はハゲててもイザークが好きだ!」
ディアッカが大声で叫んだ。あぁ何だか違う方向に突っ込んできたぞ。
「まぁ・・・・なんて美しい愛なんでしょう。」
ラクスがウットリと言った。


とにかくイザークの努力もむなしくハゲがばれてしまい、それ以来イザークは何だかおとなしくなった。クルーゼもその事を噂で聞き、自らの美意識からイザークに対する愛情が薄れ、クルーゼ抜きでアークエンジェルを追う時のリーダーがアスランとなってしまったのである。


・・・・・まぁいいんではないでしょうか?イザークにはディアッカがいるんですし。
そんなわけでイザークの髪の毛との戦いは今日も続きます。
めでたし。めでたし。(?)


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