それぞれの戦い最終章
〜 パトリック・ザラの想い 〜




「アスランは何をしている!連絡一つよこさんとは・・・。」

「仕方ありませんよ、内密の任務ゆえ・・・」

パトリック・ザラは苛立っていた。

ナチュラルとコーディネイターの戦争が開始、つまり血のヴァレンタインから
どれだけの時が経っただろうか。

徹底抗戦を主張するパトリック・ザラが議長となった今、和平の道は断たれた。

ザフトの皆がそう思っていた。

確かに、和平の道は。

しかし、終戦は切に願っていた。

――――――確かに、戦争は無意味だ。

パトリック・ザラは静かに目を閉じた。



突然の地球軍の奇襲。

「ザラ議員!ザラ議員!・・・大変でございます!」

パトリック・ザラは慌てた様子でこちらへやってくる部下に目を向けた。

「何事だ。」

先ほどからの騒々しい様子に不穏を感じながらも冷静を装い、
冷徹な面持ちをさせていた。

「ユニウスセブンが・・・・・!」



報告を受けた時のパトリックの様子が誰に想像出来ようか。

「あ・・・・あぁ・・・」

あそこには。

私の大切な人が。―――――レノアが。





「議長!アスラン様が戻られました!」

パトリック・ザラはまた静かに目を開けた。

アスランが乗っていたのはジャスティスではなかった。

地球軍の―――――。

報告を受けたとき、パトリックは眩暈がしそうだった。



自らが行う戦争を否定するアスランに、冷徹な視線をおくる。

銃撃命令を、出した。

誰も気付かなかったが、パトリックの唇は、震えていた。





--------------―このまま殺されたって、かまわない。

アスランは思った。

〔キミハ、マダシネナイ。〕

ただこの一言が僕を動かしている。

銃弾が当たった時、父の声が聞こえた気がした。

気のせいだ。

アスランは泣いた。

気のせいでいてくれ。

もう父に心はないんだ。だから間違った事をしているんだ。

そうだ。僕の耳が、おかしいんだ。

〔アスラン、ワタシハオマエノタメニ・・・・〕

気のせいだ。

父上、この先どうするおつもりですか。

殺しあったって何も変わらないのですよ。

殺しあったって・・・母上は、幸せはもう。

父上、覚えておいでですか?

あなたは日々忙しく、家族で出かける事などほぼなかった。

それでも、数回、旅行など行きましたね。

プラント、月、・・・・地球。

あの時見た地球は、本当に美しかった。

僕は母上も父上も大切です。大好きです。

ナチュラルもきっと、僕と同じ感情を誰かに対し持っているんです。

父上も、そう思われませんか?



アスランはクライン派の用意した船に乗り込んだ。



戦争は無意味だ。確かに、憎んでも憎んでも。

殺しても殺しても、レノアは帰ってこない。

だからと言って、ナチュラルを許してもレノアは帰ってこない。

変わらないなら許せない。
罪無きレノアを、私の大切なレノアを殺したナチュラルを許さない。

せめて、身勝手な奴らを殺したい。

アスラン、何故わからぬ。

私はナチュラルが許せない。

大切なレノアを奪い、大切なアスランまで奪ってしまった。

行くな、アスラン。

おまえをレノアの二の舞にはさせたくない。

共存などしてしまえば、また不条理な攻撃があるだけだ。

おまえもレノアのようになってしまうのだぞ?

―――――だから私は。

戦争を早く終わらせて、ナチュラルを一掃して、おまえと平和に暮らそうと
思っていたのに。

私は、アスランの為に。


私は、私から大切な全てを奪ったナチュラルが許せない。


      幸せを、レノアを、―――――――アスランを。





Each Fights Finished.